貧弱の英雄

カタナヅキ

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ゴブリンキングの脅威

第406話 引き際は誤るな

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朝陽が海底を射し反射する眩しさに目を開けた。

マルメディが部屋の掃除をしていた「おはよう、気分はどう?」転がってきた貝殻を隅に寄せながら声をかけてくる。

「おはよう、なんだか……んーなんだろうなにか物足りない感じ」

気分はスッキリしているのに、とても不安な気持ち。マル以外に挨拶する相手がいたような、いないような。

マルメディがお薬が効いてる証拠だと慰める、だけど思い出すのが怖いんだ。



「過去を思い出してマルを忘れたら……そんなの耐えられない」

「ソータ、だいじょうぶよ。ククアの薬を信じて、貴方が私を忘れないように傍にいるわ」

「……うん、ありがとう。ずっと傍にいて」



マルメディは俺の頭にキスを落とし朝食を持ってくると船底に下りて行った。

俺は不意打ちのキスに狼狽え顔がブワーッと熱くなる。

「ひぃぃぃ!ま、まじか……でも頭にキスって子ども扱いだなぁ」



嬉しくて切ない……。

ん?なんか以前もこんなことあった?……誰かに焦がれてたような気がする。





***



食後、マルメディの日課である漂着物探しに同行した。

ゴツゴツの岩礁の陰から人間の集落を覗く、ネフラブルという漁村だとマルメディが言う。

「ソータがタコ退治したのはこの辺りよ、覚えてない?」

「……ううん、わからない。海釣りしたことはあるけどここじゃないみたいだ」



記憶が混濁して辻褄の合わない風景が重なり合う、頭がもやっとしてズキンと痛む。

マルメディが岩陰で休んでてといい、ゴミ溜まりをかき分け始めた。



ほとんどが木屑と欠けた貝殻のようだ、そうそうガラクタはないそうだ。

「漁村の人はゴミを捨てないもの、遠くの国から流れてくるものがほとんどよ」

「そっか、海が汚れてないのは良いことだね」



収獲なしなので帰ろうとマルメディが言った時……



「レオ!レオニード!」

誰かが声を張り上げこちらへ走ってくる、メルメディが怯えて俺を抱きしめた。

イルカの時とは違う生々しい感触に緊張してしまう。

「レオ」とは誰の事かわからないがピンポイントで俺達の所を目指しているのは間違いない。



二人の少女がバシャバシャと波打ち際へやってきた。

岩陰にいたのにどうしてわかったのだろう?



俺はマルメディに奥へ隠れるように言い、彼女らの近くへ這いあがった。

「キミらは誰?どうして俺の存在に気が付いたの?」

「え、なにを言ってるのレオ、フラの事わかんないの?ほら見て!珊瑚色の尻尾のフラだもん」

ケモミミの美少女がしょんぼりと耳を下げ悲しい顔で俺を呼ぶ。



「レオって俺のことなのか?ごめん記憶がないんだ……どこの誰だかさっぱり」

「そ、そんな!?一緒に旅して暮らしてたんだよぉ、ティルとバリラも心配して探してるんだよ」

フエエンっと泣き出してしまったケモミミ少女にワタワタしてたら、もう一人の少女が言う。



「おいおい記憶障害ってか……、乳ビンタの文句を言いに来たってのに。面倒なヤツめ!」

「ち、ちちちち乳ビンタ!?」

あんたがやったのよと見知らぬ少女が叫んだ。

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