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グマグ火山決戦編
第382話 火山へ向かって……
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「――ウォオオンッ!!」
「ビャク!?皆、止まって!!敵が近くに居ます!!」
「またか!?全員、戦闘態勢!!」
翌日の朝、討伐隊はビャクに乗り込んだナイを先頭にして移動を行う。ビャクは人間よりも気配を感知する能力と優れた嗅覚を誇るため、近くに魔物が存在すると警告を行う。
昨夜はビャクは眠っていたのでレッドゴーレムの襲撃に気付かず、自分の主人が危険に晒されたと知った彼はナイから離れようとせず、常に警戒を行う。そして移動の際中に魔物の接近を感知すると討伐隊に危険を知らせた。
『ゴォオオオッ!!』
「前方にレッドゴーレムの群れが近付いています!!数は四匹!!」
「四匹か……迎え撃つぞ、魔術兵は待機しろ!!」
レッドゴーレムが出現すると、無駄な魔力の消費を抑えるためにバッシュは魔術兵に魔法を撃たせない様に待機させ、即座にテンとリンダが動き出す。
「ここはあたし達に任せな!!」
「御二人は御下がりください!!」
テンとリンダはドリスとリンの代わり銀郎騎士団と黒狼騎士団の部隊を引き連れ、レッドゴーレムの対処へ向かう。だが、この時にビャクは後方を振り返り、何かに勘付いた様に鳴き声を上げる。
「ウォオンッ!!」
「えっ……後ろからも魔物の気配を感じ取ったようです!!」
「後方だと!?」
ビャクの警告を受けて全員が後方を振り返ると、そこには地中から現れようとするレッドゴーレムの姿が存在した。体長は4メートルを超える個体であり、両腕を広げて咆哮を放つ。
「ゴォオオオッ……!!」
「ひいいっ!?」
「な、なんて大きさだ……」
「怯えている場合か!!王子、どうされますか!?」
後方には魔術兵とマジクが待機しており、魔法で迎え撃つかをバッシュに尋ねる。バッシュはここで彼等に魔法を使用させる事に躊躇した。
魔法を扱える魔術師は強力な戦力ではあるが、消耗した魔力は簡単には回復しない。魔力を回復させるには身体を休めるか魔力回復薬などの薬を使うか、あるいはナイのように魔操術で魔石から魔力を引き出すしかない。
しかし、身体を休ませるにしても魔力が完全に回復するまで時間が掛かり、魔力回復薬の類は即効性はなく、せいぜい魔力を回復させる時間を短縮する事しかできない。最後の魔石を利用した魔力の吸収は誰にでもできる事ではない。
(ここで無駄に魔力を消費させるわけにはいかん……仕方ない)
バッシュは悩んだ末、ここはナイの部隊に任せる事にした。彼が目配せを行うとナイは意図を察し、部隊の面子を引き連れて挑む。
「俺が出ます!!ミイナ、ヒイロ、リーナは援護を頼んだ!!」
「了解」
「は、はい!!」
「うん、任せて!!」
「ウォンッ!!」
ビャクに乗り込んだナイはレッドゴーレムの元へ向かうと、続いて馬に乗り込んだミイナ達も続く。大型のレッドゴーレムは迫りくるビャクを見て拳を振りかざし、殴りつけようとしてきた。
「ゴアアッ!!」
「避けろ、ビャク!!」
「ガアアッ!!」
放たれた拳に対してビャクは回避すると、ナイは空中にてビャクの背中から飛び降りると、岩砕剣を振りかざす。空中だろうと岩砕剣ならば魔力を注ぎ込めば重量を増加させて強烈な一撃を叩き込めた。
「このぉっ!!」
「ゴアッ――!?」
岩砕剣の一撃によってレッドゴーレムの頭部は砕け散り、破片が地面に飛び散る。しかし、普通の魔物と違ってゴーレム種の場合はいくら肉体が崩壊しようと、核となる経験石が無事ならば倒す事は出来ない。
しかし、頭部を失った事でレッドゴーレムの動作は一瞬だけ止まり、その隙に真っ先に駆けつけたリーナは槍を構えると、目つきを鋭くさせて胸元に槍を突き刺す。
「ここだ!!」
「ッ――!?」
的確にリーナはレッドゴーレムの体内に秘められている経験石に向けて槍を突き出し、彼女はこの時に独特な手元の動作で槍を回転させながら貫く。その結果、体内にて経験石を槍で破壊されたレッドゴーレムは身体を震わせ、地面に倒れ込む。
「よし、倒したよ!!」
「ふうっ……ありがとう、助かったよ」
「あっ……う、うん」
ナイがリーナに礼を告げると、彼女は頬を赤らめてあからさまに視線を背ける。昨夜からナイが話しかけると彼女はこのような態度を取り、どうやら昨日の口移しの一件でナイの事を意識しているらしい。
(昨日の事を引きずっているのかな……治療行為のためだとしても迷惑を掛けちゃったかな……)
昨夜のリーナとの口移しの一件はナイも思う所はあるが、あれはあくまでも治療行為の一環でしかないと思い、リーナ程に意識はしていない。しかし、他の者達は二人の微妙な雰囲気を感じ取っていた。
「お、御二人とも気まずそうですね」
「仕方ない、昨日あんな事があったんだから……モモに知られたらまずそう」
ナイに好意を抱いているモモがリーナと彼が口づけをしたと知ったらどのような反応をするのか気になる所ではあるが、ナイ達が大型のレッドゴーレムと対処している間にテン達も前方に現れた四匹のレッドゴーレムを打ち倒す。
「ビャク!?皆、止まって!!敵が近くに居ます!!」
「またか!?全員、戦闘態勢!!」
翌日の朝、討伐隊はビャクに乗り込んだナイを先頭にして移動を行う。ビャクは人間よりも気配を感知する能力と優れた嗅覚を誇るため、近くに魔物が存在すると警告を行う。
昨夜はビャクは眠っていたのでレッドゴーレムの襲撃に気付かず、自分の主人が危険に晒されたと知った彼はナイから離れようとせず、常に警戒を行う。そして移動の際中に魔物の接近を感知すると討伐隊に危険を知らせた。
『ゴォオオオッ!!』
「前方にレッドゴーレムの群れが近付いています!!数は四匹!!」
「四匹か……迎え撃つぞ、魔術兵は待機しろ!!」
レッドゴーレムが出現すると、無駄な魔力の消費を抑えるためにバッシュは魔術兵に魔法を撃たせない様に待機させ、即座にテンとリンダが動き出す。
「ここはあたし達に任せな!!」
「御二人は御下がりください!!」
テンとリンダはドリスとリンの代わり銀郎騎士団と黒狼騎士団の部隊を引き連れ、レッドゴーレムの対処へ向かう。だが、この時にビャクは後方を振り返り、何かに勘付いた様に鳴き声を上げる。
「ウォオンッ!!」
「えっ……後ろからも魔物の気配を感じ取ったようです!!」
「後方だと!?」
ビャクの警告を受けて全員が後方を振り返ると、そこには地中から現れようとするレッドゴーレムの姿が存在した。体長は4メートルを超える個体であり、両腕を広げて咆哮を放つ。
「ゴォオオオッ……!!」
「ひいいっ!?」
「な、なんて大きさだ……」
「怯えている場合か!!王子、どうされますか!?」
後方には魔術兵とマジクが待機しており、魔法で迎え撃つかをバッシュに尋ねる。バッシュはここで彼等に魔法を使用させる事に躊躇した。
魔法を扱える魔術師は強力な戦力ではあるが、消耗した魔力は簡単には回復しない。魔力を回復させるには身体を休めるか魔力回復薬などの薬を使うか、あるいはナイのように魔操術で魔石から魔力を引き出すしかない。
しかし、身体を休ませるにしても魔力が完全に回復するまで時間が掛かり、魔力回復薬の類は即効性はなく、せいぜい魔力を回復させる時間を短縮する事しかできない。最後の魔石を利用した魔力の吸収は誰にでもできる事ではない。
(ここで無駄に魔力を消費させるわけにはいかん……仕方ない)
バッシュは悩んだ末、ここはナイの部隊に任せる事にした。彼が目配せを行うとナイは意図を察し、部隊の面子を引き連れて挑む。
「俺が出ます!!ミイナ、ヒイロ、リーナは援護を頼んだ!!」
「了解」
「は、はい!!」
「うん、任せて!!」
「ウォンッ!!」
ビャクに乗り込んだナイはレッドゴーレムの元へ向かうと、続いて馬に乗り込んだミイナ達も続く。大型のレッドゴーレムは迫りくるビャクを見て拳を振りかざし、殴りつけようとしてきた。
「ゴアアッ!!」
「避けろ、ビャク!!」
「ガアアッ!!」
放たれた拳に対してビャクは回避すると、ナイは空中にてビャクの背中から飛び降りると、岩砕剣を振りかざす。空中だろうと岩砕剣ならば魔力を注ぎ込めば重量を増加させて強烈な一撃を叩き込めた。
「このぉっ!!」
「ゴアッ――!?」
岩砕剣の一撃によってレッドゴーレムの頭部は砕け散り、破片が地面に飛び散る。しかし、普通の魔物と違ってゴーレム種の場合はいくら肉体が崩壊しようと、核となる経験石が無事ならば倒す事は出来ない。
しかし、頭部を失った事でレッドゴーレムの動作は一瞬だけ止まり、その隙に真っ先に駆けつけたリーナは槍を構えると、目つきを鋭くさせて胸元に槍を突き刺す。
「ここだ!!」
「ッ――!?」
的確にリーナはレッドゴーレムの体内に秘められている経験石に向けて槍を突き出し、彼女はこの時に独特な手元の動作で槍を回転させながら貫く。その結果、体内にて経験石を槍で破壊されたレッドゴーレムは身体を震わせ、地面に倒れ込む。
「よし、倒したよ!!」
「ふうっ……ありがとう、助かったよ」
「あっ……う、うん」
ナイがリーナに礼を告げると、彼女は頬を赤らめてあからさまに視線を背ける。昨夜からナイが話しかけると彼女はこのような態度を取り、どうやら昨日の口移しの一件でナイの事を意識しているらしい。
(昨日の事を引きずっているのかな……治療行為のためだとしても迷惑を掛けちゃったかな……)
昨夜のリーナとの口移しの一件はナイも思う所はあるが、あれはあくまでも治療行為の一環でしかないと思い、リーナ程に意識はしていない。しかし、他の者達は二人の微妙な雰囲気を感じ取っていた。
「お、御二人とも気まずそうですね」
「仕方ない、昨日あんな事があったんだから……モモに知られたらまずそう」
ナイに好意を抱いているモモがリーナと彼が口づけをしたと知ったらどのような反応をするのか気になる所ではあるが、ナイ達が大型のレッドゴーレムと対処している間にテン達も前方に現れた四匹のレッドゴーレムを打ち倒す。
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