貧弱の英雄

カタナヅキ

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グマグ火山決戦編

第377話 どんな力だろうと……

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「僕は明日からも一人で戦いたいんだ。あ、勿論ナイ君の迷惑にはならない様に気を付けるからね!!でも、どうしても僕が能力を発動しないといけない時が来たら……その時は巻き込まれない様に離れててくれる?」
「……なるほど」


事情を察したナイはリーナが本心から他の人間を心配した上で言っていると判断し、善意からの言葉である事は理解できた。

だが、リーナの話を聞いてもナイは彼女を一人で戦わせる事に納得できず、明日からは本格的に火山へ突入する。恐らくはレッドゴーレムと再び対峙する事になると思われるが、リーナだけを一人で戦わせる事にナイは不安を抱く。


(リーナは強いけど、レッドゴーレムは危険な相手だ……もしかしたら蒼月の力が必要になる事態が訪れるかもしれない。でも、それってリーナだけを危険な目に遭わせるだけじゃないのか?)


仮にレッドゴーレムと遭遇した時、リーナがどうしても蒼月の力を使わなければならない時、他の人間が彼女から離れる事は逆に言えば彼女に危険な役目を押し付けているだけに過ぎない。

ナイはリーナとは最近であったばかりで特に親しい間柄というわけでもないが、今は共に戦う仲間として頼りにしている。そんな彼女に危険な役目を押し付ける事にナイは納得できず、条件を付けくわえる。


「そういう事なら分かった。でも、蒼月を使用する時は必ず報告する事……それと、蒼月を使わない時は僕達と一緒に戦う。それでいい?」
「うん、そういう事なら構わないよ。でも、どうしても僕が能力を使わないといけない時が来たら……その時はナイ君達も気を付けてね」
「分かった……約束する」


リーナはナイの言葉を聞いて安心し、お互いに握手を行う。ナイとしてはリーナだけに無理をさせるわけにはいかず、明日からは彼女が無茶をしない様に注意しようと考えていると、不意に異様な気配を察知した。


(何だ、この感じ……!?)


ナイの「気配感知」の技能が発動し、すぐにリーナも察したのか二人は背中を合わせて周囲を見渡す。この時にナイは即座に「索敵」を発動させ、敵の位置を探る。


(上手く行け!!)


気配感知と索敵は普段の旅でもよく利用していたので技能が鈍る事はなく、ナイはすぐに気配を感じ取った場所を探って正体を見極めようとした。しかし、気配が感じる場所には何も存在せず、敵の姿は見えない。

最初は索敵の技能が上手く発動しなかったのかと思ったが、すぐにナイは地中に視線を向け、嫌な予感を抱く。その予感は的中し、地中の中から赤黒い腕が突き出してきた。


「ゴォオオオッ……!!」
「まさか……レッドゴーレム!?」
「地面の中に隠れていたの!?」


レッドゴーレムが現れるとナイとリーナは蒼月を構え、地中から姿を現したレッドゴーレムと向き合う。唐突に出現したレッドゴーレムは様子がおかしく、胸元に赤色に光り輝く宝石のような物を露出していた。


(あれって……経験石!?)


胸元に光り輝く宝石の正体をナイはすぐに「経験石」だと判断し、昼間に遭遇したレッドゴーレムは経験石は体内に存在したが、このレッドゴーレムの場合は体外に露出していた。

今までに見た事もない形態のレッドゴーレムを見てナイとリーナは戸惑うが、レッドゴーレムは二人を見下ろすと、拳を振りかざす。


「ゴオオオッ!!」
「うわっ!?」
「ナイ君っ!?」


昼間に遭遇したレッドゴーレムと比べても動作が早く、ナイに向けて拳を放つ。しかし、拳がナイに届く前にリーナが蒼月を繰り出す。


「このぉっ!!」
「ゴアッ!?」


露出している胸元の経験石に向けてリーナは蒼月を繰り出し、周囲に金属音が鳴り響く。レッドゴーレムは一瞬だけ怯むが、リーナは驚愕の表情を浮かべる。


「か、硬いっ!?」


黄金級冒険者のリーナの槍の刺突は岩石だろうと貫ける程の威力を誇るが、レッドゴーレムの経験石は彼女の槍を受けてもびくともせず、レッドゴーレム自身も損傷を受けた様子はない。

リーナが注意を引いている間にナイも旋斧を構え、即座に「剛力」の技能を発動させる。相手がガーゴイルだろうと一撃で破壊するほどの威力の攻撃を繰り出す。


「このぉっ!!」
「ゴガァッ……!!」


ナイが振り翳した旋斧に対してレッドゴーレムは咄嗟に両腕で胸元を庇い、強烈な一撃を両腕で受けて亀裂が走る。だが、胸元の経験石だけは守り抜く。


「えっ!?防御した……ゴーレムが!?」
「くっ……身体の方もやたらと硬い」


昼間に戦ったレッドゴーレムは防御するような仕草は行わず、常に敵を襲う事だけに専念していた。しかし、二人の前に現れたレッドゴーレムは他の個体と異なり、肉体の高度も防御を行う知性を持ち合わせていた。

二人は唐突に現れたレッドゴーレムと対峙し、嫌な汗を流す。何故だか分からないが、この目の前の相手だけはここで倒しておかなければならないと本能が警告する。
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