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旋斧の秘密
第362話 瞬間加速 ※大幅に修正しました
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「さあ、来なよ!!」
「…………」
リーナの言葉に対してナイは旋斧を構えた状態から動かず、20メートルも離れたリーナに一瞬で近付く術はない。だが、ナイはリーナにはない技能を覚えていた。
ナイとリーナの移動法は「俊足」と「跳躍」の技能を組み合わせた高速移動であり、これにさらに「剛力」の技能を組み合わせる事で移動速度を上昇させることができるはずだった。但し、同時に三つの技能を発動すれば肉体の負担は更に高まる。それでもナイがリーナに勝つにはこれ以外に方法はない。
(やるしかないんだ)
相手が離れてくれた事が幸いし、ナイは余分な装備をその場で取り外す。旋斧も闘拳も刺剣も一旦外して地面に放置すると、いきなり装備を外し始めたナイに観客は戸惑う。
「な、何だあいつ……急に脱ぎ始めやがった」
「おいおい、いったい何のつもりだ?」
「男が脱いでも嬉しくねえぞ!!脱ぐならリーナの方だろ!!」
「やかましい!!茶化すんじゃないよ!!」
「我が娘に何を期待している!?」
「「「ひいいっ!?」」」
観客の野次に今度はテンとアッシュが同時に怒鳴り散らし、二人の迫力に観客は黙り込む。その一方でモモは心配そうに隣に座るヒナを揺さぶる。
「ねえねえ、ナイ君何をするつもりなのかな!?怪我しないといいけど……」
「お、お、落ち着きなさい!!私に聞かれても困るわよ!!」
「ふむ……どうやらまた何か仕出かそうとしてるみたいだね」
「アルトよ、彼が何をするつもりなのか分かるのか?」
「……見てのお楽しみですよ」
アルトの態度に隣に座るバッシュは気にかかるが、彼は不敵な笑みを浮かべた。ナイとアルトの付き合いは決して長くはないが、アルトはナイを信じていた。何故ならば彼は「英雄の器」だと信じているからである。
最初に会った時からアルトはナイが普通の人間ではないと勘付き、適当な理由を付けて彼を王城に招いて友人関係を築いた。今までにアルトは様々な人間と出会ったが、ナイ以上に不思議な人間はいなかった。
「肌がピリピリする……君、本当に強いんだね。僕も嬉しいよ」
「……ふうっ」
リーナは久々の強敵との戦闘に高揚感を抱くが、そんな彼女の言葉はナイの耳には届いていなかった。ナイは岩砕剣だけを構えると、まずは準備を行う。
(身体が持つと良いけど……やるしかない!!)
最初にナイは両手に「硬化」を発動させ、岩砕剣を握りしめる両手を固定する。硬化の技能は防御力を高めるだけではなく、使い方によっては動きを固定させることも可能だと気付いた。
これからナイはリーナの速さを超える速度で動くため、間違っても岩砕剣を手放さないようにまずは両手を固める。この状態から更に「剛力」を発動させ、両足の筋肉を強化した上で「跳躍」を発動する。
「――うおおおおおおっ!!」
雄叫びを上げながらナイはリーナに目掛けて突っ込んだ瞬間、大量の土煙が舞い上がる。ナイが飛び込んだ瞬間に凄まじい衝撃が大地に伝わり、20メートルも離れているリーナに目掛けて砲弾の如く突っ込んだ。
「えっ!?」
「やああっ!!」
自分を越える移動速度と飛距離で跳び込んできたナイにリーナは呆気に取られ、それでも反射的に槍を構えた。だが、そんな彼女に対してナイは岩砕剣を振りかざす。事前に硬化で両手を固定していたお陰で岩砕剣を手放さずに済み、全力の一撃をリーナに叩き込む。
「うおらぁっ!!」
「きゃああっ!?」
リーナは魔槍に岩砕剣が叩き込まれた瞬間、想像以上の衝撃を受けて吹き飛ぶ。地面を何度も横転しながら闘技場の壁際まで吹き飛ばされ、それを見たアッシュは焦りの声をあげる。
「リ、リーナ!?無事か!!」
「ううっ……」
『い、いけません!!リーナ選手、戦闘不能と見做して勝者は……えっ!?』
闘技場の壁まで吹っ飛ばされたリーナは意識を失ったのか動かず、それを見て彼女は戦闘不能だと判断したアリアは試合終了を宣言しようとした。だが、攻撃をしかけたナイも同時に倒れ込む。
「はあっ、はあっ……!?」
『ナイ選手も倒れた!?これはいったいどういうことでしょうか!!』
「あ、あの馬鹿……技能を使いすぎたんだ!!それで肉体が限界を迎えたんだ!!」
「ええっ!?」
「ナイ君!?大丈夫!?」
元々「剛力」だけでも肉体の負担は大きいが、そこから「硬化」「跳躍」「俊足」の三つの技能まで同時に発動したせいでナイは限界を向け、その場に倒れてしまう。それを見た実況のアリアは両者共に戦闘不能と判断した。
『ひ、引き分けです!!リーナ選手とナイ選手、どちらも戦闘不能と判断して引き分けとします!!』
「何だって!?」
「……アルトよ、残念だが岩砕剣はあの子には渡せんぞ」
引き分けをアリアが宣言すると、国王はため息を吐きながらアルトに告げた。
「…………」
リーナの言葉に対してナイは旋斧を構えた状態から動かず、20メートルも離れたリーナに一瞬で近付く術はない。だが、ナイはリーナにはない技能を覚えていた。
ナイとリーナの移動法は「俊足」と「跳躍」の技能を組み合わせた高速移動であり、これにさらに「剛力」の技能を組み合わせる事で移動速度を上昇させることができるはずだった。但し、同時に三つの技能を発動すれば肉体の負担は更に高まる。それでもナイがリーナに勝つにはこれ以外に方法はない。
(やるしかないんだ)
相手が離れてくれた事が幸いし、ナイは余分な装備をその場で取り外す。旋斧も闘拳も刺剣も一旦外して地面に放置すると、いきなり装備を外し始めたナイに観客は戸惑う。
「な、何だあいつ……急に脱ぎ始めやがった」
「おいおい、いったい何のつもりだ?」
「男が脱いでも嬉しくねえぞ!!脱ぐならリーナの方だろ!!」
「やかましい!!茶化すんじゃないよ!!」
「我が娘に何を期待している!?」
「「「ひいいっ!?」」」
観客の野次に今度はテンとアッシュが同時に怒鳴り散らし、二人の迫力に観客は黙り込む。その一方でモモは心配そうに隣に座るヒナを揺さぶる。
「ねえねえ、ナイ君何をするつもりなのかな!?怪我しないといいけど……」
「お、お、落ち着きなさい!!私に聞かれても困るわよ!!」
「ふむ……どうやらまた何か仕出かそうとしてるみたいだね」
「アルトよ、彼が何をするつもりなのか分かるのか?」
「……見てのお楽しみですよ」
アルトの態度に隣に座るバッシュは気にかかるが、彼は不敵な笑みを浮かべた。ナイとアルトの付き合いは決して長くはないが、アルトはナイを信じていた。何故ならば彼は「英雄の器」だと信じているからである。
最初に会った時からアルトはナイが普通の人間ではないと勘付き、適当な理由を付けて彼を王城に招いて友人関係を築いた。今までにアルトは様々な人間と出会ったが、ナイ以上に不思議な人間はいなかった。
「肌がピリピリする……君、本当に強いんだね。僕も嬉しいよ」
「……ふうっ」
リーナは久々の強敵との戦闘に高揚感を抱くが、そんな彼女の言葉はナイの耳には届いていなかった。ナイは岩砕剣だけを構えると、まずは準備を行う。
(身体が持つと良いけど……やるしかない!!)
最初にナイは両手に「硬化」を発動させ、岩砕剣を握りしめる両手を固定する。硬化の技能は防御力を高めるだけではなく、使い方によっては動きを固定させることも可能だと気付いた。
これからナイはリーナの速さを超える速度で動くため、間違っても岩砕剣を手放さないようにまずは両手を固める。この状態から更に「剛力」を発動させ、両足の筋肉を強化した上で「跳躍」を発動する。
「――うおおおおおおっ!!」
雄叫びを上げながらナイはリーナに目掛けて突っ込んだ瞬間、大量の土煙が舞い上がる。ナイが飛び込んだ瞬間に凄まじい衝撃が大地に伝わり、20メートルも離れているリーナに目掛けて砲弾の如く突っ込んだ。
「えっ!?」
「やああっ!!」
自分を越える移動速度と飛距離で跳び込んできたナイにリーナは呆気に取られ、それでも反射的に槍を構えた。だが、そんな彼女に対してナイは岩砕剣を振りかざす。事前に硬化で両手を固定していたお陰で岩砕剣を手放さずに済み、全力の一撃をリーナに叩き込む。
「うおらぁっ!!」
「きゃああっ!?」
リーナは魔槍に岩砕剣が叩き込まれた瞬間、想像以上の衝撃を受けて吹き飛ぶ。地面を何度も横転しながら闘技場の壁際まで吹き飛ばされ、それを見たアッシュは焦りの声をあげる。
「リ、リーナ!?無事か!!」
「ううっ……」
『い、いけません!!リーナ選手、戦闘不能と見做して勝者は……えっ!?』
闘技場の壁まで吹っ飛ばされたリーナは意識を失ったのか動かず、それを見て彼女は戦闘不能だと判断したアリアは試合終了を宣言しようとした。だが、攻撃をしかけたナイも同時に倒れ込む。
「はあっ、はあっ……!?」
『ナイ選手も倒れた!?これはいったいどういうことでしょうか!!』
「あ、あの馬鹿……技能を使いすぎたんだ!!それで肉体が限界を迎えたんだ!!」
「ええっ!?」
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「何だって!?」
「……アルトよ、残念だが岩砕剣はあの子には渡せんぞ」
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