357 / 1,110
旋斧の秘密
第347話 ハマーンの推察
しおりを挟む
――王城に到着すると、すぐにアルトは研究室の方へ向かい、事前に机の上に置いていた「岩砕剣」をハマーンに見せた。机の上に置かれた岩砕剣を見た途端、ハマーンは目を見開く。
「ハマーン技師、これを見てください」
「おお、これは……岩砕剣か!?儂も見るのは初めてだぞ!!」
「やはり、御存じでしたか」
岩砕剣を見てハマーンは驚いた声を上げ、実際に見るのは彼も初めてではあるが存在自体は知っていた。文献にも記載されている魔剣であり、彼は岩砕剣を覗き込んで興奮した様子でアルトに問う。
「アルト王子、これを何処で手に入れたのだ!?」
「実は王城の訓練用の武器として保管されていたんです。今まで誰も正体に気付けなかったのは外側の部分が岩石のように練り固められた土砂で覆われ、誰も気づく事ができませんでした」
「なんと!?この城に保管されていたというのか!!」
「あ、重いから気を付けて下さい」
ハマーンは岩砕剣に手を伸ばすと、ナイは慌てて注意する。しかし、そんなナイの心配とは裏腹にハマーンは老人とは思えぬ腕力で軽々と岩砕剣を持ち上げた。
「ふんっ、黄金級冒険者を舐めるでない。これぐらいの重さの武器ならば簡単に持ち上げられるわい!!」
「うわっ……凄い」
「ハマーン技師のレベルは50を軽く超えているからね。いや、60だったかな?」
「正確に言えば58ですぞ……なるほど、確かにこれは使い手を選びそうな武器じゃ」
岩砕剣を持ち上げたハマーンはその場で素振りを行い、重量を確かめた後に今度は刃に視線を向けた。刃毀れは一切存在せず、並の剣士ではまともに扱えない重量だと知ると、彼は机の上に下ろす。
どこからともなくハマーンは鉄槌を取り出すと、刃に向けて全力で叩き込む。しかし、どれほど強く叩いても岩砕剣の刃は凹みもせず、硬度も耐久力も普通の魔剣と比べても圧倒的に高い事を見抜く。
「何という硬さ……確か文献によれば岩砕剣は地属性の魔力に反応して重量を増やすというが」
「それは本当です。ここにいるナイ君が試した所、地属性の魔力を送り込む程に重くなりました」
「なるほど、既に試していたか……しかし、それだけではないはずじゃ。この魔剣にはまだ秘密が隠されているはず」
アルトから岩砕剣が能力を発動した時の状態を確認すると、ハマーンは岩砕剣を再び持ち上げ、実際の能力を発動する状態を確認するためにナイに顔を振り向く。
「坊主、悪いがこの魔剣の能力を使用してくれるか?」
「え?でも……」
「ナイ君、先生の言う通りにしてくれ……そうだな、ここで使うと危険だから外に行こうか」
「うむ」
ハマーンからナイは岩砕剣を受け取ると、研究室で能力を使用すると危険のため、裏庭の方に移動を行う。ナイは二人の前で岩砕剣を構え、魔法腕輪に装着した地属性の魔石に意識を集中させる。
「じゃあ、行くよ?」
「ああ、怪我をしない様に気を付けてくれ」
「うむ……岩砕剣の力、とくと見せてくれ」
二人の許可を得るとナイは岩砕剣を上段に構え、地属性の魔力を送り込む前に剛力を発動させる。素の状態でも岩砕剣を持ち上げる事は出来るが、地属性の魔力を送り込む場合は重量が増加して支えきれずに取りこぼす可能性もあった。
剛力で腕力を強化すると、ナイは覚悟を決めて地属性の魔力を岩砕剣に送り込む。自分の限界まで刃の重量を増加させると、地面に目掛けて全力で振り下ろす。
「はぁあああっ!!」
「ぬおっ!?」
「うわっ!?」
勢いよく地面に岩砕剣が振り下ろされると、刃が振り下ろされた箇所にクレーターが出来上がった。その光景を見てハマーンは目を見開き、一方でナイの方も奇妙な感覚を抱く。
「今のは……?」
「な、何事ですか!?」
「敵襲……いや、違った」
騒ぎを聞きつけたのか何処からともなくヒイロとミイナが駆けつけ、二人とも現在は他の騎士団と共に合同訓練中のはずだが、何故か木箱を運んでいた。そしてどちらも裏庭で剣を振り下ろすナイを見て驚く。
「ナ、ナイさん!?いったい何をしてるんですか!?」
「また王子の変な実験に付き合わされてた?」
「こらこら、変な実験とは何だい。これもれっきとした研究だよ」
「そういう二人こそどうしたの?その木箱は……」
ヒイロとミイナは駆け寄ると、ナイは二人が運んでいる木箱を確認して薬の類が入っている事に気付く。二人は訓練をしていると聞いていたが、どうやら荷物を運びを命じられていたらしい。
「あ、実は訓練中に怪我をした人間の治療のための薬をイシ医師から受け取って運ぶ際中だったんです」
「イシイシ?」
「イシ、医師です!!」
「私達、訓練の時にやり過ぎて罰として雑用を命じられた」
「おやおや、また何かやらかしちゃったのかい?」
二人とも他の騎士団の訓練中に問題を起こしたらしく、その罰も兼ねて雑用を任せられたという。だが、そんな二人を無視してハマーンは地面に出来上がったクレーターを確認して疑問を抱く。
「ハマーン技師、これを見てください」
「おお、これは……岩砕剣か!?儂も見るのは初めてだぞ!!」
「やはり、御存じでしたか」
岩砕剣を見てハマーンは驚いた声を上げ、実際に見るのは彼も初めてではあるが存在自体は知っていた。文献にも記載されている魔剣であり、彼は岩砕剣を覗き込んで興奮した様子でアルトに問う。
「アルト王子、これを何処で手に入れたのだ!?」
「実は王城の訓練用の武器として保管されていたんです。今まで誰も正体に気付けなかったのは外側の部分が岩石のように練り固められた土砂で覆われ、誰も気づく事ができませんでした」
「なんと!?この城に保管されていたというのか!!」
「あ、重いから気を付けて下さい」
ハマーンは岩砕剣に手を伸ばすと、ナイは慌てて注意する。しかし、そんなナイの心配とは裏腹にハマーンは老人とは思えぬ腕力で軽々と岩砕剣を持ち上げた。
「ふんっ、黄金級冒険者を舐めるでない。これぐらいの重さの武器ならば簡単に持ち上げられるわい!!」
「うわっ……凄い」
「ハマーン技師のレベルは50を軽く超えているからね。いや、60だったかな?」
「正確に言えば58ですぞ……なるほど、確かにこれは使い手を選びそうな武器じゃ」
岩砕剣を持ち上げたハマーンはその場で素振りを行い、重量を確かめた後に今度は刃に視線を向けた。刃毀れは一切存在せず、並の剣士ではまともに扱えない重量だと知ると、彼は机の上に下ろす。
どこからともなくハマーンは鉄槌を取り出すと、刃に向けて全力で叩き込む。しかし、どれほど強く叩いても岩砕剣の刃は凹みもせず、硬度も耐久力も普通の魔剣と比べても圧倒的に高い事を見抜く。
「何という硬さ……確か文献によれば岩砕剣は地属性の魔力に反応して重量を増やすというが」
「それは本当です。ここにいるナイ君が試した所、地属性の魔力を送り込む程に重くなりました」
「なるほど、既に試していたか……しかし、それだけではないはずじゃ。この魔剣にはまだ秘密が隠されているはず」
アルトから岩砕剣が能力を発動した時の状態を確認すると、ハマーンは岩砕剣を再び持ち上げ、実際の能力を発動する状態を確認するためにナイに顔を振り向く。
「坊主、悪いがこの魔剣の能力を使用してくれるか?」
「え?でも……」
「ナイ君、先生の言う通りにしてくれ……そうだな、ここで使うと危険だから外に行こうか」
「うむ」
ハマーンからナイは岩砕剣を受け取ると、研究室で能力を使用すると危険のため、裏庭の方に移動を行う。ナイは二人の前で岩砕剣を構え、魔法腕輪に装着した地属性の魔石に意識を集中させる。
「じゃあ、行くよ?」
「ああ、怪我をしない様に気を付けてくれ」
「うむ……岩砕剣の力、とくと見せてくれ」
二人の許可を得るとナイは岩砕剣を上段に構え、地属性の魔力を送り込む前に剛力を発動させる。素の状態でも岩砕剣を持ち上げる事は出来るが、地属性の魔力を送り込む場合は重量が増加して支えきれずに取りこぼす可能性もあった。
剛力で腕力を強化すると、ナイは覚悟を決めて地属性の魔力を岩砕剣に送り込む。自分の限界まで刃の重量を増加させると、地面に目掛けて全力で振り下ろす。
「はぁあああっ!!」
「ぬおっ!?」
「うわっ!?」
勢いよく地面に岩砕剣が振り下ろされると、刃が振り下ろされた箇所にクレーターが出来上がった。その光景を見てハマーンは目を見開き、一方でナイの方も奇妙な感覚を抱く。
「今のは……?」
「な、何事ですか!?」
「敵襲……いや、違った」
騒ぎを聞きつけたのか何処からともなくヒイロとミイナが駆けつけ、二人とも現在は他の騎士団と共に合同訓練中のはずだが、何故か木箱を運んでいた。そしてどちらも裏庭で剣を振り下ろすナイを見て驚く。
「ナ、ナイさん!?いったい何をしてるんですか!?」
「また王子の変な実験に付き合わされてた?」
「こらこら、変な実験とは何だい。これもれっきとした研究だよ」
「そういう二人こそどうしたの?その木箱は……」
ヒイロとミイナは駆け寄ると、ナイは二人が運んでいる木箱を確認して薬の類が入っている事に気付く。二人は訓練をしていると聞いていたが、どうやら荷物を運びを命じられていたらしい。
「あ、実は訓練中に怪我をした人間の治療のための薬をイシ医師から受け取って運ぶ際中だったんです」
「イシイシ?」
「イシ、医師です!!」
「私達、訓練の時にやり過ぎて罰として雑用を命じられた」
「おやおや、また何かやらかしちゃったのかい?」
二人とも他の騎士団の訓練中に問題を起こしたらしく、その罰も兼ねて雑用を任せられたという。だが、そんな二人を無視してハマーンは地面に出来上がったクレーターを確認して疑問を抱く。
10
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる