貧弱の英雄

カタナヅキ

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旋斧の秘密

第345話 ハマーンとアルトの関係

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「ほう、あの者が戦うのか……どう思う、ガオウよ?」
「……あんまり強そうには見えないな」


ハマーンとガオウはどちらも一流の武人であり、一目見ただけで大抵の相手の力量を推し量る事ができた。だが、二人の優れたでもナイを見て違和感を抱く。


(強そうには見えぬ、か……だが、弱いとも思えんな)


二人ともナイを見ても最初はただの少年にしか見えなかったが、何処となく普通の人間とは異なる雰囲気を感じ取った。とても彼が一流の武人のようには見えないが、かといって素人にも思えない。

ここでハマーンが気になったのは少年が装備している武器と防具だった。少年が持っている斧と剣が組み合わさったような奇怪な武器を見てハマーンは興味を抱き、更に彼が身に着けている盾を見て目を見開く。


(馬鹿な、あれはまさか……反魔の盾か!?)


ハマーンは少年が身に着けている盾を一目見ただけで「反魔の盾」だと見抜いた。彼自身は反魔の盾を見る事は初めてだが、ありとあらゆる文献を読み漁って魔道具の知識を得たハマーンは少年の身に着けている盾の正体を見抜く。


(間違いあるまい、黒く塗装しておるがあれは反魔の盾じゃ……という事はまさか、彼奴が噂の魔牛殺しかっ!!)


鍛冶師としても超一流のハマーンは直感で少年が身に着けている盾が本物の反魔の盾である事を見抜き、鍛冶師としての血が騒ぐ。反魔の盾は100年以上も前に国中から集められた名工が協力して作り出した代物だと聞いており、その価値は計り知れない。

国宝級とも言える盾を身に付けた少年を見て、素k沿い前にミノタウロスを殺した少年の噂をハマーンは思い出す。城下町では街中で暴れていたミノタウロスを討ち取った少年が凄い武器と盾を所有しているという話が広まっており、すぐにハマーンはクロノの正体が例の噂の「魔牛殺し」だと気付く。


「爺さん、どうかした?さっきから凄い顔をしてるけど……」
「……いや、何でもない。お主の方こそあの少年が気になるのか?」
「まあな……あんな奴は初めてだよ」


ハマーンだけではなく、ガオウの方もナイの事が気になるらしく、彼の場合はナイの装備よりも彼自身の事が気になった。とても強そうには見えないが、何故かガオウは彼から目が離せない。

二人が話し合っている間にも戦闘が始まり、ナイはトロールに向けて攻撃を行う。この際に旋斧の刃がトロールの腹に食い込んだ様子を見てハマーンは感心した声を上げる。


「ほう、あの小僧……中々の怪力だな。あれほどトロールの腹に刃を食い込ませるなど、並の剣士では出来んぞ」
「だが、力不足だな。あの程度の攻撃だと……ほら、弾かれた」


ナイの全力の一撃を受けてもトロールには傷一つ付かず、その様子を見てガオウは少し興味が失せた様に背もたれに背中を預ける。一方でハマーンの方はナイがトロールの腕を反魔の盾で弾き返した光景を見て騒ぐ。


「おおっ!!やはりそうか、あの盾は……!!」
「爺さん?」
「いや、何でもない……ほれ、そろそろ試合の決着が付きそうだぞ」


急に騒ぎ立てるハマーンに対してガオウは驚いた声を上げるが、この直後にナイはトロールに刺剣を差し込み、旋斧で止めを刺す。その光景を見た二人は驚き、少年がトロールを打ち倒した姿を見て冷や汗を流す。


「これは驚いたな……あの小僧、無傷で勝ったぞ」
「やるね……まあ、銀級冒険者ぐらいの実力はあるんじゃないか」
「手厳しいのう」


ナイが勝利した事にガオウは意外そうな表情を浮かべるが、すぐに元の態度に戻る。その一方でハマーンの方は少年の手にした武器と防具が気になっていると、ここで後ろから声を掛けられた。


「そこにいるのはもしかして……やはり、ハマーン殿じゃないか」
「ん?この声は……おお、アルト王子ではないか!?」
「アルト王子?」


ハマーンは振り返ると、そこにはアルトの姿が存在し、ガオウも驚いた表情を浮かべる。ハマーンはアルトを見ると笑みを浮かべ、すぐに握手を行う。


「はっはっはっ、久しぶりだな。元気にしておったか?」
「ハマーン殿も元気そうで何よりだ。一年ぶりぐらいかい?」
「うむ、最近は色々と忙しくてのう」
「……どうも、王子様。ガオウと申します」
「ガオウ?なるほど、君が噂の……初めまして、第三王子のアルトだ」


親し気にアルトと会話をするハマーンを見てガオウは驚くが、とりあえずは挨拶を行う。流石に相手が王族となるといつも通りの態度は取れず、彼は頭を下げた。

アルトはガオウの身に着けているバッジを見てすぐに彼の正体に気付き、改めて握手と自己紹介を行う。まさかこんな場所でアルトもハマーンと再会するとは思わず、嬉しそうに語り掛ける。




――実を言えばアルトが魔道具の職人を目指す事になったのはハマーンが原因であり、子供の頃に彼の仕事ぶりを見る機会が会ったアルトは彼に憧れ、彼に技術を教わっていた。
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