貧弱の英雄

カタナヅキ

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旋斧の秘密

第330話 レベル1です

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「僕のレベルは……1です」
「ん?すまん、よく聞こえなかったが……」
「レベルは1です」
「……んんっ?すまん、もう少し大きな声で言ってくれるか?十の位が聞こえなかったのだが……」
「レベル1です!!」


ナイが大きな声ではっきりと伝えると、その彼の返答を聞いて国王を筆頭に他の者達は驚愕の表情を浮かべた。だが、すぐに宰相が口を挟む。


「これ!!国王様に対して虚言を告げるとは何事か!!その齢でレベル1の人間がいるはずがあるまい!!」
「嘘じゃありません!!僕は生まれた時から異能のせいで日付が変更する毎に強制的にレベル1に戻されるんです!!」
「なっ……!?」
「そ、そんな異能があるんですの!?」


自分がレベル1である事をナイは伝えると、もう隠し立てはできないと判断してナイは首にかけていたペンダントを取り出す。これは陽光教会のヨウから受け取った代物であり、彼は水晶を照らして自分のステータスを表示した。

玉座の間の床に光の文章が表示され、ナイのステータスが全員の前で露になる。その光景を確認した者達は驚き、そこには確かに「レベル1」と表示されていた。ステータス画面を見せつけられてはナイの話を信じるしかなく、玉座の間に存在する人間は信じられない表情を浮かべる。


「た、確かにレベル1と記されていますわ!!」
「そんな馬鹿な……あれほどの力を持つ人間がレベル1だと?」
「いや、ちょっと待て……何だ、この技能の数は!?」
「す、凄い!!ナイ君、君はどうやってこれほどの技能を置覚えたんだい!?」
「腕力強化、怪力、剛力だと……なるほど、あの馬鹿げた腕力の秘密はこれだったのかい」


ナイのステータス画面を確認した者達は彼のレベルだけではなく、身に着けている技能の数を見て動揺を隠せず、ナイはため息を吐きながら自分の技能の項目の中で一番上に表示されている「貧弱」を指差す。


「僕が赤ん坊の時、森の中で捨てられている所を養父に拾われたんです。養父によると両親から残した手紙があったそうですけど、内容は誰かが僕を見つけても見捨てる様にと記されていました」
「そんな、酷い!?あんまりですわ!!」
「ううっ……辛かっただろう」
「何て親だ……赤ん坊を森の中に置いていくだけではなく、そんな手紙まで残すなんて」
「おのれ!!子供を何だと思っている!!許せんな、テン!!」
「全くだね、そいつらに親の資格はないよ!!」


小さい頃に赤ん坊の自分が森の中で捨てられていたことを話すとドリスとリンは涙ぐみ、バッシュは嫌悪感を露にして、アッシュとテンに至っては憤慨する。しかし、実の両親が自分を捨てた理由に関してはナイも予想ができた。


「実の両親はきっと俺が忌み子と呼ばれる存在だから捨てたんだと思います」
「忌み子!?そうか、そういう事だったか……」
「何と不憫な……」
「忌み子?忌み子とはどういう意味ですの?」
「聞いた事もないな……」


忌み子という言葉に宰相は納得した表情を浮かべ、マジクはナイに同情を抱く。だが、この時にドリスとリンは初めて聞く単語に首を傾げる。

どうやら忌み子の存在はあまり知られていないらしく、バッシュも疑問を抱いた表情を浮かべる。博識なアルトは忌み子についても把握しており、簡単に説明した。


「どんな人間でも生まれた時に異能を身に着けている……しかし、必ずしもその異能が有益な才能とは限らない。忌み子とは生まれた時に身に付けた技能が不利益を引き起こす可能性がある子供達を指す言葉だ」
「不利益なんて……そんな考え方、人道的ではありませんわ!!」
「落ち着け、ドリス……アルト、話を続けろ」


アルトの言葉にドリスは激高するが、彼に怒鳴った所で仕方がないため、バッシュは彼女を止めてアルトに忌み子の説明を続けさせる。


「忌み子として生まれた子供は陽光教会に預ける慣わしだと本で読んだ事があります。彼等は普通に生きる事は許されず、他の人間と接触を控える様に陽光教会は彼等を隔離すると記されてましたね」
「隔離って……」
「もしも忌み子が他の人間と子を為した場合、その子供が忌み子の技能を受け継ぐ可能性がある以上、彼等を普通の人間から離して生活させなければならない。まあ、昔と比べて忌み子の数が減ったので現在は殆ど忘れ去られた習慣ですが……」
「僕も一時期は陽光教会の元に世話になっていました。でも、今は教会を離れています。このペンダントは教会の司祭様から受け取りました」


ナイはペンダントを見つめて陽光教会では世話になったヨウの事を思い出し、彼女はナイが旅立つ日にこれを渡してくれた。このペンダントの水晶のお陰でナイはここまで強くなれたと言っても過言ではない。

自分の正体が忌み子である事を明かしたナイに対して他の者達は黙り込み、国王も神妙な表情を浮かべてナイが今日までどれほど苦労してきたのかを察する。
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