貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
336 / 1,110
旋斧の秘密

第326話 岩石の巨人

しおりを挟む
「発見された魔物の名前はゴーレム……皆も知っている通り、岩石で構成された魔人族だ」
「ゴーレム!?ゴーレムというと、あのゴーレムの事ですか?」
「ゴーレムがどうして火山地帯に……」


ゴーレムの存在は魔物の中でも有名であるため、この場に存在する全員が知っていた。王国内部でも山岳地帯に生息する種であり、一応は魔人族に分類されている種だった。ゴーレムは人型の岩石の化物としか表現できず、通常種の場合は3~4メートルほどの大きさを誇る。成人した巨人族とほぼ同じぐらい程度の大きさではあるが、危険度は赤毛熊よりも高い。

自分の縄張りを侵す存在は決して許さず、それが自分よりも強大な力を持つ魔物だろうと躊躇せずに襲い掛かる。しかも厄介な事にゴーレムは全身が頑強な岩石で構成されており、並の冒険者では手も足も出ない相手だった。


「グマグ火山で発見されたゴーレムの大きさは通常種の10倍近く……しかも火属性の魔石を喰らっていたらしい」
「10倍!?そんな巨大なゴーレムがあの火山に……!?」
「それに火属性の魔石を喰らっていた、だと?ゴーレムの主食は地属性の魔石ではないのか?」


基本的にはゴーレムは他の魔物と違って普通の食べ物は食さず、彼等が好物としているのは地属性の魔石などの魔力を帯びた鉱石である。ゴーレムは魔力を宿した鉱石を大の好物としており、そのために良質な地属性の魔石が手に入りやすい山岳地帯などに生息している。


「報告によればグマグ火山で発見された大型ゴーレムは火口付近で採掘できる火属性の魔石を喰らい、魔石から魔力を吸収した後にマグマに吐き出しているらしい」
「マグマに吐き出した?それは本当ですか?」
「アルトよ、何か気になるのか?」


宰相の話を聞いていたアルトは驚愕の表情を浮かべ、その反応に国王は不思議に思って尋ねると、彼はゴーレムの行動に疑問を抱く。


「いえ……実は魔力を失った魔石は普通の場合は脆くなって使い物になりませんが、ある条件を満たすと魔力を取り戻す場合もあります。例えば火属性の魔石の場合は炎などで長時間燃やし続けていれば極稀に魔力を取り戻す場合もあるのです」
「それは真か?」
「はい、最も燃やし続けるにしても相当な時間が必要になりますし、仮に1日中燃やし続けたとしても取り戻せる魔力はほんの僅か……正直、効率が悪すぎて誰も真似はしません」
「なるほどな」


アルトの言葉を聞いて国王は納得したように頷き、まさか魔力を失った魔石を元に戻す方法があるのかと思ったが、そんなに上手い話はない事に少し残念に思う。だが、今回の場合は重要なのはゴーレムの行動だった。


「ですが、溶岩の場合ならば話は別です。魔力を失った魔石を溶岩の中に沈めれば炎で炙るよりも魔力を吸収しやすい可能性もあります」
「何だと?炎と溶岩ではどう違う?」
「炎で魔石を燃やす場合、炎を吸収する事で魔力を取り戻します。しかし、そのためには常に炎を燃やし続けなければなりません。ですが、火山の場合は火口の中に沈めてしまえば常に魔石は溶岩の熱を受け続けます。しかも溶岩は普通の炎とは異なり、高密度の火属性の魔力を宿しています。実際に火山などで良質な火属性の魔石が採取しやすいのは溶岩の影響が大きいでしょう」
「という事は……炎で炙るよりも溶岩に沈めた方が魔石の魔力は戻りやすいというのか?」
「はい、それをその大型ゴーレムが理解した上で行っているのかは分かりませんが……この方法ならば一度吸いつくした魔石も魔力を取り戻し、再び吸収する事ができます」


アルトの言葉に他の者達は黙り込み、まさか魔物のゴーレムが魔石に魔力を取り戻す方法を知って実践しているとは思えない。しかし、状況的に考えても大型ゴーレムは火属性の魔石を吸収した後、溶岩に放り込む事で魔石の魔力を取り戻そうとしているようにしか思えない。

この方法ならば何度魔石を喰らおうと、溶岩によって魔力が回復した魔石を再び喰らう事ができる。いくらでも魔石の魔力を吸収しては溶岩に浸からせ、再び吸収してはまた元に戻す。溶岩が尽きない限りは何度でも大型ゴーレムは魔石を喰らい続ける事ができる。


「ゴーレムは魔石の魔力を吸収すればするほどに力を増し、また能力も変化すると聞きます。恐らく、そのゴーレムは火山の魔石を喰らって急成長を遂げたのでしょう」
「だが、どうして火属性の魔石なんだ?通常のゴーレムは地属性の魔石を好むのではないのか?」
「宰相、そのゴーレムはどのような色をしていたのか聞いていますか?通常種のゴーレムは土気色ですが、大型ゴーレムの場合は違う色だったのでは?」
「む?そういえば……確かに普通のゴーレムとは色合いが違うと言っていたような気がするが……赤褐色と言っていましたかな」
「やはり……」


アルトは「赤褐色」という言葉に確信を抱き、大型ゴーレムの正体を見抜いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...