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旋斧の秘密
第319話 居合
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「私の俊足から逃れられると思うな!!」
「くっ!?」
リンはどうやら脚力強化系の技能の「俊足」を習得しているらしく、まだナイも覚えていない技能だった。まるで獣人族並の身軽さと速度でリンはナイに接近すると、刃を放つ。
「はっ!!」
「うわっ!?」
金属音が鳴り響き、ナイの手にしていた岩石剣に僅かながら傷跡が走った。ミイナの全力の一撃を受けても掠り傷さえ負わなかった岩石剣だが、リンの一撃の鋭さに誰もが驚く。
どうにか岩石剣を盾代わりにして攻撃を防ぐ事に成功したが、即座にリンは後方へ跳ぶと大太刀を鞘に戻し、再び距離を詰めてくる。その様子を見てナイは大剣を構えて彼女の攻撃に備える。
「どうした!?防ぐだけでは私に勝てないぞ!!」
「くくっ!?」
「リン副団長、やり過ぎです!!」
「訓練だって忘れてる……?」
「ま、まずいですよ!!」
リンはナイが岩石剣を扱うための訓練である事を忘れているのか、先ほどから全力で攻撃を繰り出している。それを見ていたヒイロとミイナは声を掛けるが、彼女には聞こえていない様子だった。
(このままだとまずい!!何とか対抗手段を考えないと……でも、どうすればいいんだ!?)
攻撃を受けながらもナイはリンの様子を伺い、彼女は必ず攻撃を仕掛ける際は大太刀を鞘に戻した状態から一気に引き抜く事に気付く。これまでの攻撃も全て鞘から刃を抜く動作でしか攻撃をしていない事を思い出す。
(もしかしたら……よし、やるしかない!!)
ナイはリンが攻撃を受けて大太刀を戻す際、彼女が距離を取ろうと後方へ移動した瞬間を狙い、攻撃を仕掛ける事に決めた。もしもリンが攻撃を仕掛ける際に大太刀を必ず鞘に戻さなければならないのであれば、その鞘に刃を戻す前の段階で攻撃を仕掛ければ倒せる可能性もある。
幾度もリンの鋭い斬撃を受けた事で岩石剣の表面にはいくつもの傷跡が残り、これ以上に攻撃を受ければ武器が持たない可能性もあった。それを考慮してナイはこれ以上に攻撃を受ける前に仕掛ける事にした。
「そろそろ終わらせるぞ……はあっ!!」
「っ……!!」
今日一番の強烈な斬撃が岩石剣に的中し、この際にナイは攻撃を受けて踏ん張りながらもリンの様子を伺う。彼女は予想通り、後ろに跳んで大太刀に鞘を戻そうとしていた。
(ここしかない!!)
ナイは剛力を発動させ、脚力を強化するとリンの元へ飛び込む。普通の人間からすればナイがまるで瞬間移動したかのようにリンに近付いた様に見えただろう。
「はああっ……!?」
「――かかったな」
しかし、ナイが距離を詰めてきた瞬間、リンは口元に笑みを浮かべながら鞘に戻そうとしていたはずの大太刀を右手のみで上段に構えていた。左手は鞘を抑えた状態であるため、ナイは最初は彼女が鞘に刃を戻そうとしていたように錯覚していた。
リンは先ほどから攻撃を繰り返しては鞘に刃を戻す動作を見せつけたのは、ナイを近づかせるための罠であり、最初から彼女はナイが接近してくるのを狙っていた。自分が攻撃を仕掛ける際は必ず鞘に刃を戻すと思わせ、それに嵌まったナイはまんまとリンと距離を詰める。
「楽しめたぞ、少年!!」
「ぐはぁっ!?」
「ナイ君!?」
「ナイ!?」
「そんなっ!?」
振り下ろされた大太刀の柄がナイの頭部に的中し、その一撃によってナイの身体は傾く。その様子を見ていた者達は悲鳴を上げるが、ここで勝利を確信していたリンは違和感を抱く。
(何だ、この感触は……!?)
リンはナイの頭を打ちこんだ際、異様な硬さを感じた。まるで岩石に対して柄を叩き込んだような感覚に陥り、石頭という表現では生ぬるいほどにナイの頭部は硬かった。
更に頭部に衝撃を受けたはずのナイは頭から血を流しながらも目を見開き、リンに向けて岩石剣を振りかざす。それを見たリンは目を見開き、まだ反撃を諦めていないナイに驚く。
「がああっ!!」
「くっ……このぉっ!!」
「がふっ!?」
岩石剣を振り払う前に咄嗟にリンは左手の鞘を利用し、彼の顎に叩き込む。二度も頭部に衝撃を受けたナイは白目を剥くが、それでも彼の闘争本能は身体を動かした。
「あああっ!!」
「ぐはぁっ!?」
「やった!?」
「そんな、まさか副団長が!?」
「有り得ない!!」
遂にナイの振り払った岩石剣がリンに的中し、彼女は派手に吹き飛ばされた。その様子を見ていたヒイロとミイナは声を上げ、団員達は信じられない表情を浮かべる。
しかし、吹き飛ばされたと思われたリンは身体を転ばせながらも闘技台へと踏み止まり、彼女は苦痛の表情を浮かべながらも脇腹を抑えて立ち上がる。そして異様な形にへし曲がった鞘に視線を向け、冷や汗を流す。
(危なかった……咄嗟に鞘を盾にしたお陰で助かった)
リンは攻撃が当たる寸前、鞘を犠牲にして自分も吹き飛ばされる方向に向けて跳んでいた事が幸いし、ナイの一撃をまともに喰らわずに済んだ。もしも一瞬でも判断が遅かったら彼女は間違いなく闘技台の外まで飛ばされていただろう。
「くっ!?」
リンはどうやら脚力強化系の技能の「俊足」を習得しているらしく、まだナイも覚えていない技能だった。まるで獣人族並の身軽さと速度でリンはナイに接近すると、刃を放つ。
「はっ!!」
「うわっ!?」
金属音が鳴り響き、ナイの手にしていた岩石剣に僅かながら傷跡が走った。ミイナの全力の一撃を受けても掠り傷さえ負わなかった岩石剣だが、リンの一撃の鋭さに誰もが驚く。
どうにか岩石剣を盾代わりにして攻撃を防ぐ事に成功したが、即座にリンは後方へ跳ぶと大太刀を鞘に戻し、再び距離を詰めてくる。その様子を見てナイは大剣を構えて彼女の攻撃に備える。
「どうした!?防ぐだけでは私に勝てないぞ!!」
「くくっ!?」
「リン副団長、やり過ぎです!!」
「訓練だって忘れてる……?」
「ま、まずいですよ!!」
リンはナイが岩石剣を扱うための訓練である事を忘れているのか、先ほどから全力で攻撃を繰り出している。それを見ていたヒイロとミイナは声を掛けるが、彼女には聞こえていない様子だった。
(このままだとまずい!!何とか対抗手段を考えないと……でも、どうすればいいんだ!?)
攻撃を受けながらもナイはリンの様子を伺い、彼女は必ず攻撃を仕掛ける際は大太刀を鞘に戻した状態から一気に引き抜く事に気付く。これまでの攻撃も全て鞘から刃を抜く動作でしか攻撃をしていない事を思い出す。
(もしかしたら……よし、やるしかない!!)
ナイはリンが攻撃を受けて大太刀を戻す際、彼女が距離を取ろうと後方へ移動した瞬間を狙い、攻撃を仕掛ける事に決めた。もしもリンが攻撃を仕掛ける際に大太刀を必ず鞘に戻さなければならないのであれば、その鞘に刃を戻す前の段階で攻撃を仕掛ければ倒せる可能性もある。
幾度もリンの鋭い斬撃を受けた事で岩石剣の表面にはいくつもの傷跡が残り、これ以上に攻撃を受ければ武器が持たない可能性もあった。それを考慮してナイはこれ以上に攻撃を受ける前に仕掛ける事にした。
「そろそろ終わらせるぞ……はあっ!!」
「っ……!!」
今日一番の強烈な斬撃が岩石剣に的中し、この際にナイは攻撃を受けて踏ん張りながらもリンの様子を伺う。彼女は予想通り、後ろに跳んで大太刀に鞘を戻そうとしていた。
(ここしかない!!)
ナイは剛力を発動させ、脚力を強化するとリンの元へ飛び込む。普通の人間からすればナイがまるで瞬間移動したかのようにリンに近付いた様に見えただろう。
「はああっ……!?」
「――かかったな」
しかし、ナイが距離を詰めてきた瞬間、リンは口元に笑みを浮かべながら鞘に戻そうとしていたはずの大太刀を右手のみで上段に構えていた。左手は鞘を抑えた状態であるため、ナイは最初は彼女が鞘に刃を戻そうとしていたように錯覚していた。
リンは先ほどから攻撃を繰り返しては鞘に刃を戻す動作を見せつけたのは、ナイを近づかせるための罠であり、最初から彼女はナイが接近してくるのを狙っていた。自分が攻撃を仕掛ける際は必ず鞘に刃を戻すと思わせ、それに嵌まったナイはまんまとリンと距離を詰める。
「楽しめたぞ、少年!!」
「ぐはぁっ!?」
「ナイ君!?」
「ナイ!?」
「そんなっ!?」
振り下ろされた大太刀の柄がナイの頭部に的中し、その一撃によってナイの身体は傾く。その様子を見ていた者達は悲鳴を上げるが、ここで勝利を確信していたリンは違和感を抱く。
(何だ、この感触は……!?)
リンはナイの頭を打ちこんだ際、異様な硬さを感じた。まるで岩石に対して柄を叩き込んだような感覚に陥り、石頭という表現では生ぬるいほどにナイの頭部は硬かった。
更に頭部に衝撃を受けたはずのナイは頭から血を流しながらも目を見開き、リンに向けて岩石剣を振りかざす。それを見たリンは目を見開き、まだ反撃を諦めていないナイに驚く。
「がああっ!!」
「くっ……このぉっ!!」
「がふっ!?」
岩石剣を振り払う前に咄嗟にリンは左手の鞘を利用し、彼の顎に叩き込む。二度も頭部に衝撃を受けたナイは白目を剥くが、それでも彼の闘争本能は身体を動かした。
「あああっ!!」
「ぐはぁっ!?」
「やった!?」
「そんな、まさか副団長が!?」
「有り得ない!!」
遂にナイの振り払った岩石剣がリンに的中し、彼女は派手に吹き飛ばされた。その様子を見ていたヒイロとミイナは声を上げ、団員達は信じられない表情を浮かべる。
しかし、吹き飛ばされたと思われたリンは身体を転ばせながらも闘技台へと踏み止まり、彼女は苦痛の表情を浮かべながらも脇腹を抑えて立ち上がる。そして異様な形にへし曲がった鞘に視線を向け、冷や汗を流す。
(危なかった……咄嗟に鞘を盾にしたお陰で助かった)
リンは攻撃が当たる寸前、鞘を犠牲にして自分も吹き飛ばされる方向に向けて跳んでいた事が幸いし、ナイの一撃をまともに喰らわずに済んだ。もしも一瞬でも判断が遅かったら彼女は間違いなく闘技台の外まで飛ばされていただろう。
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