貧弱の英雄

カタナヅキ

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旋斧の秘密

第315話 大型魔獣用武器

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「流石に僕としてもナイやリーナには怪我をしてほしくないから真剣で戦わせるわけにはいかない。あ、この場合の真剣は真面目に戦うとかいう意味じゃなくて、本物の真剣という意味だからね」
「それぐらいは分かるよ……」
「ですけど、訓練用の武器で戦うとしてもナイさんが満足に戦える武器があるかどうか……」
「待って……そういえば前にテンから聞いた事がある。若い頃からテンがよく訓練で利用していた武器があるって」
「え?」


テンはナイと同じく「剛剣」の使い手のため、彼女が若い頃に利用していたという武器ならばナイが満足する武器として扱える可能性もあった――





――とりあえずはテンが利用していたという武器の確認のため、城内の訓練場に向かうと、そこでは銀色の鎧兜を纏った女性兵が訓練を行っていた。指導を行っているのは銀狼騎士団の副団長であるリンであり、彼女はナイ達に気付くと訓練を中断させる。


「これはアルト王子様……どうかされましたか?」
「やあ、リン副団長。邪魔をして悪かったね……ちょっと君に聞きたいことがあるんだが、テン指導官が現役時代に利用していた訓練用の武器について何か心当たりはないかい?」
「テン指導官の……?」


リンはテンの事を尊敬しており、彼女が女騎士を志したのも現役時代のテンに憧れたからである。そのため、テンに関わる事ならば彼女が何か知っているのではないかと思ってアルトは尋ねると、すぐにリンは心当たりがあるのか思い出したように呟く。


「ああ、そういえば一つだけありましたね。テン指導官が訓練を行う時、よく利用される武器ならばありますが……いや、あれを武器と呼んでいいべきか」
「ほう、それは木になるね。ここへ持ってきてくれると嬉しいんだけど」
「分かりました。お前達、早く持ってこい!!」
「「「はっ!!」」」


ナイはリンの言い回しに気にかかるが、アルトは実物を見せるように頼むと、すぐにリンは部下達に命じてテンが訓練の際に利用する武器を運び込ませる。

運び込まれた武器は女性兵が5人がかりで持ち込み、しかも外見は武器というよりは岩の塊のような代物だった。テンが好んで扱う大剣のように非常に大きな剣だった。


「こちらは元々は対大型魔物用の武器として開発された「岩石剣」と呼ばれる代物です。見ての通り、特殊な岩石を剣の形に削り込んで柄を埋め込んだ代物です」
「こ、これが剣なのですか?どう見ても岩の塊にしか見えないのですが……」
「重たそう……」
「これは剣……と呼べる代物なのかどうか」
「うわぁっ……」


ナイ達は運び込まれた岩石製の大剣を見て冷や汗を流し、アルトでさえもこれを武器として認める事に難色を示す。リンの言う通りに剣の形をした岩石に柄を埋め込んだようにしか見えず、しかも王国騎士が数人がかりで持ち上げる代物らしい。

退魔刀も相当な重量を誇るが、こちらの岩石剣なる武器はそれ以上に重量を誇り、試しにこの中ではナイに次いで腕力には自信があるミイナが持ち上げようとするが、彼女でも両手で持ち上げるのが精いっぱいできつそうな表情を浮かべる。


「う~ん……重い、これを武器として扱うのはきつい」
「いや、持ち上げるだけでも大した物だ。テン指導官でさえも最近はこれを持ち出す事はなくなったからな」
「ナイ君、どうだい?武器として扱えそうかい?」
「う~ん、ちょっと貸してみてくれる?」
「分かった」


ナイはミイナから岩石剣を受け取ると、その重量を実感して驚いた表情を浮かべる。退魔刀よりも重量は重く、少しでも気を抜くと落としそうになるため、剛力を発動させて持ち上げた。


「くぅっ……ちょっと重いけど、扱えなくはないかな」
「本当かい?それは凄いね、流石はナイ君だ」
「なっ!?まさかテン指導官以外にその武器を扱える者がいたとは……」
「ふうっ……でも、持ち続けるのはきついな」


剛力を発動させれば岩石剣を扱えなくもない事は判明したが、常に剛力を発動させた状態だと体の負担が大きいため、ナイは岩石剣を下ろす。この際に地面に下ろしただけで刃の先端が地中に埋まり、その様子を見ていた者達は唖然とする。


「あ、あんな重い武器を持ち上げるなんて……」
「流石は魔牛殺し……」
「もしかしたらテン指導官よりも力持ちじゃないのか……」
「聞こえているぞ、私語は慎め!!」


銀狼騎士団の騎士達はナイの力を見せつけられて動揺して囁き合うが、その声を聞きつけたリンが注意を行う。その一方でアルトの方は岩石剣を覗き込み、虫眼鏡を使用して細部を調べる。


「ふむ、一見するとただの岩のようしか見えないが……ミイナ、君の如意斧でおもいっきり叩いてくれるかい?」
「えっ?」
「……いいの?」


アルトの言葉にナイは呆気に取られ、声を掛けられたミイナも不思議そうな表情を浮かべるが、アルトは本気で言っているのか頷く。
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