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旋斧の秘密
第276話 旋斧の解析
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「そうか、それなら良かったよ。あの時は手持ちの道具だけで調整したから、不備がないか心配してたからね。なんならもう少し調整しようかと思っていたけど……」
「それは助かるけど……その前にちょっと相談したい事があるんだけど」
「相談?」
ナイはここへ赴いた理由はビャクのお礼のためだけではなく、今現在の自分の状況に関して詳しく語る。王都に噂が広まったせいで現在は泥棒による被害を受けている事、このままでは王都を出なければならない事を伝えると、アルトは腕を組んで考え込む。
「ふむ、なるほど……そんな事になっていたのか。兄上も少々詰めが甘いな、反魔の盾を託しながら口止めを忘れるとは。今回の噂の出所は間違いなく、ナイと兄上の戦闘を見ていた城内の人間の仕業だろうね。そういう理由なら僕も力を貸すよ。だけど、その代わりに僕の頼みをひとつ聞いてくれるかい?」
「条件?」
王子であるアルトが協力してくれるのならば心強いが、彼が出す条件という言葉にナイは喉を鳴らし、どのような条件を出してくるのだろうと緊張する。すると、アルトはナイが持って来た旋斧を指差す。
「君が持っているその旋斧という名前の武器、それを調べさせてほしい」
「えっ……これを?」
「ああ、僕はこう見えても魔道具に関する知識に関してはこの国の学者よりも詳しいと自負している。だけど、君が持っているその旋斧という武器に関しては全く心当たりがないんだ」
アルトによると彼は国内で作り出された魔道具の類はほぼ全て知り尽くしているという。しかし、ナイが所有する旋斧に関しては彼も知らない代物らしい。
そもそも旋斧が魔道具の類かどうかも判明しておらず、旋斧は元々はナイの養父のアルの家系に伝わる武器である。彼によれば100年以上前に作り出された歴史ある武器らしく、実際に特別な能力を宿している事は確かだった。
「ヒイロとミイナから直接話を聞いたんだが、その旋斧という武器で君はガーゴイル亜種を倒した時、刃を赤く光り輝かせたという話は聞いているよ。その時の詳しい状況を教えてくれるかい?」
「それは……」
質問されたナイは困り果て、ガーゴイル亜種との戦闘で彼の旋斧が唐突に赤色に発熱した事に関してはナイ自身も良く分かっていない。だが、旋斧が変化した途端に攻撃力が増してガーゴイル亜種を倒せた事は間違いない。
「あの時、ガーゴイル亜種が口元から炎を放とうとしたと思う。だから咄嗟に旋斧を口元にねじ込んでそれを阻止しようとしたら、急に旋斧が炎を吸収して赤く変化したというか……熱を帯びた気がする」
「なるほど、炎を吸収か……」
「王子、何か心当たりがある?」
「いや……ガーゴイルの中には内臓されている魔石によって炎や氷の吐息《ブレス》を放つ種がいると聞いた事がある。恐らく、ナイ君が倒したガーゴイル亜種とやらも炎の吐息を放とうとしたんだろう」
ガーゴイルの中には吐息と呼ばれる特殊な攻撃を行う個体も存在し、ナイが戦ったガーゴイル亜種は炎の吐息を放つ能力を持っていた。しかし、それを阻止したのがナイの旋斧であり、この事からアルトはある仮説を立てる。
「恐らくだが、ナイ君の旋斧はガーゴイル亜種が口元に集めた火属性の魔力を吸い上げて逆に自分の力にしたんだ。魔力を吸い上げる事で刃全体が発火し、それによって攻撃力が上昇したと考えるのが妥当だろう」
「魔力を……吸収した?」
「そんな魔道具があるのですか!?聞いた事もありませんけど……」
旋斧がガーゴイル亜種が放とうとした炎の吐息を阻止したのではなく、ガーゴイル亜種が集めた火属性の魔力を吸い上げた事により、刃が一時的に強化された。それは旋斧で攻撃を仕掛けたナイも薄々とは気づいていたが、ここでヒイロは疑問を抱く。
「あれ?でも、待ってください。私が最初にナイさんと出会った時、火炎剣を発動させてナイさんと戦った時は魔力を吸い上げられる事はありませんでしたよ?」
「あれ、言われてみれば確かに……」
「そうなのかい?」
ヒイロが最初にナイと出会った時、彼女はナイが誘拐犯だと勘違いして本気で切りかかってきた。その時に彼女は魔法剣を使用して攻撃を仕掛けた時はナイの旋斧は何の反応もなかった。
彼女が所持する魔剣「烈火」は炎を刃に纏わせる事ができるが、もしも旋斧が魔力を吸い上げる機能を持っていれば彼女と刃を交わせた時に魔力を吸い上げていたはずである。しかし、ヒイロとナイとの戦闘の時は特に旋斧は変化はなく、刃が魔力を吸収した様子はなかった。
「ふむ、どうやら君の旋斧は魔法の力を吸収するのには何か条件があるようだな……」
「条件?」
「話を聞く限りでは君の持つ武器は外部に放出される魔力は吸収できるが、ヒイロの魔法剣、いやこの場合は付与魔法という方が正しい表現だろう。物体に魔力を宿す魔法の力は吸収できないのかもしれない」
「付与……魔法?」
ナイは初めて聞く単語に不思議に思うと、アルトは簡単に説明してくれた。
「それは助かるけど……その前にちょっと相談したい事があるんだけど」
「相談?」
ナイはここへ赴いた理由はビャクのお礼のためだけではなく、今現在の自分の状況に関して詳しく語る。王都に噂が広まったせいで現在は泥棒による被害を受けている事、このままでは王都を出なければならない事を伝えると、アルトは腕を組んで考え込む。
「ふむ、なるほど……そんな事になっていたのか。兄上も少々詰めが甘いな、反魔の盾を託しながら口止めを忘れるとは。今回の噂の出所は間違いなく、ナイと兄上の戦闘を見ていた城内の人間の仕業だろうね。そういう理由なら僕も力を貸すよ。だけど、その代わりに僕の頼みをひとつ聞いてくれるかい?」
「条件?」
王子であるアルトが協力してくれるのならば心強いが、彼が出す条件という言葉にナイは喉を鳴らし、どのような条件を出してくるのだろうと緊張する。すると、アルトはナイが持って来た旋斧を指差す。
「君が持っているその旋斧という名前の武器、それを調べさせてほしい」
「えっ……これを?」
「ああ、僕はこう見えても魔道具に関する知識に関してはこの国の学者よりも詳しいと自負している。だけど、君が持っているその旋斧という武器に関しては全く心当たりがないんだ」
アルトによると彼は国内で作り出された魔道具の類はほぼ全て知り尽くしているという。しかし、ナイが所有する旋斧に関しては彼も知らない代物らしい。
そもそも旋斧が魔道具の類かどうかも判明しておらず、旋斧は元々はナイの養父のアルの家系に伝わる武器である。彼によれば100年以上前に作り出された歴史ある武器らしく、実際に特別な能力を宿している事は確かだった。
「ヒイロとミイナから直接話を聞いたんだが、その旋斧という武器で君はガーゴイル亜種を倒した時、刃を赤く光り輝かせたという話は聞いているよ。その時の詳しい状況を教えてくれるかい?」
「それは……」
質問されたナイは困り果て、ガーゴイル亜種との戦闘で彼の旋斧が唐突に赤色に発熱した事に関してはナイ自身も良く分かっていない。だが、旋斧が変化した途端に攻撃力が増してガーゴイル亜種を倒せた事は間違いない。
「あの時、ガーゴイル亜種が口元から炎を放とうとしたと思う。だから咄嗟に旋斧を口元にねじ込んでそれを阻止しようとしたら、急に旋斧が炎を吸収して赤く変化したというか……熱を帯びた気がする」
「なるほど、炎を吸収か……」
「王子、何か心当たりがある?」
「いや……ガーゴイルの中には内臓されている魔石によって炎や氷の吐息《ブレス》を放つ種がいると聞いた事がある。恐らく、ナイ君が倒したガーゴイル亜種とやらも炎の吐息を放とうとしたんだろう」
ガーゴイルの中には吐息と呼ばれる特殊な攻撃を行う個体も存在し、ナイが戦ったガーゴイル亜種は炎の吐息を放つ能力を持っていた。しかし、それを阻止したのがナイの旋斧であり、この事からアルトはある仮説を立てる。
「恐らくだが、ナイ君の旋斧はガーゴイル亜種が口元に集めた火属性の魔力を吸い上げて逆に自分の力にしたんだ。魔力を吸い上げる事で刃全体が発火し、それによって攻撃力が上昇したと考えるのが妥当だろう」
「魔力を……吸収した?」
「そんな魔道具があるのですか!?聞いた事もありませんけど……」
旋斧がガーゴイル亜種が放とうとした炎の吐息を阻止したのではなく、ガーゴイル亜種が集めた火属性の魔力を吸い上げた事により、刃が一時的に強化された。それは旋斧で攻撃を仕掛けたナイも薄々とは気づいていたが、ここでヒイロは疑問を抱く。
「あれ?でも、待ってください。私が最初にナイさんと出会った時、火炎剣を発動させてナイさんと戦った時は魔力を吸い上げられる事はありませんでしたよ?」
「あれ、言われてみれば確かに……」
「そうなのかい?」
ヒイロが最初にナイと出会った時、彼女はナイが誘拐犯だと勘違いして本気で切りかかってきた。その時に彼女は魔法剣を使用して攻撃を仕掛けた時はナイの旋斧は何の反応もなかった。
彼女が所持する魔剣「烈火」は炎を刃に纏わせる事ができるが、もしも旋斧が魔力を吸い上げる機能を持っていれば彼女と刃を交わせた時に魔力を吸い上げていたはずである。しかし、ヒイロとナイとの戦闘の時は特に旋斧は変化はなく、刃が魔力を吸収した様子はなかった。
「ふむ、どうやら君の旋斧は魔法の力を吸収するのには何か条件があるようだな……」
「条件?」
「話を聞く限りでは君の持つ武器は外部に放出される魔力は吸収できるが、ヒイロの魔法剣、いやこの場合は付与魔法という方が正しい表現だろう。物体に魔力を宿す魔法の力は吸収できないのかもしれない」
「付与……魔法?」
ナイは初めて聞く単語に不思議に思うと、アルトは簡単に説明してくれた。
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