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王都での騒動
第270.5話 その頃、マホ達は……
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――ナイが王都に訪れる少し前、彼に魔操術を授けたマホ魔導士が王城に赴いていた。彼女は国内に3人しかいない魔導士の中でも最古参であり、先々代の国王の代から仕えている。
基本的にマホは国内を弟子たちを連れて渡り歩いており、彼女が一か所に滞在しないのは優秀な人材を見極め、勧誘を行うためである。この勧誘とは自分の弟子に迎え入れるだけではなく、国にとって将来的に有用な人材の勧誘も兼ねているため、国王も彼女の行動を制限しない。
マホの他の二人の魔導士も元々は彼女が若かりし頃に見つけた人材であり、二人とも彼女の弟子であった。現在のマホは3人しか弟子を迎えていないが、彼女の世話になった人材は多い。
「マホ殿、よくぞ戻られたな」
「うむ、久しぶりじゃな。それにしてもお主、また老けたのではないか」
「ははは、もう国に仕える者の中では儂よりも年上の者はマホ殿だけですな」
「これ、儂はぴちぴちじゃぞ。永遠の10才じゃ」
王城の一室にてマホは王家の紋章が刻まれたローブを身に纏った男性と向かい合い、共に薬草を煎じたお茶を飲む。
――この老人こそがマホと同じくこの国の魔導士を務める「マジク」という男性であり、彼は数十年前まではマホの弟子だった。
若い頃からマジクは魔術師としての才能に恵まれ、年老いた現在でも彼を越える魔術師はいないとさえ言われている。人望も厚く、国王からの信頼も厚い優秀な魔術師でもある。
「それにしても急な御帰りですな。戻ってくるのはもう少し先の事だと思っておりましたが……」
「うむ、ちょっと色々とあってな……そうそう、実は今回の旅で面白い人材を見つけてな。まだ年若い少年だが、将来性は高いぞ」
「ほう、ではその者は弟子に迎え入れたのですか?よろしければ顔を見たいですな」
「いや、まだ弟子にはなっておらん。しかし、いずれこの王都にも訪れるであろう」
「ほう、それはそれは……」
マホの口ぶりからマジクは彼女の語る少年に興味を抱き、その一方で彼女の今の弟子たちの事が気になった。
「そういえばマホ殿の今の弟子たちはどうしておられる?エルマは元気かな?」
「ふふふ、そういえばお主は若い頃にエルマにぞっこんだったのう。今ならば二人とも独り身なのだから見合いでもするか?」
「ご、ごほんっ!!御冗談を……」
マジクはマホの言葉を聞いて咳き込み、そんな彼を見てマホは笑みを浮かべる。エルマは若く見えるがマホと同じくエルフの血筋であるため、実年齢はマジクと大差はない。
若い頃のマジクはエルマに惚れていたが、彼女には相手にされなかった。結局は別の女性と結婚したが、既に妻には先立たれて子供も独り立ちしている。
「エルマもお主の事は気にしておったぞ。しばらくは儂等も王都にいるから、後で顔を見せると言い」
「ふむ……しばらく、という事はまた旅に出られるのですか?」
「うむ、少し気になる事があってのう……だが、今度の旅はそれほど長くないはずじゃ」
「そうですか……行先は何処ですかな?」
マジクの言葉にマホは北の方角に視線を向け、彼女は告げた。
「グマグ火山じゃ」
それから時は流れ、現在へと戻る――
「――暑いのう、この老体にこの暑さは流石にきついのう」
「はあっ、はあっ……暑い、というより熱いというのが正しいかと……」
王都の北方に存在する「グマグ火山」この場所は良質な火属性の魔石が採れやすいが、現在は一般人の立ち入りは禁止されている。理由としてはこの火山には休眠状態の火竜が存在し、下手に刺激して目を覚まさない様に一般人の出入りは禁じられていた。
そんな危険地帯に訪れているのはこの国では3人しか存在しない魔導士の「マホ」と彼女の一番弟子である「エルマ」だった。二人は赤色のマントを身に付けながら火山の麓を歩き、山頂に向けて移動していた。
「ふむ、断熱性に優れるレッドウルフの毛皮で作られたこのマントを身に付けてもこの暑さ……もしも素肌ならば熱気だけで火傷を負ってしまうかもしれん」
「な、何が起きてるんでしょうか……以前に来た時よりも明らかに火山全体が熱を増しているように感じます。まさか、噴火の予兆では……」
「分からぬ。しかし、用心して進まなければならんな」
二人がこの場所に訪れたのは火山の調査のためであり、少し前からグマグ火山の近辺に存在する砦の兵士から王都に連絡が届いた。それはグマグ火山付近の魔物が急激に数を減らし、最近では全く見かけなくなったという。丁度マホも王都に赴いていた時にその報告を受け、グマグ火山の異変を知る。
世界中で魔物の増加による被害が多発しているにも関わらず、何故かこのグマグ火山付近では魔物が一切見当たらなくなったという事にマホは疑問を抱き、彼女は自ら調査に乗り出した。
今回の調査にはマホが連れてきたのはエルマだけであり、他の二人は同行していない。理由としてはグマグ火山の調査のために必要なレッドウルフの毛皮のマントを二人分しか用意できなかった。だからこそマホは弟子たちの中では自分に忠実で実力も確かなエルマだけを同行させる。
「ふむ……山頂に近付く程に温度が上がっておるな」
「老師、これは普通ではありません。高い所に移動すれば気温が下がるのが当たり前なのに逆に上昇するなんて……」
「うむ、逆に言えば山頂の方で何かが起きているのかもしれん……ここから先は気を付けて進むぞ」
「はい……」
二人は水分補給を怠らずに山頂へ向けて移動を開始しようとした時、ここで二人は地面に大きな窪みを発見した。
「これは……何でしょうか?ここだけ妙に凹んでいるようですが……」
「ふむ、確かに……待て、これは……!?」
窪みを確認したマホは目を見開き、ここで彼女は杖を掲げると風属性の魔法を発動させ、自分の身体を風の力で浮き上がらせた。
「浮上《レビテーション》!!」
「きゃっ!?し、師匠!?」
唐突に浮き上がったマホにエルマは驚くが、マホは上空へ浮上すると、彼女は信じがたい光景を確認した。マホとエルマが確認した窪みの正体、それは巨大な生物の足跡である事が判明した――
――同時刻、王都の一般区に存在する路地裏にて柄の悪い男達が地面に倒れ込み、その傍に立っているのは獣人族の少年だった。彼は腰に双剣を差しているが、男達を相手に剣も抜かずに素手だけで叩きのめす。
「ぐはぁっ!?」
「な、何だこのガキ……うげぇっ!?」
「ひいいっ!?た、助けて……ぎゃあっ!?」
「……何が助けてだ、てめえ等が襲ってきたんだろうがよ!!ああっ!?」
この光景だけを見ると少年が一方的に男達を襲っているように見えるが、真実は男達の方が少年に絡み、路地裏まで追い込む。その後は身ぐるみを剥ごうとしたが、逆に返り討ちにあった。
「く、くそっ……お前、誰に手を出したのか分かっているのか?俺達はな、あのし……ぎゃああっ!?」
「うるせえんだよ、雑魚がっ……てめえ等が何者だろうがどうでもいいんだよ」
まだ意識があった男に対して獣人族の少年は容赦なく頭を踏みつけ、気絶させる。3人の男が完全に意識を失った事を確認すると、少年は唾を吐いてその場を後にした。
「ちっ……イライラするぜ、何時までこんな場所にいないといけないんだ」
少年の正体はマホの弟子である「ガロ」であり、彼は今は師であるマホと他の弟子たちを分かれて行動していた。その理由は少し前にマホがエルマを連れてグマグ火山へと向かい、ガロとゴンザレスは王都へ残るように指示されていた。
最初の内はマホが戻ってくるまでの間は揉め事を起こさずに待機するつもりだったが、何時まで立ってもマホから連絡が届かず、それがガロを苛つかせた。しかも最近は彼を苛立たせる噂ばかりを耳にする。
「おい、聞いたか!?例の噂の少年の事を……」
「ああ、何でも王子様の屋敷に暮らしているそうだな」
「実は俺の親戚が城の兵士でな、毎日王城に訪れる少年を見たらしいんだ。もしかしたら……」
「ちっ!!」
通行人の話声が聞こえたガロはわざとらしく舌打ちすると、そんな彼の態度に周りの通行人は訝し気な表情を浮かべるが、ガロが睨みつけると慌てて視線を逸らす。
(またあいつの噂か……くそ、むかつくぜ!!何がミノタウロス殺しだ……くそがっ!!)
王都の何処へ行っても少年《ナイ》の噂を耳にする事にガロが怒りを抑えきれず、彼はナイがここまで目立つ存在になった事が無性に気に入らない。
最初に会った時からガロはナイの事が気に入らず、以前に会った時よりは多少は腕を上げた事は認めるが、それでも噂ほどの大層な人物ではないと思い込んでいた。
(あんな奴がどうして……ああ、むかつく)
ナイの噂はガロも耳にしており、彼がガーゴイルやミノタウロスという強敵を相手に打ち勝ったという話は聞いていた。だが、ガロからすればナイに倒せる相手ならば自分が負けるはずがないと思い込む。
ガロもこの半年の間に腕を上げており、以前よりも肉体を磨き上げていた。だが、それにも関わらずにマホが自分ではなく、エルマだけを同行させた事にガロは悔しく思う。
(俺がエルマに劣っているというのか……くそくそくそっ!!)
マホがエルマだけを連れて旅だった事自体がガロも気に喰わず、自分こそが一番強いと思い込んでいるガロにとっては屈辱でしかない。そんな時、不意に彼は冒険者ギルドを通りがかった。この時にガロの足元に一枚の羊皮紙が風で飛ばされてきた。
「あんっ?何だこれは……冒険者募集中だと?」
ガロが拾い上げた羊皮紙は冒険者を募集するチラシらしく、それを見たガロは内容を確認し、ある事を思いつく。
「はっ……暇つぶしには丁度いいか」
彼は羊皮紙を手にして冒険者ギルドへ乗り込み、この数日後に大きな事件を引き起こす事になるのだが、この時に彼を止める事が出来る者はいなかった――
基本的にマホは国内を弟子たちを連れて渡り歩いており、彼女が一か所に滞在しないのは優秀な人材を見極め、勧誘を行うためである。この勧誘とは自分の弟子に迎え入れるだけではなく、国にとって将来的に有用な人材の勧誘も兼ねているため、国王も彼女の行動を制限しない。
マホの他の二人の魔導士も元々は彼女が若かりし頃に見つけた人材であり、二人とも彼女の弟子であった。現在のマホは3人しか弟子を迎えていないが、彼女の世話になった人材は多い。
「マホ殿、よくぞ戻られたな」
「うむ、久しぶりじゃな。それにしてもお主、また老けたのではないか」
「ははは、もう国に仕える者の中では儂よりも年上の者はマホ殿だけですな」
「これ、儂はぴちぴちじゃぞ。永遠の10才じゃ」
王城の一室にてマホは王家の紋章が刻まれたローブを身に纏った男性と向かい合い、共に薬草を煎じたお茶を飲む。
――この老人こそがマホと同じくこの国の魔導士を務める「マジク」という男性であり、彼は数十年前まではマホの弟子だった。
若い頃からマジクは魔術師としての才能に恵まれ、年老いた現在でも彼を越える魔術師はいないとさえ言われている。人望も厚く、国王からの信頼も厚い優秀な魔術師でもある。
「それにしても急な御帰りですな。戻ってくるのはもう少し先の事だと思っておりましたが……」
「うむ、ちょっと色々とあってな……そうそう、実は今回の旅で面白い人材を見つけてな。まだ年若い少年だが、将来性は高いぞ」
「ほう、ではその者は弟子に迎え入れたのですか?よろしければ顔を見たいですな」
「いや、まだ弟子にはなっておらん。しかし、いずれこの王都にも訪れるであろう」
「ほう、それはそれは……」
マホの口ぶりからマジクは彼女の語る少年に興味を抱き、その一方で彼女の今の弟子たちの事が気になった。
「そういえばマホ殿の今の弟子たちはどうしておられる?エルマは元気かな?」
「ふふふ、そういえばお主は若い頃にエルマにぞっこんだったのう。今ならば二人とも独り身なのだから見合いでもするか?」
「ご、ごほんっ!!御冗談を……」
マジクはマホの言葉を聞いて咳き込み、そんな彼を見てマホは笑みを浮かべる。エルマは若く見えるがマホと同じくエルフの血筋であるため、実年齢はマジクと大差はない。
若い頃のマジクはエルマに惚れていたが、彼女には相手にされなかった。結局は別の女性と結婚したが、既に妻には先立たれて子供も独り立ちしている。
「エルマもお主の事は気にしておったぞ。しばらくは儂等も王都にいるから、後で顔を見せると言い」
「ふむ……しばらく、という事はまた旅に出られるのですか?」
「うむ、少し気になる事があってのう……だが、今度の旅はそれほど長くないはずじゃ」
「そうですか……行先は何処ですかな?」
マジクの言葉にマホは北の方角に視線を向け、彼女は告げた。
「グマグ火山じゃ」
それから時は流れ、現在へと戻る――
「――暑いのう、この老体にこの暑さは流石にきついのう」
「はあっ、はあっ……暑い、というより熱いというのが正しいかと……」
王都の北方に存在する「グマグ火山」この場所は良質な火属性の魔石が採れやすいが、現在は一般人の立ち入りは禁止されている。理由としてはこの火山には休眠状態の火竜が存在し、下手に刺激して目を覚まさない様に一般人の出入りは禁じられていた。
そんな危険地帯に訪れているのはこの国では3人しか存在しない魔導士の「マホ」と彼女の一番弟子である「エルマ」だった。二人は赤色のマントを身に付けながら火山の麓を歩き、山頂に向けて移動していた。
「ふむ、断熱性に優れるレッドウルフの毛皮で作られたこのマントを身に付けてもこの暑さ……もしも素肌ならば熱気だけで火傷を負ってしまうかもしれん」
「な、何が起きてるんでしょうか……以前に来た時よりも明らかに火山全体が熱を増しているように感じます。まさか、噴火の予兆では……」
「分からぬ。しかし、用心して進まなければならんな」
二人がこの場所に訪れたのは火山の調査のためであり、少し前からグマグ火山の近辺に存在する砦の兵士から王都に連絡が届いた。それはグマグ火山付近の魔物が急激に数を減らし、最近では全く見かけなくなったという。丁度マホも王都に赴いていた時にその報告を受け、グマグ火山の異変を知る。
世界中で魔物の増加による被害が多発しているにも関わらず、何故かこのグマグ火山付近では魔物が一切見当たらなくなったという事にマホは疑問を抱き、彼女は自ら調査に乗り出した。
今回の調査にはマホが連れてきたのはエルマだけであり、他の二人は同行していない。理由としてはグマグ火山の調査のために必要なレッドウルフの毛皮のマントを二人分しか用意できなかった。だからこそマホは弟子たちの中では自分に忠実で実力も確かなエルマだけを同行させる。
「ふむ……山頂に近付く程に温度が上がっておるな」
「老師、これは普通ではありません。高い所に移動すれば気温が下がるのが当たり前なのに逆に上昇するなんて……」
「うむ、逆に言えば山頂の方で何かが起きているのかもしれん……ここから先は気を付けて進むぞ」
「はい……」
二人は水分補給を怠らずに山頂へ向けて移動を開始しようとした時、ここで二人は地面に大きな窪みを発見した。
「これは……何でしょうか?ここだけ妙に凹んでいるようですが……」
「ふむ、確かに……待て、これは……!?」
窪みを確認したマホは目を見開き、ここで彼女は杖を掲げると風属性の魔法を発動させ、自分の身体を風の力で浮き上がらせた。
「浮上《レビテーション》!!」
「きゃっ!?し、師匠!?」
唐突に浮き上がったマホにエルマは驚くが、マホは上空へ浮上すると、彼女は信じがたい光景を確認した。マホとエルマが確認した窪みの正体、それは巨大な生物の足跡である事が判明した――
――同時刻、王都の一般区に存在する路地裏にて柄の悪い男達が地面に倒れ込み、その傍に立っているのは獣人族の少年だった。彼は腰に双剣を差しているが、男達を相手に剣も抜かずに素手だけで叩きのめす。
「ぐはぁっ!?」
「な、何だこのガキ……うげぇっ!?」
「ひいいっ!?た、助けて……ぎゃあっ!?」
「……何が助けてだ、てめえ等が襲ってきたんだろうがよ!!ああっ!?」
この光景だけを見ると少年が一方的に男達を襲っているように見えるが、真実は男達の方が少年に絡み、路地裏まで追い込む。その後は身ぐるみを剥ごうとしたが、逆に返り討ちにあった。
「く、くそっ……お前、誰に手を出したのか分かっているのか?俺達はな、あのし……ぎゃああっ!?」
「うるせえんだよ、雑魚がっ……てめえ等が何者だろうがどうでもいいんだよ」
まだ意識があった男に対して獣人族の少年は容赦なく頭を踏みつけ、気絶させる。3人の男が完全に意識を失った事を確認すると、少年は唾を吐いてその場を後にした。
「ちっ……イライラするぜ、何時までこんな場所にいないといけないんだ」
少年の正体はマホの弟子である「ガロ」であり、彼は今は師であるマホと他の弟子たちを分かれて行動していた。その理由は少し前にマホがエルマを連れてグマグ火山へと向かい、ガロとゴンザレスは王都へ残るように指示されていた。
最初の内はマホが戻ってくるまでの間は揉め事を起こさずに待機するつもりだったが、何時まで立ってもマホから連絡が届かず、それがガロを苛つかせた。しかも最近は彼を苛立たせる噂ばかりを耳にする。
「おい、聞いたか!?例の噂の少年の事を……」
「ああ、何でも王子様の屋敷に暮らしているそうだな」
「実は俺の親戚が城の兵士でな、毎日王城に訪れる少年を見たらしいんだ。もしかしたら……」
「ちっ!!」
通行人の話声が聞こえたガロはわざとらしく舌打ちすると、そんな彼の態度に周りの通行人は訝し気な表情を浮かべるが、ガロが睨みつけると慌てて視線を逸らす。
(またあいつの噂か……くそ、むかつくぜ!!何がミノタウロス殺しだ……くそがっ!!)
王都の何処へ行っても少年《ナイ》の噂を耳にする事にガロが怒りを抑えきれず、彼はナイがここまで目立つ存在になった事が無性に気に入らない。
最初に会った時からガロはナイの事が気に入らず、以前に会った時よりは多少は腕を上げた事は認めるが、それでも噂ほどの大層な人物ではないと思い込んでいた。
(あんな奴がどうして……ああ、むかつく)
ナイの噂はガロも耳にしており、彼がガーゴイルやミノタウロスという強敵を相手に打ち勝ったという話は聞いていた。だが、ガロからすればナイに倒せる相手ならば自分が負けるはずがないと思い込む。
ガロもこの半年の間に腕を上げており、以前よりも肉体を磨き上げていた。だが、それにも関わらずにマホが自分ではなく、エルマだけを同行させた事にガロは悔しく思う。
(俺がエルマに劣っているというのか……くそくそくそっ!!)
マホがエルマだけを連れて旅だった事自体がガロも気に喰わず、自分こそが一番強いと思い込んでいるガロにとっては屈辱でしかない。そんな時、不意に彼は冒険者ギルドを通りがかった。この時にガロの足元に一枚の羊皮紙が風で飛ばされてきた。
「あんっ?何だこれは……冒険者募集中だと?」
ガロが拾い上げた羊皮紙は冒険者を募集するチラシらしく、それを見たガロは内容を確認し、ある事を思いつく。
「はっ……暇つぶしには丁度いいか」
彼は羊皮紙を手にして冒険者ギルドへ乗り込み、この数日後に大きな事件を引き起こす事になるのだが、この時に彼を止める事が出来る者はいなかった――
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