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王都での騒動
第255話 白炎
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「それで、あんたがそんな風になるぐらいだから相当に激しい運動をしてきたんだろう?でも、見た所怪我はしていないね。という事は戦ったわけじゃないんだろう?何をしてきたんだい?」
「えっと……腕相撲です」
「腕相撲~?」
ナイの返答を聞いてテンは呆れた表情を浮かべ、どうしてただの腕相撲で疲労困憊の状態になるまでナイが追い込められたのか疑問を抱く。
とりあえずはナイはアッシュとの腕相撲の経緯を話すと、途中までは胡散臭そうに聞いていたテンだったが、アッシュが腕相撲の際中に「白い炎」のような魔力を纏ったと聞いて目を見開く。
「まさか白炎をまとったのかい!?」
「白炎……って、何ですか?」
「聖属性の魔力を集中させると、魔力が外部に漏れて包み込むんだ。聖属性の場合だと白い炎のような魔力を纏う事から白炎と呼ばれるんだよ」
「白い炎……そう言えば前にナイ君がガーゴイル亜種を倒した時、一瞬だけど身体が輝いた様に見えたわ」
「あ、私もそれ見たよ!!それに今日もナイ君が牛さんを斬った時も光ってたように見えた!!」
「そ、そうなの?」
ナイは自覚していないが、聖属性の魔力を高めた際にナイは身体全身が光り輝いてたらしく、体内の魔力を限界まで高めると魔力が外部に漏れるという。
別に外部に魔力が漏れた所で得に変化があるわけでもなく、白炎と言っても実際の炎のように熱があるわけでもない。但し、白炎が出ている間はそれだけ体内で魔力を活性化させている事を意味する。
「アッシュ公爵が白炎を出すまで追い込んだのかい、あんた……大した奴だね」
「ど、どうも……」
「けど、あんたは魔操術の使い方がなっちゃいないね。毎度、自分の魔力を使いすぎてモモの世話になるようじゃ駄目駄目だね」
「うっ……」
「もう、女将さん。ナイ君を虐めないでよ~」
ナイを庇うようにモモは彼を抱きしめ、この際にナイはモモの胸にまた顔を挟める形になる。柔らかな感触にナイは気持ちよく思うが、流石に人前で抱きしめられるのは恥ずかしい。
(確かに毎回こんなにきつい思いをするのは辛いな……それにもしも複数の敵と戦う時にこんな状態に陥ったら困るな)
魔操術の肉体強化は強力な反面、反動も大きい。強化薬を使用するのと同様に肉体に大きな負荷をかける。だが、この負荷に関してはナイは何度か同じような経験をした事を思い出す。それも子供の頃の話だった。
(そうだ、この状態……レベル1に戻る時とよく似てるんだ)
最近はあまり味わっていないが、ナイはレベルを上げ過ぎた後、貧弱の技能によって強制的にレベルが下がった時を思い出す。上昇すればするほどにレベルが1に戻った時はナイは異様な脱力感に襲われる。
最初にレベルがリセットされた時は碌に動けず、一角兎の角から作り出した滋養強壮効果のある薬を飲んで回復できた。だが、この王都付近では生憎と一角兎は生息していないので同じ方法は使えない。しかし、肉体の回復を促す薬ならば売っている可能性はあった。
「あの……この王都で回復薬とか滋養強壮効果の高い薬を売っている店はありますか?」
「回復薬?そういう事なら商業区の店にあるんじゃないかい?」
「そうね、あそこなら大抵の物は何でも売ってるし……」
「じゃあ、明日私と一緒に行こうよ。今日はでぇとはできなかったけど、明日は改めて一緒に行こう?」
「ちょっと待ちなさい、明日は私が休んでいいというから今日の仕事を引き受けたのよ。だから明日は私がナイ君を案内してあげるわ」
「え~!?」
ヒナの言葉にモモは不満を漏らすが、元々は今日は彼女が休む予定であり、色々と合って出かける事は出来なかったがその間の仕事はヒナが一人でこなしていた。ヒナはモモの代わりに明日はナイを商業区へ案内する事を約束してくれた――
――同時刻、アッシュは屋敷の私室にて執事であるセバスチャンに包帯を巻かれていた。彼はナイと腕相撲をした際、掌が腫れてしまったので治療を頼む。
「これでよろしいかと……明日には腫れも引いているでしょう」
「ああ、助かった。すまんな、どうにも上手く包帯を巻けなくてな……」
「お気になさらないでください。しかし、旦那様がまさか負けてしまわれるとは……手を抜いていらしたのですか?」
「馬鹿を言え、男の勝負に手加減などない!!」
アッシュは包帯を巻いた右手に視線を向け、拳を握りしめながらも嬉しそうな表情を浮かべる。その様子を見てセバスチャンは彼が何を考えているのかを察した。
「あの少年がそこまで気に入られましたか?」
「うむ、あの齢であれほどの力……俺の若い頃以上だ。このまま放っておくのは惜しい!!」
「報告によりますとあの少年はテン殿の元で世話になっているとか……」
「ほう、テンの奴が……」
テンの名前が出るとアッシュは考え込む素振りを行い、何かを思いついた様に顔を上げると執事に告げた。
「そういえばそろそろ娘が帰ってくるころだな」
「ええ、冒険者の仕事もひと段落するのでしばらくはここで過ごすとの事です」
「ちょうどいい、きっとあの子ならあの少年に興味を持つだろう。帰ってくるのが楽しみだ!!ふはははっ!!」
窓を見ながらアッシュは娘が戻るのを心待ちにする。後に彼の娘はナイと意外な出会いをする事になるのだが、それは先の話である――
「えっと……腕相撲です」
「腕相撲~?」
ナイの返答を聞いてテンは呆れた表情を浮かべ、どうしてただの腕相撲で疲労困憊の状態になるまでナイが追い込められたのか疑問を抱く。
とりあえずはナイはアッシュとの腕相撲の経緯を話すと、途中までは胡散臭そうに聞いていたテンだったが、アッシュが腕相撲の際中に「白い炎」のような魔力を纏ったと聞いて目を見開く。
「まさか白炎をまとったのかい!?」
「白炎……って、何ですか?」
「聖属性の魔力を集中させると、魔力が外部に漏れて包み込むんだ。聖属性の場合だと白い炎のような魔力を纏う事から白炎と呼ばれるんだよ」
「白い炎……そう言えば前にナイ君がガーゴイル亜種を倒した時、一瞬だけど身体が輝いた様に見えたわ」
「あ、私もそれ見たよ!!それに今日もナイ君が牛さんを斬った時も光ってたように見えた!!」
「そ、そうなの?」
ナイは自覚していないが、聖属性の魔力を高めた際にナイは身体全身が光り輝いてたらしく、体内の魔力を限界まで高めると魔力が外部に漏れるという。
別に外部に魔力が漏れた所で得に変化があるわけでもなく、白炎と言っても実際の炎のように熱があるわけでもない。但し、白炎が出ている間はそれだけ体内で魔力を活性化させている事を意味する。
「アッシュ公爵が白炎を出すまで追い込んだのかい、あんた……大した奴だね」
「ど、どうも……」
「けど、あんたは魔操術の使い方がなっちゃいないね。毎度、自分の魔力を使いすぎてモモの世話になるようじゃ駄目駄目だね」
「うっ……」
「もう、女将さん。ナイ君を虐めないでよ~」
ナイを庇うようにモモは彼を抱きしめ、この際にナイはモモの胸にまた顔を挟める形になる。柔らかな感触にナイは気持ちよく思うが、流石に人前で抱きしめられるのは恥ずかしい。
(確かに毎回こんなにきつい思いをするのは辛いな……それにもしも複数の敵と戦う時にこんな状態に陥ったら困るな)
魔操術の肉体強化は強力な反面、反動も大きい。強化薬を使用するのと同様に肉体に大きな負荷をかける。だが、この負荷に関してはナイは何度か同じような経験をした事を思い出す。それも子供の頃の話だった。
(そうだ、この状態……レベル1に戻る時とよく似てるんだ)
最近はあまり味わっていないが、ナイはレベルを上げ過ぎた後、貧弱の技能によって強制的にレベルが下がった時を思い出す。上昇すればするほどにレベルが1に戻った時はナイは異様な脱力感に襲われる。
最初にレベルがリセットされた時は碌に動けず、一角兎の角から作り出した滋養強壮効果のある薬を飲んで回復できた。だが、この王都付近では生憎と一角兎は生息していないので同じ方法は使えない。しかし、肉体の回復を促す薬ならば売っている可能性はあった。
「あの……この王都で回復薬とか滋養強壮効果の高い薬を売っている店はありますか?」
「回復薬?そういう事なら商業区の店にあるんじゃないかい?」
「そうね、あそこなら大抵の物は何でも売ってるし……」
「じゃあ、明日私と一緒に行こうよ。今日はでぇとはできなかったけど、明日は改めて一緒に行こう?」
「ちょっと待ちなさい、明日は私が休んでいいというから今日の仕事を引き受けたのよ。だから明日は私がナイ君を案内してあげるわ」
「え~!?」
ヒナの言葉にモモは不満を漏らすが、元々は今日は彼女が休む予定であり、色々と合って出かける事は出来なかったがその間の仕事はヒナが一人でこなしていた。ヒナはモモの代わりに明日はナイを商業区へ案内する事を約束してくれた――
――同時刻、アッシュは屋敷の私室にて執事であるセバスチャンに包帯を巻かれていた。彼はナイと腕相撲をした際、掌が腫れてしまったので治療を頼む。
「これでよろしいかと……明日には腫れも引いているでしょう」
「ああ、助かった。すまんな、どうにも上手く包帯を巻けなくてな……」
「お気になさらないでください。しかし、旦那様がまさか負けてしまわれるとは……手を抜いていらしたのですか?」
「馬鹿を言え、男の勝負に手加減などない!!」
アッシュは包帯を巻いた右手に視線を向け、拳を握りしめながらも嬉しそうな表情を浮かべる。その様子を見てセバスチャンは彼が何を考えているのかを察した。
「あの少年がそこまで気に入られましたか?」
「うむ、あの齢であれほどの力……俺の若い頃以上だ。このまま放っておくのは惜しい!!」
「報告によりますとあの少年はテン殿の元で世話になっているとか……」
「ほう、テンの奴が……」
テンの名前が出るとアッシュは考え込む素振りを行い、何かを思いついた様に顔を上げると執事に告げた。
「そういえばそろそろ娘が帰ってくるころだな」
「ええ、冒険者の仕事もひと段落するのでしばらくはここで過ごすとの事です」
「ちょうどいい、きっとあの子ならあの少年に興味を持つだろう。帰ってくるのが楽しみだ!!ふはははっ!!」
窓を見ながらアッシュは娘が戻るのを心待ちにする。後に彼の娘はナイと意外な出会いをする事になるのだが、それは先の話である――
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