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王都での騒動
第230話 覚悟を見せろ
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「今ここで答えを聞かせて貰おう。この盾を今後も君が使い続けるのであれば、君が盾に相応しい実力を持っているかどうかを見極めさせてもらう」
「王子、それはいくらなんでも……」
「黙っていろ、私は彼と話している」
「は、はい!!」
テンが口を挟もうとするが、流石の彼女も相手が王子となると普段通りの態度は貫けず、他の者達も口を挟めない。ナイは王子の言葉に戸惑うが、王子からすればこの盾を作られた経緯を考えても、何処の馬の骨とも知らない存在に盾を勝手に利用されるのは我慢できないらしい。
「この盾が作り出された理由、それは最強の騎士ゴルドに相応しい代物を作り上げるために国中の鍛冶師が集められ、この盾が作り出された。言ってみればこの盾は強者のために作り上げられた盾……生半可な力を持つ者が扱い切れる盾ではない」
「それは……そうですね」
かつてゴマンが盾を使った時、アルはゴマンの力量では盾を使いこなせないと言っていた。この反魔の盾は優れた性能を持っているが、その性能を生かし切れるかどうかは使用者の力量次第である。
「この盾を作るように命じたのは我が先祖だ。ならば私は先祖のためにもこの盾を持つ者は騎士ゴルドに匹敵する力か、才を持つ人間でなければ認められない。ゴルドの子孫ならばともかく、他の人間がこの盾を使うのであれば最低でも反魔の盾を使いこなせる人物でなければ納得は出来ない」
「なら……どうすればいいんですか?」
「簡単な事だ。私と君が戦い、その上で君が盾に相応しい力量を持っているのかを確かめさせてもらう」
「お、王子様が直々に……!?」
「お辞め下さい、何も王子様が自ら試されなくても……」
「黙れ!!」
バッシュの言葉に他の者達は動揺するが、そんな彼等をバッシュは一言で黙らせると、その彼の気迫に部屋の中の全員が黙り込む。
第一王子として生まれたバッシュは幼い頃から武術の指導も受けており、彼の力量は若かりし頃の先王をも上回ると言われている。実際にバッシュと相対するだけでナイはその迫力に気圧されそうになるが、だからと言って引くわけにもいかなかった。
(……ゴマン)
ナイはゴマンの事を思い受かべ、ここでバッシュと戦う事を拒否しても盾は王国の人間には回収されず、約束通りにゴマンの墓の中に埋め込まれるだろう。だが、ナイはこれからも大切な親友の形見は手元に置きたかった。
仮に命を落としかねない事態に陥るとしても、ゴマンの事を思うとナイはここで諦めるわけにはいかない。意を決したナイはバッシュに告げた。
「分かりました……僕がその盾を持つのに相応しいかどうか、確かめてください」
「ふっ……良い顔だ」
「ナイさん!?本気で言ってるんですか!?」
「止めた方が良い……」
「冗談抜きで負けたら殺されるんだよ。それを分かってるのかい?」
「途中で降参しようと思っているのなら無駄だぞ。王子様は口にした事は必ず実行される御方だ」
ナイの返事を聞いてバッシュは口元に笑みを浮かべるが、他の者が騒ぎ出す。それでもナイは反魔の盾を取り戻すため、諦めるつもりはない。
「戦います!!その盾だけは……誰にも渡しません!!」
「いいだろう……ならばこの盾は先に返そう」
バッシュは反魔の盾をナイに返すと、盾を受け取った途端にナイは急に盾が重くなったような気がした。今までは何とも思わなかったが、この盾が作り出された経緯を聞かされ、そして王子に負ければ死ぬことを理解すると今まで以上に重く感じる。
(ゴマン……必ず返すから、もう少しだけ力を貸して)
亡くなったゴマンの事を思い浮かべ、何時の日かナイは彼の墓前に盾を返す事を誓う。だが、その日までの間はナイは盾を手放すわけにはいかず、強い意志を宿した瞳をバッシュに向けた――
――しばらくの時間が経過した後、ナイとバッシュは城内に存在する騎士団の訓練場に赴く。訓練場には石畳で構成された闘技台も存在し、その上にナイとバッシュは立つ。
事前にナイの装備品は返却され、万全の準備を整う。その一方で王子の方も大盾と龍の紋様が刻まれた槍を装備し、既に闘技台の上で待ち構えていた。見物人はリンとドリス、それとテン達だけであり、他に人はいない。
「こちらの準備は出来た。事前に言っておくが、これは試合ではない……君が仕掛ければ私は本気で戦う」
「はいっ……分かっています」
「あんた、本気でやる気かい?言っておくけど、ここまで来たら後戻りは出来ないからね」
「だ、大丈夫です!!ガーゴイル亜種を倒したナイさんなら、王子が相手でも簡単に負けるはずがありません!!」
「ナイ、頑張って……応援する事しかできないけど」
「うん、ありがとう……」
ナイは戦う前にテン達と会話し、改めて王子の様子を伺う。最初に出会った時も凄まじい気迫を感じたが、今はそれ以上に威圧感を感じた。この戦闘で負ければナイは本当に殺されるだろう。
だが、ナイもここで諦めるつもりはなく、今後も反魔の盾を使い続けるならばどうしてもバッシュには勝たねばならない。相手が王子であろうと、どんなに強い武人であろうと、ナイは亡き親友のためにも戦わなければならなかった。
「王子、それはいくらなんでも……」
「黙っていろ、私は彼と話している」
「は、はい!!」
テンが口を挟もうとするが、流石の彼女も相手が王子となると普段通りの態度は貫けず、他の者達も口を挟めない。ナイは王子の言葉に戸惑うが、王子からすればこの盾を作られた経緯を考えても、何処の馬の骨とも知らない存在に盾を勝手に利用されるのは我慢できないらしい。
「この盾が作り出された理由、それは最強の騎士ゴルドに相応しい代物を作り上げるために国中の鍛冶師が集められ、この盾が作り出された。言ってみればこの盾は強者のために作り上げられた盾……生半可な力を持つ者が扱い切れる盾ではない」
「それは……そうですね」
かつてゴマンが盾を使った時、アルはゴマンの力量では盾を使いこなせないと言っていた。この反魔の盾は優れた性能を持っているが、その性能を生かし切れるかどうかは使用者の力量次第である。
「この盾を作るように命じたのは我が先祖だ。ならば私は先祖のためにもこの盾を持つ者は騎士ゴルドに匹敵する力か、才を持つ人間でなければ認められない。ゴルドの子孫ならばともかく、他の人間がこの盾を使うのであれば最低でも反魔の盾を使いこなせる人物でなければ納得は出来ない」
「なら……どうすればいいんですか?」
「簡単な事だ。私と君が戦い、その上で君が盾に相応しい力量を持っているのかを確かめさせてもらう」
「お、王子様が直々に……!?」
「お辞め下さい、何も王子様が自ら試されなくても……」
「黙れ!!」
バッシュの言葉に他の者達は動揺するが、そんな彼等をバッシュは一言で黙らせると、その彼の気迫に部屋の中の全員が黙り込む。
第一王子として生まれたバッシュは幼い頃から武術の指導も受けており、彼の力量は若かりし頃の先王をも上回ると言われている。実際にバッシュと相対するだけでナイはその迫力に気圧されそうになるが、だからと言って引くわけにもいかなかった。
(……ゴマン)
ナイはゴマンの事を思い受かべ、ここでバッシュと戦う事を拒否しても盾は王国の人間には回収されず、約束通りにゴマンの墓の中に埋め込まれるだろう。だが、ナイはこれからも大切な親友の形見は手元に置きたかった。
仮に命を落としかねない事態に陥るとしても、ゴマンの事を思うとナイはここで諦めるわけにはいかない。意を決したナイはバッシュに告げた。
「分かりました……僕がその盾を持つのに相応しいかどうか、確かめてください」
「ふっ……良い顔だ」
「ナイさん!?本気で言ってるんですか!?」
「止めた方が良い……」
「冗談抜きで負けたら殺されるんだよ。それを分かってるのかい?」
「途中で降参しようと思っているのなら無駄だぞ。王子様は口にした事は必ず実行される御方だ」
ナイの返事を聞いてバッシュは口元に笑みを浮かべるが、他の者が騒ぎ出す。それでもナイは反魔の盾を取り戻すため、諦めるつもりはない。
「戦います!!その盾だけは……誰にも渡しません!!」
「いいだろう……ならばこの盾は先に返そう」
バッシュは反魔の盾をナイに返すと、盾を受け取った途端にナイは急に盾が重くなったような気がした。今までは何とも思わなかったが、この盾が作り出された経緯を聞かされ、そして王子に負ければ死ぬことを理解すると今まで以上に重く感じる。
(ゴマン……必ず返すから、もう少しだけ力を貸して)
亡くなったゴマンの事を思い浮かべ、何時の日かナイは彼の墓前に盾を返す事を誓う。だが、その日までの間はナイは盾を手放すわけにはいかず、強い意志を宿した瞳をバッシュに向けた――
――しばらくの時間が経過した後、ナイとバッシュは城内に存在する騎士団の訓練場に赴く。訓練場には石畳で構成された闘技台も存在し、その上にナイとバッシュは立つ。
事前にナイの装備品は返却され、万全の準備を整う。その一方で王子の方も大盾と龍の紋様が刻まれた槍を装備し、既に闘技台の上で待ち構えていた。見物人はリンとドリス、それとテン達だけであり、他に人はいない。
「こちらの準備は出来た。事前に言っておくが、これは試合ではない……君が仕掛ければ私は本気で戦う」
「はいっ……分かっています」
「あんた、本気でやる気かい?言っておくけど、ここまで来たら後戻りは出来ないからね」
「だ、大丈夫です!!ガーゴイル亜種を倒したナイさんなら、王子が相手でも簡単に負けるはずがありません!!」
「ナイ、頑張って……応援する事しかできないけど」
「うん、ありがとう……」
ナイは戦う前にテン達と会話し、改めて王子の様子を伺う。最初に出会った時も凄まじい気迫を感じたが、今はそれ以上に威圧感を感じた。この戦闘で負ければナイは本当に殺されるだろう。
だが、ナイもここで諦めるつもりはなく、今後も反魔の盾を使い続けるならばどうしてもバッシュには勝たねばならない。相手が王子であろうと、どんなに強い武人であろうと、ナイは亡き親友のためにも戦わなければならなかった。
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