228 / 1,110
王都での騒動
第225話 反魔の盾
しおりを挟む
――魔物が村を襲う前、まだゴマンが生きていた頃にナイは彼の家に伝わる盾の話を聞かされた事がある。ゴマンの話によると彼の先祖の一人が元々は有名な騎士だったらしく、ゴマンの家系に伝わる盾も騎士が大きな功績を上げた時に国から授かったという。
だが、理由は不明だがその騎士は王都を離れ、辺境の地にて村を作ったという。つまり、ナイ達が暮らしている村は元々はゴマンの先祖が作り上げた村という事になる。だからこそゴマンの家系の人間は村長として村を治めてきた。
元鍛冶師であるアルによればゴマンの盾は旋斧と同様に魔法金属で構成され、外部からの衝撃を跳ね返す性質を持っている。しかも受けた衝撃をそのまま返すだけではなく、衝撃を倍に増幅させて跳ね返す。他にも魔法攻撃を跳ね返す事も可能でこの盾のお陰でナイは何度も命を救われている。
元々の所有者であるゴマンは既に死亡し、現在は彼の形見という事でナイが手放せなかったが、王国騎士によるリンが調べたところ、本来は一般人が扱っていい代物ではないと判明した。
「この盾の正式名称は「反魔の盾」伝説の盾騎士として称えられたゴルドという名前の王国騎士が所有していた盾だ」
「え、ゴルド……?」
ナイはゴルドという名前には聞き覚えがあり、確かゴマンの先祖の名前にもゴルドという男性がいたという話を聞いていた。リンによるとゴルドはかつてこの国で英雄として歴史に名を刻んだ偉大な王国騎士だという。
「ゴルドは騎士でありながら盾の類しか装備せず、鉄壁の騎士の異名を名付けられた。彼は敵を攻める戦は不得手としたが、守りを主軸とした戦では生涯に一度も敗北した事はない。かつて獣人国が1万人の兵を率いて攻め寄せた時、ゴルドはたった数百人の兵士と共に砦に立て籠もり、10日間も守り抜き、遂には援軍が到着して獣人国の軍隊を撃退した記録もある」
「へえっ……1万の敵軍相手に10倍以上の兵力だけで耐え切ったのかい」
「記録によれば彼は盾を扱う理由は攻撃こそが最大の防御と言われるのならば、最高の防御力こそ最強の攻撃力になり得る、という考えの元で戦場でも武器の類は使わず、盾のみで戦い抜いたと言われていますわ」
「そ、それはどういう理屈ですか……?」
ゴルドは生涯で武器を一度も装備して戦った事はなく、実際に彼は盾のみで戦い続けて功績を残した。そして彼の功績を称えて当時の国王はゴルドに「反魔の盾」を送ったという。
「反魔の盾は元々は王国が所有していた宝具の一つだが、当時の国王はゴルドを気に入り、彼に正式に譲り渡したと伝わっている。それ以来、反魔の盾はゴルドの家系の人間が管理しているはずだが……これをどうして君が持っている」
「まさか、ナイさんがゴルドの子孫……!?」
「伝説の騎士の血を継いでいた……だからあんなに強い?」
リンはナイが「反魔の盾」をナイが所有していた事を問い質し、他の者達も驚く。しかし、ナイは自分がゴルドの子孫ではない事をはっきりと伝えた。
「その盾は……親友の形見なんです。名前はゴマンといって……その、ゴルドという人の家系の人間なんですけど」
「何?ではこの盾は君の物ではないんだな?」
「はい……借りているだけです」
「借りている……ですけど、これは仮にも伝説の騎士の盾ですのよ。そんな盾をゴマンという御方は貸してくれたのですか?」
ナイの言葉を聞いてリンは訝しみ、ドリスは不思議そうな表情を浮かべる。そんな二人に対してナイは正直に自分が盾を手にした経緯を話した。
「ゴマンはもう……亡くなりました。この盾を貸してくれた後、魔物に襲われて殺されたんです。多分、ゴマンの家族も一緒に……」
「そんな……では、ゴルドの家系の人たちはもう生きておられないんですの!?」
「伝説の騎士の家系が潰えたというわけかい……悲しいね」
「ナイ……」
ゴルドの家系の人間が既に死亡したという話にドリスは衝撃を受け、リンやテンも伝説の騎士として伝えられたゴルドの子孫がいない事に何とも言えない気持ちを味わう。二人とも王国騎士としてゴルドの存在は知っており、それだけに彼の家系が潰えた事は残念でならない。
ナイとしてもまさかゴマンの盾が「反魔の盾」と呼ばれる大層な代物だとは思いもよらず、彼の先祖がどれだけ偉大な人物だったのかを思い知らされる。それだけにナイはゴマンがその事実を知らずに亡くなった事を悲しく思う。
(ゴマンの先祖、本当に凄い人だったんだね……)
円卓の上に置かれた盾にナイは視線を向け、ゴマンが生きていればリンの話を聞けばどんな反応をするのだろうと気になる。驚くのか、喜ぶのか、あるいは自慢するのか、どちらにしろ彼が生きていなければ確かめようがない。
ゴマンの盾の秘密が明かされた事でナイは彼の先祖がどれほど偉大な騎士だったのか思い知るが、ここで不意にどうしてそんな騎士が国を離れ、辺境の地で村を作ったのか気になった。
だが、理由は不明だがその騎士は王都を離れ、辺境の地にて村を作ったという。つまり、ナイ達が暮らしている村は元々はゴマンの先祖が作り上げた村という事になる。だからこそゴマンの家系の人間は村長として村を治めてきた。
元鍛冶師であるアルによればゴマンの盾は旋斧と同様に魔法金属で構成され、外部からの衝撃を跳ね返す性質を持っている。しかも受けた衝撃をそのまま返すだけではなく、衝撃を倍に増幅させて跳ね返す。他にも魔法攻撃を跳ね返す事も可能でこの盾のお陰でナイは何度も命を救われている。
元々の所有者であるゴマンは既に死亡し、現在は彼の形見という事でナイが手放せなかったが、王国騎士によるリンが調べたところ、本来は一般人が扱っていい代物ではないと判明した。
「この盾の正式名称は「反魔の盾」伝説の盾騎士として称えられたゴルドという名前の王国騎士が所有していた盾だ」
「え、ゴルド……?」
ナイはゴルドという名前には聞き覚えがあり、確かゴマンの先祖の名前にもゴルドという男性がいたという話を聞いていた。リンによるとゴルドはかつてこの国で英雄として歴史に名を刻んだ偉大な王国騎士だという。
「ゴルドは騎士でありながら盾の類しか装備せず、鉄壁の騎士の異名を名付けられた。彼は敵を攻める戦は不得手としたが、守りを主軸とした戦では生涯に一度も敗北した事はない。かつて獣人国が1万人の兵を率いて攻め寄せた時、ゴルドはたった数百人の兵士と共に砦に立て籠もり、10日間も守り抜き、遂には援軍が到着して獣人国の軍隊を撃退した記録もある」
「へえっ……1万の敵軍相手に10倍以上の兵力だけで耐え切ったのかい」
「記録によれば彼は盾を扱う理由は攻撃こそが最大の防御と言われるのならば、最高の防御力こそ最強の攻撃力になり得る、という考えの元で戦場でも武器の類は使わず、盾のみで戦い抜いたと言われていますわ」
「そ、それはどういう理屈ですか……?」
ゴルドは生涯で武器を一度も装備して戦った事はなく、実際に彼は盾のみで戦い続けて功績を残した。そして彼の功績を称えて当時の国王はゴルドに「反魔の盾」を送ったという。
「反魔の盾は元々は王国が所有していた宝具の一つだが、当時の国王はゴルドを気に入り、彼に正式に譲り渡したと伝わっている。それ以来、反魔の盾はゴルドの家系の人間が管理しているはずだが……これをどうして君が持っている」
「まさか、ナイさんがゴルドの子孫……!?」
「伝説の騎士の血を継いでいた……だからあんなに強い?」
リンはナイが「反魔の盾」をナイが所有していた事を問い質し、他の者達も驚く。しかし、ナイは自分がゴルドの子孫ではない事をはっきりと伝えた。
「その盾は……親友の形見なんです。名前はゴマンといって……その、ゴルドという人の家系の人間なんですけど」
「何?ではこの盾は君の物ではないんだな?」
「はい……借りているだけです」
「借りている……ですけど、これは仮にも伝説の騎士の盾ですのよ。そんな盾をゴマンという御方は貸してくれたのですか?」
ナイの言葉を聞いてリンは訝しみ、ドリスは不思議そうな表情を浮かべる。そんな二人に対してナイは正直に自分が盾を手にした経緯を話した。
「ゴマンはもう……亡くなりました。この盾を貸してくれた後、魔物に襲われて殺されたんです。多分、ゴマンの家族も一緒に……」
「そんな……では、ゴルドの家系の人たちはもう生きておられないんですの!?」
「伝説の騎士の家系が潰えたというわけかい……悲しいね」
「ナイ……」
ゴルドの家系の人間が既に死亡したという話にドリスは衝撃を受け、リンやテンも伝説の騎士として伝えられたゴルドの子孫がいない事に何とも言えない気持ちを味わう。二人とも王国騎士としてゴルドの存在は知っており、それだけに彼の家系が潰えた事は残念でならない。
ナイとしてもまさかゴマンの盾が「反魔の盾」と呼ばれる大層な代物だとは思いもよらず、彼の先祖がどれだけ偉大な人物だったのかを思い知らされる。それだけにナイはゴマンがその事実を知らずに亡くなった事を悲しく思う。
(ゴマンの先祖、本当に凄い人だったんだね……)
円卓の上に置かれた盾にナイは視線を向け、ゴマンが生きていればリンの話を聞けばどんな反応をするのだろうと気になる。驚くのか、喜ぶのか、あるいは自慢するのか、どちらにしろ彼が生きていなければ確かめようがない。
ゴマンの盾の秘密が明かされた事でナイは彼の先祖がどれほど偉大な騎士だったのか思い知るが、ここで不意にどうしてそんな騎士が国を離れ、辺境の地で村を作ったのか気になった。
10
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話7話。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる