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王都での騒動
閑話 〈旋斧の謎〉
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――時は遡り、ナイが旅立ってから数日後にイーシャンが訪れた。彼は連日魔物による被害を受けた人間の治療を行っていたが、今日はやっと休みの時間が取れてドルトンの元へ訪れる。
「ふむ、これぐらいの怪我なら大丈夫だろう」
「すまんのう……年を重ねると回復魔法の効果も薄れるからな」
ベッドの上にてドルトンは横になり、彼はイーシャンの治療を受けていた。本来であれば陽光教会に赴いて回復魔法も受けた方がいいのだが、生憎と陽光教会の方では街中から集まった怪我人の世話で手一杯だった。
それに高齢者の場合は回復魔法の効きが悪いため、回復魔法よりも薬品の類で治療する方が効果が高い。イーシャンが用意してくれた薬草を調合した薬のお陰でドルトンの怪我も大分良くなっていた。
「たくっ、昔は冒険者だからといって無茶をし過ぎた。年を考えろ、年を……」
「ははは、まさかこの年齢でゴブリンを殴り倒す日が来るとは思いもしなかったがな……」
「昔は「鋼腕」とまで呼ばれた男が今ではよぼよぼの爺さんとはな……」
「やかましいわい」
ドルトンはかつて冒険者だった頃、その生まれ持った優れた腕力で相手を殴りつける戦法を得意とした事から「鋼腕」の渾名が名付けられた。これは鋼の腕手甲を身に付けて殴りつけた事が由来だという。
彼の腕手甲はもう武器といっても過言ではなく、そのせいか「鋼腕」が扱う武器だから「闘拳」という名前まで付けられた。
「それにしてもあんたに頼まれてあの坊主にあの武器を渡したが、一つ聞きたいことがあるんだが誰にあれを直して貰ったんだ?」
「あれ?」
「惚けるなよ、旋斧の事だ。最初にあれをナイから預かった時、随分とボロボロだったじゃないか」
イーシャンはドルトンに頼まれてナイに旋斧と彼が装備していた腕鉄鋼を託したが、あの時に彼は驚いたのは旋斧が新品のように磨かれていた事だった。
ナイがこの街に訪れて旋斧を預けた際、二年近くも岩や魔物を相手に叩きつけられていたせいで刃毀れが酷く、赤毛熊との戦闘で刃がさらに痛めつけられ、今にも壊れかねない状態だった。しかし、ドルトンにナイに渡す様に頼まれた時は何故か旋斧は名工に打ち直された妖に刃毀れもなく、新品同然の状態で保管されていた。
「俺が知らない間にどんな名工にあれを直して貰ったんだ?前に修理に出そうとした時に刃が硬すぎて砥石でも研げなくて返されたとぼやいてたくせに……」
「…………」
最初の頃にドルトンはナイから旋斧を受け取った時、彼の商会と契約している鍛冶師に旋斧の修理を頼む。だが、鍛冶師によると旋斧は見た目こそが酷い状態だが、普通の金属ではなく魔法金属で構成されているため、普通の武器のように簡単には修理できないという。
鍛冶師の話によると刃毀れを直そうと砥石を用意しても逆に砥石の方が持たず、いくら熱しても溶解せず、修復は不可能だと言われたという話をイーシャンはドルトンから聞いていた。それなのにナイに渡す時は旋斧は新品同然に修復されていた。
「あの旋斧を直せる程の鍛冶師だ、きっとさぞ高名な鍛冶師を雇ったんだろうな。教えろよ、どんな奴に頼んだんだ?」
「……頼んでなどいない、そもそも儂はあれをずっと放置しておったのだ」
「は?いや、何言ってんだ?」
ドルトンの言葉を聞いてイーシャンは呆気に取られ、誰も直していないのにどうして旋斧が直っているのだと彼は戸惑う。しかし、ドルトンは神妙な表情を浮かべて告げる。
「儂も旋斧がどうしてあんな状態になっていたのか知らんのだ……色々な鍛冶師に当たってみたが誰もが直す事ができないと言われ、諦めて保管しておった。しかし、ナイがここへ来た時には勝手に刃が復元されていた」
「そんな馬鹿な……有り得ないだろう?」
「確かに信じられんのも無理はない。儂自身も何が起きたのか分からんからな……もしかしたら天国からアルの奴がやってきて勝手に旋斧を修理したのかもな」
「おい、茶化すなよ……」
「すまん、だが本当に儂はあの武器には何もしておらん。まるで主人《ナイ》のために刃が勝手に治ったようにしか思えんのだ……」
「…………」
イーシャンはドルトンの話を聞いても信じられず、自分をからかっているのかと思ったが、ドルトンはこんな時に冗談を言う男ではない。そもそも旋斧にも秘密が多く、あの武器の事は二人は何も知らない。
アルの家系にに伝わる武器であり、非常に頑丈で並の武器などとは比べ物にならない硬度を誇る。しかし、その真の能力の事はこの時は誰も知らなかった――
「ふむ、これぐらいの怪我なら大丈夫だろう」
「すまんのう……年を重ねると回復魔法の効果も薄れるからな」
ベッドの上にてドルトンは横になり、彼はイーシャンの治療を受けていた。本来であれば陽光教会に赴いて回復魔法も受けた方がいいのだが、生憎と陽光教会の方では街中から集まった怪我人の世話で手一杯だった。
それに高齢者の場合は回復魔法の効きが悪いため、回復魔法よりも薬品の類で治療する方が効果が高い。イーシャンが用意してくれた薬草を調合した薬のお陰でドルトンの怪我も大分良くなっていた。
「たくっ、昔は冒険者だからといって無茶をし過ぎた。年を考えろ、年を……」
「ははは、まさかこの年齢でゴブリンを殴り倒す日が来るとは思いもしなかったがな……」
「昔は「鋼腕」とまで呼ばれた男が今ではよぼよぼの爺さんとはな……」
「やかましいわい」
ドルトンはかつて冒険者だった頃、その生まれ持った優れた腕力で相手を殴りつける戦法を得意とした事から「鋼腕」の渾名が名付けられた。これは鋼の腕手甲を身に付けて殴りつけた事が由来だという。
彼の腕手甲はもう武器といっても過言ではなく、そのせいか「鋼腕」が扱う武器だから「闘拳」という名前まで付けられた。
「それにしてもあんたに頼まれてあの坊主にあの武器を渡したが、一つ聞きたいことがあるんだが誰にあれを直して貰ったんだ?」
「あれ?」
「惚けるなよ、旋斧の事だ。最初にあれをナイから預かった時、随分とボロボロだったじゃないか」
イーシャンはドルトンに頼まれてナイに旋斧と彼が装備していた腕鉄鋼を託したが、あの時に彼は驚いたのは旋斧が新品のように磨かれていた事だった。
ナイがこの街に訪れて旋斧を預けた際、二年近くも岩や魔物を相手に叩きつけられていたせいで刃毀れが酷く、赤毛熊との戦闘で刃がさらに痛めつけられ、今にも壊れかねない状態だった。しかし、ドルトンにナイに渡す様に頼まれた時は何故か旋斧は名工に打ち直された妖に刃毀れもなく、新品同然の状態で保管されていた。
「俺が知らない間にどんな名工にあれを直して貰ったんだ?前に修理に出そうとした時に刃が硬すぎて砥石でも研げなくて返されたとぼやいてたくせに……」
「…………」
最初の頃にドルトンはナイから旋斧を受け取った時、彼の商会と契約している鍛冶師に旋斧の修理を頼む。だが、鍛冶師によると旋斧は見た目こそが酷い状態だが、普通の金属ではなく魔法金属で構成されているため、普通の武器のように簡単には修理できないという。
鍛冶師の話によると刃毀れを直そうと砥石を用意しても逆に砥石の方が持たず、いくら熱しても溶解せず、修復は不可能だと言われたという話をイーシャンはドルトンから聞いていた。それなのにナイに渡す時は旋斧は新品同然に修復されていた。
「あの旋斧を直せる程の鍛冶師だ、きっとさぞ高名な鍛冶師を雇ったんだろうな。教えろよ、どんな奴に頼んだんだ?」
「……頼んでなどいない、そもそも儂はあれをずっと放置しておったのだ」
「は?いや、何言ってんだ?」
ドルトンの言葉を聞いてイーシャンは呆気に取られ、誰も直していないのにどうして旋斧が直っているのだと彼は戸惑う。しかし、ドルトンは神妙な表情を浮かべて告げる。
「儂も旋斧がどうしてあんな状態になっていたのか知らんのだ……色々な鍛冶師に当たってみたが誰もが直す事ができないと言われ、諦めて保管しておった。しかし、ナイがここへ来た時には勝手に刃が復元されていた」
「そんな馬鹿な……有り得ないだろう?」
「確かに信じられんのも無理はない。儂自身も何が起きたのか分からんからな……もしかしたら天国からアルの奴がやってきて勝手に旋斧を修理したのかもな」
「おい、茶化すなよ……」
「すまん、だが本当に儂はあの武器には何もしておらん。まるで主人《ナイ》のために刃が勝手に治ったようにしか思えんのだ……」
「…………」
イーシャンはドルトンの話を聞いても信じられず、自分をからかっているのかと思ったが、ドルトンはこんな時に冗談を言う男ではない。そもそも旋斧にも秘密が多く、あの武器の事は二人は何も知らない。
アルの家系にに伝わる武器であり、非常に頑丈で並の武器などとは比べ物にならない硬度を誇る。しかし、その真の能力の事はこの時は誰も知らなかった――
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