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王都での騒動
第219話 旋斧の真の力
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『ア、ガァッ……アアアアッ!!』
「嘘、だろ……」
「そ、そんな……」
「まだ、動けるの……!?」
ナイが繰り出した全身全霊の一撃を受けたにも関わらず、ガーゴイル亜種はゆっくりと起き上がり、胸元に大きな亀裂が走りながらも生きていた。最後のナイの攻撃も胸元に埋め込まれているはずの経験石には届かず、破壊を免れたらしい。
それでも深手を負った事に変わりはなく、ガーゴイル亜種は立ち上がる事もできない様子だった。その様子を見ていたヒイロとミイナはナイを助けるため、彼女達は向かう。
「ナイ、逃げて……!!」
「早く、離れてください!!」
「くっ……!!」
『シャアアッ……!!』
ガーゴイル亜種が碌に動けない間にナイは自分も起き上がり、逃げようとした。だが、ここまで戦い続けて肉体の限界が近く、思うように動けない。
(さっきの攻撃でもう魔力は残っていない……!!)
最後の攻撃でナイ自身も限界近くまで魔力を使い果たし、もう魔操術も技能を発動させる事もできない。それでも生き延びるためにナイは起き上がろうとするが、そんな彼にガーゴイル亜種は口元を開く。
『アガァアアアッ……!!』
「何をっ……!?」
「ま、まさか……ナイさん、早く離れてください!!」
「逃げて、早くっ!!」
ガーゴイル亜種の行動にヒイロとミイナは血相を変え、ナイの元へ向かおうとする。しかし、二人もこれまでの戦闘で体力を使い果たし、思うように走れない。
ナイもガーゴイル亜種が何かを仕掛ける前に逃げようとするが、足に力が入らない。ならばせめて盾で防ごうとするが、ここでゴマンの盾が手元にない事に気付く。
(盾が……!?)
先ほどの攻撃の際にどうやら右腕に装着していた盾も外れてしまい、離れた場所に落ちていた。咄嗟にナイは盾に手を伸ばすが、その間にもガーゴイル亜種の口元に紫色の炎が迸る。
(まさか、火を吐くつもりか!?)
ガーゴイル亜種の口元を見てナイは目を見開き、この距離で炎を吐かれればナイには避ける手段はない。咄嗟にナイは目の前に落ちていた旋斧を拾い上げ、刃を構えようとした。
(やるしかない!!)
相手が攻撃を仕掛ける前にナイは旋斧を振りかざし、ガーゴイル亜種の口元に向けて放つ。ただの悪あがきにしか過ぎない行為だが、この時に旋斧の刃に異変が生じた。
「うおおおおっ!!」
『ガハァッ……!?』
右足を失って体勢を崩していたガーゴイル亜種の口元にナイは旋斧を突き立てた瞬間、紫色の炎が旋斧の刃を覆い込むが、その直後に旋斧の刃に炎が吸い込まれるように消えていく。
やがて旋斧の刃が赤く光り輝き、その光景を確認したナイは驚くが、咄嗟に旋斧を口元から引き抜くと、ナイはそのまま胸元に向けて放つ。
「くたばれぇっ!!」
『アギャアアアアアッ!?』
まるで赤子のような悲鳴を上げているガーゴイル亜種の胸元に赤く発光した旋斧の刃が叩き込まれ、次の瞬間にガーゴイル亜種の肉体が発熱したかのように煙を上げ、体内に存在した経験石が破壊される。
ガーゴイル亜種は全身から煙を噴き出しながら地面に倒れ込み、完全な石像と化した。その様子を見届けたナイは信じられない表情を浮かべ、旋斧に視線を向けた。
(何だ、これ……!?)
旋斧はしばらくは赤色の発光し続けたが、やがて徐々に光が収まり、元の色へと戻っていく。その様子を見てナイは呆気に取られ、もう数年も使い続けている武器だが、旋斧が先ほどのような変化を遂げた事は一度もない。
(そういえば爺ちゃんは旋斧にも魔法金属が使われているかもしれないと言ってたけど……まさか、本当に魔剣だったのか?)
ナイはかつてアルから教わった話を思い出す。ミスリル鉱石を採取する際、ゴマンの持っている盾とナイが所有する旋斧は魔法金属で構成されている事を語った。だからこそ旋斧は並の金属製の武器よりも頑丈で壊れにくく、今までどんなに扱っても刃毀れする事は合っても完全に壊れる事はなかった。
先ほどの攻防でナイがガーゴイル亜種に攻撃を仕掛けた際、ガーゴイル亜種は口元に紫色の炎を宿していた。その炎に触れた瞬間に旋斧はまるで炎を吸収して赤く発光しように見えた。しかも発光するだけではなく、ガーゴイル亜種に攻撃した際に高熱を発していた様に見えなかった。
(ヒイロの魔剣と違って炎は纏っていなかったけど……凄い力だったな)
未だに煙を噴き出すガーゴイル亜種の死骸に視線を向け、ナイは旋斧の真の力を知って笑みを浮かべる。だが、そこでナイの緊張の糸が切れてしまい、意識を失ってしまう。
既にナイの肉体は限界を迎えており、ゆっくりと倒れ込むナイを見て慌ててヒイロとミイナは彼を助けようとした。だが、その前に何者かがナイの前に立ち、彼が地面に倒れる前に抱き留めた。
「ナイ君!!もう大丈夫だよ!!」
「うっ……」
「モモさん!?どうしてここに!?」
「モモ?先に逃げたんじゃ……」
ナイを抱き留めたのは屋敷に隠れていたモモであり、彼女はガーゴイル亜種の悲鳴を聞いて駆けつけてきた。ヒイロとミイナは彼女がいることに驚くが、そんな二人の後ろから聞き覚えのある女性の声が響く。
「いったいどうなってるんだい……あんた達、ここで何があったんだい?」
「「テン(さん)!?」」
「あ、テンさん!!もう遅いよ~!!」
「うぷぷっ……」
ヒイロとミイナの背後に立っていた人物はバーリと繋がっていた闇組織を壊滅させ、組織の頭からバーリとの関係を聞き出してこの場所に駆けつけた白猫亭の女主人にして元女騎士のテンであった。
「嘘、だろ……」
「そ、そんな……」
「まだ、動けるの……!?」
ナイが繰り出した全身全霊の一撃を受けたにも関わらず、ガーゴイル亜種はゆっくりと起き上がり、胸元に大きな亀裂が走りながらも生きていた。最後のナイの攻撃も胸元に埋め込まれているはずの経験石には届かず、破壊を免れたらしい。
それでも深手を負った事に変わりはなく、ガーゴイル亜種は立ち上がる事もできない様子だった。その様子を見ていたヒイロとミイナはナイを助けるため、彼女達は向かう。
「ナイ、逃げて……!!」
「早く、離れてください!!」
「くっ……!!」
『シャアアッ……!!』
ガーゴイル亜種が碌に動けない間にナイは自分も起き上がり、逃げようとした。だが、ここまで戦い続けて肉体の限界が近く、思うように動けない。
(さっきの攻撃でもう魔力は残っていない……!!)
最後の攻撃でナイ自身も限界近くまで魔力を使い果たし、もう魔操術も技能を発動させる事もできない。それでも生き延びるためにナイは起き上がろうとするが、そんな彼にガーゴイル亜種は口元を開く。
『アガァアアアッ……!!』
「何をっ……!?」
「ま、まさか……ナイさん、早く離れてください!!」
「逃げて、早くっ!!」
ガーゴイル亜種の行動にヒイロとミイナは血相を変え、ナイの元へ向かおうとする。しかし、二人もこれまでの戦闘で体力を使い果たし、思うように走れない。
ナイもガーゴイル亜種が何かを仕掛ける前に逃げようとするが、足に力が入らない。ならばせめて盾で防ごうとするが、ここでゴマンの盾が手元にない事に気付く。
(盾が……!?)
先ほどの攻撃の際にどうやら右腕に装着していた盾も外れてしまい、離れた場所に落ちていた。咄嗟にナイは盾に手を伸ばすが、その間にもガーゴイル亜種の口元に紫色の炎が迸る。
(まさか、火を吐くつもりか!?)
ガーゴイル亜種の口元を見てナイは目を見開き、この距離で炎を吐かれればナイには避ける手段はない。咄嗟にナイは目の前に落ちていた旋斧を拾い上げ、刃を構えようとした。
(やるしかない!!)
相手が攻撃を仕掛ける前にナイは旋斧を振りかざし、ガーゴイル亜種の口元に向けて放つ。ただの悪あがきにしか過ぎない行為だが、この時に旋斧の刃に異変が生じた。
「うおおおおっ!!」
『ガハァッ……!?』
右足を失って体勢を崩していたガーゴイル亜種の口元にナイは旋斧を突き立てた瞬間、紫色の炎が旋斧の刃を覆い込むが、その直後に旋斧の刃に炎が吸い込まれるように消えていく。
やがて旋斧の刃が赤く光り輝き、その光景を確認したナイは驚くが、咄嗟に旋斧を口元から引き抜くと、ナイはそのまま胸元に向けて放つ。
「くたばれぇっ!!」
『アギャアアアアアッ!?』
まるで赤子のような悲鳴を上げているガーゴイル亜種の胸元に赤く発光した旋斧の刃が叩き込まれ、次の瞬間にガーゴイル亜種の肉体が発熱したかのように煙を上げ、体内に存在した経験石が破壊される。
ガーゴイル亜種は全身から煙を噴き出しながら地面に倒れ込み、完全な石像と化した。その様子を見届けたナイは信じられない表情を浮かべ、旋斧に視線を向けた。
(何だ、これ……!?)
旋斧はしばらくは赤色の発光し続けたが、やがて徐々に光が収まり、元の色へと戻っていく。その様子を見てナイは呆気に取られ、もう数年も使い続けている武器だが、旋斧が先ほどのような変化を遂げた事は一度もない。
(そういえば爺ちゃんは旋斧にも魔法金属が使われているかもしれないと言ってたけど……まさか、本当に魔剣だったのか?)
ナイはかつてアルから教わった話を思い出す。ミスリル鉱石を採取する際、ゴマンの持っている盾とナイが所有する旋斧は魔法金属で構成されている事を語った。だからこそ旋斧は並の金属製の武器よりも頑丈で壊れにくく、今までどんなに扱っても刃毀れする事は合っても完全に壊れる事はなかった。
先ほどの攻防でナイがガーゴイル亜種に攻撃を仕掛けた際、ガーゴイル亜種は口元に紫色の炎を宿していた。その炎に触れた瞬間に旋斧はまるで炎を吸収して赤く発光しように見えた。しかも発光するだけではなく、ガーゴイル亜種に攻撃した際に高熱を発していた様に見えなかった。
(ヒイロの魔剣と違って炎は纏っていなかったけど……凄い力だったな)
未だに煙を噴き出すガーゴイル亜種の死骸に視線を向け、ナイは旋斧の真の力を知って笑みを浮かべる。だが、そこでナイの緊張の糸が切れてしまい、意識を失ってしまう。
既にナイの肉体は限界を迎えており、ゆっくりと倒れ込むナイを見て慌ててヒイロとミイナは彼を助けようとした。だが、その前に何者かがナイの前に立ち、彼が地面に倒れる前に抱き留めた。
「ナイ君!!もう大丈夫だよ!!」
「うっ……」
「モモさん!?どうしてここに!?」
「モモ?先に逃げたんじゃ……」
ナイを抱き留めたのは屋敷に隠れていたモモであり、彼女はガーゴイル亜種の悲鳴を聞いて駆けつけてきた。ヒイロとミイナは彼女がいることに驚くが、そんな二人の後ろから聞き覚えのある女性の声が響く。
「いったいどうなってるんだい……あんた達、ここで何があったんだい?」
「「テン(さん)!?」」
「あ、テンさん!!もう遅いよ~!!」
「うぷぷっ……」
ヒイロとミイナの背後に立っていた人物はバーリと繋がっていた闇組織を壊滅させ、組織の頭からバーリとの関係を聞き出してこの場所に駆けつけた白猫亭の女主人にして元女騎士のテンであった。
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