貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
217 / 1,110
王都での騒動

第216話 ナイVSガーゴイル亜種

しおりを挟む
『シャアアアッ!!』
「くぅっ!?」
「させるかぁあああっ!!」


ガーゴイル亜種がミイナに向けて攻撃を仕掛ける寸前、背中に強烈な衝撃が走り、悲鳴が響く。何が起きたのかとガーゴイル亜種は振り返ると、そこには自分の背中に退魔刀を突き刺すナイの姿が存在した。

ナイが攻撃を仕掛ける際、全力で退魔刀を突き刺す。繰り出した刃はガーゴイル亜種の肉体に深々と突き刺さり、それによってガーゴイル亜種は悲鳴を上げる。


『シャギャアアアッ!?』
「まだまだ!!」


背中に突き刺さった退魔刀に目掛けてナイは蹴りを繰り出して更に深く貫く。ガーゴイル亜種は体勢を崩して膝を地面に着く。

ガーゴイル亜種が動けない間にナイはミイナの元へと急ぎ、疲労困憊の彼女を抱き上げて距離を取る。ミイナは吹き飛ばされたはずナイが戻ってきた事に戸惑うが、彼女は自分を救ってくれたナイに素直に感謝した。


「あ、ありがとう……」
「もう大丈夫、後は僕に任せて」
「ナ、ナイさん……申し訳ありません」


先に吹き飛ばされたヒイロの元にナイは駆けつけ、彼女の傍にミイナを下ろすと後の事は任せる。今はナイしか戦える人間はおらず、彼は改めてガーゴイル亜種と向き合う。

ガーゴイル亜種は背中に突き刺さった退魔刀を引き抜こうとするが、上手く抜け出せずにもがいていた。完全にナイ達の事は眼中になく、それを確認したナイは二人に避難する様に促す。


「二人は隠れてて……後の事は僕が何とかする」
「む、無茶です……いくらナイさんといえども、あの化物に一人で立ち向かうなんて」
「ヒイロ、ここはナイに任せるしかない……ナイ、頑張って」


ヒイロはナイの言葉を聞いて慌てて止めようとするが、ミイナの方はナイの雰囲気が変化している事に気付き、彼に任せる事にした。その言葉にナイは頷き、旋斧を引き抜く。


(体調は万全、旋斧と盾も手に入れた……負ける気がしない!!)


ガーゴイル亜種に向けてナイは駆け出すと、この時に剛力と跳躍を発動させて一気に距離を詰める。その移動速度は目にも止まらず、ガーゴイル亜種は接近するナイに対して目を見開く。


『シャアッ……!?』
「はああっ!!」


ナイはガーゴイル亜種の足元に目掛けて旋斧を振りかざし、全力の一撃を叩き込む。その結果、ガーゴイル亜種の右足に刃が叩き込まれ、亀裂が走った。


『グギャッ!?』
「くぅっ……やっぱり、硬いな」


赤毛熊をも切り裂くナイの攻撃力でもガーゴイル亜種の肉体を切断するまでには至らず、罅割れを起こすのが精いっぱいだった。だが、攻撃を続ければいつかは壊れるのは間違いなく、ナイは続けて何度も同じ個所に攻撃を行う。


「このっ!!」
『アガァッ!?グゥッ……シャアアッ!!』
「うわっ!?」


ガーゴイル亜種の方も執拗に攻撃を繰り返すナイに対して腕を放ち、彼を仕留めようとした。いくら回復したとはいえ、ガーゴイル亜種の攻撃を喰らえばナイも無事では済まず、死ぬ可能性もある。

それでもナイは距離を開かずに敢えてガーゴイル亜種の懐に飛び込み、攻撃を繰り返す。逃げ腰ではガーゴイル亜種に勝てるはずがなく、敢えて危地に踏み込んで攻撃を仕掛ける。それ以外にナイがガーゴイル亜種に勝てる手段はなかった。


(もう少しで……壊せる!!)


幾度もナイはガーゴイル亜種の肉体に旋斧を叩きつけ、徐々に全身に亀裂が広がっていく。このまま攻撃を続ければガーゴイル亜種の肉体を砕く事は間違いなく、ナイは渾身の力を込めて旋斧を振り抜く。


「やああっ!!」
『ギャアッ!?』


遂にはナイの旋斧が右足に食い込み、破壊まであと一歩だった。しかし、ここでガーゴイル亜種は旋斧の刃を掴み、右腕に食い込んだ状態のまま手放さない。


『グゥウッ……!?』
「このっ……離せっ!!」


往生際が悪く傷口にめり込んだ旋斧を外そうとしないガーゴイル亜種にナイは必死に旋斧を引き抜こうとするが、単純な膂力はガーゴイル亜種が勝る。剛力を発動して腕力を強化しても旋斧は引き抜けず、このままでは奪われてしまう。


(まずい、何とかしないと……!!)


ナイは右腕の盾に視線を向け、ある事を思い出す。それはモモが使用した「発勁」と呼ばれる技であり、あの技は壁越しでも衝撃を伝えて向かい側に存在する兵士さえも吹き飛ばした。

発勁はそもそも体内に衝撃を送り込む技なのだとヒナは説明していたが、その発勁ならばガーゴイルのような相手にも通じるのではないかと考える。ナイは盾を構え、旋斧を手放すと刺剣を取り出す。


(一か八か!!)


剛力を利用して刺剣を手にした左腕の筋力を強化させ、盾に向けて刺剣を突き刺す。ゴマンから借り受けたこの盾は外部から攻撃を受けると衝撃波で跳ね返す性質を持ち合わせ、攻撃の威力が強ければ強いほどに衝撃波を放つ。


「喰らえっ!!」
『ッ――!?』


盾に刺剣が衝突した瞬間、衝撃波が発生するとガーゴイル亜種の肉体に放たれ、身体のあちこちに発生していた亀裂が更に広まり、ガーゴイル亜種は悲鳴を上げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...