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王都での騒動
第201話 負傷
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「ぐうっ!?」
「ナイ君、危ない!!」
『ギャギャッ!!』
退魔刀に乗り込んだガーゴイルは右腕を振りかざすと、鋭い爪でナイに攻撃を仕掛けようとした。しかし、その爪が当たる前にナイは剛力を発動させると、刃を床から引き抜いて力ずくで振り払う。
「舐めるなぁっ!!」
『ギャウッ!?』
「ば、馬鹿なっ!?」
ナイは退魔刀を持ち上げると、そのまま窓に目掛けてガーゴイルを投げ飛ばす。ガーゴイルは窓を破壊して外へと飛び出し、その様子を見たバーリは信じられない声を上げる。
ガーゴイルは石像の化物であり、その重量は本物の岩石並である。そんなガーゴイルを窓へ放り投げたナイの腕力にバーリは動揺し、そんな彼に対してナイは睨みつけた。
「よくもやったな……」
「ひいっ!?ゆ、許してくれ!!」
「ナイ君、そいつからペンダントを引き剥がして!!」
ヒナの言葉にナイは頷き、明らかにガーゴイルが動き出したのはバーリが首に掲げているペンダントが原因だった。ならばそのペンダントを取り上げればもしかしたらガーゴイルを止める手段もあるのではないかと思い、ナイはバーリのペンダントに手を伸ばす。
「それを渡せ!!」
「や、止めろ!?触れるな、これは儂以外に扱う事は……」
『ギャギャアッ!!』
ナイがバーリからペンダントを奪い取ろうとした瞬間、破壊された窓からガーゴイルが再び飛び込み、部屋の中へと戻って来た。ここでナイはガーゴイルが空を飛べることを忘れていた。
ガーゴイルは自分を外に放り出したナイを標的に定め、真っ先にナイに目掛けて突っ込む。それを見たナイは咄嗟に右腕を構えるが、ここでゴマンの盾を装備していない事に気付く。
(しまった!?)
普段はゴマンの盾を装備しているので反射的に動いてしまったが、時は既に遅く、ガーゴイルの放った右足が叩き込まれる。外見通りにガーゴイルの肉体は石のように硬く、しかも力が強くてナイの右腕は鈍い音を鳴らす。
「ぐあっ……!?」
「そんな!?」
「ナ、ナイ君……このぉっ!!よくもナイ君をっ!!」
『ウギャッ!?』
ナイが突き飛ばされたのを見てヒナは目を見開き、一方でモモの方はガーゴイルに対して掌底を叩き込む。思いもよらぬ掌底の威力でガーゴイルは突き飛ばされ、その隙にヒナはナイの元へ駆けつける。
「ナイ君、怪我を見せて!!」
「うっ……くそっ」
「そんな、酷い……こんなに腫れ上がって、これじゃあ戦えないわ」
攻撃を受けたナイの右腕をヒナが確認すると、先ほどの一撃でナイの右腕は赤く晴れ上がり、恐らくは骨にも罅が入っている。いくらナイが「頑丈」と「受身」の技能を習得していると言っても、ガーゴイルの攻撃には耐え切れなかった。
この状態では右腕は使い物にならず、回復薬の類も今は持ち合わせていない。回復魔法は自分自身には扱えないため、普通ならば治す事は出来ない。そんなナイを見てバーリは勝ち誇った表情を浮かべる。
「ふ、ふははっ!!儂に逆らうからそうなるのだ!!この愚か者共がっ!!」
『ギャウッ!!』
「ううっ……こ、この子硬いよ……!!」
「くっ……ここまで来てこんな奴がいるなんて」
ナイを庇うようにヒナとモモは立つが、戦力的には二人とは相性が悪い。石像の化物が相手では素手で戦うモモは不利であり、下手に攻撃を仕掛けたら彼女の方が身体を痛めてしまう。
ヒナの鉄扇でもガーゴイルに有効打を与えられる事は出来ない。対抗手段なければここは退くしかないかと思われた時、ナイは目を閉じて意識を集中させる――
――時は遡り、まだナイがドルトンの屋敷で世話になっていた頃、旅立つ前にナイはマホからある事を教えてもらった。
『ナイよ、旅に出るのならば気を付けなければならない事は何だと思う?』
『え?えっと……お金、ですか?』
『うむ、確かにお金も大切じゃな。だが、もっと大切な物があるじゃろう?それは身体じゃよ』
『身体……』
『大きな怪我や病気をすれば旅どころではなくなる』
『なるほど、そういわれるとそうですよね』
マホの言葉にナイは納得し、確かに身体が万全な状態でなければ旅に出るのは危険である。だが、旅を行う以上は環境が厳しい場所も訪れる事もあるだろう。そのため、マホは助言を行う。
『お主が何処まで旅をするのかはお主次第じゃが、旅をする以上は自分の肉体の健康管理をしっかりしておくことじゃ』
『なら、薬をちゃんと持っていけという事ですか?』
『その心掛けも大事じゃ。だが、重要なのは怪我や病気になりにくい肉体を作り出す事……そのための技術を儂が教えてやろう』
『え、どうやって……?』
ナイの言う通りに薬を常備して旅に出る事も正しい事だが、マホは怪我や病気になりにくい身体を作り上げる方法を彼に教えてくれた。
『本来ならば儂の弟子にしか教えんのだが、お主の親には色々と借りがあるからのう。これを覚えればお主はどんな怪我や病気にも対抗できる強靭な肉体を手に入れる事ができるぞ。無論、儂の弟子たちもこの術を覚えておる』
『ど、どんな術ですか!?』
『うむ、その名は……魔操術じゃ』
この日、ナイは魔導士であるマホから技術を授かり、この魔操術のお陰で彼はこれまでの旅で何度も窮地を脱する事が出来た――
「ナイ君、危ない!!」
『ギャギャッ!!』
退魔刀に乗り込んだガーゴイルは右腕を振りかざすと、鋭い爪でナイに攻撃を仕掛けようとした。しかし、その爪が当たる前にナイは剛力を発動させると、刃を床から引き抜いて力ずくで振り払う。
「舐めるなぁっ!!」
『ギャウッ!?』
「ば、馬鹿なっ!?」
ナイは退魔刀を持ち上げると、そのまま窓に目掛けてガーゴイルを投げ飛ばす。ガーゴイルは窓を破壊して外へと飛び出し、その様子を見たバーリは信じられない声を上げる。
ガーゴイルは石像の化物であり、その重量は本物の岩石並である。そんなガーゴイルを窓へ放り投げたナイの腕力にバーリは動揺し、そんな彼に対してナイは睨みつけた。
「よくもやったな……」
「ひいっ!?ゆ、許してくれ!!」
「ナイ君、そいつからペンダントを引き剥がして!!」
ヒナの言葉にナイは頷き、明らかにガーゴイルが動き出したのはバーリが首に掲げているペンダントが原因だった。ならばそのペンダントを取り上げればもしかしたらガーゴイルを止める手段もあるのではないかと思い、ナイはバーリのペンダントに手を伸ばす。
「それを渡せ!!」
「や、止めろ!?触れるな、これは儂以外に扱う事は……」
『ギャギャアッ!!』
ナイがバーリからペンダントを奪い取ろうとした瞬間、破壊された窓からガーゴイルが再び飛び込み、部屋の中へと戻って来た。ここでナイはガーゴイルが空を飛べることを忘れていた。
ガーゴイルは自分を外に放り出したナイを標的に定め、真っ先にナイに目掛けて突っ込む。それを見たナイは咄嗟に右腕を構えるが、ここでゴマンの盾を装備していない事に気付く。
(しまった!?)
普段はゴマンの盾を装備しているので反射的に動いてしまったが、時は既に遅く、ガーゴイルの放った右足が叩き込まれる。外見通りにガーゴイルの肉体は石のように硬く、しかも力が強くてナイの右腕は鈍い音を鳴らす。
「ぐあっ……!?」
「そんな!?」
「ナ、ナイ君……このぉっ!!よくもナイ君をっ!!」
『ウギャッ!?』
ナイが突き飛ばされたのを見てヒナは目を見開き、一方でモモの方はガーゴイルに対して掌底を叩き込む。思いもよらぬ掌底の威力でガーゴイルは突き飛ばされ、その隙にヒナはナイの元へ駆けつける。
「ナイ君、怪我を見せて!!」
「うっ……くそっ」
「そんな、酷い……こんなに腫れ上がって、これじゃあ戦えないわ」
攻撃を受けたナイの右腕をヒナが確認すると、先ほどの一撃でナイの右腕は赤く晴れ上がり、恐らくは骨にも罅が入っている。いくらナイが「頑丈」と「受身」の技能を習得していると言っても、ガーゴイルの攻撃には耐え切れなかった。
この状態では右腕は使い物にならず、回復薬の類も今は持ち合わせていない。回復魔法は自分自身には扱えないため、普通ならば治す事は出来ない。そんなナイを見てバーリは勝ち誇った表情を浮かべる。
「ふ、ふははっ!!儂に逆らうからそうなるのだ!!この愚か者共がっ!!」
『ギャウッ!!』
「ううっ……こ、この子硬いよ……!!」
「くっ……ここまで来てこんな奴がいるなんて」
ナイを庇うようにヒナとモモは立つが、戦力的には二人とは相性が悪い。石像の化物が相手では素手で戦うモモは不利であり、下手に攻撃を仕掛けたら彼女の方が身体を痛めてしまう。
ヒナの鉄扇でもガーゴイルに有効打を与えられる事は出来ない。対抗手段なければここは退くしかないかと思われた時、ナイは目を閉じて意識を集中させる――
――時は遡り、まだナイがドルトンの屋敷で世話になっていた頃、旅立つ前にナイはマホからある事を教えてもらった。
『ナイよ、旅に出るのならば気を付けなければならない事は何だと思う?』
『え?えっと……お金、ですか?』
『うむ、確かにお金も大切じゃな。だが、もっと大切な物があるじゃろう?それは身体じゃよ』
『身体……』
『大きな怪我や病気をすれば旅どころではなくなる』
『なるほど、そういわれるとそうですよね』
マホの言葉にナイは納得し、確かに身体が万全な状態でなければ旅に出るのは危険である。だが、旅を行う以上は環境が厳しい場所も訪れる事もあるだろう。そのため、マホは助言を行う。
『お主が何処まで旅をするのかはお主次第じゃが、旅をする以上は自分の肉体の健康管理をしっかりしておくことじゃ』
『なら、薬をちゃんと持っていけという事ですか?』
『その心掛けも大事じゃ。だが、重要なのは怪我や病気になりにくい肉体を作り出す事……そのための技術を儂が教えてやろう』
『え、どうやって……?』
ナイの言う通りに薬を常備して旅に出る事も正しい事だが、マホは怪我や病気になりにくい身体を作り上げる方法を彼に教えてくれた。
『本来ならば儂の弟子にしか教えんのだが、お主の親には色々と借りがあるからのう。これを覚えればお主はどんな怪我や病気にも対抗できる強靭な肉体を手に入れる事ができるぞ。無論、儂の弟子たちもこの術を覚えておる』
『ど、どんな術ですか!?』
『うむ、その名は……魔操術じゃ』
この日、ナイは魔導士であるマホから技術を授かり、この魔操術のお陰で彼はこれまでの旅で何度も窮地を脱する事が出来た――
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