貧弱の英雄

カタナヅキ

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王都での騒動

第193話 隠し倉庫

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「マンドラゴラは普段は地中に隠れているけど、頭に生えている葉が薬草とよく似ている。だから素人が薬草だと思って間違って引っこ抜いた時、マンドラゴラは奇声を発する」
「その奇声を耳にした人間は鼓膜が破れて、最悪の場合は死に至る事もあるらしいわ。ちなみに引っこ抜かれたマンドラゴラは自力で地中に戻ると言われているわね」
「そういえば前にイーシャンさんから聞いたような……」


ナイは医者であるイーシャンから植物型の魔物の話は聞いており、植物型の魔物の多くは普通の植物に擬態しているらしく、マンドラゴラの場合は薬草に擬態しているという。

マンドラゴラは地中から引っこ抜かなければ大人しく、自ら人間に危害を与える存在ではない。しかし、マンドラゴラの死骸はあらゆる病気の特効薬にもなると噂され、マンドラゴラを狙う人間は多い。だが、採取する際は命に危険が及ぶ可能性があるため、この国では法律で医者以外にマンドラゴラの取り扱いは禁止されている。


「どうやらこの木箱の中のマンドラゴラは死んでいるようだけど、こんな物まで保管しているなんて……」
「他の木箱の中身も似たような物ばかり……これがバーリの悪事」
「じゃあ、証拠品として持って帰ればバーリを追い込めるんじゃないですか?」
「そうね、一応はいくつか持ち帰りましょう」


バーリの悪事の証拠になり得るかもしれず、ナイ達は倉庫の木箱を全て調べ回る。どれもこれもが違法品の品物ばかりが収納されていたが、その中でナイは奇妙な物を発見した。


「あれ、これは……」
「どうかしたの?」
「いや、これだけ木箱じゃなくて金属製の箱にしまってあるんですけど……何ですかね?」
「退魔刀、と書かれているわね」


ナイが発見した金属製の箱には「退魔刀」と書き込まれており、不思議に思ったナイは箱を開こうとすると、これだけ鍵が掛けられてる事が判明する。この箱だけ他の物と比べても厳重に管理されている事に怪しく思う。


「鍵が掛けられているみたいね……ナイ君、開ける事はできる?」
「やってみます」


刺剣を取り出したナイは鍵穴に差し込み、アル仕込みの鍵の解除を試みる。やがて鍵が開く音が鳴り響き、ナイ達は緊張しながらも中身を確認すると、箱の中に入っていたのは漆黒の大剣だった。


「なにかしらこれ……巨人族用の武器、にしては少し小さいわね」
「ドラゴンころ……竜殺しという名前が付けられていそう」
「いや、退魔刀と書かれてますから!!」


ミイナの危ない発言はともかく、ナイは大剣を手にするとかなり重く、どうにか持ち上げる事ができた。大きさも重さも旋斧よりも上回るが、旅で身体を鍛えてきた今のナイならば扱えなくはない。

手ごろな武器が欲しいと思っていたが、丁度いいのでナイはしばらくの間はこの武器を持っていく事にした。そうこうしている間にもミイナの方も目的の物を見つけたらしく、彼女は奪われた自分の装備品を発見する。


「こっちも見つけた……私の騎士団の制服と如意斧もここに保管されてたみたい」
「私もいいのを見つけたわ。これなら使えそうね」
「えっ……鉄扇?」


ミイナは自分の装備を取り戻すと、その間にヒナの方は鉄扇を手に取る。彼女の手にしたのは武器というよりも美術品の類だと思われるが、彼女は鉄扇を手にすると放り投げる。


「せいっ!!」
「わっ!?」
「おおっ」


ヒナが鉄扇を広げて投げつけると、鉄扇はまるでブーメランのように彼女の元へ戻る。その様子を見ていたナイは驚くが、ミイナは拍手を行う。


「うん、これなら使えそうね。私も戦えるわ」
「そ、それで戦うんですか?」
「ヒナを舐めない方が良い、どんな物でも武器に利用して戦える特技を持っている」
「武芸百般、とは違うかもしれなけれど……私もテンさんから鍛えられているから戦えるわよ」


鉄扇を手にしたヒナはこれで自分も戦えると判断すると、他の二人も準備を整える。ナイは退魔刀なる大剣を手にして、ミイナの方は本来の武器を取り戻した。

全ての準備を整えたナイ達はあとは証拠品をいくつか回収して戻ろうとした時、扉の外側の方から衝撃が走り、扉が壊れて部屋の中にモモとノイが飛び込んできた。


「わああっ!?」
「はうっ!?」
「モモ!?」
「ノイさん!?」


飛び込んできた二人の元にナイ達は駆けつけると、モモの方は意識はあったがノイの方は倒れた時に気絶したらしく、声をかけても目を覚まさない。そして扉の外側の方から足音が鳴り響き、聞き覚えのある男の声が響く。


「たくっ、嫌だな~……女に手を上げるのは俺の趣味じゃないってのに」
「文句を言うんじゃねえ!!傭兵なら貰った金の分だけ仕事を果たせ!!」
「お前は……!?」


通路から現れたのはナイを気絶させた「疾風のダン」と、もう一人は獣人族の男性だった。獣人の方は両手にはナイのような闘拳と酷似した腕手甲を装着していた。
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