貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
194 / 1,110
王都での騒動

第193話 隠し倉庫

しおりを挟む
「マンドラゴラは普段は地中に隠れているけど、頭に生えている葉が薬草とよく似ている。だから素人が薬草だと思って間違って引っこ抜いた時、マンドラゴラは奇声を発する」
「その奇声を耳にした人間は鼓膜が破れて、最悪の場合は死に至る事もあるらしいわ。ちなみに引っこ抜かれたマンドラゴラは自力で地中に戻ると言われているわね」
「そういえば前にイーシャンさんから聞いたような……」


ナイは医者であるイーシャンから植物型の魔物の話は聞いており、植物型の魔物の多くは普通の植物に擬態しているらしく、マンドラゴラの場合は薬草に擬態しているという。

マンドラゴラは地中から引っこ抜かなければ大人しく、自ら人間に危害を与える存在ではない。しかし、マンドラゴラの死骸はあらゆる病気の特効薬にもなると噂され、マンドラゴラを狙う人間は多い。だが、採取する際は命に危険が及ぶ可能性があるため、この国では法律で医者以外にマンドラゴラの取り扱いは禁止されている。


「どうやらこの木箱の中のマンドラゴラは死んでいるようだけど、こんな物まで保管しているなんて……」
「他の木箱の中身も似たような物ばかり……これがバーリの悪事」
「じゃあ、証拠品として持って帰ればバーリを追い込めるんじゃないですか?」
「そうね、一応はいくつか持ち帰りましょう」


バーリの悪事の証拠になり得るかもしれず、ナイ達は倉庫の木箱を全て調べ回る。どれもこれもが違法品の品物ばかりが収納されていたが、その中でナイは奇妙な物を発見した。


「あれ、これは……」
「どうかしたの?」
「いや、これだけ木箱じゃなくて金属製の箱にしまってあるんですけど……何ですかね?」
「退魔刀、と書かれているわね」


ナイが発見した金属製の箱には「退魔刀」と書き込まれており、不思議に思ったナイは箱を開こうとすると、これだけ鍵が掛けられてる事が判明する。この箱だけ他の物と比べても厳重に管理されている事に怪しく思う。


「鍵が掛けられているみたいね……ナイ君、開ける事はできる?」
「やってみます」


刺剣を取り出したナイは鍵穴に差し込み、アル仕込みの鍵の解除を試みる。やがて鍵が開く音が鳴り響き、ナイ達は緊張しながらも中身を確認すると、箱の中に入っていたのは漆黒の大剣だった。


「なにかしらこれ……巨人族用の武器、にしては少し小さいわね」
「ドラゴンころ……竜殺しという名前が付けられていそう」
「いや、退魔刀と書かれてますから!!」


ミイナの危ない発言はともかく、ナイは大剣を手にするとかなり重く、どうにか持ち上げる事ができた。大きさも重さも旋斧よりも上回るが、旅で身体を鍛えてきた今のナイならば扱えなくはない。

手ごろな武器が欲しいと思っていたが、丁度いいのでナイはしばらくの間はこの武器を持っていく事にした。そうこうしている間にもミイナの方も目的の物を見つけたらしく、彼女は奪われた自分の装備品を発見する。


「こっちも見つけた……私の騎士団の制服と如意斧もここに保管されてたみたい」
「私もいいのを見つけたわ。これなら使えそうね」
「えっ……鉄扇?」


ミイナは自分の装備を取り戻すと、その間にヒナの方は鉄扇を手に取る。彼女の手にしたのは武器というよりも美術品の類だと思われるが、彼女は鉄扇を手にすると放り投げる。


「せいっ!!」
「わっ!?」
「おおっ」


ヒナが鉄扇を広げて投げつけると、鉄扇はまるでブーメランのように彼女の元へ戻る。その様子を見ていたナイは驚くが、ミイナは拍手を行う。


「うん、これなら使えそうね。私も戦えるわ」
「そ、それで戦うんですか?」
「ヒナを舐めない方が良い、どんな物でも武器に利用して戦える特技を持っている」
「武芸百般、とは違うかもしれなけれど……私もテンさんから鍛えられているから戦えるわよ」


鉄扇を手にしたヒナはこれで自分も戦えると判断すると、他の二人も準備を整える。ナイは退魔刀なる大剣を手にして、ミイナの方は本来の武器を取り戻した。

全ての準備を整えたナイ達はあとは証拠品をいくつか回収して戻ろうとした時、扉の外側の方から衝撃が走り、扉が壊れて部屋の中にモモとノイが飛び込んできた。


「わああっ!?」
「はうっ!?」
「モモ!?」
「ノイさん!?」


飛び込んできた二人の元にナイ達は駆けつけると、モモの方は意識はあったがノイの方は倒れた時に気絶したらしく、声をかけても目を覚まさない。そして扉の外側の方から足音が鳴り響き、聞き覚えのある男の声が響く。


「たくっ、嫌だな~……女に手を上げるのは俺の趣味じゃないってのに」
「文句を言うんじゃねえ!!傭兵なら貰った金の分だけ仕事を果たせ!!」
「お前は……!?」


通路から現れたのはナイを気絶させた「疾風のダン」と、もう一人は獣人族の男性だった。獣人の方は両手にはナイのような闘拳と酷似した腕手甲を装着していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...