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王都での騒動
第181話 バーリの屋敷へ
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――全ての準備を整えたナイはモウタツが扱う馬車に乗り込み、ナイの他にヒナとモモも同行する。二人もミイナを放っておくことは出来ず、女装したナイと共に付いていくと言って聞かない。
「二人とも本当に付いてくるんですか?危険ですよ」
「大丈夫よ、私とモモもこう見えてもテンさんに鍛えられているからね」
「私達もミイナちゃんを助けたいんだよ~」
「大丈夫です、何があろうと御二人は私が守ります」
「おい、お前等うるさいぞ……もうすぐ屋敷に辿り着くぞ」
ヒイロも馬車の中に入り込んでおり、彼女の場合は顔が割れているので現在は男装してモウタツの仲間のふりをして同行している。意外と男物の服が似合い、今の彼女は美少年にしか見えなかった。
女装中のナイは残念ながら旋斧や盾の類は持って行けず、服の中に刺剣を仕込む程度の装備しか出来ない。ビャクの場合は目立ち過ぎるので同行はできず、今回はこの面子でバーリの屋敷に忍び込むしかない。
「よし、屋敷の前に付いたぞ……俺が話を通す、お前等は隠れていろ」
「裏切ったりしたら許しませんから」
「だ、大丈夫だ!!信用しろ!!」
念のためにナイはモウタツを脅し、もしも自分達を裏切りそうな素振りを見せたら躊躇なく叩きのめすつもりだった。やがて屋敷の門の前に馬車が停まると、門番の兵士達が立ちふさがる。
「止まれ!!何者だ!?」
「ああ、俺だ。さっきも会っただろ?」
「ん?何だ、お前か……どうしたんだ?何故、戻って来た?」
兵士はモウタツの顔を確認すると警戒は解いた。だが、先ほど出て行ったばかりの彼が戻ってきた事に門番達は戸惑うが、モウタツは笑みを浮かべて馬車の中を指差す。
「実はさっき、上物が手に入ってな……バーリの旦那に渡すように指示を受けたんだ」
「ああ、なるほど……贈り物か」
「そういう事なら通さないと俺達が怒られるな……いいぜ、中に入りな」
モウタツの言葉に門番の兵士達は笑みを浮かべると、あっさりと門を開いてくれた。馬車は門を潜り抜けると、すぐに門は閉じられてしまい、これでナイ達は退路を断たれた。
ここから先は敵地であり、一瞬の油断も許されない。馬車の中でナイ達は緊張しながらも頷き合い、必ずこの屋敷の何処かに捕まっているミイナを救い出す事を誓う。
「皆さん、頑張りましょう……必ず、ミイナさんを救い出してバーリの悪事を暴きましょう」
「ここまできたら覚悟を決めるしかないわね……モモ、大丈夫?」
「う、うん……頑張るよ」
「大丈夫、作戦が上手く行けば僕だけで何とかしますから……」
「おい、着いたぞ。ここから先は馬車ではいけない……歩いていくぞ」
馬車は屋敷の手前で停止すると、モウタツは全員が降りる様に促す。ナイ達は緊張しながらも彼の後に続くと、周囲の兵士がナイ達を見て驚きの声を上げる。
「おいおい、またバーリさんの貢物が来たようだな」
「おおっ、今回は随分とまた上玉揃えたな!!」
「だが、どいつも少し若すぎないか?可哀想に……あの年で中年オヤジの好きにされるなんてな」
「馬鹿、口を慎め……何処で聞かれているか分からないんだぞ」
ナイ達を見て兵士達は好奇の視線を向け、中には同情する者もいた。これまでにバーリのせいで何人もの女性が酷い目に遭わされているのは知っており、彼等はナイ達を憐れむ。
今の所はナイの女装は気づかれておらず、それどころかナイの美貌に見惚れる兵士もいた。その兵士達の視線にナイはむずかゆい思いをするが、そんな彼をヒナが落ち着かせる。
「大丈夫よ、貴方の女装は完璧……なら後は女の子らしい仕草で誤魔化しなさい。自分を女の子だと思い込んで行動するのよ」
「そ、そう言われても……」
「大丈夫、事前に教えた通りに動きなさい」
ヒナの助言を聞いたナイは屋敷に訪れる前に教えられた事を思い出し、とりあえずは歩き方に注意する。自分はあくまでも捕まった可哀想な女の子を演じるため、寂し気な表情を浮かべながら歩こうとすると、通りすがりの兵士達がナイを見て囁き合う。
「なあ、あの黒髪の女の子の顔を見たかよ。可哀想に……これから自分がどんな目に遭うのか知ってるんだな」
「ああ、くそっ……おれ、ああいう子に弱いんだよ。守ってやりたくなるな」
「一番清楚そうだよな……」
「あ、顔が赤くなったぞ……恥ずかしがってるな、可愛い……」
聞こえてくる兵士達の会話にナイは恥ずかしく思い、自分は女の子ではないと言いたいが、ここまで来たら我慢するしかない。そんな恥ずかし気な態度が逆に男達の心を掴み、他の二人よりも注目を浴びてしまう。
「な、何だか私達よりナイ君の方が人気がある……なんかちょっと複雑だよ」
「ええ、そうね……でも、これはこれで悪く無いわ。ナイ君に注目を集めている間は私達も動きやすいわ」
「ナイさん、我慢して下さい……ミイナさんを救い出すまでの辛抱です」
「わ、分かってる……いや、分かってますわ」
「いや、私達と話す時は口調を変える必要はないからね?」
「おい、お前等行くぞ!!もたもたするな……怪しまれるだろうが」
モウタツの先導の元、遂にナイ達は屋敷の前に立つ。ここまで順調で怪しまれる事もなく、無事にナイ達は屋敷の中に入り込む。
「二人とも本当に付いてくるんですか?危険ですよ」
「大丈夫よ、私とモモもこう見えてもテンさんに鍛えられているからね」
「私達もミイナちゃんを助けたいんだよ~」
「大丈夫です、何があろうと御二人は私が守ります」
「おい、お前等うるさいぞ……もうすぐ屋敷に辿り着くぞ」
ヒイロも馬車の中に入り込んでおり、彼女の場合は顔が割れているので現在は男装してモウタツの仲間のふりをして同行している。意外と男物の服が似合い、今の彼女は美少年にしか見えなかった。
女装中のナイは残念ながら旋斧や盾の類は持って行けず、服の中に刺剣を仕込む程度の装備しか出来ない。ビャクの場合は目立ち過ぎるので同行はできず、今回はこの面子でバーリの屋敷に忍び込むしかない。
「よし、屋敷の前に付いたぞ……俺が話を通す、お前等は隠れていろ」
「裏切ったりしたら許しませんから」
「だ、大丈夫だ!!信用しろ!!」
念のためにナイはモウタツを脅し、もしも自分達を裏切りそうな素振りを見せたら躊躇なく叩きのめすつもりだった。やがて屋敷の門の前に馬車が停まると、門番の兵士達が立ちふさがる。
「止まれ!!何者だ!?」
「ああ、俺だ。さっきも会っただろ?」
「ん?何だ、お前か……どうしたんだ?何故、戻って来た?」
兵士はモウタツの顔を確認すると警戒は解いた。だが、先ほど出て行ったばかりの彼が戻ってきた事に門番達は戸惑うが、モウタツは笑みを浮かべて馬車の中を指差す。
「実はさっき、上物が手に入ってな……バーリの旦那に渡すように指示を受けたんだ」
「ああ、なるほど……贈り物か」
「そういう事なら通さないと俺達が怒られるな……いいぜ、中に入りな」
モウタツの言葉に門番の兵士達は笑みを浮かべると、あっさりと門を開いてくれた。馬車は門を潜り抜けると、すぐに門は閉じられてしまい、これでナイ達は退路を断たれた。
ここから先は敵地であり、一瞬の油断も許されない。馬車の中でナイ達は緊張しながらも頷き合い、必ずこの屋敷の何処かに捕まっているミイナを救い出す事を誓う。
「皆さん、頑張りましょう……必ず、ミイナさんを救い出してバーリの悪事を暴きましょう」
「ここまできたら覚悟を決めるしかないわね……モモ、大丈夫?」
「う、うん……頑張るよ」
「大丈夫、作戦が上手く行けば僕だけで何とかしますから……」
「おい、着いたぞ。ここから先は馬車ではいけない……歩いていくぞ」
馬車は屋敷の手前で停止すると、モウタツは全員が降りる様に促す。ナイ達は緊張しながらも彼の後に続くと、周囲の兵士がナイ達を見て驚きの声を上げる。
「おいおい、またバーリさんの貢物が来たようだな」
「おおっ、今回は随分とまた上玉揃えたな!!」
「だが、どいつも少し若すぎないか?可哀想に……あの年で中年オヤジの好きにされるなんてな」
「馬鹿、口を慎め……何処で聞かれているか分からないんだぞ」
ナイ達を見て兵士達は好奇の視線を向け、中には同情する者もいた。これまでにバーリのせいで何人もの女性が酷い目に遭わされているのは知っており、彼等はナイ達を憐れむ。
今の所はナイの女装は気づかれておらず、それどころかナイの美貌に見惚れる兵士もいた。その兵士達の視線にナイはむずかゆい思いをするが、そんな彼をヒナが落ち着かせる。
「大丈夫よ、貴方の女装は完璧……なら後は女の子らしい仕草で誤魔化しなさい。自分を女の子だと思い込んで行動するのよ」
「そ、そう言われても……」
「大丈夫、事前に教えた通りに動きなさい」
ヒナの助言を聞いたナイは屋敷に訪れる前に教えられた事を思い出し、とりあえずは歩き方に注意する。自分はあくまでも捕まった可哀想な女の子を演じるため、寂し気な表情を浮かべながら歩こうとすると、通りすがりの兵士達がナイを見て囁き合う。
「なあ、あの黒髪の女の子の顔を見たかよ。可哀想に……これから自分がどんな目に遭うのか知ってるんだな」
「ああ、くそっ……おれ、ああいう子に弱いんだよ。守ってやりたくなるな」
「一番清楚そうだよな……」
「あ、顔が赤くなったぞ……恥ずかしがってるな、可愛い……」
聞こえてくる兵士達の会話にナイは恥ずかしく思い、自分は女の子ではないと言いたいが、ここまで来たら我慢するしかない。そんな恥ずかし気な態度が逆に男達の心を掴み、他の二人よりも注目を浴びてしまう。
「な、何だか私達よりナイ君の方が人気がある……なんかちょっと複雑だよ」
「ええ、そうね……でも、これはこれで悪く無いわ。ナイ君に注目を集めている間は私達も動きやすいわ」
「ナイさん、我慢して下さい……ミイナさんを救い出すまでの辛抱です」
「わ、分かってる……いや、分かってますわ」
「いや、私達と話す時は口調を変える必要はないからね?」
「おい、お前等行くぞ!!もたもたするな……怪しまれるだろうが」
モウタツの先導の元、遂にナイ達は屋敷の前に立つ。ここまで順調で怪しまれる事もなく、無事にナイ達は屋敷の中に入り込む。
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