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王都での騒動
第174話 技能「索敵」
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――テン達の会話を盗み聞きしていたナイは装備を整えると窓から外へ飛び出し、夜の街を駆け巡る。この時にナイは「隠密」を発動させたまま「跳躍」を発動させて建物の屋根の上へと飛び移る。
(ミイナさんを探さないと……)
ナイは建物の上を移動しながらもミイナの姿を探し、旅の間に覚えた新しい技能を発動させる。ナイが覚えたのは「索敵」と呼ばれる技能であり、その内容は潜伏する敵の位置を捉える技能である。
この技能は本来は隠れている相手を見つけ出すために使用する技能なのだが、夜間などの視界が悪い状況では人を探すのにも役立ち、更にナイは「観察眼」の技能も同時に発動させた。複数の技能を発動すると身体の負担は大きくなるが、旅の間に体力も磨いてきたので三つか四つの技能を同時に発動できるようになっていた。
(まずはあそこに向かおう)
最初にナイは人攫いに襲われた場所の事を思い出し、ナイが知っている人さらいの手掛かりはあの場所しかないため急いで向かう。
ナイとミイナの関係は今日出会ったばかりであり、犯罪者と誤解されて襲われたのであまり良い印象は抱いていない。しかし、彼女のお陰でナイは宿を紹介してもらった。勿論、それはミイナがナイを襲ったお詫びではあるが、ヒナとモモから話を聞いたナイは彼女も自分と似たような立場であると知ってどうにも気になっていた。
(捨て子、か……)
ミイナに対してナイは自分が同族意識のような物を感じていると思い、彼女の事を放っては置けなかった。
(ここだ!!)
ナイは目的地の空き地に辿り着くと、昼間に襲った人攫いの連中がここへ現れた事から、何か手がかりがないのかを探す。この時にナイは空き地に降りると、口笛を鳴らす。
「……ビャク!!」
「ウォンッ!!」
宿を抜け出す前にナイはビャクを厩舎から出しており、口笛を吹いた途端にビャクは聞きつけて路地裏から姿を現す。駆け寄ってきたビャクに対してナイは空き地を見渡し、ビャクの嗅覚を頼る。
「ビャク、昼間に襲ってきた連中は覚えているな?あいつらの臭いが残っていたら、あいつらが何処から現れたのか探って欲しいんだ」
「ウォンッ!!」
ナイの言葉にビャクは頷き、その場でビャクは臭いを嗅ぎ始める。もう大分時間が経過しているので臭いは残っているのか不安はあったが、ビャクは普通の犬や狼ではない。
魔獣であるビャクの嗅覚は鋭く、すぐに彼は臭いを嗅ぎつけたのか、ナイを襲った連中が何処から現れたのか探る。ビャクはそのまま移動を行い、路地裏の方には向かうと、手前の建物の裏口の扉の前に止まった。
「ウォンッ」
「……この建物の中か?」
臭いは建物の中に続いているらしく、どうやらナイを襲った連中は空き地の手前の建物に潜んでいたらしい。恐らくはカモが路地裏に迷い込んだらこの建物から飛び出して襲う算段だったのだろう。
「よし、中に入るか……ビャクはここへ待機してて」
「クゥ~ンッ……」
「お前の大きさだと中に入れないだろ。危ない目に遭ったらすぐに逃げるからここで大人しく待ってろよ」
ナイは一人で建物の中に乗り込むため、裏口の扉に手を回す。鍵の類は欠けられておらず、何事もなく入り込めた。建物はどうやら廃墟らしく、人の気配は感じない。
建物の中を隈なく探し回り、ナイは二階に到達すると窓から外から路地裏の方を確認する事ができた。そして窓の傍には食べ物のカスが残っており、どうやらここで悪党たちは見張りを行っていたらしい。
(ここから様子を眺めていたのは間違いないな……他に手がかりはないか?)
ナイを襲撃した男達がここにいたのは間違いなく、何か彼等の手掛かりになるような物はないかと探すと、ここで地図のような物を発見する。
「これは……この王都の地図か」
落ちている地図を拾い上げると、現在ナイが存在する王都の南側の地図である事が判明し、地図を確認すると黒く塗りつぶされている箇所を発見した。まさかとは思うが、この場所が人攫いの組織の隠れ家なのかとナイは疑う。
(こんな地図をここに残しているなんて……怪しいような気がするけど、他に手がかりはない。この場所へ行ってみよう)
この地図が実は侵入者対策としての罠の可能性もあるが、他に得られそうな手がかりはなく、仕方なくナイはこの地図の場所に向けて移動する事にした――
――しばらく時間が経過すると、ナイとビャクは地図を頼りに夜の街を移動すると、思いもよらぬ場所へ辿り着く。地図に記されている場所はなんと貴族が住んでいそうなぐらいに大きな屋敷であり、最初は道を間違えたかと思ったナイだが、何度確認しても間違いなくここが目的地であった。
(ミイナさんを探さないと……)
ナイは建物の上を移動しながらもミイナの姿を探し、旅の間に覚えた新しい技能を発動させる。ナイが覚えたのは「索敵」と呼ばれる技能であり、その内容は潜伏する敵の位置を捉える技能である。
この技能は本来は隠れている相手を見つけ出すために使用する技能なのだが、夜間などの視界が悪い状況では人を探すのにも役立ち、更にナイは「観察眼」の技能も同時に発動させた。複数の技能を発動すると身体の負担は大きくなるが、旅の間に体力も磨いてきたので三つか四つの技能を同時に発動できるようになっていた。
(まずはあそこに向かおう)
最初にナイは人攫いに襲われた場所の事を思い出し、ナイが知っている人さらいの手掛かりはあの場所しかないため急いで向かう。
ナイとミイナの関係は今日出会ったばかりであり、犯罪者と誤解されて襲われたのであまり良い印象は抱いていない。しかし、彼女のお陰でナイは宿を紹介してもらった。勿論、それはミイナがナイを襲ったお詫びではあるが、ヒナとモモから話を聞いたナイは彼女も自分と似たような立場であると知ってどうにも気になっていた。
(捨て子、か……)
ミイナに対してナイは自分が同族意識のような物を感じていると思い、彼女の事を放っては置けなかった。
(ここだ!!)
ナイは目的地の空き地に辿り着くと、昼間に襲った人攫いの連中がここへ現れた事から、何か手がかりがないのかを探す。この時にナイは空き地に降りると、口笛を鳴らす。
「……ビャク!!」
「ウォンッ!!」
宿を抜け出す前にナイはビャクを厩舎から出しており、口笛を吹いた途端にビャクは聞きつけて路地裏から姿を現す。駆け寄ってきたビャクに対してナイは空き地を見渡し、ビャクの嗅覚を頼る。
「ビャク、昼間に襲ってきた連中は覚えているな?あいつらの臭いが残っていたら、あいつらが何処から現れたのか探って欲しいんだ」
「ウォンッ!!」
ナイの言葉にビャクは頷き、その場でビャクは臭いを嗅ぎ始める。もう大分時間が経過しているので臭いは残っているのか不安はあったが、ビャクは普通の犬や狼ではない。
魔獣であるビャクの嗅覚は鋭く、すぐに彼は臭いを嗅ぎつけたのか、ナイを襲った連中が何処から現れたのか探る。ビャクはそのまま移動を行い、路地裏の方には向かうと、手前の建物の裏口の扉の前に止まった。
「ウォンッ」
「……この建物の中か?」
臭いは建物の中に続いているらしく、どうやらナイを襲った連中は空き地の手前の建物に潜んでいたらしい。恐らくはカモが路地裏に迷い込んだらこの建物から飛び出して襲う算段だったのだろう。
「よし、中に入るか……ビャクはここへ待機してて」
「クゥ~ンッ……」
「お前の大きさだと中に入れないだろ。危ない目に遭ったらすぐに逃げるからここで大人しく待ってろよ」
ナイは一人で建物の中に乗り込むため、裏口の扉に手を回す。鍵の類は欠けられておらず、何事もなく入り込めた。建物はどうやら廃墟らしく、人の気配は感じない。
建物の中を隈なく探し回り、ナイは二階に到達すると窓から外から路地裏の方を確認する事ができた。そして窓の傍には食べ物のカスが残っており、どうやらここで悪党たちは見張りを行っていたらしい。
(ここから様子を眺めていたのは間違いないな……他に手がかりはないか?)
ナイを襲撃した男達がここにいたのは間違いなく、何か彼等の手掛かりになるような物はないかと探すと、ここで地図のような物を発見する。
「これは……この王都の地図か」
落ちている地図を拾い上げると、現在ナイが存在する王都の南側の地図である事が判明し、地図を確認すると黒く塗りつぶされている箇所を発見した。まさかとは思うが、この場所が人攫いの組織の隠れ家なのかとナイは疑う。
(こんな地図をここに残しているなんて……怪しいような気がするけど、他に手がかりはない。この場所へ行ってみよう)
この地図が実は侵入者対策としての罠の可能性もあるが、他に得られそうな手がかりはなく、仕方なくナイはこの地図の場所に向けて移動する事にした――
――しばらく時間が経過すると、ナイとビャクは地図を頼りに夜の街を移動すると、思いもよらぬ場所へ辿り着く。地図に記されている場所はなんと貴族が住んでいそうなぐらいに大きな屋敷であり、最初は道を間違えたかと思ったナイだが、何度確認しても間違いなくここが目的地であった。
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