貧弱の英雄

カタナヅキ

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逃れられぬ運命

第134話 聖属性の魔力の特性

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「お主がレベル1でありながらここまで生き延びたのはお主が身に付けた技能が強化されたお陰なのは間違いない。しかし、その技能が逆に重荷となって今のお主はレベルが常人の何倍も上がりにくい体質になっておるはず」
「何倍も……」
「レベルを上げてSPを貯めて技能を覚えれば強くなれる可能性が高い。しかし、技能を持てあませば逆に肉体の負荷となる事もある」
「な、なるほど……」


ナイは技能をたくさん覚えればその分に強くなれると思い込んでいたが、実際の所は知らないうちにナイはレベルが上がりにくくなっており、言われてみれば今朝起きた時も違和感を感じていた。

今朝起きた時はナイは昨日に多数の魔物を倒し、その中にはホブゴブリンやコボルト亜種などの強敵も存在した。あれほどの数の敵を倒していれば普通ならば相当にレベルが上がっているはずだが、それにしてはレベルリセットされた時の身体の負荷が小さい気がした。


(レベルリセットに身体が慣れてきたと思ってたけど……もしかして上昇したレベルが少ないから身体の負担も減ってたのかな)


最初の頃はナイはレベルが上げた次の日は身体が碌に動けず、薬を飲んでもずっと寝込んでいた。しかし、自然回復などの技能を覚えた事で身体の回復力が高まり、レベルリセットによる負荷も慣れてきたと思っていた。

自然回復の技能も強化されているはずなのでそれも間違いではないが、それでも昨日の戦闘でナイが上昇したレベルは彼が思っている以上に少なく、だからこそ身体の負担が抑えられていたのかもしれない。


(でも、技能を覚えなければここまで強くなれなかった……)


技能を覚えた事でレベルが上がりにくくなったからといっても、今現在のナイを支えているのはこれまでに覚えた数々の技能である事は間違いない。ナイは技能を覚えた事に後悔はしておらず、仮に技能を忘れて一からやり直せるとしてもナイはまた同じ選択をしただろう。


「さて、話は長くなったがここまではお主の身体の強靭さの理由は分かったな?ならば次はお主の中に眠る魔力に関してじゃ」
「魔力?」
「そういえば老師は先ほども言ってましたが、ナイの魔力がどうかしたのですか?」
「うむ、正直に言ってナイ……お主の魔力量は異常に多い。それこそ魔術師にも劣らぬ程の魔力を体内に宿しておるな」
「えっ……?」
「そ、そんな馬鹿なっ!?」
「ん?それが何か問題なのか……?」


マホの言葉にナイは戸惑い、エルマは信じられない表情を浮かべるが、その一方でゴンザレスの方は話に付いていけずに首を傾げる。

先ほどマホがナイの身体に触れた時、彼女はナイの体内に宿る魔力を感じ取り、普通の人間の少年とは思えない程の魔力をナイは身に宿しているという。


「ナイよ、お主は身体の中は聖属性の魔力で満ち溢れておる」
「あ、そういえばヨウ先生……えっと、陽光教会の司教さんから聖属性の回復魔法を覚えました。検査した時に聖属性の適性があるみたいだったので……」
「ふむ、聖属性の魔力の特徴は他者を癒し、悪霊を浄化させる力を持つ」
「それは知ってます」


ナイはヨウから魔法の事を教わる時に聖属性の特徴も聞いていたが、続けてマホが告げた言葉は彼も初耳だった。


「ならばこれは知っているか?聖属性の適性を持つ者は巨人族や獣人族が多い事を……その理由は彼等の身体能力の高さにも関わっている」
「えっ、そうなんですか?」
「ん?という事は俺も聖属性の適性があるという事か、老師?」
「うむ、その通りじゃ。ちなみに儂とエルマのような森人族の場合は風属性の適性が高い者が多いがな」


聖属性の適性が高いのは本来は巨人族や獣人族らしく、この二つの種族の共通点は人間よりも身体能力が高いという点である。その事が聖属性の適性と関りがあるらしく、マホは説明を続ける。


「どうして巨人族や獣人族が聖属性の適性を持つ者が多いのか、それは彼等が身体能力が高い理由はその聖属性の魔力が大きく関わっておる」
「え?身体能力が高い事と聖属性の適性がある事に何か関係があるんですか」
「その通りじゃ。結論を先に言うと、聖属性の魔力は身体機能を強化させる力を持っているからじゃ」
「身体機能の強化?」
「お主も回復魔法で他の人間を治した事はあるのだろう?だが、回復魔法は傷その物を治すのではなく、治療される人間の自然治癒力を強化させているだけに過ぎん。つまり、回復魔法で怪我を治しているのではなく、魔法の力で治療する人間の回復力を高めて自力で傷を治しておるのだ」
「あっ……そう言えば前にヨウ先生もそんな事を言っていたような気がします」


マホによれば回復魔法とは人間が生まれ持つ自然治癒力を強化させ、自己回復を促すだけの魔法に過ぎず、その本質は「身体機能」の強化だという。その辺の話はナイも昔にヨウから聞かされた事がある気がしたが、今まですっかり忘れていた。
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