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逃れられぬ運命
第118話 魔物の亜種
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黒毛のコボルトと対峙したナイは身体が震え、まるで初めて赤毛熊と遭遇した時を思い出す。目の前に存在する相手は赤毛熊と同等の危険性を誇る相手だと本能が教え、油断できぬ相手だった。
(まずは距離を取らないと……!!)
ナイは跳躍の技能を生かして後方へ跳び、まずは距離を取ろうとした。しかし、それを確認したコボルトは兵士の死骸を無視して彼を新たな獲物だと認識し、足に力を込めると一瞬にしてナイの目前まで迫る。
「ガアアッ!!」
「なっ!?」
途轍もない速度で距離を詰めてきたコボルトにナイは驚き、反射的に右腕に装着した盾を構える。コボルトが放った爪が盾に衝突した瞬間、衝撃波が発生してお互いに後方へ吹き飛ぶ。
「ギャウッ!?」
「くぅっ!?」
空中に跳んでいる途中で衝撃波が発生した事でナイも踏ん張る事ができず、派手に地面に倒れ込む。技能の「頑丈」と「受身」のお陰で大怪我はせずに済み、この二つの技能は常時発動しているので錆びることはないのは不幸中の幸いだった。コボルトの方は空中で体勢を整えて着地を行う。
黒色の毛皮のコボルトはナイが倒してきたコボルトなどとは比べ物にならない素早さを誇り、ここまで早い生き物などナイは見た事がない。もしも盾がなければナイの肉体は鋭利な爪で切り裂かれていただろう。
(速過ぎる……普通のコボルトなんかよりもずっと速い!!)
村に暮らしていた時に何度かコボルトを退治したことはあったが、今回現れた黒毛のコボルトはナイがこれまでに倒してきたどのコボルトよりも力も速度も勝っていた。
――ここでナイは子供の頃の事を思い出し、ある時にナイは山の中で黒い毛皮の一角兎を見かけた事がある。その時はアルも一緒だったのだが、彼は黒毛の一角兎を見た時に慌てふためく。
『ナイ、気を付けろ!!あいつを狩ろうなんて思ったら駄目だぞ!!』
『え、どうして……?』
『あの一角兎はな、恐らくは普通の一角兎じゃない。きっと亜種だ』
『亜種……?』
ナイは亜種という言葉を聞いて疑問を抱き、どういう意味なのかと尋ねようとした時、黒毛の一角兎の前にゴブリンが出現した。
『ギギィッ……?』
『キュイイッ……ギュアアアアッ!!』
『ギィアッ!?』
ゴブリンと一角兎が視線を躱すと、唐突に一角兎は鳴き声を上げてゴブリンに威嚇を行う。その気迫にゴブリンは気圧されると、黒毛の一角兎は周囲を飛び回る。
通常種の一角兎は真っ直ぐに跳躍する事しかできず、相手に一直線に突進を仕掛ける事しかできない。しかし、黒毛の一角兎は軽快な動作で周囲に存在する木々を利用し、あちこちを飛び回ってゴブリンの注意を逸らす。
自分の周囲を高速で移動する一角兎にゴブリンは目が追いつかず、最終的には黒毛の一角兎は樹木に生えている枝を足場に利用してゴブリンの後頭部を狙う。
『ギュアアアアッ!!』
『ギャアッ!?』
『嘘っ……!?』
『ナイ、隠れろっ!!』
黒毛の一角兎はゴブリンの後頭部を角で突き刺すと、そのまま地面にゴブリンごと倒れ込む。額の角は攻撃の際により鋭く尖ったが、攻撃を終えた瞬間に額の角は元通りに戻ると、黒毛の一角兎は何事もなかったようにその場を去る。
『キュイイッ……』
黒毛の一角兎が立ち去ったのを確認すると、ナイとアルは安堵の吐息を吐き出し、そして倒れたゴブリンを確認した。ゴブリンは後頭部を貫かれ、額に穴が開いた状態で死亡していた。
『す、凄かったね……今の一角兎、全然動きが見えなかったよ』
『ああ、もしも俺達が見つかっていたら危なかったかもな……ナイ、覚えておけ。あれが亜種だ』
『亜種……?』
『魔物の中にはな、突然変異で生まれた時から特殊な力を持つ魔物が極稀に生まれる事がある。そういう魔物を亜種というんだ……もしも出会ったら戦おうなんて思ったら駄目だぞ。すぐに逃げるんだ』
『う、うん……気を付けるよ』
アルから聞かされた言葉にナイは頷き、魔物の中では最弱の部類に入るはずの一角兎でもゴブリンを簡単に倒す程の力を持ち合わせており、少なくとも当時のナイではどうにかなる相手ではなかった。
――結局はナイはその後に黒毛の一角兎と遭遇する事はなかったが、亜種の存在を思い出したナイは自分の前に現れた黒毛の魔獣の正体がコボルトの「亜種」だと見抜く。
(まさかこんな時に亜種と遭遇するなんて……)
あの一角兎の亜種でさえもゴブリンでは相手にならない程の高い戦闘能力を持つのに対し、一角兎よりも危険なコボルトの亜種ならば一角兎の亜種を遥かに上回る力を持っているのは明白だった。
実際にナイは先ほどのコボルトの攻防で殺されかけ、もしもゴマンの盾がなければ確実に死んでいた。下手をしたら赤毛熊に匹敵する強敵の登場にナイは冷や汗が止まらずに身構える。
(まずは距離を取らないと……!!)
ナイは跳躍の技能を生かして後方へ跳び、まずは距離を取ろうとした。しかし、それを確認したコボルトは兵士の死骸を無視して彼を新たな獲物だと認識し、足に力を込めると一瞬にしてナイの目前まで迫る。
「ガアアッ!!」
「なっ!?」
途轍もない速度で距離を詰めてきたコボルトにナイは驚き、反射的に右腕に装着した盾を構える。コボルトが放った爪が盾に衝突した瞬間、衝撃波が発生してお互いに後方へ吹き飛ぶ。
「ギャウッ!?」
「くぅっ!?」
空中に跳んでいる途中で衝撃波が発生した事でナイも踏ん張る事ができず、派手に地面に倒れ込む。技能の「頑丈」と「受身」のお陰で大怪我はせずに済み、この二つの技能は常時発動しているので錆びることはないのは不幸中の幸いだった。コボルトの方は空中で体勢を整えて着地を行う。
黒色の毛皮のコボルトはナイが倒してきたコボルトなどとは比べ物にならない素早さを誇り、ここまで早い生き物などナイは見た事がない。もしも盾がなければナイの肉体は鋭利な爪で切り裂かれていただろう。
(速過ぎる……普通のコボルトなんかよりもずっと速い!!)
村に暮らしていた時に何度かコボルトを退治したことはあったが、今回現れた黒毛のコボルトはナイがこれまでに倒してきたどのコボルトよりも力も速度も勝っていた。
――ここでナイは子供の頃の事を思い出し、ある時にナイは山の中で黒い毛皮の一角兎を見かけた事がある。その時はアルも一緒だったのだが、彼は黒毛の一角兎を見た時に慌てふためく。
『ナイ、気を付けろ!!あいつを狩ろうなんて思ったら駄目だぞ!!』
『え、どうして……?』
『あの一角兎はな、恐らくは普通の一角兎じゃない。きっと亜種だ』
『亜種……?』
ナイは亜種という言葉を聞いて疑問を抱き、どういう意味なのかと尋ねようとした時、黒毛の一角兎の前にゴブリンが出現した。
『ギギィッ……?』
『キュイイッ……ギュアアアアッ!!』
『ギィアッ!?』
ゴブリンと一角兎が視線を躱すと、唐突に一角兎は鳴き声を上げてゴブリンに威嚇を行う。その気迫にゴブリンは気圧されると、黒毛の一角兎は周囲を飛び回る。
通常種の一角兎は真っ直ぐに跳躍する事しかできず、相手に一直線に突進を仕掛ける事しかできない。しかし、黒毛の一角兎は軽快な動作で周囲に存在する木々を利用し、あちこちを飛び回ってゴブリンの注意を逸らす。
自分の周囲を高速で移動する一角兎にゴブリンは目が追いつかず、最終的には黒毛の一角兎は樹木に生えている枝を足場に利用してゴブリンの後頭部を狙う。
『ギュアアアアッ!!』
『ギャアッ!?』
『嘘っ……!?』
『ナイ、隠れろっ!!』
黒毛の一角兎はゴブリンの後頭部を角で突き刺すと、そのまま地面にゴブリンごと倒れ込む。額の角は攻撃の際により鋭く尖ったが、攻撃を終えた瞬間に額の角は元通りに戻ると、黒毛の一角兎は何事もなかったようにその場を去る。
『キュイイッ……』
黒毛の一角兎が立ち去ったのを確認すると、ナイとアルは安堵の吐息を吐き出し、そして倒れたゴブリンを確認した。ゴブリンは後頭部を貫かれ、額に穴が開いた状態で死亡していた。
『す、凄かったね……今の一角兎、全然動きが見えなかったよ』
『ああ、もしも俺達が見つかっていたら危なかったかもな……ナイ、覚えておけ。あれが亜種だ』
『亜種……?』
『魔物の中にはな、突然変異で生まれた時から特殊な力を持つ魔物が極稀に生まれる事がある。そういう魔物を亜種というんだ……もしも出会ったら戦おうなんて思ったら駄目だぞ。すぐに逃げるんだ』
『う、うん……気を付けるよ』
アルから聞かされた言葉にナイは頷き、魔物の中では最弱の部類に入るはずの一角兎でもゴブリンを簡単に倒す程の力を持ち合わせており、少なくとも当時のナイではどうにかなる相手ではなかった。
――結局はナイはその後に黒毛の一角兎と遭遇する事はなかったが、亜種の存在を思い出したナイは自分の前に現れた黒毛の魔獣の正体がコボルトの「亜種」だと見抜く。
(まさかこんな時に亜種と遭遇するなんて……)
あの一角兎の亜種でさえもゴブリンでは相手にならない程の高い戦闘能力を持つのに対し、一角兎よりも危険なコボルトの亜種ならば一角兎の亜種を遥かに上回る力を持っているのは明白だった。
実際にナイは先ほどのコボルトの攻防で殺されかけ、もしもゴマンの盾がなければ確実に死んでいた。下手をしたら赤毛熊に匹敵する強敵の登場にナイは冷や汗が止まらずに身構える。
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