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逃れられぬ運命
第116話 貴族の死体
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「よし、先へ急ごう……日付が変わる前に地上へ戻らないと」
日付が変更するとナイは「貧弱」の効果によって強制的にレベルリセットするため、早々に下水道から離れなければならない。もしも魔物に襲われている最中にレベルが下がればナイはまともに動けず、その隙に殺されてしまう。
ここまでの道中でナイは相当数の魔物を倒しており、恐らくはレベルの方もかなり上がっているはずだった。だが、現在のナイは「水晶の破片」を所持していないため、ステータスを確認する事も新しく技能を覚える事も出来ない。
(水晶の破片も持ち出しておけば良かったかな……いや、もうヨウ先生に迷惑はかけられないか)
ナイがこれまでに新しい技能を覚える時に利用していた水晶の破片は陽光教会へ赴いた時に返却しており、今はもう手元にはない。ヨウはナイが水晶の破片を所持していた事は驚いたが、特に咎めもせずに受け入れてくれた。
現時点でナイは魔物を倒してレベルを上げ、SPを蓄積しても新しい技能は覚える事はできない。だが、魔物を倒してレベルを上げればその分に肉体が強化されるため、悪い事ではない。
(異能が発動する前に屋敷に戻らないと……いや、その前に冒険者か兵士の人たちと合流しないとな)
現在の時間帯は夜であるため、魔物達は活発的に動き出す時間帯だった。昼間よりも地上の魔物達は狂暴性を増しているはずであり、決して油断はできない。
どんなにナイが守ろうとしてもたった一人では屋敷に避難した人間達を救い出す事は不可能だった。彼等を救うには冒険者か兵士の力が必要不可欠であり、地上に出た後は彼等を何とか見つけ出さなければならなかった。
(まずはここから早く出ないと……)
下水道の通路では旋斧は当てにならないため、ここからは闘拳を装着した左拳だけが頼りだった。もしもまた魔物が現れたらナイは殴り飛ばすしかなく、ホブゴブリン程度の魔物ならば倒せる事は先ほどの戦闘で証明された。
(結構歩いたと思うけど……出入口が見つからないな)
移動を開始してからそれなりの時間は経過したが、未だにナイは地上に続く梯子は見つからず、魔法を使いすぎて少し疲れたので休憩を挟もうとした時、思いもよらぬ物を発見する。
「なっ、これは……!?」
通路を歩いていると、ナイは人間が倒れているのを発見した。驚いたナイは慌てて駆けつけるが、既に事切れているらしく、ナイは悔し気に拳を握りしめる。
(死んでいる……殺されてからかなり時間が経っているみたいだ)
倒れていたのは中年男性の死体である事を確かめ、どうしてこんな場所に死んでいるのかは不明だが、死体の傍には魔物の足跡が存在した。死体は首筋を噛み千切られたらしく、苦悶の表情を浮かべたまま死んでいた。
場所が場所なだけに流石に魔物達もこの男の死体を食べる気はなかったのか、無残に殺された状態で放置されていた。しかし、疑問なのはどうしてこの男が下水道に存在するかであり、ここは滅多に人が寄りつくような場所ではない。
(この人……見る限り、結構いい物を身に付けている。もしかして貴族なのかな?)
死体の男は豪華そうな装飾品を身に付けており、かなり羽振りがよさそうな格好をしていた。魔物は人間が身に付ける装飾品の類には興味がないため、そのまま残されていた。
男の指には純金製の指輪まで取り付けられており、それを見たナイは貴族かと思ったが、どうして貴族がこんな不潔な場所に赴いているのか疑問を抱く。
(貴族がなんでこんな場所に……ん?何だこれ?)
貴族と思われる男の傍には箱が置かれており、疑問を抱いたナイは箱を開くと、そこには驚くべき事に金貨が入っていた。これほどの大金をナイは見た事はなく、驚きのあまりに危うく箱を落としそうになる。
(な、何だこれ……どうしてこんな大金を持ってこんな場所に来たんだ!?)
死んでいる男の所有物だと思われる箱にナイは動揺を隠せず、この貴族の男が何の目的で下水道に訪れたのかは不明だが、ここでナイは過去にドルトンから聞いた話を思いだっす。
(そういえば前にドルトンさんが貴族の中には裏稼業の人間と繋がっている人もいて、自分の邪魔者になりそうな相手を金で始末するように頼む事もあるとか言ってたけど……まさか、この人がそうだったのか?)
ナイはドルトンから聞いた悪徳貴族の話を思い出し、この倒れている男がそうなのではないかと考える。そうと考えなければわざわざ貴族がこんな人目のない場所に一人で赴くはずがなく、こんな大金を持ち込む理由もない。
自分がとんでもない物を見つけてしまったのではないかと考えたナイは怖くなり、急いでこの場を離れようとした。だが、この時にナイは落ちている箱に視線を向け、少しだけ悩む。
(これ、どうしよう……いや、何を考えてるんだ。持って帰っても碌な事にならない決まってる!!)
大金を手に入れる好機ではあるが、ナイは迂闊に持ち帰ると面倒な事態に陥る可能性を考慮し、そのまま立ち去ろうとした。だが、最後にナイは倒れている男の死体を確認し、念のために素性を調べる。
日付が変更するとナイは「貧弱」の効果によって強制的にレベルリセットするため、早々に下水道から離れなければならない。もしも魔物に襲われている最中にレベルが下がればナイはまともに動けず、その隙に殺されてしまう。
ここまでの道中でナイは相当数の魔物を倒しており、恐らくはレベルの方もかなり上がっているはずだった。だが、現在のナイは「水晶の破片」を所持していないため、ステータスを確認する事も新しく技能を覚える事も出来ない。
(水晶の破片も持ち出しておけば良かったかな……いや、もうヨウ先生に迷惑はかけられないか)
ナイがこれまでに新しい技能を覚える時に利用していた水晶の破片は陽光教会へ赴いた時に返却しており、今はもう手元にはない。ヨウはナイが水晶の破片を所持していた事は驚いたが、特に咎めもせずに受け入れてくれた。
現時点でナイは魔物を倒してレベルを上げ、SPを蓄積しても新しい技能は覚える事はできない。だが、魔物を倒してレベルを上げればその分に肉体が強化されるため、悪い事ではない。
(異能が発動する前に屋敷に戻らないと……いや、その前に冒険者か兵士の人たちと合流しないとな)
現在の時間帯は夜であるため、魔物達は活発的に動き出す時間帯だった。昼間よりも地上の魔物達は狂暴性を増しているはずであり、決して油断はできない。
どんなにナイが守ろうとしてもたった一人では屋敷に避難した人間達を救い出す事は不可能だった。彼等を救うには冒険者か兵士の力が必要不可欠であり、地上に出た後は彼等を何とか見つけ出さなければならなかった。
(まずはここから早く出ないと……)
下水道の通路では旋斧は当てにならないため、ここからは闘拳を装着した左拳だけが頼りだった。もしもまた魔物が現れたらナイは殴り飛ばすしかなく、ホブゴブリン程度の魔物ならば倒せる事は先ほどの戦闘で証明された。
(結構歩いたと思うけど……出入口が見つからないな)
移動を開始してからそれなりの時間は経過したが、未だにナイは地上に続く梯子は見つからず、魔法を使いすぎて少し疲れたので休憩を挟もうとした時、思いもよらぬ物を発見する。
「なっ、これは……!?」
通路を歩いていると、ナイは人間が倒れているのを発見した。驚いたナイは慌てて駆けつけるが、既に事切れているらしく、ナイは悔し気に拳を握りしめる。
(死んでいる……殺されてからかなり時間が経っているみたいだ)
倒れていたのは中年男性の死体である事を確かめ、どうしてこんな場所に死んでいるのかは不明だが、死体の傍には魔物の足跡が存在した。死体は首筋を噛み千切られたらしく、苦悶の表情を浮かべたまま死んでいた。
場所が場所なだけに流石に魔物達もこの男の死体を食べる気はなかったのか、無残に殺された状態で放置されていた。しかし、疑問なのはどうしてこの男が下水道に存在するかであり、ここは滅多に人が寄りつくような場所ではない。
(この人……見る限り、結構いい物を身に付けている。もしかして貴族なのかな?)
死体の男は豪華そうな装飾品を身に付けており、かなり羽振りがよさそうな格好をしていた。魔物は人間が身に付ける装飾品の類には興味がないため、そのまま残されていた。
男の指には純金製の指輪まで取り付けられており、それを見たナイは貴族かと思ったが、どうして貴族がこんな不潔な場所に赴いているのか疑問を抱く。
(貴族がなんでこんな場所に……ん?何だこれ?)
貴族と思われる男の傍には箱が置かれており、疑問を抱いたナイは箱を開くと、そこには驚くべき事に金貨が入っていた。これほどの大金をナイは見た事はなく、驚きのあまりに危うく箱を落としそうになる。
(な、何だこれ……どうしてこんな大金を持ってこんな場所に来たんだ!?)
死んでいる男の所有物だと思われる箱にナイは動揺を隠せず、この貴族の男が何の目的で下水道に訪れたのかは不明だが、ここでナイは過去にドルトンから聞いた話を思いだっす。
(そういえば前にドルトンさんが貴族の中には裏稼業の人間と繋がっている人もいて、自分の邪魔者になりそうな相手を金で始末するように頼む事もあるとか言ってたけど……まさか、この人がそうだったのか?)
ナイはドルトンから聞いた悪徳貴族の話を思い出し、この倒れている男がそうなのではないかと考える。そうと考えなければわざわざ貴族がこんな人目のない場所に一人で赴くはずがなく、こんな大金を持ち込む理由もない。
自分がとんでもない物を見つけてしまったのではないかと考えたナイは怖くなり、急いでこの場を離れようとした。だが、この時にナイは落ちている箱に視線を向け、少しだけ悩む。
(これ、どうしよう……いや、何を考えてるんだ。持って帰っても碌な事にならない決まってる!!)
大金を手に入れる好機ではあるが、ナイは迂闊に持ち帰ると面倒な事態に陥る可能性を考慮し、そのまま立ち去ろうとした。だが、最後にナイは倒れている男の死体を確認し、念のために素性を調べる。
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