111 / 1,110
逃れられぬ運命
第111話 街への侵入経路
しおりを挟む
「ふざけるな!!そんな説明で納得できるか!!どうせお前等が見張りをサボっていただけだろうがっ!?」
「ち、違います!!我々は……」
「おい、止めろ!!八つ当たりしても仕方ないだろ!!落ち着けよ、この人達は俺達を守ってくれてるんだぞ!!」
「離せっ!!くそっ……娘を返しやがれぇっ!!」
兵士の言葉を聞いて逆上した男性は襲い掛かろうとするが、それを他の住民が引き留める。その様子を見て男性に説明していた兵士は頭を抑え、ため息を吐き出す。
「聞きたいのは俺達の方だ……くそっ」
「…………」
一部始終を見ていたナイは兵士の言葉が嘘だとは思えず、それでも魔物が急に街中に現れたという言葉は信じがたい。魔物が街の中に入り込むには城壁を突破する以外にあり得ない。
ナイが暮らしていた村とは違って街などの大勢の人間が暮らす場所は、煉瓦製の城壁が四方を取り囲み、常に警備兵が見張りを行う。それに魔物が現れた時間帯は朝方から昼に差し掛かった時間帯である。
深夜などの時間帯ならば見通しが悪いので魔物の侵入に気付かない可能性もある。だが、今回の襲撃は昼を迎えようとしていた時間帯であり、当然だが明るい時間帯で警備兵が警戒を緩めるはずがない。
(本当に城壁を突破されていないのなら魔物達は何処から現れたんだろう……?)
ナイは魔物達の侵入経路が気にかかり、先ほどの兵士の話が事実ならば魔物達が侵入を果たしたのは城壁からではなく、別の方法で入り込んだ事になる。
(街の人たちの話だと魔物はいきなり現れたという話だし、それに城壁から狼煙も上がっていた。あの狼煙が危険を知らせる合図なら、魔物達は街のあちこちに同時に現れた事になるのか……)
東西南北の城壁から狼煙が上がったのはほぼ同じ時間帯であり、魔物達はほぼ同時に街の至る場所に現れた事になる。まさか街中に事前にゴブリン達が隠れていたとは考えにくく、そもそも気性の荒い魔物が街中に潜んで同時に襲い掛かるとは思いにくい。
(もしも本当に城壁を突破する以外に魔物が入る方法があるとすれば……その方法が判明すれば対抗策が出来るかも)
ナイは色々と考えながら歩いていると、不意に街道の方に人混みが出来ている事に気付き、何事だろうと視線を向ける。そこには教会よりも大きな建物が存在した。
建物の前には街中の人間が集まっているのではないかと思う程に人が集まっており、どうやらこの建物が冒険者ギルドらしく、人々はギルドの建物の前で集まって抗議していた。
「おい、いつまで俺達はこうしていればいいんだ!!」
「早く魔物を追い払ってくれよ!!」
「そうだそうだ!!こんな時のための冒険者だろうがっ!!」
「中に入れさせろ!!」
どうやらギルドの前に集まった人間達は冒険者に抗議しているらしく、街中に現れた魔物の討伐を要請しているらしい。そんな彼等を見てナイは眉をしかめ、この街の冒険者と兵士は今も必死に救助活動している。
冒険者も街を守るために全力を尽くしており、現にナイは避難を誘導していた冒険者の集団に助けられた。だからこそ文句を告げる住民達を見てナイは彼等を止めようとした時、ここで建物の扉が開かれた。
「うるせえぞ!!今は会議中だ、静かにしやがれ馬鹿共がっ!!」
『っ――!?』
建物から現れたのは身の丈が3メートルを軽く超える大男であり、鼓膜が破れるのではないかという程の大音量で怒鳴りつける。その彼の声と気迫に人々は圧倒され、集まっていた街の住民は震え上がる。
(何だあの人……まさか、あれが巨人族!?)
ナイは尋常ではない背丈の男性を見て動揺を隠せず、子供の頃にアルから教わった人間以外の種族の存在を思い出す。この世界には人間以外にも様々な種族が存在し、有名なのは「森人族《エルフ》」「小髭族《ドワーフ》」「巨人族《ジャイアント》」と呼ばれる三種族である。
森人族《エルフ》は緑の自然を愛し、山や森の中に暮らす種族である。普通の人間よりも美しい容姿をしており、更に魔法に関する知識は彼等に敵う者はいないと言われていた。
小髭族《ドワーフ》の場合は鍛冶師の名工が多く、歴史上に名前を刻んだ武器や防具の類の殆どは彼等が作り上げた物だと言われている。但し、人間よりも背丈が小さく、大人でも身長は130~140センチ程度だという。
最後に巨人族《ジャイアント》は名前の通りに普通の人間の倍近くの体躯を誇り、腕力の方も優れている。基本的に巨人族は男性は大柄な体格で生まれ、女性の方は男性よりも背が高い事が多い。しかし、現在では数が少なく滅多な事では見かけない種族である。
「さっきからごちゃごちゃとうるさいんだよ!!こっちだって忙しいんだ、用事があるなら会議の終わった後にしろ!!」
『…………』
巨人族の男性の気迫に気圧されて集まった住民達は何も言えず、彼等は黙り込むのを確認すると巨人族の男性は鼻を鳴らし、建物の中へと戻ろうとした。
「ち、違います!!我々は……」
「おい、止めろ!!八つ当たりしても仕方ないだろ!!落ち着けよ、この人達は俺達を守ってくれてるんだぞ!!」
「離せっ!!くそっ……娘を返しやがれぇっ!!」
兵士の言葉を聞いて逆上した男性は襲い掛かろうとするが、それを他の住民が引き留める。その様子を見て男性に説明していた兵士は頭を抑え、ため息を吐き出す。
「聞きたいのは俺達の方だ……くそっ」
「…………」
一部始終を見ていたナイは兵士の言葉が嘘だとは思えず、それでも魔物が急に街中に現れたという言葉は信じがたい。魔物が街の中に入り込むには城壁を突破する以外にあり得ない。
ナイが暮らしていた村とは違って街などの大勢の人間が暮らす場所は、煉瓦製の城壁が四方を取り囲み、常に警備兵が見張りを行う。それに魔物が現れた時間帯は朝方から昼に差し掛かった時間帯である。
深夜などの時間帯ならば見通しが悪いので魔物の侵入に気付かない可能性もある。だが、今回の襲撃は昼を迎えようとしていた時間帯であり、当然だが明るい時間帯で警備兵が警戒を緩めるはずがない。
(本当に城壁を突破されていないのなら魔物達は何処から現れたんだろう……?)
ナイは魔物達の侵入経路が気にかかり、先ほどの兵士の話が事実ならば魔物達が侵入を果たしたのは城壁からではなく、別の方法で入り込んだ事になる。
(街の人たちの話だと魔物はいきなり現れたという話だし、それに城壁から狼煙も上がっていた。あの狼煙が危険を知らせる合図なら、魔物達は街のあちこちに同時に現れた事になるのか……)
東西南北の城壁から狼煙が上がったのはほぼ同じ時間帯であり、魔物達はほぼ同時に街の至る場所に現れた事になる。まさか街中に事前にゴブリン達が隠れていたとは考えにくく、そもそも気性の荒い魔物が街中に潜んで同時に襲い掛かるとは思いにくい。
(もしも本当に城壁を突破する以外に魔物が入る方法があるとすれば……その方法が判明すれば対抗策が出来るかも)
ナイは色々と考えながら歩いていると、不意に街道の方に人混みが出来ている事に気付き、何事だろうと視線を向ける。そこには教会よりも大きな建物が存在した。
建物の前には街中の人間が集まっているのではないかと思う程に人が集まっており、どうやらこの建物が冒険者ギルドらしく、人々はギルドの建物の前で集まって抗議していた。
「おい、いつまで俺達はこうしていればいいんだ!!」
「早く魔物を追い払ってくれよ!!」
「そうだそうだ!!こんな時のための冒険者だろうがっ!!」
「中に入れさせろ!!」
どうやらギルドの前に集まった人間達は冒険者に抗議しているらしく、街中に現れた魔物の討伐を要請しているらしい。そんな彼等を見てナイは眉をしかめ、この街の冒険者と兵士は今も必死に救助活動している。
冒険者も街を守るために全力を尽くしており、現にナイは避難を誘導していた冒険者の集団に助けられた。だからこそ文句を告げる住民達を見てナイは彼等を止めようとした時、ここで建物の扉が開かれた。
「うるせえぞ!!今は会議中だ、静かにしやがれ馬鹿共がっ!!」
『っ――!?』
建物から現れたのは身の丈が3メートルを軽く超える大男であり、鼓膜が破れるのではないかという程の大音量で怒鳴りつける。その彼の声と気迫に人々は圧倒され、集まっていた街の住民は震え上がる。
(何だあの人……まさか、あれが巨人族!?)
ナイは尋常ではない背丈の男性を見て動揺を隠せず、子供の頃にアルから教わった人間以外の種族の存在を思い出す。この世界には人間以外にも様々な種族が存在し、有名なのは「森人族《エルフ》」「小髭族《ドワーフ》」「巨人族《ジャイアント》」と呼ばれる三種族である。
森人族《エルフ》は緑の自然を愛し、山や森の中に暮らす種族である。普通の人間よりも美しい容姿をしており、更に魔法に関する知識は彼等に敵う者はいないと言われていた。
小髭族《ドワーフ》の場合は鍛冶師の名工が多く、歴史上に名前を刻んだ武器や防具の類の殆どは彼等が作り上げた物だと言われている。但し、人間よりも背丈が小さく、大人でも身長は130~140センチ程度だという。
最後に巨人族《ジャイアント》は名前の通りに普通の人間の倍近くの体躯を誇り、腕力の方も優れている。基本的に巨人族は男性は大柄な体格で生まれ、女性の方は男性よりも背が高い事が多い。しかし、現在では数が少なく滅多な事では見かけない種族である。
「さっきからごちゃごちゃとうるさいんだよ!!こっちだって忙しいんだ、用事があるなら会議の終わった後にしろ!!」
『…………』
巨人族の男性の気迫に気圧されて集まった住民達は何も言えず、彼等は黙り込むのを確認すると巨人族の男性は鼻を鳴らし、建物の中へと戻ろうとした。
10
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる