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逃れられぬ運命
第106話 旋斧の復活
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「どうしてこれがここに……!?」
「ん?そいつはお前さんから預かっていると聞いていたが、違うのか?」
「いや……」
ナイは装備品の類は確かにドルトンに託したが、それは彼に預かってもらうわけではなく、処分を頼んだのである。もう自分には必要がない物と判断して彼に任せた。
しかし、ナイが身に付けていた装備は元々はアルが作り上げた代物であり、旋斧に関してもアルの家系に伝わる大切な家宝である。それを処分するなどアルの親友であるドルトンにできるはずがなかった。
これらの装備品はいつの日かナイが戻ってきたときのために彼が保管する事に決め、更にドルトンはナイのために新しい装備品も用意する。
「この鎖帷子は……」
「そいつはドルトンの奴が用意した物だ。そこいらの武器屋で販売している鎖帷子よりも優れ物らしいぞ」
木箱の中には鎖帷子も用意されており、こちらはドルトンがナイのために用意した代物らしい。残りはナイが投擲の際に利用する「刺剣」更にはゴマンから借り受けた「盾」も入っていた。
(この盾……そういえば持ち帰ったんだっけ)
もう持ち主であるゴマンはいないため、この盾を返す機会を失ったナイはドルトンに預けていた事を思い出す。この盾だけは処分しない様に頼み、ドルトンは約束通りに保管してくれたらしい。
ゴマンの盾を勝手に使う事には躊躇するが、この盾を持っているとゴマンが自分の事を守ってくれているようで心強く、ナイは覚悟を決める。
「ドルトンさん……ありがとうございます」
「…………」
眠っているドルトンからは返事はないが、彼が自分のために用意してくれた装備をナイは有難く受け取り、すぐに装着を行う。鎖帷子を着込み、刺剣を腰に装着すると、旋斧を背中に抱える。最後にナイは盾を装着しようとした時、木箱の中にはガントレットのような防具も入っていることに気が付く。
「これは?」
「そいつもドルトンのだな。まだこいつが冒険者だった頃に身に付けていた代物らしい」
「えっ!?ドルトンさんが冒険者?」
「何だ、知らなかったのか?こいつとお前の祖父さん若い頃に冒険者をやっていた事もあるんだぞ」
「爺ちゃんも!?」
ドルトンが冒険者をやっていた事にナイは驚き、そんな話は一度も聞いた事がない。イーシャンによると若い頃のドルトンはそれなりに有名な冒険者だったという。
ちなみにアルと知り合ったのは彼が冒険者の時代からであり、実を言えばアルも昔は冒険者をやっていた時期がある。二人は同世代の冒険者だったが、昔は仲が悪くてよく喧嘩していたという。
「そいつは闘拳と言ってな、普通の腕手甲《ガントレット》と違って攻撃用に特化した代物だ。ドルトンにとっては自分が冒険者だった証でもある。こいつにとっては何よりも価値のある代物だ」
「そんな物をどうして……」
「お前に託したかったんだろう。そいつを付けてみろ」
ナイは左手に闘拳を装備すると、最初は大きさが合うか不安に思ったが、問題なく装着できた。恐らくはドルトンが現在のナイの腕の大きさに合わせて調整したと思われる。
「おお、ぴったりじゃないか」
「でも、こんな大切なものを借りるわけには……」
「遠慮するな、これはドルトンの意志なんだからよ。それにお前にはこれから色々と働いてもらうんだ。これぐらいの贈り物はしないとな」
「え?」
イーシャンは窓の外を指差し、街の様子を確認する様に促す。現在の街は魔物が入り込み、あちこちで被害が多発していた。火災も発生しているのか、街のあちこちで煙が上がっていた。
「状況はかなりまずい、というよりは最悪だ。急に魔物共が現れてこの街を襲ってきやがった」
「いったい、何があったんですか?どうして急に魔物が……」
「それは俺にも分からん。だが、この街に攻めてきたのはゴブリン種だけじゃない。他にも魔獣が何体か入り込んでいるはずだ」
「魔獣も!?」
ここまでの道中でナイはゴブリンとホブゴブリンしか遭遇していないが、イーシャンによると街の中には魔獣も何体か確認され、今回の襲撃はゴブリンだけではない。
しかし、街に入り込んできたゴブリン達が最も数が多いのは確かであり、しかも人間の装備を奪って装着していた。武装したホブゴブリンとゴブリンの群れは現在は街のあちこちで暴れているが、それでも街には僅かに安全地帯は存在した。
「この街で今現在も被害を受けていないのは恐らくは陽光教会と、冒険者ギルドだな」
「冒険者ギルド……」
「ギルドには魔物退治の専門家どもが集まっている。きっと、今頃は住民を避難させて防衛線を張っているはずだ。実際に北の城壁から上がっていた狼煙は消えているだろ?」
「あ、本当だ!!」
窓を乗り込んでナイは北の方角を確認すると、先ほどまで上がっていた狼煙が消え去り、あの光景を見てこの街にずっと住み続けるイーシャンは状況を把握した。
「ん?そいつはお前さんから預かっていると聞いていたが、違うのか?」
「いや……」
ナイは装備品の類は確かにドルトンに託したが、それは彼に預かってもらうわけではなく、処分を頼んだのである。もう自分には必要がない物と判断して彼に任せた。
しかし、ナイが身に付けていた装備は元々はアルが作り上げた代物であり、旋斧に関してもアルの家系に伝わる大切な家宝である。それを処分するなどアルの親友であるドルトンにできるはずがなかった。
これらの装備品はいつの日かナイが戻ってきたときのために彼が保管する事に決め、更にドルトンはナイのために新しい装備品も用意する。
「この鎖帷子は……」
「そいつはドルトンの奴が用意した物だ。そこいらの武器屋で販売している鎖帷子よりも優れ物らしいぞ」
木箱の中には鎖帷子も用意されており、こちらはドルトンがナイのために用意した代物らしい。残りはナイが投擲の際に利用する「刺剣」更にはゴマンから借り受けた「盾」も入っていた。
(この盾……そういえば持ち帰ったんだっけ)
もう持ち主であるゴマンはいないため、この盾を返す機会を失ったナイはドルトンに預けていた事を思い出す。この盾だけは処分しない様に頼み、ドルトンは約束通りに保管してくれたらしい。
ゴマンの盾を勝手に使う事には躊躇するが、この盾を持っているとゴマンが自分の事を守ってくれているようで心強く、ナイは覚悟を決める。
「ドルトンさん……ありがとうございます」
「…………」
眠っているドルトンからは返事はないが、彼が自分のために用意してくれた装備をナイは有難く受け取り、すぐに装着を行う。鎖帷子を着込み、刺剣を腰に装着すると、旋斧を背中に抱える。最後にナイは盾を装着しようとした時、木箱の中にはガントレットのような防具も入っていることに気が付く。
「これは?」
「そいつもドルトンのだな。まだこいつが冒険者だった頃に身に付けていた代物らしい」
「えっ!?ドルトンさんが冒険者?」
「何だ、知らなかったのか?こいつとお前の祖父さん若い頃に冒険者をやっていた事もあるんだぞ」
「爺ちゃんも!?」
ドルトンが冒険者をやっていた事にナイは驚き、そんな話は一度も聞いた事がない。イーシャンによると若い頃のドルトンはそれなりに有名な冒険者だったという。
ちなみにアルと知り合ったのは彼が冒険者の時代からであり、実を言えばアルも昔は冒険者をやっていた時期がある。二人は同世代の冒険者だったが、昔は仲が悪くてよく喧嘩していたという。
「そいつは闘拳と言ってな、普通の腕手甲《ガントレット》と違って攻撃用に特化した代物だ。ドルトンにとっては自分が冒険者だった証でもある。こいつにとっては何よりも価値のある代物だ」
「そんな物をどうして……」
「お前に託したかったんだろう。そいつを付けてみろ」
ナイは左手に闘拳を装備すると、最初は大きさが合うか不安に思ったが、問題なく装着できた。恐らくはドルトンが現在のナイの腕の大きさに合わせて調整したと思われる。
「おお、ぴったりじゃないか」
「でも、こんな大切なものを借りるわけには……」
「遠慮するな、これはドルトンの意志なんだからよ。それにお前にはこれから色々と働いてもらうんだ。これぐらいの贈り物はしないとな」
「え?」
イーシャンは窓の外を指差し、街の様子を確認する様に促す。現在の街は魔物が入り込み、あちこちで被害が多発していた。火災も発生しているのか、街のあちこちで煙が上がっていた。
「状況はかなりまずい、というよりは最悪だ。急に魔物共が現れてこの街を襲ってきやがった」
「いったい、何があったんですか?どうして急に魔物が……」
「それは俺にも分からん。だが、この街に攻めてきたのはゴブリン種だけじゃない。他にも魔獣が何体か入り込んでいるはずだ」
「魔獣も!?」
ここまでの道中でナイはゴブリンとホブゴブリンしか遭遇していないが、イーシャンによると街の中には魔獣も何体か確認され、今回の襲撃はゴブリンだけではない。
しかし、街に入り込んできたゴブリン達が最も数が多いのは確かであり、しかも人間の装備を奪って装着していた。武装したホブゴブリンとゴブリンの群れは現在は街のあちこちで暴れているが、それでも街には僅かに安全地帯は存在した。
「この街で今現在も被害を受けていないのは恐らくは陽光教会と、冒険者ギルドだな」
「冒険者ギルド……」
「ギルドには魔物退治の専門家どもが集まっている。きっと、今頃は住民を避難させて防衛線を張っているはずだ。実際に北の城壁から上がっていた狼煙は消えているだろ?」
「あ、本当だ!!」
窓を乗り込んでナイは北の方角を確認すると、先ほどまで上がっていた狼煙が消え去り、あの光景を見てこの街にずっと住み続けるイーシャンは状況を把握した。
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