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忌み子と呼ばれた少年
第93話 呪われた子だから……
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――夜が明けた頃、村には馬車が訪れていた。馬車の主はドルトンであり、彼は街に戻った後に強化薬が手元にない事に気付いて急いで戻ってきたのだ。
村の光景を見た瞬間にドルトンは只事ではない事態が起きた事を察し、護衛を連れて彼は村の広間へと辿り着く。そこには大量のホブゴブリンの死骸と、その中心に座り込むナイの姿が存在した。
「ナイ、これはいったい……!?」
「……ドルトン、さん?」
ナイが生きているのを確認してドルトンは安堵するが、彼の顔を見た途端に目を見開く。ナイは全身が血塗れの状態であり、最初は彼が怪我をしているのかと思ったが、それが全て返り血だと知る。
「な、何だこれは……」
「おい、これを見ろ!!村の人間達だ!!」
「酷い、全員殺されているのか……」
護衛の人間は倒れているホブゴブリンの死骸の他にも村人達の死体を発見し、残念ながらナイを除いた村人全員は既に死んでいた。魔物に殺されたのは間違いなく、焼死体も多い。
「ナイ、村の皆は……村長やゴマンはどうした?」
「……見つからなかった。村中、探し回ったけど」
ドルトンの質問にナイは虚ろな瞳で答え、村人の死体の中には村長やゴマンは確認できなかった。この状況では生き延びているとは考えにくく、既にホブゴブリンに焼かれて食われてしまった可能性は高いだろう。
一晩中、ナイは生きている人間を探し回ったが誰も生き残りは見当たらず、この村の生き残りはもう彼しかいない。ナイはゴマンから借り受けた盾を抱きしめ、座ったまま動かない。
「なんて事だ……こんな子供だけが生き残るなんて」
「信じられない、まさかこれだけのホブゴブリンを一人で仕留めたのか?」
「そんな馬鹿な……まるで化物じゃないか」
「おい、口が過ぎるぞ!!」
護衛の人間の言葉を聞いたナイは反応し、以前に陽光教会に訪れた時の事を思い出す。ナイは最初に儀式を受けた際、彼の事を修道女は「忌み子」と呼んだ。忌み子の意味はないもよく知らないが、言葉の響きから考えても普通の子供ではない。
(忌み子……僕は、呪われているのか……?)
ナイは自分自身の掌を見つめ、魔物の血で真っ赤に染まった掌を見て顔色を青ざめ、自分が呪われた子供だから村にこんな悲劇を招いたのかと思い込む。
自分さえいなければアルも死ぬことはなく、他の優しかった村人も、親友のゴマンも死ぬことはなかった。そう思い込んだナイは頭を抑え、その様子を見たドルトンは心配そうに声をかける。
「ナイ、大丈夫か?気分が悪いのなら休んだ方が……」
「ウォオンッ!!」
「うわっ!?な、何だ!?」
「魔獣か!?どうしてここに……!?」
ドルトンが心配そうにナイに近付こうとした時、何処からともなく狼の鳴き声が響き渡ると、ナイの元にビャクが訪れる。ビャクはナイを庇うようにドルトン達に威嚇を行う。
「グルルルッ……!!」
「ひいっ!?ま、魔獣だ!!」
「おい、こいつは白狼種だぞ!!どうしてこんな場所に……」
「ドルトンさん、逃げましょう!!」
「待て……落ち着け、どうやらナイの知り合いのようだ」
「クゥ~ンッ……」
ビャクはふさぎ込んでいるナイの元へ近づき、彼を慰めるように顔を舐める。だが、頬を舐められてもビャクに擦り寄られてもナイは反応を示さず、ふさぎ込んだまま立ち上がらない。
二人の様子を見てドルトンは意を決したように近づき、そんな彼にビャクは警戒したように歯を剥き出しにするが、ドルトンは構わずにナイに話しかけた。
「ナイ……とりあえず、ここは危険だ。儂と一緒に街へ行こう」
「街……」
「うむ、辛いだろうがここに残るのは危険過ぎる。儂の屋敷へ一緒に行こう」
「ドルトンさん……」
「クゥンッ……」
ナイはドルトンの言葉を聞いて顔を上げ、ビャクの方は寂しそうな表情を浮かべるが、ナイを立たせようと背中を押す。そんなドルトンの言葉とビャクの行動にナイは決意したように告げる。
「……ドルトンさん、お願いがあります」
「ど、どうした?身体を洗いたいのか?」
「教会へ……街にある陽光教会へ連れて行ってください」
「……何?」
ドルトンはナイの告げた言葉に戸惑い、どうしてこの状況でナイが陽光教会の事を言い出したのかと戸惑うが、ナイはそんな彼に告げた。
「俺は……忌み子なんです。だから、教会の人の所に連れて行ってください」
ナイの告げた言葉にドルトンは呆気に取られ、一方でナイは村を振り返り、もう二度とここへは戻らない事を悟り、その光景を忘れない様に記憶へ刻む――
村の光景を見た瞬間にドルトンは只事ではない事態が起きた事を察し、護衛を連れて彼は村の広間へと辿り着く。そこには大量のホブゴブリンの死骸と、その中心に座り込むナイの姿が存在した。
「ナイ、これはいったい……!?」
「……ドルトン、さん?」
ナイが生きているのを確認してドルトンは安堵するが、彼の顔を見た途端に目を見開く。ナイは全身が血塗れの状態であり、最初は彼が怪我をしているのかと思ったが、それが全て返り血だと知る。
「な、何だこれは……」
「おい、これを見ろ!!村の人間達だ!!」
「酷い、全員殺されているのか……」
護衛の人間は倒れているホブゴブリンの死骸の他にも村人達の死体を発見し、残念ながらナイを除いた村人全員は既に死んでいた。魔物に殺されたのは間違いなく、焼死体も多い。
「ナイ、村の皆は……村長やゴマンはどうした?」
「……見つからなかった。村中、探し回ったけど」
ドルトンの質問にナイは虚ろな瞳で答え、村人の死体の中には村長やゴマンは確認できなかった。この状況では生き延びているとは考えにくく、既にホブゴブリンに焼かれて食われてしまった可能性は高いだろう。
一晩中、ナイは生きている人間を探し回ったが誰も生き残りは見当たらず、この村の生き残りはもう彼しかいない。ナイはゴマンから借り受けた盾を抱きしめ、座ったまま動かない。
「なんて事だ……こんな子供だけが生き残るなんて」
「信じられない、まさかこれだけのホブゴブリンを一人で仕留めたのか?」
「そんな馬鹿な……まるで化物じゃないか」
「おい、口が過ぎるぞ!!」
護衛の人間の言葉を聞いたナイは反応し、以前に陽光教会に訪れた時の事を思い出す。ナイは最初に儀式を受けた際、彼の事を修道女は「忌み子」と呼んだ。忌み子の意味はないもよく知らないが、言葉の響きから考えても普通の子供ではない。
(忌み子……僕は、呪われているのか……?)
ナイは自分自身の掌を見つめ、魔物の血で真っ赤に染まった掌を見て顔色を青ざめ、自分が呪われた子供だから村にこんな悲劇を招いたのかと思い込む。
自分さえいなければアルも死ぬことはなく、他の優しかった村人も、親友のゴマンも死ぬことはなかった。そう思い込んだナイは頭を抑え、その様子を見たドルトンは心配そうに声をかける。
「ナイ、大丈夫か?気分が悪いのなら休んだ方が……」
「ウォオンッ!!」
「うわっ!?な、何だ!?」
「魔獣か!?どうしてここに……!?」
ドルトンが心配そうにナイに近付こうとした時、何処からともなく狼の鳴き声が響き渡ると、ナイの元にビャクが訪れる。ビャクはナイを庇うようにドルトン達に威嚇を行う。
「グルルルッ……!!」
「ひいっ!?ま、魔獣だ!!」
「おい、こいつは白狼種だぞ!!どうしてこんな場所に……」
「ドルトンさん、逃げましょう!!」
「待て……落ち着け、どうやらナイの知り合いのようだ」
「クゥ~ンッ……」
ビャクはふさぎ込んでいるナイの元へ近づき、彼を慰めるように顔を舐める。だが、頬を舐められてもビャクに擦り寄られてもナイは反応を示さず、ふさぎ込んだまま立ち上がらない。
二人の様子を見てドルトンは意を決したように近づき、そんな彼にビャクは警戒したように歯を剥き出しにするが、ドルトンは構わずにナイに話しかけた。
「ナイ……とりあえず、ここは危険だ。儂と一緒に街へ行こう」
「街……」
「うむ、辛いだろうがここに残るのは危険過ぎる。儂の屋敷へ一緒に行こう」
「ドルトンさん……」
「クゥンッ……」
ナイはドルトンの言葉を聞いて顔を上げ、ビャクの方は寂しそうな表情を浮かべるが、ナイを立たせようと背中を押す。そんなドルトンの言葉とビャクの行動にナイは決意したように告げる。
「……ドルトンさん、お願いがあります」
「ど、どうした?身体を洗いたいのか?」
「教会へ……街にある陽光教会へ連れて行ってください」
「……何?」
ドルトンはナイの告げた言葉に戸惑い、どうしてこの状況でナイが陽光教会の事を言い出したのかと戸惑うが、ナイはそんな彼に告げた。
「俺は……忌み子なんです。だから、教会の人の所に連れて行ってください」
ナイの告げた言葉にドルトンは呆気に取られ、一方でナイは村を振り返り、もう二度とここへは戻らない事を悟り、その光景を忘れない様に記憶へ刻む――
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