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忌み子と呼ばれた少年
第59話 ビャクと名付けた狼の子供
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――ナイはビャクは無事に外へ逃がす事には成功した。村人には探索の途中でナイが狼を発見したが、狼は村を取り囲む防壁を乗り越えて逃げ出したと説明する。
村人達はナイの言葉を疑わず、魔物が彼が追い払ったと聞いて安心した。村長としては倉庫を荒されたので魔物を始末したかったらしいが、後にナイが村長のために狩猟で大物を狩った時は村長に多めに渡す事を約束すると安心した。
また、ビャクがどのような手段を用いて村の中に入ってきたのかは不明だったが、後にナイはその理由を知る機会が訪れる。
ビャクを外へ逃がしてから数日後、ナイは今回は一人で山に出向いて狩猟を行っていた。今日の目的は山菜ではなく、山の中に潜む動物の狩猟である。時期はもう間もなく冬を迎えるため、山の生き物が冬眠を行う前に獲物を狩る必要があった。
(流石に寒くなってきたな……それに雨が降りそうだ)
ナイは空模様を確認し、空が曇っている事から雨が降るのではないかと心配する。雨が降る前にできれば狩猟を終えたいのだが、朝から山に入っているにも関わらずに今日はまだ獲物を見つけていない。
(せめて一角兎を一匹ぐらいは仕留めないと家に戻れないぞ……ん?)
山道を登っていると、ナイは不意に何処かで聞き覚えのある声が聞こえた。後ろを振り返ると、そこには山道を駆け上る白い毛皮の狼の姿が見えた。その姿は間違いなく、村の外へ逃がした「ビャク」であった
「ウォオオオンッ!!」
「うわっ!?」
ビャクはナイの姿を見つけると嬉しそうに駆けつけ、勢いよく飛び込む。この時にビャクは10メートル近くも離れていたにも関わらず、凄まじい跳躍力でナイの身体に飛び込む。
急に飛び込んできたビャクに押し倒される形でナイは地面に倒れ込み、痛そうな表情を浮かべるがそんな彼にビャクは甘える様に顔を舐めてきた。
「クゥ~ンッ……ワフッ♪」
「うぷぷっ……こら、止めなさい。たく、相変わらず元気だな」
「ウォンッ!!」
ナイが退くように促すとビャクは素直に従い、彼にじゃれつく。その様子を見てナイはビャクの頭を撫でながらも、先ほどまで彼が立っていた場所に視線を向けた。
「お前、凄いな。こんなに遠くまで跳べるなんて……あ、そうか。お前が村に入ってこれたのもこの跳躍力のお陰か?」
「ウォンッ?」
どうやらビャクは村の中に入り込めたのは子供でありながら凄まじい跳躍力を誇り、その跳躍力を生かして防壁を飛び越えてきたらしい。
今更ながらに飛び越えてきたビャクが村の中に侵入した理由が発覚し、村の何処かに外に繋がる抜け道があるわけではないと知ったナイは安堵する。その一方でビャクの方は久しぶりに会えたナイに嬉しそうに擦り寄る。
「クゥ~ンッ」
「よしよし、元気そうで良かったよ。そうか、お前は今はここで暮らしてるんだな?」
「ウォンッ!!」
ナイの言葉にビャクは頷き、やはり人間の言葉は完全に理解しているらしく、数日前に会ったナイの事もはっきりと覚えていた。彼が無事に生きていた事にナイは安心するが、この時にナイは良い事を思いつく。
「あ、そうだ……お前の鼻で隠れている動物を見つけ出す事は出来るか?」
「ウォンッ?」
「お前がこうして生きているという事は自分で獲物を狩って食べてるんだろ?なら、獲物を見つけたら教えてほしいんだ」
「……スンスンッ」
ビャクはナイの言葉を聞き終えるとすぐに鼻を引くつかせる。まるで猟犬のようにビャクは獲物を臭いを嗅ぎつけたのか、ナイに付いてくるように促す。
「ウォンッ!!」
「そっち?そっちにいるのか?」
「ワフッ!!」
「よし、行こう」
臭いを嗅ぎつけたビャクの後にナイは続く。この時にビャクはナイが付いてこれる程の速度で移動を行い、ナイも見失わない様に後を追う。
白狼種は普通の狼よりも足が速く、もしもビャクが本気で走ればナイでは付いてこれない。獲物の匂いをかぎ分けながらも決して急がず、ナイが付いてこれる程の移動速度を保ったままビャクは山道を移動する。
「スンスンッ……ウォンッ」
「はあっ、はあっ……ど、どうした?」
ナイは息を切らせて汗を流しながらもビャクの後に続くと、唐突にビャクは立ち止まり、音を抑えながらナイに鳴き声を上げる。その様子を見てナイは獲物が近いのかと思い、周囲の様子を伺う。
(この近くに隠れているのか……よし、こういう時こそ観察眼だ)
ビャクの反応を見てナイは近くに獲物が隠れていないのかを探すため、ここで「観察眼」を発動させた。視界の範囲内に怪しい物がないのかを確認すると、少し離れた場所で茂みが揺れ動いている事に気付く。
茂みが動いているのを確認したナイは咄嗟に背負っていた籠を下ろし、早速だがアルから受け取った新しい短剣を取り出す。ちなみにこちらの短剣はナイは「刺剣」と呼んでおり、揺れ動く茂みを確認していつでも投げこめる体勢へと入る。
村人達はナイの言葉を疑わず、魔物が彼が追い払ったと聞いて安心した。村長としては倉庫を荒されたので魔物を始末したかったらしいが、後にナイが村長のために狩猟で大物を狩った時は村長に多めに渡す事を約束すると安心した。
また、ビャクがどのような手段を用いて村の中に入ってきたのかは不明だったが、後にナイはその理由を知る機会が訪れる。
ビャクを外へ逃がしてから数日後、ナイは今回は一人で山に出向いて狩猟を行っていた。今日の目的は山菜ではなく、山の中に潜む動物の狩猟である。時期はもう間もなく冬を迎えるため、山の生き物が冬眠を行う前に獲物を狩る必要があった。
(流石に寒くなってきたな……それに雨が降りそうだ)
ナイは空模様を確認し、空が曇っている事から雨が降るのではないかと心配する。雨が降る前にできれば狩猟を終えたいのだが、朝から山に入っているにも関わらずに今日はまだ獲物を見つけていない。
(せめて一角兎を一匹ぐらいは仕留めないと家に戻れないぞ……ん?)
山道を登っていると、ナイは不意に何処かで聞き覚えのある声が聞こえた。後ろを振り返ると、そこには山道を駆け上る白い毛皮の狼の姿が見えた。その姿は間違いなく、村の外へ逃がした「ビャク」であった
「ウォオオオンッ!!」
「うわっ!?」
ビャクはナイの姿を見つけると嬉しそうに駆けつけ、勢いよく飛び込む。この時にビャクは10メートル近くも離れていたにも関わらず、凄まじい跳躍力でナイの身体に飛び込む。
急に飛び込んできたビャクに押し倒される形でナイは地面に倒れ込み、痛そうな表情を浮かべるがそんな彼にビャクは甘える様に顔を舐めてきた。
「クゥ~ンッ……ワフッ♪」
「うぷぷっ……こら、止めなさい。たく、相変わらず元気だな」
「ウォンッ!!」
ナイが退くように促すとビャクは素直に従い、彼にじゃれつく。その様子を見てナイはビャクの頭を撫でながらも、先ほどまで彼が立っていた場所に視線を向けた。
「お前、凄いな。こんなに遠くまで跳べるなんて……あ、そうか。お前が村に入ってこれたのもこの跳躍力のお陰か?」
「ウォンッ?」
どうやらビャクは村の中に入り込めたのは子供でありながら凄まじい跳躍力を誇り、その跳躍力を生かして防壁を飛び越えてきたらしい。
今更ながらに飛び越えてきたビャクが村の中に侵入した理由が発覚し、村の何処かに外に繋がる抜け道があるわけではないと知ったナイは安堵する。その一方でビャクの方は久しぶりに会えたナイに嬉しそうに擦り寄る。
「クゥ~ンッ」
「よしよし、元気そうで良かったよ。そうか、お前は今はここで暮らしてるんだな?」
「ウォンッ!!」
ナイの言葉にビャクは頷き、やはり人間の言葉は完全に理解しているらしく、数日前に会ったナイの事もはっきりと覚えていた。彼が無事に生きていた事にナイは安心するが、この時にナイは良い事を思いつく。
「あ、そうだ……お前の鼻で隠れている動物を見つけ出す事は出来るか?」
「ウォンッ?」
「お前がこうして生きているという事は自分で獲物を狩って食べてるんだろ?なら、獲物を見つけたら教えてほしいんだ」
「……スンスンッ」
ビャクはナイの言葉を聞き終えるとすぐに鼻を引くつかせる。まるで猟犬のようにビャクは獲物を臭いを嗅ぎつけたのか、ナイに付いてくるように促す。
「ウォンッ!!」
「そっち?そっちにいるのか?」
「ワフッ!!」
「よし、行こう」
臭いを嗅ぎつけたビャクの後にナイは続く。この時にビャクはナイが付いてこれる程の速度で移動を行い、ナイも見失わない様に後を追う。
白狼種は普通の狼よりも足が速く、もしもビャクが本気で走ればナイでは付いてこれない。獲物の匂いをかぎ分けながらも決して急がず、ナイが付いてこれる程の移動速度を保ったままビャクは山道を移動する。
「スンスンッ……ウォンッ」
「はあっ、はあっ……ど、どうした?」
ナイは息を切らせて汗を流しながらもビャクの後に続くと、唐突にビャクは立ち止まり、音を抑えながらナイに鳴き声を上げる。その様子を見てナイは獲物が近いのかと思い、周囲の様子を伺う。
(この近くに隠れているのか……よし、こういう時こそ観察眼だ)
ビャクの反応を見てナイは近くに獲物が隠れていないのかを探すため、ここで「観察眼」を発動させた。視界の範囲内に怪しい物がないのかを確認すると、少し離れた場所で茂みが揺れ動いている事に気付く。
茂みが動いているのを確認したナイは咄嗟に背負っていた籠を下ろし、早速だがアルから受け取った新しい短剣を取り出す。ちなみにこちらの短剣はナイは「刺剣」と呼んでおり、揺れ動く茂みを確認していつでも投げこめる体勢へと入る。
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