貧弱の英雄

カタナヅキ

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忌み子と呼ばれた少年

第55話 義足

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「へへへっ……今日は間違いなく、僕達が一番の大物を仕留めたぞ。これなら親父も褒めてくれるだろうな」
「うん、ゴマンのお陰だよ。大分魔物との戦闘も慣れてきたんじゃない?」
「止せよ、作戦を立てたのはお前だろ……僕なんか逃げるのに必死で戦う事もできなかったんだぞ」


この二年の間にナイとゴマンの仲も縮まり、昔はお互いに嫌い合っていたが、二年前の出来事からゴマンはナイの事を認めるようになって態度を改めた。

昔は村長の息子という事も有って村の子供達の中でもゴマンは偉そうにしていたが、ここ最近は性格も丸くなり、今ではナイと普通に接するようになった。ナイの方もゴマンの事は今では友人として扱っている。


「はあっ……それにしても最近、また一段と魔物が増えてきた気がするな。親父が言ってたよ、近いうちに街にいる冒険者を雇って護衛してもらわないか迷ってるてさ」
「冒険者か……確か、ゴマンが目指している職業の人たちの事だよね」
「そうそう、僕の憧れの職業さ!!冒険者というのは本当に凄いんだぞ、何しろ魔物を倒すだけじゃなくて、悪い盗賊なんかを倒してくれる正義の味方だからな!!」


ゴマンは目を輝かせて冒険者の事を熱く語り、冒険者の事を語る時はゴマンも子供らしい表情を浮かべる。彼は小さい頃から悪い魔物から人々を守る「冒険者」という職業に憧れを抱いていた。


「そうなんだ……でも、雇うとしてもお金もかかるんでしょ?」
「うっ……そこなんだよな。親父もその事で悩んでたよ、村の皆から金を集めるにしてもそもそも皆、お金の方はあんまり持ってないからな」


村長は村を守るために街で働いている冒険者を呼び寄せ、村の警護を任せようかと悩んでいるらしいが、冒険者を雇うにしても金が掛かる。村人たちから金を集めても毎日の警護を頼むとなると相当な額が必要になる。

残念ながらナイたちが暮らす村は金銭面に余裕はなく、冒険者を雇って村の警護のために常在させるほどの金銭はない。だが、最近は村の方まで押し寄せてくる魔物も増えてきたため、何らかの手を打たなければならない。


「昨日も夜にゴブリンの奴等が村の近くに現れた事を知ってるか?あいつら、堀の中に潜んで穴を掘って村の中に潜り込もうとしてたらしいぞ」
「うん、その話は俺も聞いてるよ……あいつら、段々と知恵が身に着いてるように思う」
「はあっ、こんな時にお前の爺さんが元気だったら……あっ!?ご、ごめん!!今のは僕が悪かった!!」
「……ううん、気にしないでいいよ」


ゴマンがナイの養父のアルの事を語った瞬間、ナイの表情が暗くなり、それを見てゴマンは自分が失言した事を知って謝罪を行う。そんな彼にナイは首を振って気にしてない風に装う。



――ナイの養父のアルは村を襲う魔物から身体を張って村を守ってきた。しかし、今から一年ほど前に彼は魔物との戦闘で彼は片足を奪われ、現在は義足で生活している。

彼の知り合いの街の医者が言うにはもうアルの足は治る見込みがなく、怪我をしてから時間が経ち過ぎたせいで回復薬の類でもどうしようもない。現在のアルは外へ出る事もできないので隠居していた。

最近ではアルの代わりにナイが狩猟を担うようになり、村の人間達のために魔物を倒すだけではなく、食用の魔物や動物を狩って持ち帰っている。ゴマンはそんな彼の手伝いを行い、一緒に行動する事が多かった。


「さあ、他の皆を呼んで帰ろう。日が暮れる前に早く村に帰らないと……」
「あ、ああ……その、本当にごめんな」
「いいよ、謝らなくても……それに爺ちゃんは元気だよ。今だって村の皆のために頑張ってるんだからさ」
「そ、そうだな……この鎧もナイの爺さんのお陰だからな。本当に凄いよ、お前の爺さん」


現在のゴマンが身に付けている皮鎧は元々はアルが作り出した代物であり、片足が義足になったアルはもう狩猟は行えないが、今現在は村の人間のために鍛冶を行い、戦うために必要な装備を作ってくれている。

魔物との戦闘では装備を整えなければならず、村の大人が身に付けている武器や防具はアルが作った物ばかりだった。若い頃はアルは両親の指導で鍛冶師を目指していた時期もあり、鍛冶の腕に関しても一流といっても過言ではない。


「お前のその武器も爺さんが打ち直してくれたんだろ?」
「うん、でもこれを使う機会は滅多にないんだけどね」
「何だよ、それ……勿体ないな。ならなんで持ってきてるんだよ?」
「まあ、お守りみたいな物かな……」


ゴマンはナイが背中に身に付けている「旋斧」を指差し、改めてナイは背負っている旋斧に手を伸ばす。アルの代わりに狩猟を行うようになってからナイはこの旋斧を肌身離さず身に付けていた。

旋斧は重量があり、本来ならば子供が持ちあるような武器ではない。だが、ナイはアルから正式にこの武器を託された日から常に持ち歩き、狩猟の際は必ず持ち歩くようにしていた――
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