貧弱の英雄

カタナヅキ

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忌み子と呼ばれた少年

第43話 ナイの決意

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――その日の夕方、ナイは一人で家の外にある倉庫に引きこもる。普段ならば誰もが夕食の準備に取り掛かる時間帯だが、村の大人達は今夜は一睡もせずに見張りを行うつもりだった。

結局は話し合いは行われたがゴブリンの対抗策は思いつかず、今日の所は解散になった。一応は交代制で見張りの数を増やす事になったが、誰もが魔物に襲われる不安を抱き、寝付けずにいた。


(皆、不安がっている……僕のせいでこんな事になったと知ったら、きっと怒られるだけじゃすまない)


ナイは自分が失くした短剣をホブゴブリンが持っていたという話を聞き、アル達を襲ったゴブリン達の目的はナイである可能性が非常に高い。仲間を殺されたゴブリン達が復讐に来たのかもしれない。

これまでにナイとアルは山や森の中でゴブリンを討伐した事はあったが、村まで襲いに来る事はなかった。しかし、ホブゴブリンの場合は通常種のゴブリンよりも仲間意識が強く、殺された仲間の「敵討ち」のために住処を離れて追跡してきたのだ。


(僕のせいで村が襲われたら……)


自分の過ちで村が窮地に晒された事にナイは罪悪感と危機感を抱き、こうしている間にも魔物が襲ってくるかもしれない。そう考えたナイは不安で圧し潰されそうになるが、いくら後悔しても時間を巻き戻す事は出来ない。

幸いというべきか、今のところは魔物が襲ってくる様子はない。だが、それもいつまでも続くか分からず、このまま魔物が諦めるとは思えない。


「僕が……何とかしないと」


ナイは家から倉庫へと移動された「旋斧」に視線を向け、村一番の力自慢のアルでさえも扱う際は注意しなければならない武器、それを見つめながらナイは考え込む。


(この武器ならきっと魔物を倒す事が出来る。でも、僕の力だと持ち上げる事もできない……)


この旋斧が村の中でも一番の武器である事は間違いないが、この旋斧を扱うだけの筋力をナイは持ち合わせていない。だが、この武器を扱える程の筋力を身に付ける術はあった。


「……この二つの技能を覚えれば」


ナイは水晶の破片を取り出し、壁に向けて光を照らす。すると壁に光の文章が表示され、現在のナイのステータスが表示される。


―――ナイ―――

種族:人間

状態:普通

年齢:10才

レベル:1

SP《スキルポイント》:10


―――異能―――

貧弱――日付が変更する事にレベルがリセットされる


―――技能―――

・迎撃――敵対する相手が攻撃を仕掛けた際、迅速な攻撃動作で反攻に転じる

・観察眼――観察能力を高め、周囲の状況を詳しく把握できる

・採取――採取の際、良質な素材が多く手に入りやすくなる

・調合――調合の成功率が格段に上昇する


――――――――――


自分のステータス画面を見てナイは戦闘向けの技能をもっと覚えておくべきだったかと思うが、新しい技能を覚えるためのSPは十分にあった。


――習得可能技能一覧――


・腕力強化――腕力が強化される(SP消費量:10)

・脚力強化――脚力が強化される(SP消費量:10)

・跳躍――跳躍力が強化される(SP消費量:10)

・解体――死骸から素材を剥ぎ取る技術が向上する(SP消費量:10)

・気配感知――敵意を抱く生物の気配を感知できるようになる(SP消費量:10)

・索敵――潜伏している敵の位置を捉える事ができる(SP消費量:10)

・怪力――肉体の限界近くまで力を発揮する事ができる(SP消費量:10)

・自然回復――自然回復力が高め、病気や怪我が治りやすくなる(SP消費量:10)

・経験値増加――敵を倒す、あるいは経験石を破壊した時に入手する経験値の増加(SP消費量:10)


――――――――――――


現時点の自分のステータスと習得可能な技能を確認すると、ナイはこの中から「腕力強化」と「怪力」の技能に目を付けた。どちらも腕力や筋力を高める効果を持つ技能のため、この二つを同時に覚えればナイでも「旋斧」を扱える可能性もあった。


(この二つを覚える事が出来れば……でも、今のSPだと一つしか覚えられない)


現在のSPを消費して覚えられる技能は一つだけのため、腕力強化か怪力のどちらかしか覚えることができない。だが、それを考慮してナイは家から持ち出した小袋に視線を向ける。


「これを使えば……一気に強くなれるかもしれない」



――ナイは取り出した袋の中身はこの数か月の間、ナイとアルが倒した魔物の経験石が収められていた。最近になって魔物の数が増やしたため、狩猟に赴く際は魔物と交戦する機会も多かった。

経験石は魔物を倒した時に得られる経験値と同程度の力を得られるため、この大量の経験石を破壊すればナイも短時間で急速にレベルを上げられる。これを全て壊せばナイも短時間で相当なレベルと力を身に付ける事が出来るはずだった。


(爺ちゃん、皆、それにドルトンさんも……ごめんね。でも、僕が何とかしてみせるよ)


覚悟を固めたナイは今日の夜に行動を起こす事を決意し、それまでの間に準備を行う――
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