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忌み子と呼ばれた少年
第36話 助かるためには……
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「グギャアッ!!」
「うわぁっ!?」
ホブゴブリンはナイに近付くと石斧を振りかざす。咄嗟にナイは迎撃を発動しようとしたが、両腕がまともに動かせない状態では反撃もできない。
「フンッ!!」
「くうっ!?」
咄嗟にナイは後ろに跳んで初撃の回避には成功したが、ホブゴブリンは逃げ惑うナイに対して何度も石斧を振り払う。
「グギィッ!!」
「うわっ、くっ……!?」
ホブゴブリンは横薙ぎに石斧を振り払う度にナイは後ろに下がり、森に生えている木を盾代わりに利用しようと木陰に身を隠す。しかし、それに対してホブゴブリンは躊躇なく石斧を放つ。
樹木に石斧が叩き込まれた瞬間、石斧が衝突した箇所が抉れて樹木が倒れ込む。慌ててナイとホブゴブリンは倒木を避ける。
(な、なんて力だ……あんなのに殴られたら殺される!?)
ナイは両腕が碌に動けない状態で森の中を駆け出し、必死に逃げ延びようとした。ずっと山で狩猟を行い続けたお陰で数か月前と比べれば体力も身に着き、山の中でも動き回れるぐらいは筋力は身に付けていた。
しかし、ホブゴブリンは障害物となりえる木々をなぎ倒しながらナイの後を追いかけ、次々と樹木が破壊されていく。その光景を見たナイは恐怖を抱き、必死に逃げる。
「グギィイイッ!!」
「ひいっ……うわっ!?」
ホブゴブリンの咆哮に気を取られ、ナイは走っている最中に小石に躓いて倒れてしまう。そんなナイに対してホブゴブリンは跳躍すると、石斧を上空から振りかざす。
「グギャアッ!!」
「うわぁっ!?」
反射的にナイは身体を転がして攻撃を避ける事に成功したが、ホブゴブリンが振り下ろした石斧は地中に埋まるほどの勢いで叩き込まれた。それを確認したナイは顔色を青くさせ、もしも避けていなければ今頃はナイの頭は叩き潰されていた。
必死に逃げようとするナイだったが、ホブゴブリンは石斧を引き抜くと、もたついているナイに手を伸ばす。ナイはホブゴブリンの腕に服を掴まれると、とてつもない力で放り込まれた。
「グギィイッ!!」
「うわあああっ!?」
怪力によってナイは投げ飛ばされると、10メートル以上は離れた場所に転がり込み、地面に何度も横転しながら倒れ込む。腕の骨に罅が入った状態で強い衝撃が身体に襲い掛かり、ナイは気絶しかける。
幸運だったのは投げ飛ばされる時に樹木や岩などの類に衝突しなかった事が幸いし、もしも当たっていたら無事では済まなかった。やがてナイは川が流れている場所まで転がり込み、あまりの痛みに身体が動かせない。
(死、ぬ……こんなの、もう死んじゃうよ……)
全身に激痛が走り、もう肉体の限界を明らかに超えていた。そんなナイの元にホブゴブリンはゆっくりと歩み寄り、石斧を握りしめる。
(殺される……嫌だ、死にたくない……死にたくないっ!?)
ナイは近付いてくるホブゴブリンに視線を向け、余裕のつもりなのかゆっくりと接近するホブゴブリンに恐怖を抱く。だが、怖がっていても状況は変わらず、ナイは生き残る術がないのか考える。
ここまで痛い目にあわされてナイが生き残っている原因は先ほどホブゴブリンを倒した時にレベルが上昇し、肉体の身体能力や耐久性が上がっているのは確かだった。しかもナイはホブゴブリンを倒す時、短剣が硬い物を触れた事を思い出す。
(そうだ、あの時……きっと、経験石も壊したんだ。だから、ホブゴブリンを倒せたんだ……!!)
ホブゴブリンの胸元を攻撃した際、偶然にもナイはホブゴブリンの経験石を破壊した。魔物にとっては経験石とは心臓以上に重要な存在であり、それを破壊すれば生きてはいられない。
通常種のゴブリンと同様にホブゴブリンも胸元に経験石が存在するのは間違いなく、そこを攻撃すればホブゴブリンを倒せる可能性はある。だが、両腕が碌に動かせない状態ではまともな攻撃もできない。。
(……やるしかない、これ以外に方法はないんだ)
生き残るためにナイは必死に頭を回し、骨に罅が入った腕を無理やりに動かしながら腰に装着した「解体用」の短剣を手にする。接近するホブゴブリンに悟られないように上手く隠しながら待ち構える。
「グギィッ……!!」
「っ……!?」
遂にホブゴブリンが目の前にまで接近すると、倒れているナイを見てホブゴブリンは鼻息を荒くしながら両手に掲げた石斧を振りかざす。その光景を見た途端、ナイは一か八か最後の反撃を行う。
「グギィイイッ!!」
「やああっ!!」
石斧をホブゴブリンが振り翳した瞬間、ナイは目つきを鋭くさせて身体を起き上げると、石斧を振り下ろす際に身体が前のめりになったホブゴブリンの胸元に目掛けてナイは短剣を放つ。
火事場の馬鹿力が発揮したのか、生き残るためにナイは無理やりに両腕を動かして解体用の短剣を突き出し、石斧という通常の棍棒よりも重い武器を扱うが故にホブゴブリンは勢いよく前のめりに振り下ろそうとした事が仇となった。
突き出した短剣の刃が前のめりに突っ込んできたホブゴブリンの胸元に的中し、皮膚を貫通して内部に秘めている経験石に触れた。その結果、ホブゴブリンは石斧をあらぬ方向に落としてしまい、血反吐を吐きながら倒れ込む。
「うわぁっ!?」
ホブゴブリンはナイに近付くと石斧を振りかざす。咄嗟にナイは迎撃を発動しようとしたが、両腕がまともに動かせない状態では反撃もできない。
「フンッ!!」
「くうっ!?」
咄嗟にナイは後ろに跳んで初撃の回避には成功したが、ホブゴブリンは逃げ惑うナイに対して何度も石斧を振り払う。
「グギィッ!!」
「うわっ、くっ……!?」
ホブゴブリンは横薙ぎに石斧を振り払う度にナイは後ろに下がり、森に生えている木を盾代わりに利用しようと木陰に身を隠す。しかし、それに対してホブゴブリンは躊躇なく石斧を放つ。
樹木に石斧が叩き込まれた瞬間、石斧が衝突した箇所が抉れて樹木が倒れ込む。慌ててナイとホブゴブリンは倒木を避ける。
(な、なんて力だ……あんなのに殴られたら殺される!?)
ナイは両腕が碌に動けない状態で森の中を駆け出し、必死に逃げ延びようとした。ずっと山で狩猟を行い続けたお陰で数か月前と比べれば体力も身に着き、山の中でも動き回れるぐらいは筋力は身に付けていた。
しかし、ホブゴブリンは障害物となりえる木々をなぎ倒しながらナイの後を追いかけ、次々と樹木が破壊されていく。その光景を見たナイは恐怖を抱き、必死に逃げる。
「グギィイイッ!!」
「ひいっ……うわっ!?」
ホブゴブリンの咆哮に気を取られ、ナイは走っている最中に小石に躓いて倒れてしまう。そんなナイに対してホブゴブリンは跳躍すると、石斧を上空から振りかざす。
「グギャアッ!!」
「うわぁっ!?」
反射的にナイは身体を転がして攻撃を避ける事に成功したが、ホブゴブリンが振り下ろした石斧は地中に埋まるほどの勢いで叩き込まれた。それを確認したナイは顔色を青くさせ、もしも避けていなければ今頃はナイの頭は叩き潰されていた。
必死に逃げようとするナイだったが、ホブゴブリンは石斧を引き抜くと、もたついているナイに手を伸ばす。ナイはホブゴブリンの腕に服を掴まれると、とてつもない力で放り込まれた。
「グギィイッ!!」
「うわあああっ!?」
怪力によってナイは投げ飛ばされると、10メートル以上は離れた場所に転がり込み、地面に何度も横転しながら倒れ込む。腕の骨に罅が入った状態で強い衝撃が身体に襲い掛かり、ナイは気絶しかける。
幸運だったのは投げ飛ばされる時に樹木や岩などの類に衝突しなかった事が幸いし、もしも当たっていたら無事では済まなかった。やがてナイは川が流れている場所まで転がり込み、あまりの痛みに身体が動かせない。
(死、ぬ……こんなの、もう死んじゃうよ……)
全身に激痛が走り、もう肉体の限界を明らかに超えていた。そんなナイの元にホブゴブリンはゆっくりと歩み寄り、石斧を握りしめる。
(殺される……嫌だ、死にたくない……死にたくないっ!?)
ナイは近付いてくるホブゴブリンに視線を向け、余裕のつもりなのかゆっくりと接近するホブゴブリンに恐怖を抱く。だが、怖がっていても状況は変わらず、ナイは生き残る術がないのか考える。
ここまで痛い目にあわされてナイが生き残っている原因は先ほどホブゴブリンを倒した時にレベルが上昇し、肉体の身体能力や耐久性が上がっているのは確かだった。しかもナイはホブゴブリンを倒す時、短剣が硬い物を触れた事を思い出す。
(そうだ、あの時……きっと、経験石も壊したんだ。だから、ホブゴブリンを倒せたんだ……!!)
ホブゴブリンの胸元を攻撃した際、偶然にもナイはホブゴブリンの経験石を破壊した。魔物にとっては経験石とは心臓以上に重要な存在であり、それを破壊すれば生きてはいられない。
通常種のゴブリンと同様にホブゴブリンも胸元に経験石が存在するのは間違いなく、そこを攻撃すればホブゴブリンを倒せる可能性はある。だが、両腕が碌に動かせない状態ではまともな攻撃もできない。。
(……やるしかない、これ以外に方法はないんだ)
生き残るためにナイは必死に頭を回し、骨に罅が入った腕を無理やりに動かしながら腰に装着した「解体用」の短剣を手にする。接近するホブゴブリンに悟られないように上手く隠しながら待ち構える。
「グギィッ……!!」
「っ……!?」
遂にホブゴブリンが目の前にまで接近すると、倒れているナイを見てホブゴブリンは鼻息を荒くしながら両手に掲げた石斧を振りかざす。その光景を見た途端、ナイは一か八か最後の反撃を行う。
「グギィイイッ!!」
「やああっ!!」
石斧をホブゴブリンが振り翳した瞬間、ナイは目つきを鋭くさせて身体を起き上げると、石斧を振り下ろす際に身体が前のめりになったホブゴブリンの胸元に目掛けてナイは短剣を放つ。
火事場の馬鹿力が発揮したのか、生き残るためにナイは無理やりに両腕を動かして解体用の短剣を突き出し、石斧という通常の棍棒よりも重い武器を扱うが故にホブゴブリンは勢いよく前のめりに振り下ろそうとした事が仇となった。
突き出した短剣の刃が前のめりに突っ込んできたホブゴブリンの胸元に的中し、皮膚を貫通して内部に秘めている経験石に触れた。その結果、ホブゴブリンは石斧をあらぬ方向に落としてしまい、血反吐を吐きながら倒れ込む。
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