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忌み子と呼ばれた少年
第26話 経験石の壊し方
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――ゴブリンから経験石を回収した後、死骸に関しては燃やすしかなかった。ゴブリンの死骸は一角兎のように食べられず、骨や皮の類も使い物にならない。死骸を放置すると他の魔物や獣に食い荒らされる可能性もあり、せめて跡形も残さずに焼却するのが一番だとナイ達は判断した。。
ちなみにナイたちが倒したはゴブリンは合計で4匹であり、逃げ出してしまった背丈の低いゴブリンは見逃す異にした。わざわざ追跡して始末する理由もなく、回収した経験石を土産に狩猟を続ける。
その日は二人で山の中を探索し、事前に用意していた罠に嵌まった獲物を回収して帰還する。今日の成果はゴブリンの経験石が4つと罠に掛かっていた兎が3匹だけであり、これでは冬を越す事は厳しい。
「明日からはもっと獲物を狩らないとな……だが、最近は魔物どもが増えてきたせいか山の動物も随分と減ってきた」
「なら、山以外の場所で狩猟するの?」
「いいや、森や草原は山よりも魔物が数を増やしている。冬までに十分な食料を確保しないと今年は厳しいぞ。場合によっては村の連中も手伝わせて草原にいる一角兎を狩る必要があるかもしれんな」
「あ、それなら村の外でボアを見かけたけど……確かボアの肉は凄く美味しいんだよね」
「ほう、ボアが……確かに奴を狩れれば問題は解決するが、流石に儂一人では手に余るな」
ナイは草原に出現したボアの事を話すとアルは難しい表情を浮かべた。食用の魔物の中でもボアは人気が高く、普通の猪よりも大きいために倒す事が出来れば冬を越すには十分な量の食料が手に入る。
草原の方ではボア以外にも食用に適した魔物は多く、前にナイが倒した一角兎も食用に適している。だが、草原の場合は見晴らしが良いために森や山の中と違って身を隠す物が少なく、大人数で動けば魔物に近付ければ気づかれる可能性が高い。
「ボアを仕留めるとなると、大掛かりな罠を仕掛ける必要があるな。村の奴等に手伝ってもらって落とし穴を作るしかないかもしれん」
「爺ちゃんならボアを倒せないの?」
「若い頃ならともかく、今の儂じゃ手に負えんな」
一流の狩人であるアルでさえもボアを仕留めるためには入念な準備が必要らしく、ボアの危険性を語る。一角兎やゴブリン程度とはわけが違い、生半可な武器は通用せず、確実に倒す方法があるとすれば罠を仕掛ける以外にない。
「それよりもナイ、さっき渡した物で経験石は壊せる事が出来たか?」
「あ、うん……今やってるけど、上手く嵌まらなくて」
アルに言われてナイは手元に視線を向けると、彼の手の中には「万力」を想像する道具が存在し、それを利用してナイは経験石の破壊を試みる。
経験石は非常に硬く、耐久度も高いので武器の類でも破壊するのは困難な代物である。しかし、一般人でも破壊できるように特別な道具が開発されており、それがナイが手にしている「壊裂」と呼ばれる。物騒な名前だが、実際に過去には拷問器具としても利用された事もある道具だった。
「せぇのっ……ふぎぎぎっ!!」
「おいおい、大丈夫か?壊せない様なら無理をしない方が良いぞ」
「だ、大丈夫……何でか、今ならいつもより力が出ると思うから」
「力が出るって……そうか、ゴブリンを倒したからレベルが上がったのか」
先ほどの戦闘でナイはゴブリンを倒した事により、経験値を得てレベルが上昇している事を感覚で感じ取っていた。一角兎よりもゴブリンの方が経験値が高いらしく、感覚的には「レベル3」ぐらいはナイの力も上がっていた。
渾身の力を込めてナイは壊裂に取り付けられているバルブを回すと、ゴブリンの経験石が左右の金属板によって押し潰され、やがて罅割れが生じる。完全に砕けるとナイの身体に熱い何かが送り込まれる感覚に陥る。
(あっ……この感覚、レベルが上がってるんだ)
経験石を破壊した事でナイの身体に経験値が送り込まれ、レベルが上昇した時と同じく不思議と力が沸き上がる。まるで身体が一気に軽くなったような感じであり、驚きながらも砕けた経験石の破片に視線を向けた。
「凄い、何だか身体が軽くなったみたい!!」
「どうやらレベルが上がったようだな……魔物を倒した時と同じぐらいの経験値がお前の身体に入ったんだ」
「へえ、そうなんだ……」
「だが、あまり無理してレベルを上げ過ぎると後で辛くなるから気を付けろ」
「え、どうして?」
「レベルが急激に上がったり下がったりすると、身体の感覚が追いつけずに思うように身体が動かせなくなる。今はいいとしても、日付が変わればお前はレベル1に戻る。その時は身体が重たくなったように感じるぞ」
「あっ……」
アルに指摘されてナイはレベルが上がっても、自分の場合は日付が変わるたびにレベル1になる事を思い出して落胆する。どれだけ経験値を集めてもレベルがリセットされたら肉体は元に戻る。その事に関してはどうしようもできないのでアルは不憫に思う。
だが、ナイはレベルが上昇した事で同時にSPを獲得している事は知っており、帰ったらどの程度のSPが集まっているのか楽しみだった。もしも新しい技能の習得に必要な数のSPが集まっていたら何を覚えようかと考えていると、不意に二人の背後から物音が鳴り響く。
ちなみにナイたちが倒したはゴブリンは合計で4匹であり、逃げ出してしまった背丈の低いゴブリンは見逃す異にした。わざわざ追跡して始末する理由もなく、回収した経験石を土産に狩猟を続ける。
その日は二人で山の中を探索し、事前に用意していた罠に嵌まった獲物を回収して帰還する。今日の成果はゴブリンの経験石が4つと罠に掛かっていた兎が3匹だけであり、これでは冬を越す事は厳しい。
「明日からはもっと獲物を狩らないとな……だが、最近は魔物どもが増えてきたせいか山の動物も随分と減ってきた」
「なら、山以外の場所で狩猟するの?」
「いいや、森や草原は山よりも魔物が数を増やしている。冬までに十分な食料を確保しないと今年は厳しいぞ。場合によっては村の連中も手伝わせて草原にいる一角兎を狩る必要があるかもしれんな」
「あ、それなら村の外でボアを見かけたけど……確かボアの肉は凄く美味しいんだよね」
「ほう、ボアが……確かに奴を狩れれば問題は解決するが、流石に儂一人では手に余るな」
ナイは草原に出現したボアの事を話すとアルは難しい表情を浮かべた。食用の魔物の中でもボアは人気が高く、普通の猪よりも大きいために倒す事が出来れば冬を越すには十分な量の食料が手に入る。
草原の方ではボア以外にも食用に適した魔物は多く、前にナイが倒した一角兎も食用に適している。だが、草原の場合は見晴らしが良いために森や山の中と違って身を隠す物が少なく、大人数で動けば魔物に近付ければ気づかれる可能性が高い。
「ボアを仕留めるとなると、大掛かりな罠を仕掛ける必要があるな。村の奴等に手伝ってもらって落とし穴を作るしかないかもしれん」
「爺ちゃんならボアを倒せないの?」
「若い頃ならともかく、今の儂じゃ手に負えんな」
一流の狩人であるアルでさえもボアを仕留めるためには入念な準備が必要らしく、ボアの危険性を語る。一角兎やゴブリン程度とはわけが違い、生半可な武器は通用せず、確実に倒す方法があるとすれば罠を仕掛ける以外にない。
「それよりもナイ、さっき渡した物で経験石は壊せる事が出来たか?」
「あ、うん……今やってるけど、上手く嵌まらなくて」
アルに言われてナイは手元に視線を向けると、彼の手の中には「万力」を想像する道具が存在し、それを利用してナイは経験石の破壊を試みる。
経験石は非常に硬く、耐久度も高いので武器の類でも破壊するのは困難な代物である。しかし、一般人でも破壊できるように特別な道具が開発されており、それがナイが手にしている「壊裂」と呼ばれる。物騒な名前だが、実際に過去には拷問器具としても利用された事もある道具だった。
「せぇのっ……ふぎぎぎっ!!」
「おいおい、大丈夫か?壊せない様なら無理をしない方が良いぞ」
「だ、大丈夫……何でか、今ならいつもより力が出ると思うから」
「力が出るって……そうか、ゴブリンを倒したからレベルが上がったのか」
先ほどの戦闘でナイはゴブリンを倒した事により、経験値を得てレベルが上昇している事を感覚で感じ取っていた。一角兎よりもゴブリンの方が経験値が高いらしく、感覚的には「レベル3」ぐらいはナイの力も上がっていた。
渾身の力を込めてナイは壊裂に取り付けられているバルブを回すと、ゴブリンの経験石が左右の金属板によって押し潰され、やがて罅割れが生じる。完全に砕けるとナイの身体に熱い何かが送り込まれる感覚に陥る。
(あっ……この感覚、レベルが上がってるんだ)
経験石を破壊した事でナイの身体に経験値が送り込まれ、レベルが上昇した時と同じく不思議と力が沸き上がる。まるで身体が一気に軽くなったような感じであり、驚きながらも砕けた経験石の破片に視線を向けた。
「凄い、何だか身体が軽くなったみたい!!」
「どうやらレベルが上がったようだな……魔物を倒した時と同じぐらいの経験値がお前の身体に入ったんだ」
「へえ、そうなんだ……」
「だが、あまり無理してレベルを上げ過ぎると後で辛くなるから気を付けろ」
「え、どうして?」
「レベルが急激に上がったり下がったりすると、身体の感覚が追いつけずに思うように身体が動かせなくなる。今はいいとしても、日付が変わればお前はレベル1に戻る。その時は身体が重たくなったように感じるぞ」
「あっ……」
アルに指摘されてナイはレベルが上がっても、自分の場合は日付が変わるたびにレベル1になる事を思い出して落胆する。どれだけ経験値を集めてもレベルがリセットされたら肉体は元に戻る。その事に関してはどうしようもできないのでアルは不憫に思う。
だが、ナイはレベルが上昇した事で同時にSPを獲得している事は知っており、帰ったらどの程度のSPが集まっているのか楽しみだった。もしも新しい技能の習得に必要な数のSPが集まっていたら何を覚えようかと考えていると、不意に二人の背後から物音が鳴り響く。
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