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忌み子と呼ばれた少年
第21話 装備品
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――翌日の朝、ナイは目を覚ますと早々に気だるさを覚えた。どうやら眠っている間に「貧弱」の技能が効果を発揮したらしく、レベルが元に戻ってしまったらしい。
「ううっ……あれ、僕どうして……」
「……おう、起きたか。この寝坊助め」
「あいてっ!?」
ナイは自分が家の中で倒れた事を思い出したが、いつの間にか汚れていた衣服も脱がされ、ベッドの上に横になっていた。そしてナイの傍にはアルが椅子に座り込んでおり、目覚めた彼の頭を小突く。
「全く、家に戻ってきたら血塗れになって倒れていたから肝を冷やしたぞ……心配かけおって!!」
「ご、ごめんなさい……」
「……まあいい、それよりもほれ。これを飲め」
アルはナイに粉末を乗せた紙を渡すと、それを見たナイは粉薬かと思って言われた通りに飲み込む。すると、身体が急に熱くなったような感覚に陥り、疲労感が薄れていく。
「んぐっ、げほげほっ……な、何これ?」
「それはお前さんが持って来た一角兎の角を削って作り出した薬だ。滋養強壮の薬の素材に使われる代物だからな、効果はあるだろう?」
「えっ……角?」
「ほら、これの事だよ。お前が一人で取ってきたんだろう?」
ベッドの傍に設置された机の上に置かれた大量の一角兎の角をアルが示すと、ナイは改めて昨日の出来事を思い出す。一角獣の群れに囲まれ、戦い続けたのは夢ではなく、新しく覚えた迎撃の技能で生き延びたのだ。
ナイは改めて自分の身体に視線を向け、傷一つ負っていない事に気付く。昨夜の戦闘では軽い擦り傷などは負っていたはずだが、どうやらアルが薬草の粉末を塗り込んで治してくれたらしい。
「爺ちゃん、ごめんね。昨日、僕は一人で村の外に抜け出したんだ……」
「どうしてそんな真似をした?」
「爺ちゃんが仕事の時に連れて行かなくなったのが僕が弱いせいだと思ったから、もしもまた一人で魔物を倒す事が出来たら爺ちゃんもまた連れて行ってくれるかと思って……」
「全く、無茶をしおって……だが、そうか。お前はそんな風に考えていたのか」
アルはナイの言葉を聞いて納得したように頷き、自分が危険から遠ざけるためにナイを家に残していた事が逆に彼を追い込んでいた事に気づいた。改めてアルはナイの頭に手を置く。
「ナイ、もう勝手に無茶をしたら駄目だぞ。爺ちゃんとの約束だ」
「うん……」
「それと……爺ちゃんも謝らないといけない事があるんだ。ナイ、お前を狩猟に連れていかなくなったのはお前が弱いせいじゃない。爺ちゃんがちょっとお前の事を心配し過ぎてたようだ。これからは一緒に連れていくからな」
「え?それじゃあ……」
「但し、その前に御前に渡す物がある!!」
狩猟の際にアルが自分を連れていくという言葉にナイは顔を上げるが、アルは机の上に置いていた小包を取り出し、それをベッドの上のナイに渡す。
「ほれ、開けてみろ。ちょっと早いが、お前さんの誕生日祝いの品だ」
「えっ……誕生日?」
ナイの誕生日はまだ二か月程先だが、渡された小包を見てナイは不思議そうに中身を開くと、小包の中には二つの短剣と左手に嵌め込む籠手が入っていた。
短剣の方は昨日ナイが壊した物と同じ形の物と、もう一つは新品なのか刃が綺麗に研ぎ澄まされていた。新しい短剣の方が若干刃が長く、最後に籠手の方は木造製で軽くて子供のナイでも身に付けられる程の大きさだった。
「これからお前も本格的に魔物と戦う事になるだろう。だが、まともな武器も防具もなければ魔物を倒すなんて無理だ。これからは外に出る時はそれを身に付けるんだ」
「あ、ありがとう……でも、なんで短剣が二つあるの?」
「戦う時に使うのはこっちの刃が長い方だ。もう一つは魔物を倒した時、解体するための予備だ。それに短剣が二つあれば片方が折れた時はもう片方で戦えるだろう?」
アルの言葉にナイは渡された短剣に視線を向け、確かに一角兎との戦闘の際は途中で短剣の刃が折れて窮地に陥った。どうにか折れた短剣で一角兎の角を引きちぎって戦ったが、もしも相手が一角兎以外の魔物ならばナイには対抗手段はない。
防具として渡された籠手は木造製なのはアルの気遣いであり、現時点のナイの筋力で重量がある鉄製の防具は身に付けさせる事が出来ない。それに木造製といっても特別な木材を使用しているため、簡単に壊れる事はない。
「今のお前が身に付けられるのはそれぐらいだ。もっと成長して大人になったら新しい武器や防具を作ってやるからな」
「うん、ありがとう……」
「さあ、今日はゆっくり休め。勝手に外へ抜け出すんじゃないぞ、爺ちゃんはちょっと仕事があるからまた外に行くが……すぐに帰ってくるからな」
「分かった。ちゃんと待ってる」
ナイはアルの言葉に頷き、大人しくベッドの上に横になる。それを確認したアルは頷くと、仕事の準備のために部屋を出て行く。
その様子を見送ったナイは今日は大人しく家の中で休んでようと思ったが、ここで彼は気になる事があり、ベッドの下に隠しておいた「水晶の破片」を取り出す。
「ううっ……あれ、僕どうして……」
「……おう、起きたか。この寝坊助め」
「あいてっ!?」
ナイは自分が家の中で倒れた事を思い出したが、いつの間にか汚れていた衣服も脱がされ、ベッドの上に横になっていた。そしてナイの傍にはアルが椅子に座り込んでおり、目覚めた彼の頭を小突く。
「全く、家に戻ってきたら血塗れになって倒れていたから肝を冷やしたぞ……心配かけおって!!」
「ご、ごめんなさい……」
「……まあいい、それよりもほれ。これを飲め」
アルはナイに粉末を乗せた紙を渡すと、それを見たナイは粉薬かと思って言われた通りに飲み込む。すると、身体が急に熱くなったような感覚に陥り、疲労感が薄れていく。
「んぐっ、げほげほっ……な、何これ?」
「それはお前さんが持って来た一角兎の角を削って作り出した薬だ。滋養強壮の薬の素材に使われる代物だからな、効果はあるだろう?」
「えっ……角?」
「ほら、これの事だよ。お前が一人で取ってきたんだろう?」
ベッドの傍に設置された机の上に置かれた大量の一角兎の角をアルが示すと、ナイは改めて昨日の出来事を思い出す。一角獣の群れに囲まれ、戦い続けたのは夢ではなく、新しく覚えた迎撃の技能で生き延びたのだ。
ナイは改めて自分の身体に視線を向け、傷一つ負っていない事に気付く。昨夜の戦闘では軽い擦り傷などは負っていたはずだが、どうやらアルが薬草の粉末を塗り込んで治してくれたらしい。
「爺ちゃん、ごめんね。昨日、僕は一人で村の外に抜け出したんだ……」
「どうしてそんな真似をした?」
「爺ちゃんが仕事の時に連れて行かなくなったのが僕が弱いせいだと思ったから、もしもまた一人で魔物を倒す事が出来たら爺ちゃんもまた連れて行ってくれるかと思って……」
「全く、無茶をしおって……だが、そうか。お前はそんな風に考えていたのか」
アルはナイの言葉を聞いて納得したように頷き、自分が危険から遠ざけるためにナイを家に残していた事が逆に彼を追い込んでいた事に気づいた。改めてアルはナイの頭に手を置く。
「ナイ、もう勝手に無茶をしたら駄目だぞ。爺ちゃんとの約束だ」
「うん……」
「それと……爺ちゃんも謝らないといけない事があるんだ。ナイ、お前を狩猟に連れていかなくなったのはお前が弱いせいじゃない。爺ちゃんがちょっとお前の事を心配し過ぎてたようだ。これからは一緒に連れていくからな」
「え?それじゃあ……」
「但し、その前に御前に渡す物がある!!」
狩猟の際にアルが自分を連れていくという言葉にナイは顔を上げるが、アルは机の上に置いていた小包を取り出し、それをベッドの上のナイに渡す。
「ほれ、開けてみろ。ちょっと早いが、お前さんの誕生日祝いの品だ」
「えっ……誕生日?」
ナイの誕生日はまだ二か月程先だが、渡された小包を見てナイは不思議そうに中身を開くと、小包の中には二つの短剣と左手に嵌め込む籠手が入っていた。
短剣の方は昨日ナイが壊した物と同じ形の物と、もう一つは新品なのか刃が綺麗に研ぎ澄まされていた。新しい短剣の方が若干刃が長く、最後に籠手の方は木造製で軽くて子供のナイでも身に付けられる程の大きさだった。
「これからお前も本格的に魔物と戦う事になるだろう。だが、まともな武器も防具もなければ魔物を倒すなんて無理だ。これからは外に出る時はそれを身に付けるんだ」
「あ、ありがとう……でも、なんで短剣が二つあるの?」
「戦う時に使うのはこっちの刃が長い方だ。もう一つは魔物を倒した時、解体するための予備だ。それに短剣が二つあれば片方が折れた時はもう片方で戦えるだろう?」
アルの言葉にナイは渡された短剣に視線を向け、確かに一角兎との戦闘の際は途中で短剣の刃が折れて窮地に陥った。どうにか折れた短剣で一角兎の角を引きちぎって戦ったが、もしも相手が一角兎以外の魔物ならばナイには対抗手段はない。
防具として渡された籠手は木造製なのはアルの気遣いであり、現時点のナイの筋力で重量がある鉄製の防具は身に付けさせる事が出来ない。それに木造製といっても特別な木材を使用しているため、簡単に壊れる事はない。
「今のお前が身に付けられるのはそれぐらいだ。もっと成長して大人になったら新しい武器や防具を作ってやるからな」
「うん、ありがとう……」
「さあ、今日はゆっくり休め。勝手に外へ抜け出すんじゃないぞ、爺ちゃんはちょっと仕事があるからまた外に行くが……すぐに帰ってくるからな」
「分かった。ちゃんと待ってる」
ナイはアルの言葉に頷き、大人しくベッドの上に横になる。それを確認したアルは頷くと、仕事の準備のために部屋を出て行く。
その様子を見送ったナイは今日は大人しく家の中で休んでようと思ったが、ここで彼は気になる事があり、ベッドの下に隠しておいた「水晶の破片」を取り出す。
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