貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
15 / 1,110
忌み子と呼ばれた少年

第15話 「迎撃」の技能の効果

しおりを挟む
家を抜け出したナイは早速覚えた「迎撃」を試すため、何か良い方法はないのかを考える。迎撃の技能は相手が攻撃した際に発動し、迅速に反撃行動に移れるという能力のため、まずは自分を攻撃する敵を探す必要があった。


(しまった!!敵がいないと迎撃を試す事なんて出来ないや。でも、勝手に村の外に出て魔物と戦うわけにもいかないし……どうしよう)


迎撃を試すための敵を見つけ出さなければならず、ナイは困り果てていると不意に家の近くに生えている草むらに視線を向けた。そこには偶然にもカマキリが存在し、それを見つけたナイはカマキリで試せないのかと考える。


(虫が相手でも発動するのかな……まあ、試してみよう)


ナイは草むらに存在するカマキリに近付くとゆっくりと手を伸ばす。カマキリは唐突に近付いてきたナイを見て警戒するように両手の刃を構えた。


「ッ……!!」
「……てやっ」


カマキリが身構えるのを確認するとナイはゆっくりと手を伸ばし、軽くつつこうとした。その様子を見てカマキリは自分が攻撃されると判断したのか、両手の鎌を振りかざす。

この時にナイは指が斬られると思ったが、その瞬間に身体が勝手に反応するかのように指が動き出し、刃で斬られる前に蟷螂の足元を振り払う。その結果、体勢を崩したカマキリは攻撃する前に倒れ込む。


「ッ……!?」
「えっ!?今のって……」


カマキリは慌てて起き上がると逃げてしまい、その様子を見てナイは驚いた様に右手に視線を向けた。カマキリに指が斬られると思った瞬間に身体が無意識に動き、逆に相手が攻撃に移る前に行動した。

どうやら昆虫が相手でもナイが「敵」と判断した相手には「迎撃」は効果を発揮する事が判明し、戸惑いながらもナイは拳を握りしめる。


(凄い、この技能……これがあれば一角兎と戦う時でも怖くないかも)


一角兎を倒した際、偶然にもナイは相手が攻撃を仕掛けてきた際に鉈で反撃を繰り出した。その結果、鉈は一角兎の急所に的中して気絶させた事を思い出す。

あの時の行動も正に「迎撃」した事に変わりはなく、もしかしたらナイが迎撃の技能を覚えることができたのもあの時の行動が関わっているのかもしれない。それはともかく「迎撃」の効果を確認したナイはもっと試したいと思った。


「迎撃か……また新しい敵を探さないと」
「おい、ひとりで何をぶつぶつと言ってるんだ」
「え?」


唐突に声を掛けられたナイは振り返ると、そこには村に暮らす子供が存在し、その一人はいつもナイに嫌味を告げる子供だった。名前はゴマンであり、この村の村長の子供でもある。


「ゴマン……それに他の皆も」
「ゴマンだ!!お前みたいなよそ者のガキが僕を呼び捨てにするなんていい度胸だな!!」
「よそ者って……僕はずっとここにいるよ」
「ふん、赤ん坊の頃に拾われてきた奴なんてよそ者だろうが!!」


ナイは赤ん坊の頃に拾われて村の中に育てられているが、そんな彼を村長の息子であるゴマンは気に入らなかった。自分達が生まれた村ではない場所から連れて来られたナイに対し、昔からゴマンは冷たく接していた。

普段は滅多にゴマンはナイに絡んでくる事はないが、今回は妙にニヤニヤと笑っていた。そんな彼等をみてナイは嫌な予感を浮かべる。


「僕に何か用なの?」
「ああ、そうだ。この間、お前の所の爺さんに酷い目に遭わされたからな……また、お前で憂さ晴らしさせてもらおうか」
「……そっちが勝手に絡んできた癖に」
「うるさい!!あの爺、あれぐらいの悪戯で本気で殴りやがって!!僕を誰だと思ってるんだ!?」


先日、ゴマンは村の中で悪さをしていた際、アルに見つかって折檻を受けた。村長の息子であるゴマンはその事に激怒して親に泣きついたが、村長は良識の有る人物なので逆にゴマンを叱りつけたという。

昔からゴマンはアルの事を目の敵にしており、そんなゴマンをアルは何度も鉄拳制裁で教育を施す。それでもゴマンが懲りる様子はなく、むしろ彼が叱りつける度にナイに嫌がらせを行う。


「もう我慢の限界だ!!僕の父ちゃんがお前の所の爺さんと親友だからって、今まで我慢してきたがな!!お前の爺さん、最近全く獲物を村に寄越さないじゃないか!!」
「最近は魔物が増えてきたから、狩猟に出向くのも危険なんだよ……」
「うるさい!!僕は肉を食いたいんだ、なのに狩人の爺さんがしっかりと働かないから悪いんだろうが!!」
「うわっ!?」


文句を告げたナイに対してゴマンは蹴り飛ばそうとするが、咄嗟にナイは後ろに下がる。生意気にも自分の攻撃を躱したナイにゴマンは苛立ちを抱き、怒鳴りつけた。


「ふん!!僕に逆らえばどうなるか分かってるのか!?また、お前の腕を折ってやろうか!!」
「…………」


ゴマンの言葉にナイは眉をしかめ、実を言えば先日にナイが腕を折った理由、それは彼がただ転んで腕を折ったわけではなく、ゴマンに絡まれた時に転ばされた事が原因だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

処理中です...