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アリアの気持ち
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――その一方、レオと再会したアリアは宿屋の一室で母親から送られてきた手紙を確認し、頭を抱える。近いうちに母親がこの街へ訪れる旨が描かれており、それを確認したアリアは母親が自分とレオの仲を確認するために訪れようとしていると判断した。
「はあっ……一体どうすればいいんだ私は?未だにレオと距離を縮めるどころか、逆に昔よりも距離を感じるぞ……」
20年前に自分の立場も考えずにレオを振った事をアリアは後悔し、王族である彼女がそもそも剣士として一生を終える事は出来ない。正確に言えば王族としての役目を捨て、自分のためだけに生きる事などアリアには出来るはずがない。
アリアとしてはレオが年齢を重ねようと彼に対する想いは変わらず、むしろ逆に20年間会えなかった分だけ彼に対する恋心は大きくなっていた。未だに自分と互角に戦える剣の腕を持ち、さらに大勢の人間に慕われ、指導者としても立派に成長したレオにアリアは冒険者時代よりも惚れ込んでいた。
「過去に戻れるならばあの時、レオの想いに答えて添い遂げるべきだった……だが、今更後悔してどうする?どうすれば彼に振り向いてもらえるんだ……」
手紙の内容はあくまでも母親が訪れる事しか記されておらず、バルカン王国のマリアと共にレオと結婚する事までは書かれていなかった。だからこそアリアは母親が訪れるのは自分をアトラス大森林に呼び戻すためではないかと不安を抱く。
「このままではきっと王族に見合った貴族の森人族と結婚されてしまう……しかし、それでもいいんじゃないのか?私は彼の想いを断ったんだ……今更、結婚して欲しいなど虫のいい話をレオが引き受けてくれるはずがない。はあっ……」
自分で口にした言葉にアリアは落ち込み、王族という立場に苦悩した。もしも20年前にレオを受け入れて結婚し、アトラス大森林に戻っていれば今頃はアリアは女王として即位していたかもしれない。そして愛する夫に支えられ、可愛い子供達と一緒に暮らす風景を想像し、それがどれほど幸福な光景なのか考えただけで笑みが止まらない。
しかし、どれだけ妄想にふけようと現実は変わらず、このままでは一か月も経たない内に母親が訪れ、レオとアリアの関係が露呈してしまう。そうなればアリアは強制的に連れ帰され、母親が選んだ相手と結婚させられてしまう。ようやく20年ぶりに再会した想い人と離れる事などアリアには我慢できなかった。
「そうだ、こうなったらもう正直にレオに話そう。今の私の気持ちを素直に伝え、それで彼に判断を委ねよう」
色々と考えるのは止めたアリアはレオに告白する事を決意し、もしもレオが拒否したのならばアリアは大人しく身を引き、母親と共にアトラス大森林へと帰還する事を決意する。
「よし、じゃあ早速レオの元へ……いや、待て。告白といってもどうすればいいんだ?やはり、贈り物も必要なのだろうか……?」
今までに告白される事があっても告白した事はないアリアは立ち止まり、どのような方法でレオに想いを伝えるべきか悩む。恋文を渡すか、あるいは直接想いを伝えるか、または自分の覚悟を示すために贈り物を渡すか、アリアの考えは纏まらない。
「こういう時はどうすればいいんだ……そうだ!!確か前に借りた恋愛物の小説を参考にしよう!!」
アリアは荷物を探ると、この街で出来た友人から借り受けた恋愛を題材とした小説を取り出す。まだ中身は確認していないが、一部の人間には人気がある恋愛小説だった。
「途中の描写は飛ばして……ここだ!!主人公が告白する場面か……こ、これは!?」
小説の最後の部分に移動すると、女主人公が長年の間思い続けてきた幼馴染に告白するシーンが描かれていた。だが、何故か二人が存在する場所は幼馴染の部屋の中で主人公はベッドの上で毛布にくるまっていた。
「何だ?この二人は一体何を……はわっ!?」
小説の挿絵を見てアリアは素っ頓狂なっ声を上げてしまい、幼馴染が女主人公の毛布を剥ぐと、そこにはリボンでラッピングした状態の女主人公が存在し、二人が口づけを行うシーンが描かれていた。それを見たアリアは目を回し、立っていられずに座り込んでしまう。
「なな、何だこれは!?これが、人間の女性の告白の仕方なのか!?いや、そんなバカな……」
『あの、すいません。アリアさん、隣室の方から声がうるさいと苦情が……』
「ああっ!?こ、これはすまない……」
大声を上げ過ぎたせいで隣室の客に迷惑を掛けたらしく、宿の使用人に扉越しに注意されてアリアは慌てて謝罪する。しかし、その視線は小説に釘付けとなり、彼女はこれが人間の女性の告白の仕方だと勘違いしてしまう。
――実際の所、アリアが借りた小説は恋愛物といっても過激な描写が非常に多く、そのせいで後に年齢制限が掛けられる程の小説だった。つまり、この世界ならではな「大人向けの小説」という事になる。無論、アリアの友人も悪意でかしたわけではなく、間違えて彼女に自分の趣味で所有していた本を渡しただけだが……
※まさかの2日連続更新!!
「はあっ……一体どうすればいいんだ私は?未だにレオと距離を縮めるどころか、逆に昔よりも距離を感じるぞ……」
20年前に自分の立場も考えずにレオを振った事をアリアは後悔し、王族である彼女がそもそも剣士として一生を終える事は出来ない。正確に言えば王族としての役目を捨て、自分のためだけに生きる事などアリアには出来るはずがない。
アリアとしてはレオが年齢を重ねようと彼に対する想いは変わらず、むしろ逆に20年間会えなかった分だけ彼に対する恋心は大きくなっていた。未だに自分と互角に戦える剣の腕を持ち、さらに大勢の人間に慕われ、指導者としても立派に成長したレオにアリアは冒険者時代よりも惚れ込んでいた。
「過去に戻れるならばあの時、レオの想いに答えて添い遂げるべきだった……だが、今更後悔してどうする?どうすれば彼に振り向いてもらえるんだ……」
手紙の内容はあくまでも母親が訪れる事しか記されておらず、バルカン王国のマリアと共にレオと結婚する事までは書かれていなかった。だからこそアリアは母親が訪れるのは自分をアトラス大森林に呼び戻すためではないかと不安を抱く。
「このままではきっと王族に見合った貴族の森人族と結婚されてしまう……しかし、それでもいいんじゃないのか?私は彼の想いを断ったんだ……今更、結婚して欲しいなど虫のいい話をレオが引き受けてくれるはずがない。はあっ……」
自分で口にした言葉にアリアは落ち込み、王族という立場に苦悩した。もしも20年前にレオを受け入れて結婚し、アトラス大森林に戻っていれば今頃はアリアは女王として即位していたかもしれない。そして愛する夫に支えられ、可愛い子供達と一緒に暮らす風景を想像し、それがどれほど幸福な光景なのか考えただけで笑みが止まらない。
しかし、どれだけ妄想にふけようと現実は変わらず、このままでは一か月も経たない内に母親が訪れ、レオとアリアの関係が露呈してしまう。そうなればアリアは強制的に連れ帰され、母親が選んだ相手と結婚させられてしまう。ようやく20年ぶりに再会した想い人と離れる事などアリアには我慢できなかった。
「そうだ、こうなったらもう正直にレオに話そう。今の私の気持ちを素直に伝え、それで彼に判断を委ねよう」
色々と考えるのは止めたアリアはレオに告白する事を決意し、もしもレオが拒否したのならばアリアは大人しく身を引き、母親と共にアトラス大森林へと帰還する事を決意する。
「よし、じゃあ早速レオの元へ……いや、待て。告白といってもどうすればいいんだ?やはり、贈り物も必要なのだろうか……?」
今までに告白される事があっても告白した事はないアリアは立ち止まり、どのような方法でレオに想いを伝えるべきか悩む。恋文を渡すか、あるいは直接想いを伝えるか、または自分の覚悟を示すために贈り物を渡すか、アリアの考えは纏まらない。
「こういう時はどうすればいいんだ……そうだ!!確か前に借りた恋愛物の小説を参考にしよう!!」
アリアは荷物を探ると、この街で出来た友人から借り受けた恋愛を題材とした小説を取り出す。まだ中身は確認していないが、一部の人間には人気がある恋愛小説だった。
「途中の描写は飛ばして……ここだ!!主人公が告白する場面か……こ、これは!?」
小説の最後の部分に移動すると、女主人公が長年の間思い続けてきた幼馴染に告白するシーンが描かれていた。だが、何故か二人が存在する場所は幼馴染の部屋の中で主人公はベッドの上で毛布にくるまっていた。
「何だ?この二人は一体何を……はわっ!?」
小説の挿絵を見てアリアは素っ頓狂なっ声を上げてしまい、幼馴染が女主人公の毛布を剥ぐと、そこにはリボンでラッピングした状態の女主人公が存在し、二人が口づけを行うシーンが描かれていた。それを見たアリアは目を回し、立っていられずに座り込んでしまう。
「なな、何だこれは!?これが、人間の女性の告白の仕方なのか!?いや、そんなバカな……」
『あの、すいません。アリアさん、隣室の方から声がうるさいと苦情が……』
「ああっ!?こ、これはすまない……」
大声を上げ過ぎたせいで隣室の客に迷惑を掛けたらしく、宿の使用人に扉越しに注意されてアリアは慌てて謝罪する。しかし、その視線は小説に釘付けとなり、彼女はこれが人間の女性の告白の仕方だと勘違いしてしまう。
――実際の所、アリアが借りた小説は恋愛物といっても過激な描写が非常に多く、そのせいで後に年齢制限が掛けられる程の小説だった。つまり、この世界ならではな「大人向けの小説」という事になる。無論、アリアの友人も悪意でかしたわけではなく、間違えて彼女に自分の趣味で所有していた本を渡しただけだが……
※まさかの2日連続更新!!
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