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レオの気持ち

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※久々の更新で申し訳ない……ちなみに「ギルド長」は「ギルドマスター」に変更しました。


ある日、レオは親友であるギルドマスターから呼び出され、酒場で彼と二人だけで食事を行っていた。少し前まではよく二人で飲む事もあったが、最近は指導役として以前よりも冒険者と関わるようになってからは飲みに行くときも他の冒険者が付いてくる事が多くなった。なのでレオは久々にギルドマスターと酒を飲む事になるが、何故か普段は明るいギルドマスターが酒場に着いて早々に大きな溜息を吐き出す。


「はあっ……」
「……どうかしたのか?先ほどから溜息ばかりを吐いているぞ」
「ん?ああ、すまない……ちょっと面倒な上から仕事を押し付けられてな」
「上から?」


冒険者ギルドのトップであるギルドマスターにレオは首を傾げ、彼の語る「上の人間」に押し付けられた仕事に興味を抱く。


「一体どんな仕事なんだ?」
「いや、悪いがそれはお前には言えない……」
「俺にも言えないのか?それほど厄介事なのか?」
「う~ん……まあ、その通りなんだがお前だから言えないというか……」
「……?」


基本的に元S級冒険者で剣神とまで称されたレオは昔から厄介事を任される事が多かった。ちなみにこれまでに彼が頼まれた仕事は危険度が高い魔物の討伐や、悪徳貴族を裏から始末するような裏の仕事も任された事がある。しかし、今回のギルドマスターに頼まれた仕事は最強の剣士であるレオにさえも頼めない内容だった。


(なんでよりにもよって人間の国王と森人族の女王から直々の依頼が来るんだよ!!)


数日前、レオが現在所属する冒険者ギルドのギルドマスターの元に使者が赴き、その内容というのがレオの身辺調査と彼の女性関係、そしてどのような相手が好みなのか調査しろという突拍子もない依頼だった。正直、面倒事には巻き込まれたくはないギルドマスターだったが、今回ばかりは相手も相手なので断る事が出来なかった。


(くそっ……なんで俺が親友の女性関係まで調べなきゃならないんだ?そもそも今までレオの事を放置してきた癖にどうして今更……)


ギルドマスターとしては親友であり、冒険者達の指導役を引き受けた恩人の情報を流すような真似はしたくはないが、相手が大国の国王と女王では彼も断れるはずがない。下手に拒否すれば冒険者ギルドの存続すらも危うくなり、仕方なくギルドマスターはレオを呼び出して依頼内容通りに彼の女性関係から調べる。


「と、ところでレオ……お前、最近になって昔仲が良かった森人族の剣士と一緒に行動する事が多いそうだな」
「ああ……アリアの事か?確かに最近は共に行動する事が多いな」
「おお、じゃあもしかしてお前達はよりを戻したのか!?」
「はははっ、それはないな。俺は20年前にもう振られているんだよ」
「そ、そうか……」


アリアの事を話題に出しても特にレオは大きな反応は見せず、話を聞く限りでは付き合っていない事が判明した。アリアがこの街に滞在するようになってからそれなり経つが、関係は一向に変わっていない事にギルドマスターは呆れてしまう。


(あのアリアという女、どう見てもこいつに脈ありなんだけどな……レオが鈍いのか、それともアリアが奥手すぎるのか……)


他者の目から見てもアリアがレオに多大な好意を抱いているのは間違いなく、実際にたいした用事もないのにレオの元に赴いたり、彼が移動する先に付いて行こうとする。この間に至ってはレオに山賊の討伐の依頼が届いたのだが、彼女は無償で山賊の討伐を協力している。


(この間、受付嬢がレオの話をしただけでチラチラと見ていたからな……しかし、20年前とは昔は恋をした相手にあれほど好意を示されているのに何も思わないのかこいつ?)


ギルドマスターは現在のレオがアリアの事をどう思っているのか気になり、もう面倒草いので直接問い質す事にした。


「なあ、レオ……その、正直に答えて欲しいんだが」
「ん?何だ?」
「ぶっちゃけた話、お前はアリアの事をどう思っているんだ?」
「…………?」


レオは唐突なギルドマスターの質問に黙り込み、考え込むように腕を組む。そんな彼の反応にギルドマスターは緊張し、返答を待つ。


「そうだな、俺にとってアリアは……初恋の人だ。今でも大切な人だと思っている」
「おおっ!!それなら……」
「だが、今の俺にとってアリアは家族みたいな存在だ。傍に居るだけで安心する人、だな」
「えっ……」


最初は思わぬ返答にギルドマスターは喜ぶが、直後に「家族」と表現したレオに呆気に取られる。どう考えてもそれは「夫婦」という意味合いではなく、「姉弟」や「親子」のような雰囲気を滲ませていた――
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