9 / 15
レオの気持ち
しおりを挟む
※久々の更新で申し訳ない……ちなみに「ギルド長」は「ギルドマスター」に変更しました。
ある日、レオは親友であるギルドマスターから呼び出され、酒場で彼と二人だけで食事を行っていた。少し前まではよく二人で飲む事もあったが、最近は指導役として以前よりも冒険者と関わるようになってからは飲みに行くときも他の冒険者が付いてくる事が多くなった。なのでレオは久々にギルドマスターと酒を飲む事になるが、何故か普段は明るいギルドマスターが酒場に着いて早々に大きな溜息を吐き出す。
「はあっ……」
「……どうかしたのか?先ほどから溜息ばかりを吐いているぞ」
「ん?ああ、すまない……ちょっと面倒な上から仕事を押し付けられてな」
「上から?」
冒険者ギルドのトップであるギルドマスターにレオは首を傾げ、彼の語る「上の人間」に押し付けられた仕事に興味を抱く。
「一体どんな仕事なんだ?」
「いや、悪いがそれはお前には言えない……」
「俺にも言えないのか?それほど厄介事なのか?」
「う~ん……まあ、その通りなんだがお前だから言えないというか……」
「……?」
基本的に元S級冒険者で剣神とまで称されたレオは昔から厄介事を任される事が多かった。ちなみにこれまでに彼が頼まれた仕事は危険度が高い魔物の討伐や、悪徳貴族を裏から始末するような裏の仕事も任された事がある。しかし、今回のギルドマスターに頼まれた仕事は最強の剣士であるレオにさえも頼めない内容だった。
(なんでよりにもよって人間の国王と森人族の女王から直々の依頼が来るんだよ!!)
数日前、レオが現在所属する冒険者ギルドのギルドマスターの元に使者が赴き、その内容というのがレオの身辺調査と彼の女性関係、そしてどのような相手が好みなのか調査しろという突拍子もない依頼だった。正直、面倒事には巻き込まれたくはないギルドマスターだったが、今回ばかりは相手も相手なので断る事が出来なかった。
(くそっ……なんで俺が親友の女性関係まで調べなきゃならないんだ?そもそも今までレオの事を放置してきた癖にどうして今更……)
ギルドマスターとしては親友であり、冒険者達の指導役を引き受けた恩人の情報を流すような真似はしたくはないが、相手が大国の国王と女王では彼も断れるはずがない。下手に拒否すれば冒険者ギルドの存続すらも危うくなり、仕方なくギルドマスターはレオを呼び出して依頼内容通りに彼の女性関係から調べる。
「と、ところでレオ……お前、最近になって昔仲が良かった森人族の剣士と一緒に行動する事が多いそうだな」
「ああ……アリアの事か?確かに最近は共に行動する事が多いな」
「おお、じゃあもしかしてお前達はよりを戻したのか!?」
「はははっ、それはないな。俺は20年前にもう振られているんだよ」
「そ、そうか……」
アリアの事を話題に出しても特にレオは大きな反応は見せず、話を聞く限りでは付き合っていない事が判明した。アリアがこの街に滞在するようになってからそれなり経つが、関係は一向に変わっていない事にギルドマスターは呆れてしまう。
(あのアリアという女、どう見てもこいつに脈ありなんだけどな……レオが鈍いのか、それともアリアが奥手すぎるのか……)
他者の目から見てもアリアがレオに多大な好意を抱いているのは間違いなく、実際にたいした用事もないのにレオの元に赴いたり、彼が移動する先に付いて行こうとする。この間に至ってはレオに山賊の討伐の依頼が届いたのだが、彼女は無償で山賊の討伐を協力している。
(この間、受付嬢がレオの話をしただけでチラチラと見ていたからな……しかし、20年前とは昔は恋をした相手にあれほど好意を示されているのに何も思わないのかこいつ?)
ギルドマスターは現在のレオがアリアの事をどう思っているのか気になり、もう面倒草いので直接問い質す事にした。
「なあ、レオ……その、正直に答えて欲しいんだが」
「ん?何だ?」
「ぶっちゃけた話、お前はアリアの事をどう思っているんだ?」
「…………?」
レオは唐突なギルドマスターの質問に黙り込み、考え込むように腕を組む。そんな彼の反応にギルドマスターは緊張し、返答を待つ。
「そうだな、俺にとってアリアは……初恋の人だ。今でも大切な人だと思っている」
「おおっ!!それなら……」
「だが、今の俺にとってアリアは家族みたいな存在だ。傍に居るだけで安心する人、だな」
「えっ……」
最初は思わぬ返答にギルドマスターは喜ぶが、直後に「家族」と表現したレオに呆気に取られる。どう考えてもそれは「夫婦」という意味合いではなく、「姉弟」や「親子」のような雰囲気を滲ませていた――
ある日、レオは親友であるギルドマスターから呼び出され、酒場で彼と二人だけで食事を行っていた。少し前まではよく二人で飲む事もあったが、最近は指導役として以前よりも冒険者と関わるようになってからは飲みに行くときも他の冒険者が付いてくる事が多くなった。なのでレオは久々にギルドマスターと酒を飲む事になるが、何故か普段は明るいギルドマスターが酒場に着いて早々に大きな溜息を吐き出す。
「はあっ……」
「……どうかしたのか?先ほどから溜息ばかりを吐いているぞ」
「ん?ああ、すまない……ちょっと面倒な上から仕事を押し付けられてな」
「上から?」
冒険者ギルドのトップであるギルドマスターにレオは首を傾げ、彼の語る「上の人間」に押し付けられた仕事に興味を抱く。
「一体どんな仕事なんだ?」
「いや、悪いがそれはお前には言えない……」
「俺にも言えないのか?それほど厄介事なのか?」
「う~ん……まあ、その通りなんだがお前だから言えないというか……」
「……?」
基本的に元S級冒険者で剣神とまで称されたレオは昔から厄介事を任される事が多かった。ちなみにこれまでに彼が頼まれた仕事は危険度が高い魔物の討伐や、悪徳貴族を裏から始末するような裏の仕事も任された事がある。しかし、今回のギルドマスターに頼まれた仕事は最強の剣士であるレオにさえも頼めない内容だった。
(なんでよりにもよって人間の国王と森人族の女王から直々の依頼が来るんだよ!!)
数日前、レオが現在所属する冒険者ギルドのギルドマスターの元に使者が赴き、その内容というのがレオの身辺調査と彼の女性関係、そしてどのような相手が好みなのか調査しろという突拍子もない依頼だった。正直、面倒事には巻き込まれたくはないギルドマスターだったが、今回ばかりは相手も相手なので断る事が出来なかった。
(くそっ……なんで俺が親友の女性関係まで調べなきゃならないんだ?そもそも今までレオの事を放置してきた癖にどうして今更……)
ギルドマスターとしては親友であり、冒険者達の指導役を引き受けた恩人の情報を流すような真似はしたくはないが、相手が大国の国王と女王では彼も断れるはずがない。下手に拒否すれば冒険者ギルドの存続すらも危うくなり、仕方なくギルドマスターはレオを呼び出して依頼内容通りに彼の女性関係から調べる。
「と、ところでレオ……お前、最近になって昔仲が良かった森人族の剣士と一緒に行動する事が多いそうだな」
「ああ……アリアの事か?確かに最近は共に行動する事が多いな」
「おお、じゃあもしかしてお前達はよりを戻したのか!?」
「はははっ、それはないな。俺は20年前にもう振られているんだよ」
「そ、そうか……」
アリアの事を話題に出しても特にレオは大きな反応は見せず、話を聞く限りでは付き合っていない事が判明した。アリアがこの街に滞在するようになってからそれなり経つが、関係は一向に変わっていない事にギルドマスターは呆れてしまう。
(あのアリアという女、どう見てもこいつに脈ありなんだけどな……レオが鈍いのか、それともアリアが奥手すぎるのか……)
他者の目から見てもアリアがレオに多大な好意を抱いているのは間違いなく、実際にたいした用事もないのにレオの元に赴いたり、彼が移動する先に付いて行こうとする。この間に至ってはレオに山賊の討伐の依頼が届いたのだが、彼女は無償で山賊の討伐を協力している。
(この間、受付嬢がレオの話をしただけでチラチラと見ていたからな……しかし、20年前とは昔は恋をした相手にあれほど好意を示されているのに何も思わないのかこいつ?)
ギルドマスターは現在のレオがアリアの事をどう思っているのか気になり、もう面倒草いので直接問い質す事にした。
「なあ、レオ……その、正直に答えて欲しいんだが」
「ん?何だ?」
「ぶっちゃけた話、お前はアリアの事をどう思っているんだ?」
「…………?」
レオは唐突なギルドマスターの質問に黙り込み、考え込むように腕を組む。そんな彼の反応にギルドマスターは緊張し、返答を待つ。
「そうだな、俺にとってアリアは……初恋の人だ。今でも大切な人だと思っている」
「おおっ!!それなら……」
「だが、今の俺にとってアリアは家族みたいな存在だ。傍に居るだけで安心する人、だな」
「えっ……」
最初は思わぬ返答にギルドマスターは喜ぶが、直後に「家族」と表現したレオに呆気に取られる。どう考えてもそれは「夫婦」という意味合いではなく、「姉弟」や「親子」のような雰囲気を滲ませていた――
0
お気に入りに追加
1,143
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
勇者に大切な人達を寝取られた結果、邪神が目覚めて人類が滅亡しました。
レオナール D
ファンタジー
大切な姉と妹、幼なじみが勇者の従者に選ばれた。その時から悪い予感はしていたのだ。
田舎の村に生まれ育った主人公には大切な女性達がいた。いつまでも一緒に暮らしていくのだと思っていた彼女らは、神託によって勇者の従者に選ばれて魔王討伐のために旅立っていった。
旅立っていった彼女達の無事を祈り続ける主人公だったが……魔王を倒して帰ってきた彼女達はすっかり変わっており、勇者に抱きついて媚びた笑みを浮かべていた。
青年が大切な人を勇者に奪われたとき、世界の破滅が幕を開く。
恐怖と狂気の怪物は絶望の底から生まれ落ちたのだった……!?
※カクヨムにも投稿しています。
悲しいことがあった。そんなときに3年間続いていた彼女を寝取られた。僕はもう何を信じたらいいのか分からなくなってしまいそうだ。
ねんごろ
恋愛
大学生の主人公の両親と兄弟が交通事故で亡くなった。電話で死を知らされても、主人公には実感がわかない。3日が過ぎ、やっと現実を受け入れ始める。家族の追悼や手続きに追われる中で、日常生活にも少しずつ戻っていく。大切な家族を失った主人公は、今までの大学生活を後悔し、人生の有限性と無常性を自覚するようになる。そんな折、久しぶりに連絡をとった恋人の部屋を心配して訪ねてみると、そこには予期せぬ光景が待っていた。家族の死に直面し、人生の意味を問い直す青年の姿が描かれる。
異世界サバイバルセットでダンジョン無双。精霊樹復活に貢献します。
karashima_s
ファンタジー
地球にダンジョンが出来て10年。
その当時は、世界中が混乱したけれど、今ではすでに日常となっていたりする。
ダンジョンに巣くう魔物は、ダンジョン外にでる事はなく、浅い階層であれば、魔物を倒すと、魔石を手に入れる事が出来、その魔石は再生可能エネルギーとして利用できる事が解ると、各国は、こぞってダンジョン探索を行うようになった。
ダンジョンでは魔石だけでなく、傷や病気を癒す貴重なアイテム等をドロップしたり、また、稀に宝箱と呼ばれる箱から、後発的に付与できる様々な魔法やスキルを覚える事が出来る魔法書やスキルオーブと呼ばれる物等も手に入ったりする。
当時は、危険だとして制限されていたダンジョン探索も、今では門戸も広がり、適正があると判断された者は、ある程度の教習を受けた後、試験に合格すると認定を与えられ、探索者(シーカー)として認められるようになっていた。
運転免許のように、学校や教習所ができ、人気の職業の一つになっていたりするのだ。
新田 蓮(あらた れん)もその一人である。
高校を出て、別にやりたい事もなく、他人との関わりが嫌いだった事で会社勤めもきつそうだと判断、高校在学中からシーカー免許教習所に通い、卒業と同時にシーカーデビューをする。そして、浅い階層で、低級モンスターを狩って、安全第一で日々の糧を細々得ては、その収入で気楽に生きる生活を送っていた。
そんなある日、ダンジョン内でスキルオーブをゲットする。手に入れたオーブは『XXXサバイバルセット』。
ほんの0.00001パーセントの確実でユニークスキルがドロップする事がある。今回、それだったら、数億の価値だ。それを売り払えば、悠々自適に生きて行けるんじゃねぇー?と大喜びした蓮だったが、なんと難儀な連中に見られて絡まれてしまった。
必死で逃げる算段を考えていた時、爆音と共に、大きな揺れが襲ってきて、足元が崩れて。
落ちた。
落ちる!と思ったとたん、思わず、持っていたオーブを強く握ってしまったのだ。
落ちながら、蓮の頭の中に声が響く。
「XXXサバイバルセットが使用されました…。」
そして落ちた所が…。
【破天荒注意】陰キャの俺、異世界の女神の力を借り俺を裏切った幼なじみと寝取った陽キャ男子に復讐する
花町ぴろん
ファンタジー
陰キャの俺にはアヤネという大切な幼なじみがいた。
俺たち二人は高校入学と同時に恋人同士となった。
だがしかし、そんな幸福な時間は長くは続かなかった。
アヤネはあっさりと俺を捨て、イケメンの陽キャ男子に寝取られてしまったのだ。
絶望に打ちひしがれる俺。夢も希望も無い毎日。
そんな俺に一筋の光明が差し込む。
夢の中で出会った女神エリステア。俺は女神の加護を受け辛く険しい修行に耐え抜き、他人を自由自在に操る力を手に入れる。
今こそ復讐のときだ!俺は俺を裏切った幼なじみと俺の心を踏みにじった陽キャイケメン野郎を絶対に許さない!!
★寝取られ→ざまぁのカタルシスをお楽しみください。
※この小説は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
彼女の浮気相手からNTRビデオレターが送られてきたから全力で反撃しますが、今さら許してくれと言われてももう遅い
うぱー
恋愛
彼女の浮気相手からハメ撮りを送られてきたことにより、浮気されていた事実を知る。
浮気相手はサークルの女性にモテまくりの先輩だった。
裏切られていた悲しみと憎しみを糧に社会的制裁を徹底的に加えて復讐することを誓う。
■一行あらすじ
浮気相手と彼女を地獄に落とすために頑張る話です(●´艸`)ィヒヒ
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる