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アトラス大森林の族長
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1時間後、大樹の根元にレオとアリアは倒れており、御互いの剣が重なり合った状態で地面に突き刺さり、御互いの剣士としての技量を褒め称える。
「……流石だな、あの時よりも遥かに腕を上げている」
「お前もな……20年前よりも腕を上げた」
「そうか……20年も経っていたのか」
レオの言葉にアリアは身体を起き上げ、彼に寂しさと悲しさが入り混じった表情を浮かべる。そんな彼女の反応にレオは疑問を抱き、彼は自分に会いに来た理由を問い質す。
「ところでアリア……どうして俺に会いに来た?」
「いや……その、実はな……」
「その様子だと顔を見に来たわけではなさそうだな……どうした?」
アリアは言いにくそうな表情を浮かべ、レオは不思議そうに彼女に視線を向けると、アリアは覚悟を決めたように言葉を継げる。
「その……実はお前に頼みがあって……いや、違う。どうしてこんな時も私は素直になれないんだ」
「アリア……?」
「レオ……私はアトラス大森林の族長の娘という事は知っているな?」
「ああ、人間の国の王女のような物だと言っていたな?」
「そうだ。私の母が族長であり、父は既に他界している……それで一人娘の私がいずれは族長になると決まっていたはずだが……その、追い出されたんだ」
「追い出された?何故……?」
「……実はお前と別れた後、里に戻ったんだが……その時に母と揉めてな」
――アリアは魔王討伐を果たした後、自分の故郷であるアトラス大森林に帰還を果たし、彼女は英雄として迎え入れられた。だが、彼女の母親である大森林の族長は帰還して早々にアリアに質問を行う。
『勇者という存在はどうでしたか?』
その質問に対してアリアは母親にレオの人格、実力、人望の厚さ、更には彼の功績を全て伝えると彼女は噂通りの人物に非常に気に入ったらしく、次にとんでもない発言を繰り出す。
『そうですか……それほどの人物ならば貴女の婿として申し分ないですね。すぐにその御方を我が一族として迎え入れましょう』
この唐突な彼女の発言に呆気に取られ、アリアはレオに別れ際に剣の道一筋で生きていく事を決めた事を告げて求婚を断った事を伝えると、普段は温厚な母が今までにない程に険しい表情を浮かべる。
『剣の道に生きる……そのような人生をお前が歩めると思っているのか!!お前が誰とも結婚せず、子供を授からなければ誰がこの数万のエルフ族を抱えるアトラス大森林を収めると思っているのです!!』
族長の言葉通り、もしもアリアが子供を授からなければ彼女の代で数千年も大森林を収めていた彼女の一族は途絶えてしまう。さらに言えばアリアは勇者という強大な戦力を引き寄せる好機を自分の手で放棄した事になり、族長は頭を悩ませる。
『ああ……一人娘だからと言って甘やかし過ぎました……ですが、今回ばかりは許しません!!剣の道に生きるなど誰が許しますかっ!!貴女1人のわがままで数万人のエルフを苦しませるつもりかっ!!』
『は、母上?』
『これは命令です!!今すぐに勇者を呼び戻す旅に出なさい!!もしも勇者が見つからず、あるいは既に他の人間と結婚していた場合、私の方から貴女の婚約者を選出します!!』
『なっ!?で、ですが……』
『衛兵!!この馬鹿娘を森の外に放り出しなさい!!ああ……諜報員から勇者との関係が良好だと聞いていたから安心していたのに……どうしてこんな事に……』
『お、お待ち下さい母上!!私はもうレオとは……』
『いいから早く行きなさい!!戻ってくるまで大森林に帰還する事は許しませんよ!!もしも貴女が勇者の調査を怠っている情報を入手した場合、強制的に私が選んだ男と結婚させます!!』
『は、母上ぇええっ!?』
――アリアは強制的に母親に大森林を追い出され、勇者レオを探す旅に出る。一応は金銭面は定期的に大森林から援助を受けているので問題なかったが、問題は勇者レオが今までに関わった国家ではなく、辺境の小国に移動していた事で彼女はレオを探し出すのに苦労した。
約20年の時が経過し、レオの居場所を掴んだときには既に彼も年老いており、若かりし頃の彼の面影しか記憶に残っていなかった彼女は衝撃を受けたが、それでも剣を交えて自分と対等に戦える程に成長していた彼に感動し、剣の道に生きると決めて抑えていた恋心が再び芽生える。
「レオ……その、お前は誰かと結婚しているのか?」
「いや、独り身だが……」
「そ、そうか……独身なのか」
「そういうお前は……いや、剣の道に生きると言っていたな。馬鹿な事を聞いてすまない」
「え、その……その事なんだが……」
レオの言葉にアリアは冷や汗を流し、彼女は未だにレオに恋心を抱いているが、既に彼にとっては20年前の出来事であり、未だに彼女を想い続けていたわけではない。単純に彼が恋愛に走らなかったのはアリアのように剣の道に生きる事を目指していただけであり、恋愛事に時間を割いている暇がなかっただけである。
「……流石だな、あの時よりも遥かに腕を上げている」
「お前もな……20年前よりも腕を上げた」
「そうか……20年も経っていたのか」
レオの言葉にアリアは身体を起き上げ、彼に寂しさと悲しさが入り混じった表情を浮かべる。そんな彼女の反応にレオは疑問を抱き、彼は自分に会いに来た理由を問い質す。
「ところでアリア……どうして俺に会いに来た?」
「いや……その、実はな……」
「その様子だと顔を見に来たわけではなさそうだな……どうした?」
アリアは言いにくそうな表情を浮かべ、レオは不思議そうに彼女に視線を向けると、アリアは覚悟を決めたように言葉を継げる。
「その……実はお前に頼みがあって……いや、違う。どうしてこんな時も私は素直になれないんだ」
「アリア……?」
「レオ……私はアトラス大森林の族長の娘という事は知っているな?」
「ああ、人間の国の王女のような物だと言っていたな?」
「そうだ。私の母が族長であり、父は既に他界している……それで一人娘の私がいずれは族長になると決まっていたはずだが……その、追い出されたんだ」
「追い出された?何故……?」
「……実はお前と別れた後、里に戻ったんだが……その時に母と揉めてな」
――アリアは魔王討伐を果たした後、自分の故郷であるアトラス大森林に帰還を果たし、彼女は英雄として迎え入れられた。だが、彼女の母親である大森林の族長は帰還して早々にアリアに質問を行う。
『勇者という存在はどうでしたか?』
その質問に対してアリアは母親にレオの人格、実力、人望の厚さ、更には彼の功績を全て伝えると彼女は噂通りの人物に非常に気に入ったらしく、次にとんでもない発言を繰り出す。
『そうですか……それほどの人物ならば貴女の婿として申し分ないですね。すぐにその御方を我が一族として迎え入れましょう』
この唐突な彼女の発言に呆気に取られ、アリアはレオに別れ際に剣の道一筋で生きていく事を決めた事を告げて求婚を断った事を伝えると、普段は温厚な母が今までにない程に険しい表情を浮かべる。
『剣の道に生きる……そのような人生をお前が歩めると思っているのか!!お前が誰とも結婚せず、子供を授からなければ誰がこの数万のエルフ族を抱えるアトラス大森林を収めると思っているのです!!』
族長の言葉通り、もしもアリアが子供を授からなければ彼女の代で数千年も大森林を収めていた彼女の一族は途絶えてしまう。さらに言えばアリアは勇者という強大な戦力を引き寄せる好機を自分の手で放棄した事になり、族長は頭を悩ませる。
『ああ……一人娘だからと言って甘やかし過ぎました……ですが、今回ばかりは許しません!!剣の道に生きるなど誰が許しますかっ!!貴女1人のわがままで数万人のエルフを苦しませるつもりかっ!!』
『は、母上?』
『これは命令です!!今すぐに勇者を呼び戻す旅に出なさい!!もしも勇者が見つからず、あるいは既に他の人間と結婚していた場合、私の方から貴女の婚約者を選出します!!』
『なっ!?で、ですが……』
『衛兵!!この馬鹿娘を森の外に放り出しなさい!!ああ……諜報員から勇者との関係が良好だと聞いていたから安心していたのに……どうしてこんな事に……』
『お、お待ち下さい母上!!私はもうレオとは……』
『いいから早く行きなさい!!戻ってくるまで大森林に帰還する事は許しませんよ!!もしも貴女が勇者の調査を怠っている情報を入手した場合、強制的に私が選んだ男と結婚させます!!』
『は、母上ぇええっ!?』
――アリアは強制的に母親に大森林を追い出され、勇者レオを探す旅に出る。一応は金銭面は定期的に大森林から援助を受けているので問題なかったが、問題は勇者レオが今までに関わった国家ではなく、辺境の小国に移動していた事で彼女はレオを探し出すのに苦労した。
約20年の時が経過し、レオの居場所を掴んだときには既に彼も年老いており、若かりし頃の彼の面影しか記憶に残っていなかった彼女は衝撃を受けたが、それでも剣を交えて自分と対等に戦える程に成長していた彼に感動し、剣の道に生きると決めて抑えていた恋心が再び芽生える。
「レオ……その、お前は誰かと結婚しているのか?」
「いや、独り身だが……」
「そ、そうか……独身なのか」
「そういうお前は……いや、剣の道に生きると言っていたな。馬鹿な事を聞いてすまない」
「え、その……その事なんだが……」
レオの言葉にアリアは冷や汗を流し、彼女は未だにレオに恋心を抱いているが、既に彼にとっては20年前の出来事であり、未だに彼女を想い続けていたわけではない。単純に彼が恋愛に走らなかったのはアリアのように剣の道に生きる事を目指していただけであり、恋愛事に時間を割いている暇がなかっただけである。
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