37才にして遂に「剣神」の称号を得ましたが、20年前に自分を振った勇者のパーティのエルフの女剣士に今更求婚されました。

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
3 / 15

アトラス大森林の族長

しおりを挟む
1時間後、大樹の根元にレオとアリアは倒れており、御互いの剣が重なり合った状態で地面に突き刺さり、御互いの剣士としての技量を褒め称える。


「……流石だな、あの時よりも遥かに腕を上げている」
「お前もな……20年前よりも腕を上げた」
「そうか……20年も経っていたのか」


レオの言葉にアリアは身体を起き上げ、彼に寂しさと悲しさが入り混じった表情を浮かべる。そんな彼女の反応にレオは疑問を抱き、彼は自分に会いに来た理由を問い質す。


「ところでアリア……どうして俺に会いに来た?」
「いや……その、実はな……」
「その様子だと顔を見に来たわけではなさそうだな……どうした?」


アリアは言いにくそうな表情を浮かべ、レオは不思議そうに彼女に視線を向けると、アリアは覚悟を決めたように言葉を継げる。


「その……実はお前に頼みがあって……いや、違う。どうしてこんな時も私は素直になれないんだ」
「アリア……?」
「レオ……私はアトラス大森林の族長の娘という事は知っているな?」
「ああ、人間の国の王女のような物だと言っていたな?」
「そうだ。私の母が族長であり、父は既に他界している……それで一人娘の私がいずれは族長になると決まっていたはずだが……その、追い出されたんだ」
「追い出された?何故……?」
「……実はお前と別れた後、里に戻ったんだが……その時に母と揉めてな」



――アリアは魔王討伐を果たした後、自分の故郷であるアトラス大森林に帰還を果たし、彼女は英雄として迎え入れられた。だが、彼女の母親である大森林の族長は帰還して早々にアリアに質問を行う。


『勇者という存在はどうでしたか?』


その質問に対してアリアは母親にレオの人格、実力、人望の厚さ、更には彼の功績を全て伝えると彼女は噂通りの人物に非常に気に入ったらしく、次にとんでもない発言を繰り出す。


『そうですか……それほどの人物ならば貴女の婿として申し分ないですね。すぐにその御方を我が一族として迎え入れましょう』


この唐突な彼女の発言に呆気に取られ、アリアはレオに別れ際に剣の道一筋で生きていく事を決めた事を告げて求婚を断った事を伝えると、普段は温厚な母が今までにない程に険しい表情を浮かべる。


『剣の道に生きる……そのような人生をお前が歩めると思っているのか!!お前が誰とも結婚せず、子供を授からなければ誰がこの数万のエルフ族を抱えるアトラス大森林を収めると思っているのです!!』


族長の言葉通り、もしもアリアが子供を授からなければ彼女の代で数千年も大森林を収めていた彼女の一族は途絶えてしまう。さらに言えばアリアは勇者という強大な戦力を引き寄せる好機を自分の手で放棄した事になり、族長は頭を悩ませる。


『ああ……一人娘だからと言って甘やかし過ぎました……ですが、今回ばかりは許しません!!剣の道に生きるなど誰が許しますかっ!!貴女1人のわがままで数万人のエルフを苦しませるつもりかっ!!』
『は、母上?』
『これは命令です!!今すぐに勇者を呼び戻す旅に出なさい!!もしも勇者が見つからず、あるいは既に他の人間と結婚していた場合、私の方から貴女の婚約者を選出します!!』
『なっ!?で、ですが……』
『衛兵!!この馬鹿娘を森の外に放り出しなさい!!ああ……諜報員から勇者との関係が良好だと聞いていたから安心していたのに……どうしてこんな事に……』
『お、お待ち下さい母上!!私はもうレオとは……』
『いいから早く行きなさい!!戻ってくるまで大森林に帰還する事は許しませんよ!!もしも貴女が勇者の調査を怠っている情報を入手した場合、強制的に私が選んだ男と結婚させます!!』
『は、母上ぇええっ!?』



――アリアは強制的に母親に大森林を追い出され、勇者レオを探す旅に出る。一応は金銭面は定期的に大森林から援助を受けているので問題なかったが、問題は勇者レオが今までに関わった国家ではなく、辺境の小国に移動していた事で彼女はレオを探し出すのに苦労した。


約20年の時が経過し、レオの居場所を掴んだときには既に彼も年老いており、若かりし頃の彼の面影しか記憶に残っていなかった彼女は衝撃を受けたが、それでも剣を交えて自分と対等に戦える程に成長していた彼に感動し、剣の道に生きると決めて抑えていた恋心が再び芽生える。


「レオ……その、お前は誰かと結婚しているのか?」
「いや、独り身だが……」
「そ、そうか……独身なのか」
「そういうお前は……いや、剣の道に生きると言っていたな。馬鹿な事を聞いてすまない」
「え、その……その事なんだが……」


レオの言葉にアリアは冷や汗を流し、彼女は未だにレオに恋心を抱いているが、既に彼にとっては20年前の出来事であり、未だに彼女を想い続けていたわけではない。単純に彼が恋愛に走らなかったのはアリアのように剣の道に生きる事を目指していただけであり、恋愛事に時間を割いている暇がなかっただけである。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。

職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ
ファンタジー
幕末最強の人斬りが、異世界転移。 令和日本人なら、誰しも知ってる異世界お約束を何も知らなくて、毎度、悪戦苦闘。 しかし、並々ならぬ人斬りスキルで、逆境を力技で捩じ伏せちゃう物語。 『骨から始まる異世界転生』の続き。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

処理中です...