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王都での日常
第127話 決戦の刻
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――決闘当日の早朝を迎えると、全ての準備を整えたコオリは屋上に赴く。果たし状には決闘を行うのは本日の昼休みだと記されていたが、その前にコオリは学校が始まる前に決闘の舞台となる屋上へ赴く。
まだ生徒どころか教員も訪れていない時間帯だが、そこには既にリオンの姿があった。彼は試合の際に利用する闘技台の中心に座り込み、まるでコオリが来る事を知っていたかのように顔を見上げた。
「来たか」
「まさか、ここでずっと待ってたの?」
「自惚れるな、目が冴えたから偶々にここに来ていただけだ」
コオリと同じくリオンも決闘の開始時刻前に屋上に赴き、自分達が戦う場所を確認しに来た様子だった。この時にコオリはリオンの腰に剣を差している事に気付く。
「その剣は?」
「……俺はもう魔術師じゃない」
「え?」
リオンの言葉にコオリは呆気に取られ、一方でリオンは腰に差している魔剣に手を伸ばすと、立ち上がってコオリの横を通り過ぎた。そんな彼にコオリは振り返って先ほどの言葉の意味を尋ねようとした時、リオンは振り返りもせずに淡々と告げる。
「お前が魔術師として俺を越えた事は認めよう。だが、それでもお前は俺には勝てない」
「リオン?」
「俺は魔術師である事を捨てた。ただ、それだけの話だ」
自ら魔術師である事を辞めた事をコオリに告げると、リオンは初めて少しだけ寂し気な表情を浮かべて腰に差していた予備の杖を手に取る。一流の魔術師ならばどんな状況でも予備の杖を用意しておく事、その教えを守ってリオンは杖を二つの所持していた。
一つ目の杖は一週間前にコオリに破壊され、残されたもう一つの杖を彼は握りしめる。このままへし折る事もできるが、彼は力を抜いてコオリに放り投げた。
「これはお前にやる。好きに使え」
「うわっ!?」
「……いらないのなら捨ててくれ」
渡された杖を見てコオリは立ち去ろうとするリオンに視線を向け、色々と思う所はあるが彼が魔術師の道を諦めて魔法剣士になろうとしている事を知り、敢えてコオリは彼を止める事はしなかった。
(リオン……)
魔術師としての才能があるにも関わらず、リオンは魔法剣士になる道を選んだ。彼が魔法剣士になる事を決めた理由はコオリは分からないが、最後に杖を渡した時の彼の声が震えていた様に聞こえた――
――それから数時間後、再び屋上にコオリは赴くとそこには既に見知った顔が並んでいた。師匠であるバルルはもちろんの事、同じ教室で学ぶ先輩のミイナとバルト、そして学園長の姿もあった。
「皆、どうしてここに……」
「あんた達だけで決闘をさせるわけがないだろ?万が一の場合はあたしらが止めるよ」
「安心しなさい、野暮な真似はしないわ。貴方達が全力で戦えるように既に準備は整えているわ」
「俺達はただの見物人だ。気にしないでくれ」
「コオリ、応援してる。けちょんけちょんにしちゃって」
決闘の舞台となる闘技台はマリアが結界を施し、万が一の事態に陥った場合は結界を解除してバルルが二人を止めるつもりだった。ミイナとバルトは応援のために来て呉れた様であり、そんな二人にコオリは頷く。
闘技台にコオリが上がると以前にバルトと戦った時よりも緊張していた。これから戦うのは自分が初めて憧れを抱いた魔術師であり、同時に彼を越えるためにここまで頑張ってきたと言えなくもない。
「……来たようだね」
「へっ、待たせやがって……」
「自分から指定した癖に遅刻なんて感心しない」
「…………」
他の人間の声を耳にしてコオリは振り返ると、屋上の扉が開かれて遂にリオンが姿を現わす。リオンが現れた途端に場の雰囲気が一変し、彼はこれまでに見た事がない程の真剣な表情を浮かべていた。
(凄い気迫だ……赤毛熊と対峙した時以上かもしれない)
ただ歩くだけのリオンの姿を見てコオリは冷や汗を流し、一方でリオンの方は闘技台に待ち構えるコオリを見て彼は考え込む。
(まさかあの時のお漏らしがここまで成長するとはな……)
最初にリオンがコオリと遭遇した時、彼は生まれて初めて見る魔物に恐れを為して失禁してしまった。そんな初対面だったからこそリオンはコオリの事を臆病者だと思い込んでいたが、今の彼はオーク如きに怯える少年ではなく、自分と対等に戦える力を持つかもしれない存在へと成長を果たした。
闘技台にリオンが登ると他の者たちも緊張し、バルルもミイナもバルトも冷や汗を流す。ただ一人だけ冷静なのはマリアだけであり、彼女は二人が闘技台に移動したのを確認すると結界を作動させる準備を行う。
「二人とも準備はいいかしら?」
「はい」
「何時でも」
「この火球が消えた時を決闘の合図よ」
結界を発動させる前にマリアは無詠唱で闘技台の中心部に火球を作り出す。そして彼女は闘技台の結界を作動させると緑色の障壁が取り囲み、彼女が作り出した火球が徐々に小さくなっていく。
徐々に縮小化していく火球を見てコオリは三又の杖を握りしめ、一方でリオンは魔剣に手を伸ばす。コオリはリオンに狙いを定め、彼が動く前に魔法を発動させて捕える準備を行う。そして下級が消え去った瞬間、コオリは杖を突き出して魔法を放つ。
「はああっ!!」
「っ!?」
三又の杖を繰り出してコオリは三つの氷塊を同時に発現させると、それを確認したリオンは警戒するように魔剣を引き抜く。この時にコオリはリオンが近付く前に次々と氷塊を作り出し、それらを繋ぎ合わせて鎖の形へと変えていく。
「できた!!」
「何をっ……!?」
コオリは氷の鎖を完成させると、リオンは氷塊の形状を見て驚いた表情を浮かべる。意表を突かれた事でリオンはコオリの行動を止める事ができず、コオリは氷鎖を放つ。
空中に浮かぶ氷鎖はリオンの元に目掛けて突っ込み、それを見たリオンは咄嗟に魔剣を振り払う。しかし、鋼鉄以上の強度を誇る氷鎖は簡単には壊れず、逆に蛇のように刀身に巻き付く。
「よし!!」
「ちぃっ!?」
「おっしゃっ!!そのまま武器を奪え!!」
「杖を失っても負けなら武器を失っても負け……でしょ?」
「ええ、そうね」
「そうなのかい!?」
「なんであなたが一番驚いてるのよ」
魔剣に氷鎖が絡みついたのを見てコオリは思わず歓喜の声を上げ、本来であればリオンを拘束するために作り出した魔法だが、武器を奪ってもコオリの勝利となる。魔剣を奪われればリオンであろうと魔法は扱えず、彼は対抗手段を失う。
氷鎖を操作してコオリは魔剣を彼から奪い取ろうとすると、リオンは力を込めて引き剥がそうとした。しかし、コオリの意思に応じて動く氷鎖は並大抵の力では引き剥がせず、徐々に魔剣はコオリの元に引き寄せられていく。
「リオン、手を離せ!!」
「ふざけるな!!この程度の事で俺に勝ったつもりか!?」
「なっ!?」
「お、おい!?何が起きてるんだ!?」
魔剣を手にしたリオンは目を見開くと、刀身部分に風の魔力が纏う。それを見たバルトは驚きの声を上げ、一方でマリアとバルルは目つきを鋭くさせる。
「これは……」
「コオリ、調子に乗るんじゃないよ!!そいつは只の剣じゃない!!」
「はぁあああっ!!」
「うわっ!?」
リオンは魔剣の刀身部分に風の魔力を纏わせる事でまとわりついていた氷鎖を引き剥がそうとするが、それに気づいたコオリは負けじに氷鎖の拘束力を強める。しかし、刀身から吹き溢れる風圧に耐え切れずに氷鎖は吹き飛ぶ。
氷鎖は元々は複数の氷塊を繋ぎ合わせた代物のため、風圧を受けた事で分離して散らばってしまう。氷鎖が離れるとリオンは魔剣を振りかざし、コオリに目掛けて刃を振り下ろす。
「スラッシュ!!」
「うわっ!?」
刃を振り下ろした方向に魔剣に纏っていた風の魔力が解き放たれ、風の斬撃と化してコオリの元へ向かう。それを見たコオリは咄嗟に横に飛んで回避すると、風の斬撃は結界に衝突して周囲に風圧が広がる。
(今のはスラッシュ!?まさか、あの剣から魔法が撃てるのか!?)
スラッシュの魔法は何度も見た事があるコオリだったが、まさか杖からではなく剣から繰り出されるとは想像もした事なかった。一方でリオンは風の魔力を再び刀身に纏わせると、コオリに目掛けて今度は連続で風の斬撃を放つ。
「ふっ、はっ、やああっ!!」
「やべぇっ!?コオリ、避けろ!!」
「動いて!!止まらないで!!」
「くっ!?」
威力を弱める事でリオンは風の斬撃を連続で繰り出し、その攻撃に対してコオリは試合場を走り回って攻撃を避ける。次々と風の斬撃が試合場を取り囲む結界に衝突し、四散する際に風圧が広がる。
(まずい、このままだと逃げ切れない……うわっ!?)
結界に衝突した風の斬撃が風圧とかしてコオリに襲い掛かり、彼は後ろから風圧を受けて転んでしまう。それを見たリオンは魔剣を振りかざして止めの一撃を繰り出そうとした。
「これで終わりだ!!」
「くぅっ……まだだ!!」
「何っ!?」
迫りくる風の斬撃に対してコオリは杖を振り払うと、先ほど分離した氷鎖の破片を引き寄せる。氷鎖は先ほどリオンの魔剣に破壊されたわけではなく、あくまでも結合部分が引き剥がされただけに過ぎない。
無数の氷塊が重なり合って氷の盾と化すと、リオンの繰り出した風の斬撃を受けて吹き飛ぶ。どうにか受け切る事に成功したが、コオリは風の斬撃を受けて粉々に砕け散った氷塊を見てリオンに杖を繰り出す。
「散弾!!」
「ぐっ!?」
氷の礫と化した無数の氷塊を操作してリオンに放つと、彼は迫りくる氷の欠片から身を守るために魔剣を構えた。彼は迫りくる氷の礫を見て魔剣を振りかざし、その力を遂に解放した。
「烈火斬!!」
「うわっ!?」
「な、何だと!?」
「炎!?」
「そんな馬鹿なっ……!?」
刀身に炎を纏わせるとリオンは魔剣を振り払って無数の氷の礫を蒸発させる。その光景を見ていた者達は驚き、彼とは古い付き合いであるバルルでさえも目の前の光景が信じられなかった。
まだ生徒どころか教員も訪れていない時間帯だが、そこには既にリオンの姿があった。彼は試合の際に利用する闘技台の中心に座り込み、まるでコオリが来る事を知っていたかのように顔を見上げた。
「来たか」
「まさか、ここでずっと待ってたの?」
「自惚れるな、目が冴えたから偶々にここに来ていただけだ」
コオリと同じくリオンも決闘の開始時刻前に屋上に赴き、自分達が戦う場所を確認しに来た様子だった。この時にコオリはリオンの腰に剣を差している事に気付く。
「その剣は?」
「……俺はもう魔術師じゃない」
「え?」
リオンの言葉にコオリは呆気に取られ、一方でリオンは腰に差している魔剣に手を伸ばすと、立ち上がってコオリの横を通り過ぎた。そんな彼にコオリは振り返って先ほどの言葉の意味を尋ねようとした時、リオンは振り返りもせずに淡々と告げる。
「お前が魔術師として俺を越えた事は認めよう。だが、それでもお前は俺には勝てない」
「リオン?」
「俺は魔術師である事を捨てた。ただ、それだけの話だ」
自ら魔術師である事を辞めた事をコオリに告げると、リオンは初めて少しだけ寂し気な表情を浮かべて腰に差していた予備の杖を手に取る。一流の魔術師ならばどんな状況でも予備の杖を用意しておく事、その教えを守ってリオンは杖を二つの所持していた。
一つ目の杖は一週間前にコオリに破壊され、残されたもう一つの杖を彼は握りしめる。このままへし折る事もできるが、彼は力を抜いてコオリに放り投げた。
「これはお前にやる。好きに使え」
「うわっ!?」
「……いらないのなら捨ててくれ」
渡された杖を見てコオリは立ち去ろうとするリオンに視線を向け、色々と思う所はあるが彼が魔術師の道を諦めて魔法剣士になろうとしている事を知り、敢えてコオリは彼を止める事はしなかった。
(リオン……)
魔術師としての才能があるにも関わらず、リオンは魔法剣士になる道を選んだ。彼が魔法剣士になる事を決めた理由はコオリは分からないが、最後に杖を渡した時の彼の声が震えていた様に聞こえた――
――それから数時間後、再び屋上にコオリは赴くとそこには既に見知った顔が並んでいた。師匠であるバルルはもちろんの事、同じ教室で学ぶ先輩のミイナとバルト、そして学園長の姿もあった。
「皆、どうしてここに……」
「あんた達だけで決闘をさせるわけがないだろ?万が一の場合はあたしらが止めるよ」
「安心しなさい、野暮な真似はしないわ。貴方達が全力で戦えるように既に準備は整えているわ」
「俺達はただの見物人だ。気にしないでくれ」
「コオリ、応援してる。けちょんけちょんにしちゃって」
決闘の舞台となる闘技台はマリアが結界を施し、万が一の事態に陥った場合は結界を解除してバルルが二人を止めるつもりだった。ミイナとバルトは応援のために来て呉れた様であり、そんな二人にコオリは頷く。
闘技台にコオリが上がると以前にバルトと戦った時よりも緊張していた。これから戦うのは自分が初めて憧れを抱いた魔術師であり、同時に彼を越えるためにここまで頑張ってきたと言えなくもない。
「……来たようだね」
「へっ、待たせやがって……」
「自分から指定した癖に遅刻なんて感心しない」
「…………」
他の人間の声を耳にしてコオリは振り返ると、屋上の扉が開かれて遂にリオンが姿を現わす。リオンが現れた途端に場の雰囲気が一変し、彼はこれまでに見た事がない程の真剣な表情を浮かべていた。
(凄い気迫だ……赤毛熊と対峙した時以上かもしれない)
ただ歩くだけのリオンの姿を見てコオリは冷や汗を流し、一方でリオンの方は闘技台に待ち構えるコオリを見て彼は考え込む。
(まさかあの時のお漏らしがここまで成長するとはな……)
最初にリオンがコオリと遭遇した時、彼は生まれて初めて見る魔物に恐れを為して失禁してしまった。そんな初対面だったからこそリオンはコオリの事を臆病者だと思い込んでいたが、今の彼はオーク如きに怯える少年ではなく、自分と対等に戦える力を持つかもしれない存在へと成長を果たした。
闘技台にリオンが登ると他の者たちも緊張し、バルルもミイナもバルトも冷や汗を流す。ただ一人だけ冷静なのはマリアだけであり、彼女は二人が闘技台に移動したのを確認すると結界を作動させる準備を行う。
「二人とも準備はいいかしら?」
「はい」
「何時でも」
「この火球が消えた時を決闘の合図よ」
結界を発動させる前にマリアは無詠唱で闘技台の中心部に火球を作り出す。そして彼女は闘技台の結界を作動させると緑色の障壁が取り囲み、彼女が作り出した火球が徐々に小さくなっていく。
徐々に縮小化していく火球を見てコオリは三又の杖を握りしめ、一方でリオンは魔剣に手を伸ばす。コオリはリオンに狙いを定め、彼が動く前に魔法を発動させて捕える準備を行う。そして下級が消え去った瞬間、コオリは杖を突き出して魔法を放つ。
「はああっ!!」
「っ!?」
三又の杖を繰り出してコオリは三つの氷塊を同時に発現させると、それを確認したリオンは警戒するように魔剣を引き抜く。この時にコオリはリオンが近付く前に次々と氷塊を作り出し、それらを繋ぎ合わせて鎖の形へと変えていく。
「できた!!」
「何をっ……!?」
コオリは氷の鎖を完成させると、リオンは氷塊の形状を見て驚いた表情を浮かべる。意表を突かれた事でリオンはコオリの行動を止める事ができず、コオリは氷鎖を放つ。
空中に浮かぶ氷鎖はリオンの元に目掛けて突っ込み、それを見たリオンは咄嗟に魔剣を振り払う。しかし、鋼鉄以上の強度を誇る氷鎖は簡単には壊れず、逆に蛇のように刀身に巻き付く。
「よし!!」
「ちぃっ!?」
「おっしゃっ!!そのまま武器を奪え!!」
「杖を失っても負けなら武器を失っても負け……でしょ?」
「ええ、そうね」
「そうなのかい!?」
「なんであなたが一番驚いてるのよ」
魔剣に氷鎖が絡みついたのを見てコオリは思わず歓喜の声を上げ、本来であればリオンを拘束するために作り出した魔法だが、武器を奪ってもコオリの勝利となる。魔剣を奪われればリオンであろうと魔法は扱えず、彼は対抗手段を失う。
氷鎖を操作してコオリは魔剣を彼から奪い取ろうとすると、リオンは力を込めて引き剥がそうとした。しかし、コオリの意思に応じて動く氷鎖は並大抵の力では引き剥がせず、徐々に魔剣はコオリの元に引き寄せられていく。
「リオン、手を離せ!!」
「ふざけるな!!この程度の事で俺に勝ったつもりか!?」
「なっ!?」
「お、おい!?何が起きてるんだ!?」
魔剣を手にしたリオンは目を見開くと、刀身部分に風の魔力が纏う。それを見たバルトは驚きの声を上げ、一方でマリアとバルルは目つきを鋭くさせる。
「これは……」
「コオリ、調子に乗るんじゃないよ!!そいつは只の剣じゃない!!」
「はぁあああっ!!」
「うわっ!?」
リオンは魔剣の刀身部分に風の魔力を纏わせる事でまとわりついていた氷鎖を引き剥がそうとするが、それに気づいたコオリは負けじに氷鎖の拘束力を強める。しかし、刀身から吹き溢れる風圧に耐え切れずに氷鎖は吹き飛ぶ。
氷鎖は元々は複数の氷塊を繋ぎ合わせた代物のため、風圧を受けた事で分離して散らばってしまう。氷鎖が離れるとリオンは魔剣を振りかざし、コオリに目掛けて刃を振り下ろす。
「スラッシュ!!」
「うわっ!?」
刃を振り下ろした方向に魔剣に纏っていた風の魔力が解き放たれ、風の斬撃と化してコオリの元へ向かう。それを見たコオリは咄嗟に横に飛んで回避すると、風の斬撃は結界に衝突して周囲に風圧が広がる。
(今のはスラッシュ!?まさか、あの剣から魔法が撃てるのか!?)
スラッシュの魔法は何度も見た事があるコオリだったが、まさか杖からではなく剣から繰り出されるとは想像もした事なかった。一方でリオンは風の魔力を再び刀身に纏わせると、コオリに目掛けて今度は連続で風の斬撃を放つ。
「ふっ、はっ、やああっ!!」
「やべぇっ!?コオリ、避けろ!!」
「動いて!!止まらないで!!」
「くっ!?」
威力を弱める事でリオンは風の斬撃を連続で繰り出し、その攻撃に対してコオリは試合場を走り回って攻撃を避ける。次々と風の斬撃が試合場を取り囲む結界に衝突し、四散する際に風圧が広がる。
(まずい、このままだと逃げ切れない……うわっ!?)
結界に衝突した風の斬撃が風圧とかしてコオリに襲い掛かり、彼は後ろから風圧を受けて転んでしまう。それを見たリオンは魔剣を振りかざして止めの一撃を繰り出そうとした。
「これで終わりだ!!」
「くぅっ……まだだ!!」
「何っ!?」
迫りくる風の斬撃に対してコオリは杖を振り払うと、先ほど分離した氷鎖の破片を引き寄せる。氷鎖は先ほどリオンの魔剣に破壊されたわけではなく、あくまでも結合部分が引き剥がされただけに過ぎない。
無数の氷塊が重なり合って氷の盾と化すと、リオンの繰り出した風の斬撃を受けて吹き飛ぶ。どうにか受け切る事に成功したが、コオリは風の斬撃を受けて粉々に砕け散った氷塊を見てリオンに杖を繰り出す。
「散弾!!」
「ぐっ!?」
氷の礫と化した無数の氷塊を操作してリオンに放つと、彼は迫りくる氷の欠片から身を守るために魔剣を構えた。彼は迫りくる氷の礫を見て魔剣を振りかざし、その力を遂に解放した。
「烈火斬!!」
「うわっ!?」
「な、何だと!?」
「炎!?」
「そんな馬鹿なっ……!?」
刀身に炎を纏わせるとリオンは魔剣を振り払って無数の氷の礫を蒸発させる。その光景を見ていた者達は驚き、彼とは古い付き合いであるバルルでさえも目の前の光景が信じられなかった。
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