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王都での日常
第116話 ガーゴイル
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「いいかい、くれぐれも無茶をするんじゃないよ!!生徒を避難させたらすぐにあたし達も戻るからね!!」
「はい、分かりました!!」
「バルトとミイナも頼んだよ!!」
「うぃっす!!」
「……任せて」
バルルは大声で屋上の三人に指示を出すと、その光景を見ていた他の一年生がセマカに尋ねた。
「せ、先生!!さっきの子の使っていた魔法、僕たちも使えないの!?」
「え、いやそれは……」
「先生もあんな魔法が使えるの!?」
「僕達にも教えてください!!」
「い、いや……」
同じ一年生のコオリが扱う魔法を見て、セマカが担当する生徒たちは瞳を輝かせて彼に縋りつくが、彼にはどうする事もできなかった。そんな彼等のやり取りを見てバルルは苦笑いを浮かべ、生徒達に早く避難するように促す。
「ほら、騒いでたらまた魔物どもに襲われるよ。さあ、早く急いで逃げるんだよ」
「「「え~っ!!」」」
「……いいからとっとと逃げろと言ってんだよ!!お尻ぺんぺんされたいのかい!?」
「「「ひいっ!?」」」
「バルル、うちの生徒を脅すなよ……」
バルルの言葉に一年生の生徒達は震え上がり、セマカの後ろに隠れてしまう。そんな彼等を庇いながらもセマカは学園の外へ向かう――
――バルルの伝言を受け取ったコオリは屋上に移動してバルトとミイナと合流すると、三人は校舎内に戻って様子を伺う。既に廊下の方には倒れている魔物の姿があり、どうやら既に校舎内でも戦闘が始まっている様子だった。
「おい、これを見ろよ……黒焦げだ。多分、火属性か雷属性の魔法でやられたんだな」
「きっと、他の先生達が魔物を倒してる」
「もしかしたら上級生も戦っているのかも……」
魔法学園には腕利きの魔術師が揃っており、戦える力を持つのは教師だけではない。魔法学園の生徒は日頃から魔法の授業で魔物と戦う事もあるため、もしかしたら校内に残っている生徒の中にはコオリ達のように魔物を倒している可能性も十分にあった。
三人は周囲を警戒しながら各教室の様子を確認し、魔物や生徒の姿を探す。三人はまずは一番上の階から様子を探っていると、階段の方からオークが姿を現わす。
「プギィイイッ!!」
「オーク!?こんな奴までいたのか!!ちっ、ここは俺が……」
「待って、私が……」
「氷弾!!」
オークが姿を現わすとバルトは杖を取り出してミイナは鉤爪を装着するが、二人が動く前にコオリは杖を突き出して氷弾を放つ。発射された氷弾はオークの頭部を貫通し、そのまま壁にめり込む。
「プギャアッ……!?」
「よし、行こう!!」
「「…………」」
一瞬にしてオークを仕留めたコオリにミイナとバルトは唖然とするが、そんな二人を置いてコオリは先を急ぐ。最初に出会った頃は失禁する程に恐れた相手だが、今のコオリにとってはオークなどゴブリンと大差ない存在だった。
「い、いやいや……えっ?今のオークだぞ?そんなあっさりと倒せるなんて……え、マジで?」
「先輩、急がないと置いて行かれる」
「ちょ、待てよ!?」
あっさりとコオリがオークを倒したせいで放心していたバルトはミイナに声を掛けられて慌てて追いかけ、先ほどの出来事を思い返す。コオリは氷弾でオークを一撃で仕留めたが、彼の魔法はここまで強かったのかと疑問を抱く。
オークの肉体は鋼鉄をも上回り、並の武器は通用しない。そのために魔法金属などの武器でなければ傷つける事もできないが、コオリの場合は魔法金属級の硬さを誇る氷を作り出せる事を意味している。
(あいつ、何処まで強くなってるんだ!?)
風の魔術痕を刻まれた事でコオリは風の魔石に頼らずとも氷弾を風の魔力を利用して強化させ、オーク程度の相手ならば一撃で倒せる程に成長した。バルトも中級魔法を繰り出せばオークぐらいは倒せるが、下級魔法よりも魔力消費が激しい中級魔法は連発には向かず、彼の場合は数匹のオークを倒すのが限界だろう。
しかし、コオリの場合は氷弾自体は魔力を殆ど消耗せず、仮に魔力を消費しても精神鍛錬で鍛え上げたコオリの回復力ならばすぐに魔力は元に戻る。
(くそっ……うかうかしているとマジで置いて行かれちまうな)
リオンだけではなく、コオリとも力の差を感じ始めたバルトはせめて足手纏いにならないように気をつけながら走っていると、不意にミイナが何かに気付いたように二人に声をかけた。
「すんすんっ……待って、こっちの方から血の匂いがする」
「血!?」
「誰かやられたのか!?それとも魔物の!?」
「そこまでは分からない。けど、こっちの方からする」
獣人族のミイナは常人離れした嗅覚を誇り、彼女は血の臭いを感じ取った方向に駆け出すと、そこには数名の生徒が廊下に倒れていた。それに気づいたコオリ達は慌てて駆けつけると、彼等が血塗れである事に気付く。
「だ、大丈夫ですか!?」
「おい、しっかりしろ!!」
「……皆、まだ生きている。でも酷い怪我をしてる」
「う、ううっ……」
倒れている生徒達は血塗れであり、彼等の傍には折れた杖と破壊された魔法腕輪が散らばっていた。それを見たコオリは疑問を抱くが、とりあえずは彼等を運び出そうとする。
「すぐに避難させないと!!」
「おい、ちょっと待て……これを見ろ!!」
「……爪痕?」
バルトが壁を指差すとそこには爪痕が残っており、まるで赤毛熊のような魔物が校舎の壁を引っ掻いたような跡だった。それを見たコオリは生徒達を傷つけたのは魔獣(獣型の魔物)の仕業だと思ったが、ここで疑問を抱いた。
生徒達は血を流して倒れているが全員生きており、魔法が使えないように杖や魔法腕輪は破壊された状態で放置されていた。もしも魔物の仕業だとしたらわざわざ倒した獲物を放置して立ち去る事に疑問を抱き、何か嫌な予感がした。
(まさかこれは……罠!?)
コオリ達は傷ついた生徒を救うためにここへやってきたが、それ自体が罠で魔物の狙いは自分が倒した獲物を利用して他の獲物が駆けつけるのを待っているのではないかと考える。
「ミイナ!!近くに魔物はいない!?」
「待って……うっ、血の匂いと獣臭のせいで上手く嗅ぎ取れない」
「そんな!?」
嗅覚の鋭いミイナでも廊下に漂う生徒の血の臭いと魔獣の臭いが入り混じって上手く嗅ぎ取れず、嫌な予感を抱いたコオリは急いでこの場を離れるために杖を取り出す。しかし、彼が魔法を扱う前に近くの教室の扉が唐突に吹き飛んだ。
――キィイイイイッ!!
鳴き声というよりはまるで黒板を指で引っ掻いたような奇怪な音が鳴り響き、コオリ達は耳元を塞ぎながら音のした方向に視線を向ける。そこにはゴブリンよりも醜く、オークよりも大きくて背中に蝙蝠のような羽根を生やした生物が存在した。
その生物を最初に見た時にコオリは頭に思い浮かんだのは「石像」という単語だった。教室から現れたのは全身が石像のような色合いをした魔物であり、石像の姿を模した魔物はこの世界では一種類しか存在せず、よくコオリが子供の頃に読んでいた絵本にも出てきた魔物だった。
「ば、馬鹿な!?ガ、ガーゴイルだと!?」
「ガーゴイル!?」
「気をつけて!!こいつ、強い!!」
石像のような外見をした魔物の登場にバルトは驚愕し、コオリは三又の杖を構えるがミイナは今までにない程に真剣な表情を浮かべて二人の前に立つ。獣人族優れた生存本能が目の前の相手の危険性を知らせ、ミイナは決して油断しないように注意する。
「キィイイッ……!!」
「うわっ!?あ、頭が痛い!?」
「気をつけろ、こいつの声を聞いたらまともに魔法が使えなくなるぞ!?」
「うっ……耳が痛い」
ガーゴイルの発する鳴き声は人間や獣人族にとっては不快で耳鳴りを引き起こし、そのせいで精神が乱れて魔法も上手く扱えない。ガーゴイルの別名は「魔術師殺し」と呼ばれ、鳴き声だけで大抵の魔術師は魔法が扱えない。
(こんな魔物まで校内に……何だ?何をしてるんだ?)
ある意味では赤毛熊よりも厄介な相手の登場にコオリ達は緊張するが、一方でガーゴイルの方はコオリ達の顔を見て立ち止まる。普通の魔物ならば獲物を発見すれば真っ先に襲い掛かってくるはずだが、ガーゴイルは何を考えているのか動こうとしない。
(こっちを観察している?そういえば倒れている人たちも殺されてはいなかった……どうして?)
廊下に倒れていた生徒はガーゴイルにやられたと思われるが、何故か全員が負傷しているが生かされた状態で放置されていた。わざと獲物を生かして放置する事で他の獲物を誘き寄せるという罠も考えられたが、ガーゴイルは新たに現れたコオリ達を見ても不用意に攻撃を仕掛けて来なかった。
まるで顔を確認するようにガーゴイルはコオリ達をじっくりと観察し、ゆっくりと近付いてきた。この時にコオリは危険を感じ取って三又の杖を構えると、ガーゴイルは杖を見て立ち止まる。
「…………」
「な、何だこいつ……急に動かなくなったぞ?」
「こっちを見てる……というよりもコオリの杖を見てる?」
「杖?どうして……」
ガーゴイルは急に黙り込むとコオリの杖に注目し、本物の石像のように硬直した。ガーゴイルの行動にコオリは戸惑うが、ここで彼はためらわずに最大の攻撃を繰り出す。
(今が好機だ!!この距離なら当てられる!!)
何故か動こうとしないガーゴイルに対してコオリは狙いを定め、頭部の部分に魔法を撃ち込む準備を行う。三又の杖に装着した魔石の力を利用して彼はかつてバルトのスライサーをも打ち破った「氷砲撃」を撃ち込もうとした。
氷砲撃の威力は上級魔法でしか破壊できないといわれた試合場の結界を壊す威力を誇り、まともに当たれば赤毛熊でさえも一撃で倒せる。しかも今のコオリはバルトと試合をした時よりも腕を磨いており、即座に魔法を展開して攻撃を行う。
「はい、分かりました!!」
「バルトとミイナも頼んだよ!!」
「うぃっす!!」
「……任せて」
バルルは大声で屋上の三人に指示を出すと、その光景を見ていた他の一年生がセマカに尋ねた。
「せ、先生!!さっきの子の使っていた魔法、僕たちも使えないの!?」
「え、いやそれは……」
「先生もあんな魔法が使えるの!?」
「僕達にも教えてください!!」
「い、いや……」
同じ一年生のコオリが扱う魔法を見て、セマカが担当する生徒たちは瞳を輝かせて彼に縋りつくが、彼にはどうする事もできなかった。そんな彼等のやり取りを見てバルルは苦笑いを浮かべ、生徒達に早く避難するように促す。
「ほら、騒いでたらまた魔物どもに襲われるよ。さあ、早く急いで逃げるんだよ」
「「「え~っ!!」」」
「……いいからとっとと逃げろと言ってんだよ!!お尻ぺんぺんされたいのかい!?」
「「「ひいっ!?」」」
「バルル、うちの生徒を脅すなよ……」
バルルの言葉に一年生の生徒達は震え上がり、セマカの後ろに隠れてしまう。そんな彼等を庇いながらもセマカは学園の外へ向かう――
――バルルの伝言を受け取ったコオリは屋上に移動してバルトとミイナと合流すると、三人は校舎内に戻って様子を伺う。既に廊下の方には倒れている魔物の姿があり、どうやら既に校舎内でも戦闘が始まっている様子だった。
「おい、これを見ろよ……黒焦げだ。多分、火属性か雷属性の魔法でやられたんだな」
「きっと、他の先生達が魔物を倒してる」
「もしかしたら上級生も戦っているのかも……」
魔法学園には腕利きの魔術師が揃っており、戦える力を持つのは教師だけではない。魔法学園の生徒は日頃から魔法の授業で魔物と戦う事もあるため、もしかしたら校内に残っている生徒の中にはコオリ達のように魔物を倒している可能性も十分にあった。
三人は周囲を警戒しながら各教室の様子を確認し、魔物や生徒の姿を探す。三人はまずは一番上の階から様子を探っていると、階段の方からオークが姿を現わす。
「プギィイイッ!!」
「オーク!?こんな奴までいたのか!!ちっ、ここは俺が……」
「待って、私が……」
「氷弾!!」
オークが姿を現わすとバルトは杖を取り出してミイナは鉤爪を装着するが、二人が動く前にコオリは杖を突き出して氷弾を放つ。発射された氷弾はオークの頭部を貫通し、そのまま壁にめり込む。
「プギャアッ……!?」
「よし、行こう!!」
「「…………」」
一瞬にしてオークを仕留めたコオリにミイナとバルトは唖然とするが、そんな二人を置いてコオリは先を急ぐ。最初に出会った頃は失禁する程に恐れた相手だが、今のコオリにとってはオークなどゴブリンと大差ない存在だった。
「い、いやいや……えっ?今のオークだぞ?そんなあっさりと倒せるなんて……え、マジで?」
「先輩、急がないと置いて行かれる」
「ちょ、待てよ!?」
あっさりとコオリがオークを倒したせいで放心していたバルトはミイナに声を掛けられて慌てて追いかけ、先ほどの出来事を思い返す。コオリは氷弾でオークを一撃で仕留めたが、彼の魔法はここまで強かったのかと疑問を抱く。
オークの肉体は鋼鉄をも上回り、並の武器は通用しない。そのために魔法金属などの武器でなければ傷つける事もできないが、コオリの場合は魔法金属級の硬さを誇る氷を作り出せる事を意味している。
(あいつ、何処まで強くなってるんだ!?)
風の魔術痕を刻まれた事でコオリは風の魔石に頼らずとも氷弾を風の魔力を利用して強化させ、オーク程度の相手ならば一撃で倒せる程に成長した。バルトも中級魔法を繰り出せばオークぐらいは倒せるが、下級魔法よりも魔力消費が激しい中級魔法は連発には向かず、彼の場合は数匹のオークを倒すのが限界だろう。
しかし、コオリの場合は氷弾自体は魔力を殆ど消耗せず、仮に魔力を消費しても精神鍛錬で鍛え上げたコオリの回復力ならばすぐに魔力は元に戻る。
(くそっ……うかうかしているとマジで置いて行かれちまうな)
リオンだけではなく、コオリとも力の差を感じ始めたバルトはせめて足手纏いにならないように気をつけながら走っていると、不意にミイナが何かに気付いたように二人に声をかけた。
「すんすんっ……待って、こっちの方から血の匂いがする」
「血!?」
「誰かやられたのか!?それとも魔物の!?」
「そこまでは分からない。けど、こっちの方からする」
獣人族のミイナは常人離れした嗅覚を誇り、彼女は血の臭いを感じ取った方向に駆け出すと、そこには数名の生徒が廊下に倒れていた。それに気づいたコオリ達は慌てて駆けつけると、彼等が血塗れである事に気付く。
「だ、大丈夫ですか!?」
「おい、しっかりしろ!!」
「……皆、まだ生きている。でも酷い怪我をしてる」
「う、ううっ……」
倒れている生徒達は血塗れであり、彼等の傍には折れた杖と破壊された魔法腕輪が散らばっていた。それを見たコオリは疑問を抱くが、とりあえずは彼等を運び出そうとする。
「すぐに避難させないと!!」
「おい、ちょっと待て……これを見ろ!!」
「……爪痕?」
バルトが壁を指差すとそこには爪痕が残っており、まるで赤毛熊のような魔物が校舎の壁を引っ掻いたような跡だった。それを見たコオリは生徒達を傷つけたのは魔獣(獣型の魔物)の仕業だと思ったが、ここで疑問を抱いた。
生徒達は血を流して倒れているが全員生きており、魔法が使えないように杖や魔法腕輪は破壊された状態で放置されていた。もしも魔物の仕業だとしたらわざわざ倒した獲物を放置して立ち去る事に疑問を抱き、何か嫌な予感がした。
(まさかこれは……罠!?)
コオリ達は傷ついた生徒を救うためにここへやってきたが、それ自体が罠で魔物の狙いは自分が倒した獲物を利用して他の獲物が駆けつけるのを待っているのではないかと考える。
「ミイナ!!近くに魔物はいない!?」
「待って……うっ、血の匂いと獣臭のせいで上手く嗅ぎ取れない」
「そんな!?」
嗅覚の鋭いミイナでも廊下に漂う生徒の血の臭いと魔獣の臭いが入り混じって上手く嗅ぎ取れず、嫌な予感を抱いたコオリは急いでこの場を離れるために杖を取り出す。しかし、彼が魔法を扱う前に近くの教室の扉が唐突に吹き飛んだ。
――キィイイイイッ!!
鳴き声というよりはまるで黒板を指で引っ掻いたような奇怪な音が鳴り響き、コオリ達は耳元を塞ぎながら音のした方向に視線を向ける。そこにはゴブリンよりも醜く、オークよりも大きくて背中に蝙蝠のような羽根を生やした生物が存在した。
その生物を最初に見た時にコオリは頭に思い浮かんだのは「石像」という単語だった。教室から現れたのは全身が石像のような色合いをした魔物であり、石像の姿を模した魔物はこの世界では一種類しか存在せず、よくコオリが子供の頃に読んでいた絵本にも出てきた魔物だった。
「ば、馬鹿な!?ガ、ガーゴイルだと!?」
「ガーゴイル!?」
「気をつけて!!こいつ、強い!!」
石像のような外見をした魔物の登場にバルトは驚愕し、コオリは三又の杖を構えるがミイナは今までにない程に真剣な表情を浮かべて二人の前に立つ。獣人族優れた生存本能が目の前の相手の危険性を知らせ、ミイナは決して油断しないように注意する。
「キィイイッ……!!」
「うわっ!?あ、頭が痛い!?」
「気をつけろ、こいつの声を聞いたらまともに魔法が使えなくなるぞ!?」
「うっ……耳が痛い」
ガーゴイルの発する鳴き声は人間や獣人族にとっては不快で耳鳴りを引き起こし、そのせいで精神が乱れて魔法も上手く扱えない。ガーゴイルの別名は「魔術師殺し」と呼ばれ、鳴き声だけで大抵の魔術師は魔法が扱えない。
(こんな魔物まで校内に……何だ?何をしてるんだ?)
ある意味では赤毛熊よりも厄介な相手の登場にコオリ達は緊張するが、一方でガーゴイルの方はコオリ達の顔を見て立ち止まる。普通の魔物ならば獲物を発見すれば真っ先に襲い掛かってくるはずだが、ガーゴイルは何を考えているのか動こうとしない。
(こっちを観察している?そういえば倒れている人たちも殺されてはいなかった……どうして?)
廊下に倒れていた生徒はガーゴイルにやられたと思われるが、何故か全員が負傷しているが生かされた状態で放置されていた。わざと獲物を生かして放置する事で他の獲物を誘き寄せるという罠も考えられたが、ガーゴイルは新たに現れたコオリ達を見ても不用意に攻撃を仕掛けて来なかった。
まるで顔を確認するようにガーゴイルはコオリ達をじっくりと観察し、ゆっくりと近付いてきた。この時にコオリは危険を感じ取って三又の杖を構えると、ガーゴイルは杖を見て立ち止まる。
「…………」
「な、何だこいつ……急に動かなくなったぞ?」
「こっちを見てる……というよりもコオリの杖を見てる?」
「杖?どうして……」
ガーゴイルは急に黙り込むとコオリの杖に注目し、本物の石像のように硬直した。ガーゴイルの行動にコオリは戸惑うが、ここで彼はためらわずに最大の攻撃を繰り出す。
(今が好機だ!!この距離なら当てられる!!)
何故か動こうとしないガーゴイルに対してコオリは狙いを定め、頭部の部分に魔法を撃ち込む準備を行う。三又の杖に装着した魔石の力を利用して彼はかつてバルトのスライサーをも打ち破った「氷砲撃」を撃ち込もうとした。
氷砲撃の威力は上級魔法でしか破壊できないといわれた試合場の結界を壊す威力を誇り、まともに当たれば赤毛熊でさえも一撃で倒せる。しかも今のコオリはバルトと試合をした時よりも腕を磨いており、即座に魔法を展開して攻撃を行う。
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