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王都での日常
第109話 退院
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――後日、バルルが無事に退院するとコオリとミイナはバルトと共にいつもの教室で待機する。退院した当日にバルルは教師として復帰し、彼女が戻ってくるとコオリ達は正直にこれまでの経緯を話す。
バルルは自分が書きこ残した言い付けを破ってコオリとミイナが仇討ちをしようとした事を知り、危うく犯人に殺されかけたと聞いて黙り込む。コオリとミイナはバルルの前で正座すると、冒険者狩りから回収した「魔杖」を差し出す。
「師匠、本当にすいませんでした」
「ごめんなさい」
「ま、まあ……こいつらも反省してるし、あんまり怒らないでくださいよ」
「…………」
話を聞き終えたバルルは黙り込み、三人を見つめたまま何も話そうとはしない。そんな彼女の態度が逆に不気味で怖く、いつものバルルならば怒鳴り散らしている所だった。
「あの、師匠?」
「はあっ……まあ、あんた達ならあたしの言う事を聞かずに動くことは薄々勘付いていたけどね。でも、もっと早くに言って欲しかったよ」
「す、すいません……入院中に余計な心配事を掛けさせたくなくて」
「たくっ、そういう所で変に気を回すんじゃないよ。まあいい、言いたい事は色々あるけど問題なのはこっちだよ」
困った表情でバルルはコオリが回収した魔杖に視線を向け、これをどのように扱うべきか悩む。彼女は一目見ただけでこれがただの杖ではない事を見抜き、扱いに困ってしまう。
「こいつが冒険者狩りが使用していたという杖だね?効果は魔力を吸い上げる事で通常以上の魔法を発揮する、だったかい?」
「はい、試しに使ってみたらいつもよりも大きな氷塊を作り出せました」
「俺が使った時は魔力を吸収されて上手く扱えなかったけどな……」
「なるほどね、しかしこんな物を持ち返るなんて……あんたら、やらかしてくれたね」
「あの時は焦って冷静に考えられなかった」
犯人から奪った杖を持ち返ってきてしまった事はコオリもミイナも後に後悔し、もしも今になって魔杖を警備兵に渡せば色々と問題になる。冒険者狩りが死亡したのは彼女自身が自害した結果だが、その場に存在したコオリ達は止められなかった。
しかし、もしもコオリ達が逃げずに現場に残っていれば警備兵に連行され、事情聴取を行われただろう。故意にではないとはいえ、冒険者狩りが死んだ理由はコオリに敗れたからでもある。その場合はコオリは色々と取り調べを受ける羽目になり、しかも魔法学園から抜け出した事が知られてしまう。
「警備兵に捕まらなかったのは幸いだけど、この杖を持ち返ったのは大問題だね。今更これを渡せばあんた達の仕業だと判明するし……本当にまいったよ」
「なら私達が偶然拾った事にして警備兵に届ければいい」
「馬鹿を言うんじゃないよ、あれから三週間も経っているんだろう?もしもこの杖の事を誰かに知られたら怪しまれるよ。それに恐らくはこの杖は盗賊ギルドが関係しているだろうからね、奴等もきっと探し回ってるよ」
バルルは冒険者狩りが盗賊ギルドの人間であり、そんな彼女が所有していた魔杖を盗賊ギルドが放置するはずがないと判断する。こちらの魔杖は魔術師にとっては大変に価値のある代物であるため、盗賊ギルドが諦めるわけがない。
「この魔杖はとりあえずはあたしが預かっておくよ。機会があったら先生に話を伝えておく」
「す、すいません……」
「ありがとう」
「良かったな、お前等。叱られなくて……」
「何言ってんだい、お説教はここからだよ!!あんたらは罰として一週間は放課後学校内の清掃をするんだよ!!」
「「ええ~っ!?」」
「俺もかよ!?」
バルルは最後に三人に罰を与えると、彼女は魔杖を懐にしまって立ち去ろうとした。しかし、この時に彼女は魔杖の変化には気づいていなかった。彼女が手にした途端に魔石は光を失っている事を――
――同時刻、王都の王城では一人の少年が城内の一室に居た。彼は部屋の中に飾られている肖像画に視線を向け、黙ったまま肖像画の人物を見つめ続ける。
「…………」
少年が視線を向ける肖像画は彼とよく似た容姿の青年が描かれており、その青年が腰に差している剣は少年が身に付けている剣と同じ代物だった。そんな彼の後ろから老人の騎士が声をかける。
「リオン様、国王陛下がお待ちです。そろそろ参りましょう」
「……ああ、そうだな」
声を掛けられたリオンは振り返ると、彼は立派な衣服をまとっていた。コオリと初めて遭遇した時と違い、現在の彼は肖像画の青年と同じくこの国の王子に相応しい恰好をしていた。
――リオンの本名は「リオン・ソウド」この国の第三王子で王位継承権を持つ王族だった。彼が眺めていた肖像画の人物の正体は第一王子である「アルト・ソウド」であり、本来であればこの国の王となるはずだった人物である。
リオンはこの国の王族であり、彼には二人の兄が存在した。一番上の兄は聡明な人物で次期国王として周囲の人々からも期待されていた。国王も彼の事を信頼し、いずれはこの国を背負う人間だと誰もが思っていた。
しかし、第一王子はある時に病で死亡してしまう。第一王子が死んだ際に誰もが涙を流し、国王でさえも一時の間は政務がまともに執り行えない状態だった。だが、弟であるリオンは違った。彼は兄が死ぬ直前に約束を交わす。
『兄上!!しっかりして下さい!!』
『リオン……私はこれまでのようだ』
『そんなっ……約束したではないですか!!私に剣を教えると!!』
『……ああ、そうだったな』
アルトが病にかかった時は今よりもリオンは幼く、ベッドに横たわる彼に縋りつく。そんな弟にアルトは自分の剣を託した。
『リオン、お前にこの剣を受け取ってほしい』
『こ、この剣は兄上の……』
『我が国に代々伝わる家宝だ……お前ならばきっと使いこなせる』
『ですが兄上、この剣は……』
『お前に任せるぞ、弟よ』
剣をリオンに託すとアルトはそのまま息を引き取り、彼から王家に伝わる家宝の剣を受け取ったリオンはこの日に決意する。それは死んだ兄の代わりとして相応しい人物になると彼は心の中で誓った――
――昔の事を思い出しながらもリオンは廊下を歩いていると、玉座の間に繋がる通路に大勢の兵士が集まっている事に気付く。それを見たリオンの側近のジイは兵士達に声をかけた。
「お前達、そこで何をしている!!さっさと退かんか!!」
「こ、これはリオン王子!?それにジイ殿まで……お戻りになられていたのですね」
「ええい、いいからさっさと道を開けんか!!」
リオンに気付いた兵士達はその場に跪くと、ジイは彼等に早く退くように促す。しかし、そんな彼等の前に兵士達の中から一人の青年が現れた。
「おおっ!!誰かと思えばリオンじゃないか!!いつ城に戻ってきたんだ?」
「あ、貴方様は……!?」
「……ラギリ兄上」
兵士達の後ろから姿を現わしたのはリオンと少し顔立ちが似た青年であり、彼が現れると慌ててジイも跪く。一方でリオンは面倒くさそうな表情を浮かべ、そんな彼にラギリは親し気に肩に手を置く。
「お前が急に姿を消すから心配していたぞ。全く、今まで何処にいたんだ?」
「ご心配をかけて申し訳ございません」
「いやいや、こうしてお前が戻ってきただけでも嬉しいぞ」
ラギリは馴れ馴れしくリオンに肩を伸ばし、この時に彼は怪しい瞳を向けた。そんなラギリの態度にリオンは苛立ちを抱き、一番上の兄と違って二番目の兄は彼はどうしても好きになれなかった。
二人の雰囲気が怪しくなった事に兵士もジイも冷や汗を流し、昔からこの二人の仲が悪かった。表面上は親し気に接しているラギリも内心ではリオンを見下し、その証拠にラギリは他の人間には聞こえない声量で語り掛ける。
「あまり父上を困らせるなよ、側室の子の分際で……」
「……肝に銘じておきます」
リオンはアルトとラギリと違い、彼は国王と側室の子供だった。アルトは正妻との間に生まれた子だが、後に彼の母親は死亡して新しく正妻に選ばれた女性の子がラギリである。この国の王子たちはそれぞれが別々の母親の間に生まれ、ラギリは正妻の子である自分がこの国の継承者に相応しいと考えていた。
「これまでは子供のやる事だからと大目に見てきたが、今年でお前も十六才だ。いつまでも子供気分で自由に遊び回れると思うなよ」
「ラギリ王子!!リオン様は決して遊んでいたわけでは……うぐっ!?」
「家臣の分際で口を挟むな!!」
ラギリの言葉に流石に黙っていられなかったジイが口を挟もうとするが、そんな彼にラギリは平手打ちを行う。その彼の行為に兵士達は驚き、一方でリオンは彼を止めた。
「兄上、ジイは長年この国に仕える騎士です。どうかご容赦を……」
「ふんっ!!まあ、いいだろう……弟の顔に免じて許してやる」
「はっ……申し訳ございませんでした」
リオンに止められた事でラギリは仕方ない風にジイを許したが、ジイは謝罪を行いながらも内心では腸が煮えくりかえる思いをしていた。
(何が正妻の子だ……貴様の母親があくどい手を使って正妻になっただけではないか!!)
現在の国王の正妻であるラギリの母親は前の正妻が死亡した後、あらゆる手を使って彼女は正妻となった。本来であればリオンの母親が正妻に選ばれてもおかしくはなかったが、ラギリはリオンの母親を脅して正妻の地位を辞退させた。
アルトが生きている間はラギリは大人しかったが、彼が病死した途端に自分こそが王位に就く人間に相応しいと思い込み、尊大な態度を取るようになった。また、あくまでも噂だがアルトが急に病に侵された原因はラギリの母親が関係しているのではないかと囁かれている。
実際にアルトの死には色々と謎が多く、アルトの母親が亡くなった際にラギリは彼に親身に接していたが、その行動も実に怪しかった。もしかしたら母親を失って傷心中のアルトに近付き、彼に毒を盛ったのではないかと疑う人間も多い。しかし、ラギリの母親がアルトを殺した証拠は見つからなかった。
バルルは自分が書きこ残した言い付けを破ってコオリとミイナが仇討ちをしようとした事を知り、危うく犯人に殺されかけたと聞いて黙り込む。コオリとミイナはバルルの前で正座すると、冒険者狩りから回収した「魔杖」を差し出す。
「師匠、本当にすいませんでした」
「ごめんなさい」
「ま、まあ……こいつらも反省してるし、あんまり怒らないでくださいよ」
「…………」
話を聞き終えたバルルは黙り込み、三人を見つめたまま何も話そうとはしない。そんな彼女の態度が逆に不気味で怖く、いつものバルルならば怒鳴り散らしている所だった。
「あの、師匠?」
「はあっ……まあ、あんた達ならあたしの言う事を聞かずに動くことは薄々勘付いていたけどね。でも、もっと早くに言って欲しかったよ」
「す、すいません……入院中に余計な心配事を掛けさせたくなくて」
「たくっ、そういう所で変に気を回すんじゃないよ。まあいい、言いたい事は色々あるけど問題なのはこっちだよ」
困った表情でバルルはコオリが回収した魔杖に視線を向け、これをどのように扱うべきか悩む。彼女は一目見ただけでこれがただの杖ではない事を見抜き、扱いに困ってしまう。
「こいつが冒険者狩りが使用していたという杖だね?効果は魔力を吸い上げる事で通常以上の魔法を発揮する、だったかい?」
「はい、試しに使ってみたらいつもよりも大きな氷塊を作り出せました」
「俺が使った時は魔力を吸収されて上手く扱えなかったけどな……」
「なるほどね、しかしこんな物を持ち返るなんて……あんたら、やらかしてくれたね」
「あの時は焦って冷静に考えられなかった」
犯人から奪った杖を持ち返ってきてしまった事はコオリもミイナも後に後悔し、もしも今になって魔杖を警備兵に渡せば色々と問題になる。冒険者狩りが死亡したのは彼女自身が自害した結果だが、その場に存在したコオリ達は止められなかった。
しかし、もしもコオリ達が逃げずに現場に残っていれば警備兵に連行され、事情聴取を行われただろう。故意にではないとはいえ、冒険者狩りが死んだ理由はコオリに敗れたからでもある。その場合はコオリは色々と取り調べを受ける羽目になり、しかも魔法学園から抜け出した事が知られてしまう。
「警備兵に捕まらなかったのは幸いだけど、この杖を持ち返ったのは大問題だね。今更これを渡せばあんた達の仕業だと判明するし……本当にまいったよ」
「なら私達が偶然拾った事にして警備兵に届ければいい」
「馬鹿を言うんじゃないよ、あれから三週間も経っているんだろう?もしもこの杖の事を誰かに知られたら怪しまれるよ。それに恐らくはこの杖は盗賊ギルドが関係しているだろうからね、奴等もきっと探し回ってるよ」
バルルは冒険者狩りが盗賊ギルドの人間であり、そんな彼女が所有していた魔杖を盗賊ギルドが放置するはずがないと判断する。こちらの魔杖は魔術師にとっては大変に価値のある代物であるため、盗賊ギルドが諦めるわけがない。
「この魔杖はとりあえずはあたしが預かっておくよ。機会があったら先生に話を伝えておく」
「す、すいません……」
「ありがとう」
「良かったな、お前等。叱られなくて……」
「何言ってんだい、お説教はここからだよ!!あんたらは罰として一週間は放課後学校内の清掃をするんだよ!!」
「「ええ~っ!?」」
「俺もかよ!?」
バルルは最後に三人に罰を与えると、彼女は魔杖を懐にしまって立ち去ろうとした。しかし、この時に彼女は魔杖の変化には気づいていなかった。彼女が手にした途端に魔石は光を失っている事を――
――同時刻、王都の王城では一人の少年が城内の一室に居た。彼は部屋の中に飾られている肖像画に視線を向け、黙ったまま肖像画の人物を見つめ続ける。
「…………」
少年が視線を向ける肖像画は彼とよく似た容姿の青年が描かれており、その青年が腰に差している剣は少年が身に付けている剣と同じ代物だった。そんな彼の後ろから老人の騎士が声をかける。
「リオン様、国王陛下がお待ちです。そろそろ参りましょう」
「……ああ、そうだな」
声を掛けられたリオンは振り返ると、彼は立派な衣服をまとっていた。コオリと初めて遭遇した時と違い、現在の彼は肖像画の青年と同じくこの国の王子に相応しい恰好をしていた。
――リオンの本名は「リオン・ソウド」この国の第三王子で王位継承権を持つ王族だった。彼が眺めていた肖像画の人物の正体は第一王子である「アルト・ソウド」であり、本来であればこの国の王となるはずだった人物である。
リオンはこの国の王族であり、彼には二人の兄が存在した。一番上の兄は聡明な人物で次期国王として周囲の人々からも期待されていた。国王も彼の事を信頼し、いずれはこの国を背負う人間だと誰もが思っていた。
しかし、第一王子はある時に病で死亡してしまう。第一王子が死んだ際に誰もが涙を流し、国王でさえも一時の間は政務がまともに執り行えない状態だった。だが、弟であるリオンは違った。彼は兄が死ぬ直前に約束を交わす。
『兄上!!しっかりして下さい!!』
『リオン……私はこれまでのようだ』
『そんなっ……約束したではないですか!!私に剣を教えると!!』
『……ああ、そうだったな』
アルトが病にかかった時は今よりもリオンは幼く、ベッドに横たわる彼に縋りつく。そんな弟にアルトは自分の剣を託した。
『リオン、お前にこの剣を受け取ってほしい』
『こ、この剣は兄上の……』
『我が国に代々伝わる家宝だ……お前ならばきっと使いこなせる』
『ですが兄上、この剣は……』
『お前に任せるぞ、弟よ』
剣をリオンに託すとアルトはそのまま息を引き取り、彼から王家に伝わる家宝の剣を受け取ったリオンはこの日に決意する。それは死んだ兄の代わりとして相応しい人物になると彼は心の中で誓った――
――昔の事を思い出しながらもリオンは廊下を歩いていると、玉座の間に繋がる通路に大勢の兵士が集まっている事に気付く。それを見たリオンの側近のジイは兵士達に声をかけた。
「お前達、そこで何をしている!!さっさと退かんか!!」
「こ、これはリオン王子!?それにジイ殿まで……お戻りになられていたのですね」
「ええい、いいからさっさと道を開けんか!!」
リオンに気付いた兵士達はその場に跪くと、ジイは彼等に早く退くように促す。しかし、そんな彼等の前に兵士達の中から一人の青年が現れた。
「おおっ!!誰かと思えばリオンじゃないか!!いつ城に戻ってきたんだ?」
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「……ラギリ兄上」
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「ご心配をかけて申し訳ございません」
「いやいや、こうしてお前が戻ってきただけでも嬉しいぞ」
ラギリは馴れ馴れしくリオンに肩を伸ばし、この時に彼は怪しい瞳を向けた。そんなラギリの態度にリオンは苛立ちを抱き、一番上の兄と違って二番目の兄は彼はどうしても好きになれなかった。
二人の雰囲気が怪しくなった事に兵士もジイも冷や汗を流し、昔からこの二人の仲が悪かった。表面上は親し気に接しているラギリも内心ではリオンを見下し、その証拠にラギリは他の人間には聞こえない声量で語り掛ける。
「あまり父上を困らせるなよ、側室の子の分際で……」
「……肝に銘じておきます」
リオンはアルトとラギリと違い、彼は国王と側室の子供だった。アルトは正妻との間に生まれた子だが、後に彼の母親は死亡して新しく正妻に選ばれた女性の子がラギリである。この国の王子たちはそれぞれが別々の母親の間に生まれ、ラギリは正妻の子である自分がこの国の継承者に相応しいと考えていた。
「これまでは子供のやる事だからと大目に見てきたが、今年でお前も十六才だ。いつまでも子供気分で自由に遊び回れると思うなよ」
「ラギリ王子!!リオン様は決して遊んでいたわけでは……うぐっ!?」
「家臣の分際で口を挟むな!!」
ラギリの言葉に流石に黙っていられなかったジイが口を挟もうとするが、そんな彼にラギリは平手打ちを行う。その彼の行為に兵士達は驚き、一方でリオンは彼を止めた。
「兄上、ジイは長年この国に仕える騎士です。どうかご容赦を……」
「ふんっ!!まあ、いいだろう……弟の顔に免じて許してやる」
「はっ……申し訳ございませんでした」
リオンに止められた事でラギリは仕方ない風にジイを許したが、ジイは謝罪を行いながらも内心では腸が煮えくりかえる思いをしていた。
(何が正妻の子だ……貴様の母親があくどい手を使って正妻になっただけではないか!!)
現在の国王の正妻であるラギリの母親は前の正妻が死亡した後、あらゆる手を使って彼女は正妻となった。本来であればリオンの母親が正妻に選ばれてもおかしくはなかったが、ラギリはリオンの母親を脅して正妻の地位を辞退させた。
アルトが生きている間はラギリは大人しかったが、彼が病死した途端に自分こそが王位に就く人間に相応しいと思い込み、尊大な態度を取るようになった。また、あくまでも噂だがアルトが急に病に侵された原因はラギリの母親が関係しているのではないかと囁かれている。
実際にアルトの死には色々と謎が多く、アルトの母親が亡くなった際にラギリは彼に親身に接していたが、その行動も実に怪しかった。もしかしたら母親を失って傷心中のアルトに近付き、彼に毒を盛ったのではないかと疑う人間も多い。しかし、ラギリの母親がアルトを殺した証拠は見つからなかった。
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