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王都での日常
第106話 この事は忘れない
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タンを殺したリクは彼の首から手を離すと、怒りを露わにして彼の死体を蹴り飛ばす。椅子に括り付けられていたタンは蹴りつけられた際に床に倒れ込み、椅子が壊れて死体が横たわる。
「ちっ……もう死んだのか。これだから非力な人間は……」
倒れ込んだタンの死体にリクは踏みつけると、頭部を容赦なく踏み潰す。リクは死体の血を浴びて血塗れになるが、それでもまだ怒りは抑えられない。
タンが情報を提供する条件として彼の願いを聞き入れる取引を行った。別にそんな取引を受ける必要もなかったのだが、餌をちらつかせておかないとタンは何を仕出かす分からず、もしも彼が学園長に盗賊ギルドと接触している事を明かせばリクとしても色々と不都合があった。
事前に調べたタンの性格ならば学園長に助けを求める事はないと思ったが、彼をあまりに追い込み過ぎるとどんな行動を仕出かすか分からず、そうならないようにリクはタンの願いを聞き遂げる事で彼に心の余裕を与えようとした。しかし、結果から言えば最悪な形で終わる。
(情報は偽物、シチは殺されてしかも魔杖まで奪われた……こんな事を奴等に報告すればどうなるか分からん)
盗賊ギルドの幹部はリクとシチを含めて「七人」しか存在せず、彼等は「七影」と呼ばれている。この七影が盗賊ギルドを管理しており、実を言えば盗賊ギルドは一番上に立つ人間は居ない。
七影はそれぞれの勢力を持ち、互いに協力する事で盗賊ギルドを維持している。七影の間には上下関係は存在しないが、リクはシチと供託していた。シチは七影の一角ではあるが勢力を持たず、彼女の場合は暗殺者としての腕前が高く買われていたので幹部に昇格した。
(他の七影は既にシチが死んだ事は把握済みだろう。恐らく、会議が行われる。その時に俺はつるし上げられるかもしれん)
同じ組織の幹部と言えど、七影の関係は決して良好的ではない。お互いに隙を見せないように常に他の幹部の行動は監視しており、シチが死んだ事も既に他の幹部は把握している。
リクがシチと協力関係を築いている事は他の幹部も把握しているため、彼女が死んだとなればリクの失態として捉えられる。下手をすれば幹部から引きずり降ろされる可能性もあるが、それだけは避けねばならずにリクは考え込む。
(どうにか会議が開かれる前にシチを殺した奴を見つけ出し、あの魔杖を取り返さねば……せめてあの杖だけでも取り返さないとまずい)
シチが所有していた杖は単なる杖ではなく、特別な製造法で造り出された代物である。あの杖を扱える魔術師は滅多におらず、人間よりも魔法の腕が優れるエルフにしか扱えないとさえ言われている。
(シチが殺される程の相手となると相当な腕前のはず……恐らくは学園長の関係者だろう。しかし、いったい誰がシチを……)
暗殺の腕前ならばシチは間違いなく盗賊ギルドの中でも一、二を誇る腕前であり、そんな彼女を殺せる人間がそうそういるとは思えない。リクは彼女を殺した人物を捜索するために行動を移す――
――それから数時間後、リクによって殺された死体が発見された。発見したのはマリアが派遣した彼女が信頼する魔術師であり、その人物はコオリ達と同じく魔法学園に通う生徒だった。
「これは酷いでござるな。原型すら残っていないでござる」
「ですが、格好から考えてもタン先生で間違いありませんね……」
死体の前には全身を黒装束で身を包んだ少女と、その隣にはリンダが立っていた。死体を発見したのは黒装束の少女であり、リンダは連絡を受けて調査に訪れた。彼女が赴いた理由は三年生で担当教師がタンだった事から死体を判別できると考えられたからである。
自分の学年の担当教師を勤めていたタンの無惨な死体を前にしてリンダは合掌し、彼の冥福を祈る。一方で黒装束の少女の方は部屋の様子を伺い、拷問された痕跡が残っている事に気付く。
「どうやらここは盗賊ギルドの根城だったようでござるな」
「そうですね……すぐに学園長に報告しましょう」
「警備兵に知らせるのが先では?」
「いいえ、警備兵にも盗賊ギルドと繋がっている輩がいるはずです。まずは我々で現場を調べた後、警備兵に報告しましょう」
「左様でござるか」
リンダは王都を守る警備兵を完全には信用しておらず、彼女が一番に信じるのは学園長だけだった。彼女は黒装束の少女に連絡役を任せると、自分は残ってタンの死体を見下ろす。
「……先生、バルトが正式に月の徽章を与えられる事が決定しました。これも先生の教えのお陰です」
先日にバルトは月の徽章を授与される事が決まり、その事を知る前にタンは誘拐されていた。リンダは一応は教師として恩義を感じ、彼に報告した。勿論だが死体から返事が戻る事はなく、もしも生きている間にタンがバルトが月の徽章を得た事を知ったらどのように反応するのかは気になった。
タンを慕う生徒は決して多くはなかったが、彼の教育指導のお陰でバルトやリンダは成長できた。バルトもタンの事を表面上は嫌ってはいたが、それでも教師としては一目はおいていた。リンダもタンの事は嫌いではなく、彼の仇を取る事を誓う――
――目を覚ましたバルルは警備兵から事情聴取を受けなければならず、コオリ達は早々に病室を後にした。その後、学園長も用事があるという事で二人を魔法学園まで送ると彼女は学園長室に戻り、コオリとミイナは戻った時には昼休みを迎えていた。
「よう、お前等も戻ってきたのか」
「あ、先輩!!お久しぶりです!!」
「おう、元気そうで何よりだ」
「……あの時は助けてくれてありがとう」
二人は屋上に向かうとそこには来月に「月の徽章」を授与される予定のバルトが待っていた。彼はこれまでの努力が評価され、本来であれば今月に月の徽章が与えられるはずだったが、三週間前に生徒会と揉め事を起こしたせいで謹慎処分を受けていた。
本来であれば問題を起こした生徒に月の徽章を渡す事はできないが、バルトが引き起こした騒ぎは彼が偶然にも発見した不審者《コオリとミイナ》を自分で捕まえようとしたに過ぎない。生徒会からすれば彼の魔法で邪魔をされて不審者を取り逃がした形になるが、本人はあくまでも自分の魔法で捕まえようとしたと言い張り、決して悪意で邪魔をしたわけではないと証言した。
学園長の判断でバルトは三週間の謹慎を言い渡されたが、彼が不審者を捕まえようとした事に免じて月の徽章の授与は来月に繰り越しとなった。尤も彼女の場合は不審者の正体を見破っている可能性もあり、謹慎を言い渡した時にバルトに一言告げる。
『後輩思いなのは悪い事ではないけれど、今度からはもっと上手くやり過ごしなさい』
『……うっす』
謹慎を言い渡された時にバルトは学園長に注意され、この三週間の間は大人しくしていた。ちなみに謹慎処分といっても授業を受ける事や学校外に出る事だけが禁じられており、それほど重い罰ではなかった。
「先輩、本当にすいませんでした。僕達のせいで……」
「気にすんなよ。これからは一緒に授業を受ける仲だからな」
「一緒に?」
「ああ、俺もお前等と同じ先生の元で授業を受ける事が決まったんだよ」
三年生の担当教師であるタンが亡くなった事により、現在の三年生は他の教師が交代制で授業の指導を行っている。いずれは新しい担当教師が決まるだろうが、バルトの場合は彼の希望でこれからはコオリ達と同じ教室で授業を受ける事が正式に決定したという。
「じゃあ、先輩も一緒に授業を受けるんですか?」
「ああ、といっても俺の場合は他の教師の授業も受ける事も多いだろうけどな」
「それなら私達の方がバルルの元で授業を受けていたから先輩になる。ちょっと購買でホットドッグ買って来て」
「なんでそうなるんだよ!!しかもそこは普通は焼きそばパンだろうが!?」
「突っ込むところそこですか!?」
これからはバルトも同じ教室で授業を受ける事が決まり、来月には彼も正式に月の徽章を授与されて晴れてコオリと同じ立場になる。コオリとしては頼りがいのある先輩が一緒の教室に入る事を嬉しく思うが、一つだけ気になっている事があった。
「あの、先輩……実は見せたい物があるんですけど」
「あん?急に改まってどうした?」
「実はこれなんですけど……」
バルトにコオリは一本の杖を差し出し、彼は不思議そうに受け取ると杖の形状を確認して目を丸くした。コオリが取り出したのは三週間前に冒険者狩りから回収した先端が十字架のような形をした杖だった。
冒険者狩りが自害した際にコオリとミイナはあらぬ疑いをかけられないように逃げ出した。この時にコオリは動揺していたせいで冒険者狩りから奪った杖を持ち返ってしまい、結局は今日まで誰にも見せる事ができずに保管していた。しかし、事情を知っているバルトならば見せても問題ないと思って相談する。
「なるほどな、つまりはこの杖がその冒険者狩りが持っていた杖か……お前等、とんでもないもんを持ち返って来たな」
「す、すいません……でも捨てるわけにもいかなかったんで」
「本当はバルルに相談するつもりだった。けど、学園長も来てたし、話す暇もなかった。それに話したら話したらできっと死ぬほど怒られると思って話せなかった」
「まあ、気持ちは分かるけどよ……」
二人の言葉にバルトは苦笑いを浮かべながら杖を確認し、彼も冒険者狩りと同じく風属性の魔法の使い手であるため、試しに魔法を使用する事にした。
「お前等の話によると冒険者狩りの女はこの杖で二回分の魔法を使っていたのか?」
「はい、先輩も扱っていたスラッシュという魔法なんですけど、まるで二つのスラッシュを組み合わせたかのように十字のような形をした衝撃波が放たれていました」
「十字ね……試しに使ってみるか」
話を聞いたバルトは興味を抱いて杖を構え、訓練場に放置されていた木造人形に狙いを定めた。彼の魔法の実力を知っているだけにコオリとミイナは少し離れた場所に立つと、バルトは狙いを定めて魔法を放とうとした時に目を見開く。
「ちっ……もう死んだのか。これだから非力な人間は……」
倒れ込んだタンの死体にリクは踏みつけると、頭部を容赦なく踏み潰す。リクは死体の血を浴びて血塗れになるが、それでもまだ怒りは抑えられない。
タンが情報を提供する条件として彼の願いを聞き入れる取引を行った。別にそんな取引を受ける必要もなかったのだが、餌をちらつかせておかないとタンは何を仕出かす分からず、もしも彼が学園長に盗賊ギルドと接触している事を明かせばリクとしても色々と不都合があった。
事前に調べたタンの性格ならば学園長に助けを求める事はないと思ったが、彼をあまりに追い込み過ぎるとどんな行動を仕出かすか分からず、そうならないようにリクはタンの願いを聞き遂げる事で彼に心の余裕を与えようとした。しかし、結果から言えば最悪な形で終わる。
(情報は偽物、シチは殺されてしかも魔杖まで奪われた……こんな事を奴等に報告すればどうなるか分からん)
盗賊ギルドの幹部はリクとシチを含めて「七人」しか存在せず、彼等は「七影」と呼ばれている。この七影が盗賊ギルドを管理しており、実を言えば盗賊ギルドは一番上に立つ人間は居ない。
七影はそれぞれの勢力を持ち、互いに協力する事で盗賊ギルドを維持している。七影の間には上下関係は存在しないが、リクはシチと供託していた。シチは七影の一角ではあるが勢力を持たず、彼女の場合は暗殺者としての腕前が高く買われていたので幹部に昇格した。
(他の七影は既にシチが死んだ事は把握済みだろう。恐らく、会議が行われる。その時に俺はつるし上げられるかもしれん)
同じ組織の幹部と言えど、七影の関係は決して良好的ではない。お互いに隙を見せないように常に他の幹部の行動は監視しており、シチが死んだ事も既に他の幹部は把握している。
リクがシチと協力関係を築いている事は他の幹部も把握しているため、彼女が死んだとなればリクの失態として捉えられる。下手をすれば幹部から引きずり降ろされる可能性もあるが、それだけは避けねばならずにリクは考え込む。
(どうにか会議が開かれる前にシチを殺した奴を見つけ出し、あの魔杖を取り返さねば……せめてあの杖だけでも取り返さないとまずい)
シチが所有していた杖は単なる杖ではなく、特別な製造法で造り出された代物である。あの杖を扱える魔術師は滅多におらず、人間よりも魔法の腕が優れるエルフにしか扱えないとさえ言われている。
(シチが殺される程の相手となると相当な腕前のはず……恐らくは学園長の関係者だろう。しかし、いったい誰がシチを……)
暗殺の腕前ならばシチは間違いなく盗賊ギルドの中でも一、二を誇る腕前であり、そんな彼女を殺せる人間がそうそういるとは思えない。リクは彼女を殺した人物を捜索するために行動を移す――
――それから数時間後、リクによって殺された死体が発見された。発見したのはマリアが派遣した彼女が信頼する魔術師であり、その人物はコオリ達と同じく魔法学園に通う生徒だった。
「これは酷いでござるな。原型すら残っていないでござる」
「ですが、格好から考えてもタン先生で間違いありませんね……」
死体の前には全身を黒装束で身を包んだ少女と、その隣にはリンダが立っていた。死体を発見したのは黒装束の少女であり、リンダは連絡を受けて調査に訪れた。彼女が赴いた理由は三年生で担当教師がタンだった事から死体を判別できると考えられたからである。
自分の学年の担当教師を勤めていたタンの無惨な死体を前にしてリンダは合掌し、彼の冥福を祈る。一方で黒装束の少女の方は部屋の様子を伺い、拷問された痕跡が残っている事に気付く。
「どうやらここは盗賊ギルドの根城だったようでござるな」
「そうですね……すぐに学園長に報告しましょう」
「警備兵に知らせるのが先では?」
「いいえ、警備兵にも盗賊ギルドと繋がっている輩がいるはずです。まずは我々で現場を調べた後、警備兵に報告しましょう」
「左様でござるか」
リンダは王都を守る警備兵を完全には信用しておらず、彼女が一番に信じるのは学園長だけだった。彼女は黒装束の少女に連絡役を任せると、自分は残ってタンの死体を見下ろす。
「……先生、バルトが正式に月の徽章を与えられる事が決定しました。これも先生の教えのお陰です」
先日にバルトは月の徽章を授与される事が決まり、その事を知る前にタンは誘拐されていた。リンダは一応は教師として恩義を感じ、彼に報告した。勿論だが死体から返事が戻る事はなく、もしも生きている間にタンがバルトが月の徽章を得た事を知ったらどのように反応するのかは気になった。
タンを慕う生徒は決して多くはなかったが、彼の教育指導のお陰でバルトやリンダは成長できた。バルトもタンの事を表面上は嫌ってはいたが、それでも教師としては一目はおいていた。リンダもタンの事は嫌いではなく、彼の仇を取る事を誓う――
――目を覚ましたバルルは警備兵から事情聴取を受けなければならず、コオリ達は早々に病室を後にした。その後、学園長も用事があるという事で二人を魔法学園まで送ると彼女は学園長室に戻り、コオリとミイナは戻った時には昼休みを迎えていた。
「よう、お前等も戻ってきたのか」
「あ、先輩!!お久しぶりです!!」
「おう、元気そうで何よりだ」
「……あの時は助けてくれてありがとう」
二人は屋上に向かうとそこには来月に「月の徽章」を授与される予定のバルトが待っていた。彼はこれまでの努力が評価され、本来であれば今月に月の徽章が与えられるはずだったが、三週間前に生徒会と揉め事を起こしたせいで謹慎処分を受けていた。
本来であれば問題を起こした生徒に月の徽章を渡す事はできないが、バルトが引き起こした騒ぎは彼が偶然にも発見した不審者《コオリとミイナ》を自分で捕まえようとしたに過ぎない。生徒会からすれば彼の魔法で邪魔をされて不審者を取り逃がした形になるが、本人はあくまでも自分の魔法で捕まえようとしたと言い張り、決して悪意で邪魔をしたわけではないと証言した。
学園長の判断でバルトは三週間の謹慎を言い渡されたが、彼が不審者を捕まえようとした事に免じて月の徽章の授与は来月に繰り越しとなった。尤も彼女の場合は不審者の正体を見破っている可能性もあり、謹慎を言い渡した時にバルトに一言告げる。
『後輩思いなのは悪い事ではないけれど、今度からはもっと上手くやり過ごしなさい』
『……うっす』
謹慎を言い渡された時にバルトは学園長に注意され、この三週間の間は大人しくしていた。ちなみに謹慎処分といっても授業を受ける事や学校外に出る事だけが禁じられており、それほど重い罰ではなかった。
「先輩、本当にすいませんでした。僕達のせいで……」
「気にすんなよ。これからは一緒に授業を受ける仲だからな」
「一緒に?」
「ああ、俺もお前等と同じ先生の元で授業を受ける事が決まったんだよ」
三年生の担当教師であるタンが亡くなった事により、現在の三年生は他の教師が交代制で授業の指導を行っている。いずれは新しい担当教師が決まるだろうが、バルトの場合は彼の希望でこれからはコオリ達と同じ教室で授業を受ける事が正式に決定したという。
「じゃあ、先輩も一緒に授業を受けるんですか?」
「ああ、といっても俺の場合は他の教師の授業も受ける事も多いだろうけどな」
「それなら私達の方がバルルの元で授業を受けていたから先輩になる。ちょっと購買でホットドッグ買って来て」
「なんでそうなるんだよ!!しかもそこは普通は焼きそばパンだろうが!?」
「突っ込むところそこですか!?」
これからはバルトも同じ教室で授業を受ける事が決まり、来月には彼も正式に月の徽章を授与されて晴れてコオリと同じ立場になる。コオリとしては頼りがいのある先輩が一緒の教室に入る事を嬉しく思うが、一つだけ気になっている事があった。
「あの、先輩……実は見せたい物があるんですけど」
「あん?急に改まってどうした?」
「実はこれなんですけど……」
バルトにコオリは一本の杖を差し出し、彼は不思議そうに受け取ると杖の形状を確認して目を丸くした。コオリが取り出したのは三週間前に冒険者狩りから回収した先端が十字架のような形をした杖だった。
冒険者狩りが自害した際にコオリとミイナはあらぬ疑いをかけられないように逃げ出した。この時にコオリは動揺していたせいで冒険者狩りから奪った杖を持ち返ってしまい、結局は今日まで誰にも見せる事ができずに保管していた。しかし、事情を知っているバルトならば見せても問題ないと思って相談する。
「なるほどな、つまりはこの杖がその冒険者狩りが持っていた杖か……お前等、とんでもないもんを持ち返って来たな」
「す、すいません……でも捨てるわけにもいかなかったんで」
「本当はバルルに相談するつもりだった。けど、学園長も来てたし、話す暇もなかった。それに話したら話したらできっと死ぬほど怒られると思って話せなかった」
「まあ、気持ちは分かるけどよ……」
二人の言葉にバルトは苦笑いを浮かべながら杖を確認し、彼も冒険者狩りと同じく風属性の魔法の使い手であるため、試しに魔法を使用する事にした。
「お前等の話によると冒険者狩りの女はこの杖で二回分の魔法を使っていたのか?」
「はい、先輩も扱っていたスラッシュという魔法なんですけど、まるで二つのスラッシュを組み合わせたかのように十字のような形をした衝撃波が放たれていました」
「十字ね……試しに使ってみるか」
話を聞いたバルトは興味を抱いて杖を構え、訓練場に放置されていた木造人形に狙いを定めた。彼の魔法の実力を知っているだけにコオリとミイナは少し離れた場所に立つと、バルトは狙いを定めて魔法を放とうとした時に目を見開く。
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