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王都での日常
第63話 氷属性の性質
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「そ、そんなに高いなんて……」
「一応、学園側に申請すれば魔石も支給してくれるよ。但し、その場合は低品質の魔石を渡されるね。流石に国に援助されているとはいえ、学園に通う魔術師全員分の魔石を用意するとなると国家予算並みの費用が掛かるからね……」
「魔石は宝石と同じぐらいの価値がある」
「そ、そうだったんだ……」
魔石がどれほど価値のある代物なのかコオリは思い知り、緊張した様子で受け取った魔石に視線を向ける。もしも壊してしまえばどうなるのか考えるだけでも恐ろしく、しかもコオリの場合は属性の問題でどうしても二つの魔石を用意しなければならなかった。
「ここ最近、あたしがあんた達を連れ出して魔物を狩っているのは魔石を購入するための費用を少しでも稼ぐためだったのさ」
「そ、そうだったんですか!?」
「……てっきり、小遣い稼ぎのために戦わされていたと思ってた」
「失礼な奴だね!!あたしは金の亡者かい!?」
魔物を倒す際にバルルは二人から指導料という名目で素材の売却金の一部を受け取っていたが、それはあくまでも二人が今後必要となる魔石の代金の足しにするためだと判明し、その事実を知ったコオリはバルルに感謝の気持ちを抱く。
「師匠、ありがとうございます!!僕達のためにこんな物を用意してくれるなんて……」
「か、勘違いするんじゃないよ!!あたしは魔石を買ったのはあんた達の指導のためさ!!」
「……ツンデレ?」
「うるさいね、それよりもさっさと魔石を使ってみな!!」
「は、はい!!」
バルルに言われるがままにコオリは受け取った魔石を杖に装着しようとしたが、この時に何処に取り付けるべきか悩む。コオリは以前にリオンが所持していた杖を思い出し、彼の場合は杖の先端部に魔石を装着していた。
リオンに習ってコオリは杖の先端に魔石を取りつけようとしたが、生憎とドルトンに作って貰った二又の杖は先端部には付けられない事が判明した。その代わりに柄の部分に窪みが存在し、そこに魔石を嵌め込む事ができた。
「ここに嵌めればいいんですね?」
「その通りだよ。だけど、一応は言っておくけど魔石を嵌め込んだ杖の場合は魔法を使う感覚が異なるからね。まずはその感覚に慣れておく必要がある」
「感覚……」
杖に二つの魔石を嵌め込むと、コオリは緊張した様子で杖を前方に構える。今回は慎重に徹して無詠唱ではなく、詠唱を行って魔法を発動させる。
「アイス……わっ!?」
「馬鹿、気をつけろと言っただろ!?」
「わおっ……大きい」
コオリが魔法を使用した途端、魔石が光り輝いて杖の先端に氷塊が誕生した。しかも今回の氷塊はコオリがいつも作り出す氷塊よりも二回り程大きく、しかもコオリ自身は殆ど魔力を使用せずに発現した。
(何だこの大きさ!?今までこんな大きな氷を作れなかったのに……これが魔石の力なのか!?)
まるで初めて魔法を使った時のように大きな氷塊を作り出せた事にコオリは戸惑い、。杖に装着した二つの魔石から魔力が流れ込む感覚を感じ取る。自分の生み出した魔力と魔石から溢れ出る魔力が一つに溶け込み、通常を越える大きさの氷塊の生成に成功したのだ。
(す、凄い!!この魔石があればもっと凄い魔法を撃てるようになるかも……)
魔力量の問題でコオリは魔力消費が激しい中級以上の魔法を扱う事は絶望的だと言われたが、魔石を使用すれば自分が足りない分の魔力を魔石の力で補う事ができる。つまりは彼も魔石を使用すれば下級魔法よりも上の魔法を扱える可能性は十分にあった。
「師匠!!これなら僕でも他の魔法が使えるんじゃないですか!?」
「……確かに魔石を利用すれば足りない分の魔力を補う事はできるだろうね」
「それなら……」
「だけどね、魔石の魔力は無限じゃないんだよ。よく見てみな、あんたの魔石を……」
「え?」
バルルに言われてコオリは魔石に視線を向けると、いつの間にかどちらの魔石も色合い薄くなっていた。
「あれ?魔石の色が急に薄くなった?」
「魔石に蓄積されている魔力が減少したのが原因だね。魔石は魔力を失うごとに色合いが薄まるんだよ。完全に色が消えてなくなると効果が切れてただの水晶と化すんだ」
「そ、そんな……」
たった一度の魔法の使用でコオリが受け取った魔石は魔力を失い、あと一度でも使用すれば使い物にならなくなると考えられた。バルルが魔石を利用した訓練を避けていた理由、それは普通の魔術師と違ってコオリの場合は魔石を利用する度に毎回二つの魔石の魔力を消費する。つまりは普通の魔術師の倍の魔石を消費する事になる。
「あたしがあんたに今まで魔石を渡さなかった理由が分かるかい?普通の魔術師なら必要な魔石は一つで十分だけど、あんたの場合は二つ必要になる。単純に考えて倍の出費が掛かるわけさ」
「そ、そんな……」
「魔石はさっきも言ったけど非常に高価な代物なんだよ。だからいくら魔法学園の生徒と言っても魔石を支給してもらうのは限度がある。だからあたしはまずはあんたに魔力操作の技術を身に付けさせて魔法の精度を上げたんだ。魔法の精度を上げればそこそこの魔力量しかない人間でも魔物と対抗できる力は手に入れられるからね」
本来であれば魔石を取り扱う授業は一年生から行われるが、バルルはコオリが普通の魔術師よりも倍の魔石の出費が掛かると判断し、先に魔力操作の技術を覚えさせたという。
魔石の力を頼らずに自分の魔力だけで魔物を倒せる段階に至るまではコオリに魔石を渡すつもりはなかったが、彼は既に魔物を倒せる程の実力は手に入れていた。それでも魔石をこれまで渡さなかったのはバルルなりに準備を整えていたと語る。
「さっき渡したのは学園で支給されている使い捨て用の魔石さ。授業の時に使用される物で魔石の中では一番品質も低い」
「え、そうなんですか?」
「本物の魔石だったら数十回は使用しても魔力が切れる事はないさ。だけど、それは普通の魔術師の話だよ。あんたのように魔力量が少ない魔術師の場合、魔法の強化をするために必要な魔力は普通の魔術師よりも多めに出さないといけない。分かりやすく言えば普通の魔術師なら20回は魔法が使える魔石でも、あんたの場合は半分の10回も使えるかどうかも怪しい。しかもあんたの場合は風と水の魔石を用意しないといけないからね。当然だけど馬鹿にならない程の金が掛かる」
「ええええっ!?」
「……どんまい」
改めて自分が並の魔術師の半分程度(もしくは半分以下)の魔力量しか持ち合わせていないという事実にコオリは衝撃を受け、そんな彼の肩にミイナは手を置く。その間にバルルはコオリの使用した魔石を確認し、水属性の魔石の方が魔力の減りが少ない事に気が付く。
「あんたの扱う氷属性は水属性と風属性の中間に位置する。だけど、多分だけどあんたの場合は風属性よりも水属性の方に偏っているんだね」
「偏る?」
「場所を変えるよ、口で説明するのは難しいからね……」
バルルはコオリ達を連れて屋上から教室に移動を行うと、彼女は黒板に五芒星の魔法陣を描き、それぞれの角に「風」「火」「水」「雷」「地」という文字を書き込む。この時に風の文字が一番上の角に書き込まれ、風の左側の角に水の文字を記す。
「この黒板に描いた魔法陣が各属性の関係性を現わしてると考えな」
「あ、はい」
「それでもってあたしとミイナは……この魔法陣だとここに位置する」
水の反対側の角に記された火の文字の隣にバルルは自分の名前とミイナを書き込み、二人が火属性の魔法の使い手である事を示す。
「あたし達は生粋に火属性の適性持ちだからね。だからあたし達はここに位置する」
「なるほど」
「ふむふむ」
「それでもってあんたの場合は……ここだね」
バルルは風と水と記された角の間にある隙間に「氷」という文字を書き込み、更にコオリは水の文字の近くのほうに名前を書き込まれる。こうして魔法陣を見るとコオリは五芒星の隙間に位置しており、しかも風よりも水の属性の方が近い位置に記されていた。
「おそらくだがあんたの氷属性は風よりも水の方が性質が高いんだよ。だから魔石を使用する時は風属性の方が減りが早いと覚えて起きな」
「な、なるほど……」
「まあ、それはともかく……これからは自分の魔力だけじゃなくて魔石の魔力を完璧にを使いこなせるようにならないとね。魔石を完全に操れるようになれば今まで以上の魔法を繰り出せるようになるよ」
「え?でも僕が魔石を使うと出費が大変な事になるんじゃ……」
「安心しな、あたしが学園長に頼んで今年分のボーナスを前借りさせて貰った。これを使ってあんたの魔石を買うよ」
「ええっ!?それ、いいんですか!?」
「そこまでするの?」
「いいんだよ!!あたしが一番気に喰わないのはあの爺の生徒にあたしの弟子が負ける事なんだからね!!でも、あたしがこれだけするんだから絶対に負けるんじゃないよ!!もしも負けたらあんたは退学しな!!」
「えええええっ!?」
自分のボーナスを犠牲にしてまでバルルはコオリのために必要な魔石を購入し、もしも彼がタンに負けようものならばバルルは学園から去るように告げた。
ここまでバルルが力を貸すのは自分を退学に追いやった教師の一人であるタンを敵視し、彼が指導する生徒に自分の生徒(弟子)が勝利すれば間接的にバルルはタンに復讐を果たせる。彼の鼻っ柱を折るためならばバルルは手段を択ばず、何が何でもコオリにバルトを倒すように言い放つ。
「期限は三日、それまでにあんたは魔石の扱い方を覚えて今以上の魔法を磨きな!!」
「そ、そんな事を言われても……」
「退学はいくらなんでも横暴過ぎる……大丈夫、負けても私が学園長を説得してあげる。よしよし……」
「こら、甘やかすんじゃないよ!!」
不安がるコオリをミイナが頭を撫でるとバルルが注意を行い、この日からコオリは魔石を利用した訓練を行う事になった――
「一応、学園側に申請すれば魔石も支給してくれるよ。但し、その場合は低品質の魔石を渡されるね。流石に国に援助されているとはいえ、学園に通う魔術師全員分の魔石を用意するとなると国家予算並みの費用が掛かるからね……」
「魔石は宝石と同じぐらいの価値がある」
「そ、そうだったんだ……」
魔石がどれほど価値のある代物なのかコオリは思い知り、緊張した様子で受け取った魔石に視線を向ける。もしも壊してしまえばどうなるのか考えるだけでも恐ろしく、しかもコオリの場合は属性の問題でどうしても二つの魔石を用意しなければならなかった。
「ここ最近、あたしがあんた達を連れ出して魔物を狩っているのは魔石を購入するための費用を少しでも稼ぐためだったのさ」
「そ、そうだったんですか!?」
「……てっきり、小遣い稼ぎのために戦わされていたと思ってた」
「失礼な奴だね!!あたしは金の亡者かい!?」
魔物を倒す際にバルルは二人から指導料という名目で素材の売却金の一部を受け取っていたが、それはあくまでも二人が今後必要となる魔石の代金の足しにするためだと判明し、その事実を知ったコオリはバルルに感謝の気持ちを抱く。
「師匠、ありがとうございます!!僕達のためにこんな物を用意してくれるなんて……」
「か、勘違いするんじゃないよ!!あたしは魔石を買ったのはあんた達の指導のためさ!!」
「……ツンデレ?」
「うるさいね、それよりもさっさと魔石を使ってみな!!」
「は、はい!!」
バルルに言われるがままにコオリは受け取った魔石を杖に装着しようとしたが、この時に何処に取り付けるべきか悩む。コオリは以前にリオンが所持していた杖を思い出し、彼の場合は杖の先端部に魔石を装着していた。
リオンに習ってコオリは杖の先端に魔石を取りつけようとしたが、生憎とドルトンに作って貰った二又の杖は先端部には付けられない事が判明した。その代わりに柄の部分に窪みが存在し、そこに魔石を嵌め込む事ができた。
「ここに嵌めればいいんですね?」
「その通りだよ。だけど、一応は言っておくけど魔石を嵌め込んだ杖の場合は魔法を使う感覚が異なるからね。まずはその感覚に慣れておく必要がある」
「感覚……」
杖に二つの魔石を嵌め込むと、コオリは緊張した様子で杖を前方に構える。今回は慎重に徹して無詠唱ではなく、詠唱を行って魔法を発動させる。
「アイス……わっ!?」
「馬鹿、気をつけろと言っただろ!?」
「わおっ……大きい」
コオリが魔法を使用した途端、魔石が光り輝いて杖の先端に氷塊が誕生した。しかも今回の氷塊はコオリがいつも作り出す氷塊よりも二回り程大きく、しかもコオリ自身は殆ど魔力を使用せずに発現した。
(何だこの大きさ!?今までこんな大きな氷を作れなかったのに……これが魔石の力なのか!?)
まるで初めて魔法を使った時のように大きな氷塊を作り出せた事にコオリは戸惑い、。杖に装着した二つの魔石から魔力が流れ込む感覚を感じ取る。自分の生み出した魔力と魔石から溢れ出る魔力が一つに溶け込み、通常を越える大きさの氷塊の生成に成功したのだ。
(す、凄い!!この魔石があればもっと凄い魔法を撃てるようになるかも……)
魔力量の問題でコオリは魔力消費が激しい中級以上の魔法を扱う事は絶望的だと言われたが、魔石を使用すれば自分が足りない分の魔力を魔石の力で補う事ができる。つまりは彼も魔石を使用すれば下級魔法よりも上の魔法を扱える可能性は十分にあった。
「師匠!!これなら僕でも他の魔法が使えるんじゃないですか!?」
「……確かに魔石を利用すれば足りない分の魔力を補う事はできるだろうね」
「それなら……」
「だけどね、魔石の魔力は無限じゃないんだよ。よく見てみな、あんたの魔石を……」
「え?」
バルルに言われてコオリは魔石に視線を向けると、いつの間にかどちらの魔石も色合い薄くなっていた。
「あれ?魔石の色が急に薄くなった?」
「魔石に蓄積されている魔力が減少したのが原因だね。魔石は魔力を失うごとに色合いが薄まるんだよ。完全に色が消えてなくなると効果が切れてただの水晶と化すんだ」
「そ、そんな……」
たった一度の魔法の使用でコオリが受け取った魔石は魔力を失い、あと一度でも使用すれば使い物にならなくなると考えられた。バルルが魔石を利用した訓練を避けていた理由、それは普通の魔術師と違ってコオリの場合は魔石を利用する度に毎回二つの魔石の魔力を消費する。つまりは普通の魔術師の倍の魔石を消費する事になる。
「あたしがあんたに今まで魔石を渡さなかった理由が分かるかい?普通の魔術師なら必要な魔石は一つで十分だけど、あんたの場合は二つ必要になる。単純に考えて倍の出費が掛かるわけさ」
「そ、そんな……」
「魔石はさっきも言ったけど非常に高価な代物なんだよ。だからいくら魔法学園の生徒と言っても魔石を支給してもらうのは限度がある。だからあたしはまずはあんたに魔力操作の技術を身に付けさせて魔法の精度を上げたんだ。魔法の精度を上げればそこそこの魔力量しかない人間でも魔物と対抗できる力は手に入れられるからね」
本来であれば魔石を取り扱う授業は一年生から行われるが、バルルはコオリが普通の魔術師よりも倍の魔石の出費が掛かると判断し、先に魔力操作の技術を覚えさせたという。
魔石の力を頼らずに自分の魔力だけで魔物を倒せる段階に至るまではコオリに魔石を渡すつもりはなかったが、彼は既に魔物を倒せる程の実力は手に入れていた。それでも魔石をこれまで渡さなかったのはバルルなりに準備を整えていたと語る。
「さっき渡したのは学園で支給されている使い捨て用の魔石さ。授業の時に使用される物で魔石の中では一番品質も低い」
「え、そうなんですか?」
「本物の魔石だったら数十回は使用しても魔力が切れる事はないさ。だけど、それは普通の魔術師の話だよ。あんたのように魔力量が少ない魔術師の場合、魔法の強化をするために必要な魔力は普通の魔術師よりも多めに出さないといけない。分かりやすく言えば普通の魔術師なら20回は魔法が使える魔石でも、あんたの場合は半分の10回も使えるかどうかも怪しい。しかもあんたの場合は風と水の魔石を用意しないといけないからね。当然だけど馬鹿にならない程の金が掛かる」
「ええええっ!?」
「……どんまい」
改めて自分が並の魔術師の半分程度(もしくは半分以下)の魔力量しか持ち合わせていないという事実にコオリは衝撃を受け、そんな彼の肩にミイナは手を置く。その間にバルルはコオリの使用した魔石を確認し、水属性の魔石の方が魔力の減りが少ない事に気が付く。
「あんたの扱う氷属性は水属性と風属性の中間に位置する。だけど、多分だけどあんたの場合は風属性よりも水属性の方に偏っているんだね」
「偏る?」
「場所を変えるよ、口で説明するのは難しいからね……」
バルルはコオリ達を連れて屋上から教室に移動を行うと、彼女は黒板に五芒星の魔法陣を描き、それぞれの角に「風」「火」「水」「雷」「地」という文字を書き込む。この時に風の文字が一番上の角に書き込まれ、風の左側の角に水の文字を記す。
「この黒板に描いた魔法陣が各属性の関係性を現わしてると考えな」
「あ、はい」
「それでもってあたしとミイナは……この魔法陣だとここに位置する」
水の反対側の角に記された火の文字の隣にバルルは自分の名前とミイナを書き込み、二人が火属性の魔法の使い手である事を示す。
「あたし達は生粋に火属性の適性持ちだからね。だからあたし達はここに位置する」
「なるほど」
「ふむふむ」
「それでもってあんたの場合は……ここだね」
バルルは風と水と記された角の間にある隙間に「氷」という文字を書き込み、更にコオリは水の文字の近くのほうに名前を書き込まれる。こうして魔法陣を見るとコオリは五芒星の隙間に位置しており、しかも風よりも水の属性の方が近い位置に記されていた。
「おそらくだがあんたの氷属性は風よりも水の方が性質が高いんだよ。だから魔石を使用する時は風属性の方が減りが早いと覚えて起きな」
「な、なるほど……」
「まあ、それはともかく……これからは自分の魔力だけじゃなくて魔石の魔力を完璧にを使いこなせるようにならないとね。魔石を完全に操れるようになれば今まで以上の魔法を繰り出せるようになるよ」
「え?でも僕が魔石を使うと出費が大変な事になるんじゃ……」
「安心しな、あたしが学園長に頼んで今年分のボーナスを前借りさせて貰った。これを使ってあんたの魔石を買うよ」
「ええっ!?それ、いいんですか!?」
「そこまでするの?」
「いいんだよ!!あたしが一番気に喰わないのはあの爺の生徒にあたしの弟子が負ける事なんだからね!!でも、あたしがこれだけするんだから絶対に負けるんじゃないよ!!もしも負けたらあんたは退学しな!!」
「えええええっ!?」
自分のボーナスを犠牲にしてまでバルルはコオリのために必要な魔石を購入し、もしも彼がタンに負けようものならばバルルは学園から去るように告げた。
ここまでバルルが力を貸すのは自分を退学に追いやった教師の一人であるタンを敵視し、彼が指導する生徒に自分の生徒(弟子)が勝利すれば間接的にバルルはタンに復讐を果たせる。彼の鼻っ柱を折るためならばバルルは手段を択ばず、何が何でもコオリにバルトを倒すように言い放つ。
「期限は三日、それまでにあんたは魔石の扱い方を覚えて今以上の魔法を磨きな!!」
「そ、そんな事を言われても……」
「退学はいくらなんでも横暴過ぎる……大丈夫、負けても私が学園長を説得してあげる。よしよし……」
「こら、甘やかすんじゃないよ!!」
不安がるコオリをミイナが頭を撫でるとバルルが注意を行い、この日からコオリは魔石を利用した訓練を行う事になった――
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