60 / 129
王都での日常
第60話 上級生との対立
しおりを挟む
――バルルがタンと言い争っている間、コオリとミイナは屋上の訓練場にて待機していた。二人はバルルが戻るまで訓練場で自主訓練を行い、この時にコオリは二つの的を用意して氷弾の訓練を行っていた。
「最後のはここに置く?」
「うん、ありがとう。危ないからミイナは下がってて」
「分かった」
ミイナと共にコオリは的当て用の木造人形を配置すると、別々の位置に置いた二つの人形を確認する。人形の位置を全て把握するとコオリは二又の杖を取り出す。
(よし、この距離と数なら……大丈夫なはず)
二又の杖を取り出したコオリは無詠唱で瞬く間に二つの氷弾を作り上げ、狙いを定めた。複数の氷弾を同時に操作するのはかなりの集中力を必要とするが、連日の訓練でコオリの魔力操作の技術は磨き抜かれていた。
今回の訓練はいつもと違って複数の的を同時に攻撃し、的に当てる事ができればコオリは複数の敵を狙い撃つことができるはずだった。
(それぞれの人形の位置を捉えて……撃つ!!)
二つの人形の位置を把握した上でコオリは杖を突き出し、その動作に反応て氷弾が同時に発射された。それぞれの氷弾はコオリが狙いを定めた木造人形に目掛けて突っ込み、片方は頭部、もう片方は胸元に氷弾がめり込む。
「よし、成功!!」
「おおっ……流石はコオリ、略してさすコオリ」
「だからそれ何!?」
ミイナのよく分からないボケに戸惑いながらもコオリはそれぞれの人形に視線を向け、最初の一回で氷弾を当てる事に嬉しく思う。だが、ここでコオリはある事に気付いた。
(あれ?いつもよりも氷弾がめり込んでいない?もしかして当てる事に集中しすぎて肝心の威力が落ちてたのか……?
二つの的に氷弾を当てる事には成功したが、木製の人形程度を貫けないようでは威力に難がある。せめて全ての人形を貫通させるほどの威力でなければ魔物との戦闘では扱えず、もう少しだけ訓練を続ける事にした。
(今度は他の箇所を狙ってみようかな)
もう一度魔法を作り出そうとコオリは杖を構え、今度は頭よりも頑丈な胴体の部分を狙い撃とうとした時、不意に屋上の扉が開いた。
「……何だ、お前等?何をしている?」
「え?あの……」
「……そっちこそ誰?」
屋上に上がってきたのは上級生の男子生徒であり、彼は屋上に辿り着いて早々にコオリとミイナに気付くと驚いた表情を浮かべる。その一方でコオリは男子生徒の顔に見覚えがあり、学園に入ったばかり頃にコオリが上級生の授業を覗いた時に見かけた男子生徒だった。
男子生徒の名前はコオリの記憶が正しければ「バルト」という名前で、彼は同級生からも一目置かれている存在だった。彼は風属性の魔法の使い手で中級魔法を習得しており、三年生の中でも一、二を争う魔術師だと噂されている。
「お前等……一年と二年か?なんでここにいる。もうとっくに下校の時間だろうが」
「えっと、僕達は……」
「私達はここで待っているように言われた」
コオリが説明する前にミイナが理由を伝えると、バルトは二人の言葉に疑問を抱く。本来であれば下級生は学校の裏庭にある訓練場しか使用を許可されていないが、教師の許可があれば他の訓練場も使用する事が許されている。
教師であるバルルから許可を貰った上でコオリとミイナは屋上で訓練を行っていたが、今回の場合は急に現れたバルトの方がここにいる事がおかしかった。下校時間を迎えているのにバルトが屋上に訪れている事もおかしく、仮に自主訓練を行うとしても屋上の訓練場は許可がなければ立ち入りは許可されていない。
「……まあいい、お前等はとっとと帰れ。ここは俺が今から使う」
「え、でも……」
「私達はここに待っているように言われた。それにここを使う許可は……」
「うるせえ!!いいからさっさと出ていけ!!」
「そんな横暴な!?」
バルトはコオリとミイナの話を碌に聞かずに屋上から退去させようとするが、この時に彼はコオリに視線を向けてある事に気が付く。コオリの胸元に取り付けられた「月の徽章」を見た途端、バルトは信じられない表情を浮かべた。
「お前、その徽章は……!?」
「えっ……ど、どうかしました」
「……まさか、そういう事か。お前が一年の癖に学園長から月の徽章を渡されたガキか!!」
「うわっ!?」
「コオリ!?」
月の徽章を身に着けたコオリを見てバルトは興奮した様子で彼の元に駆けつけ、力ずくで胸倉を掴む。その行為にコオリは驚き、ミイナはそれを見て彼を止めようとした。
「なんでお前みたいなガキに学園長は月の徽章をやった!!言え、どんな手を使った!?」
「うぐぅっ……!?」
「止めて、コオリが苦しがってる!!」
「うるさい、退け!!」
「あうっ!?」
「ミ、ミイナ!?」
止めようとしてきたミイナに対してバルトは彼女を突き飛ばし、それを見たコオリはバルトに胸倉を掴まれながらも怒りを覚え、無理やりに引き剥がす。
「このっ……離せ!!」
「うおっ!?このガキ……調子に乗りやがって!!」
自分の腕を振り払ったコオリに対してバルトは怒りを抱き、彼が杖を持っているのを見てバルトも杖を取り出す。お互いに杖を構え合う形となり、それを見たミイナも魔法腕輪を取り出す。
(この人、いったい何なんだ!?)
いきなり自分の胸倉を掴み、更にはミイナを突き飛ばしたバルトに対してコオリは怒りを抱く。その一方でバルトの方はコオリが胸に付けている「月の徽章」を見て悔しそうな表情を浮かべ、自分が身に着けている「星の徽章」を見て歯を食いしばる。
魔法学園では高い評価を残した生徒には星の徽章が与えられ、この徽章は学年の進級に関わる重要な代物である。生徒は年内に自分の学年と同じ数の星の徽章を得る事ができなければ昇給できず、徽章を獲得できなかった生徒は進級する事もできない(但し、一年生の場合のみ進級の試験を受けられる)。
既にバルトは上の学年に進級するために必要な星の徽章を取り揃えており、まだ次の学年に昇給するまで10か月ほどの猶予があるにも関わらずに彼は星の徽章を三つも揃えていた。だが、彼にとっては星の徽章よりも価値のある月の徽章を身に着けたコオリに嫉妬心を抱く。
「お前の噂は耳にしているぞ……一年生の癖に二人目の月の徽章の持ち主だってな!!」
「え、二人目……?」
「惚けやがって!!」
自分の他に一年生の中にもう一人の月の徽章の持ち主がいると初めて知ったコオリは驚いたが、興奮した様子のバルトは自分が取り付けている星の徽章を掴み取り、床に叩き付けた。
「こんなもん、いるかよ!!」
「な、何をしてるんですか!?」
「うるせえっ!!こんな物をいくら集めても意味ねえんだよ!!俺が欲しいのは……!!」
バルトは星の徽章を捨てるとコオリが身に着けている月の徽章を睨みつけ、その様子を察したコオリは彼が求めているのは星の徽章などではなく、自分の持つ月の徽章である事を察する。
月の徽章は学園長が認めた生徒にしか授けられず、この月の徽章を持つ生徒は星の徽章がなくとも進級が許可される。それどころか他の生徒が禁止されている教室や訓練場の立ち入りなども許可され、現在はコオリ達が使用している空き教室も月の徽章を持つ生徒が居るという事で特別に使用が許可されているに等しい。
自分の実力に絶対の自信を持つバルトは自分こそが月の徽章を持つに相応しい生徒だと常日頃から思っていた。それにも関わらずに彼は自分よりも年下でしかも一年生のコオリが月の徽章を持っている事に激しく嫉妬し、彼は杖を構えるとコオリに宣言した。
「決闘だ!!俺はお前に決闘を申し込む!!」
「えっ!?」
「決闘……!?」
唐突なバルトの宣言にコオリは驚きを隠せず、話を聞いていたミイナも驚いた表情を浮かべる。一方で興奮が収まらぬバルトはコオリに杖を突きつけ、自分の決闘を受けるかどうかを問い質す。
「どうした!!お前が本当に月の徽章を与えられる程の魔術師なら一般生徒の俺なんかよりも優れているという事だろう!?そんな俺と決闘するのが怖いのか!?」
「お、落ち着いて下さい!!急に決闘だなんて……」
「うるせえ!!ガキだろうと容赦はしねえぞ!!」
コオリの返事を待たずにバルトは杖を上空に掲げると、その構えを見たコオリは信じられない表情を浮かべる。バルトが使おうとしている魔法は中級魔法の「スライサー」と呼ばれる魔法で間違いなく、風属性の魔力を渦巻状に構成して相手に放つ攻撃魔法で間違いなかった。
バルトが使用する「スライサー」の威力は木造人形を木っ端みじんに吹き飛ばす程の破壊力を誇る。そんな魔法をまともに受ければ人間の肉体は無事では済まず、咄嗟に彼はバルトを止めるために魔法の準備を行う。
「止めてください!!本当に撃ちますよ!?」
「うおおおっ!!」
「待って!!」
暴走したバルトを止めるためにコオリとミイナがそれぞれ動こうとした瞬間、屋上の扉が開け開かれて何者かが飛び出す。その人物はバルトの背後に迫ると、彼の腕を掴んで強制的に魔法の発動を中止させた。
「いい加減にしなさい、バルト!!」
「ぐあっ!?」
「えっ!?」
「……誰?」
バルトを後ろから抑えつけたのは彼の同級生である「リンダ」であり、コオリを魔法学園に招いた女子生徒だった。彼女は怒った様子でバルトの腕を掴んで後ろから抑えつけ、無理やりに彼から杖を奪い取る。
リンダに取り押さえられたバルトは床に押し付けられ、彼は悔し気な表情を浮かべるがリンダの方が力が上なのか抵抗できずに抑えつけられる。その様子を見てコオリとミイナは安堵するが、そんな二人にもリンダは鋭い目つきを向けた。
「貴方達も杖と腕輪を外しなさい!!」
「は、はい!!」
「にゃうっ……」
彼女の言葉に慌ててコオリとミイナは杖と腕輪をしまうと、それを確認したリンダはバルトを手放す。バルトは急に現れたリンダに対して不機嫌そうな表情を浮かべるが、彼の杖はリンダに取り上げられて抵抗はできない。
「最後のはここに置く?」
「うん、ありがとう。危ないからミイナは下がってて」
「分かった」
ミイナと共にコオリは的当て用の木造人形を配置すると、別々の位置に置いた二つの人形を確認する。人形の位置を全て把握するとコオリは二又の杖を取り出す。
(よし、この距離と数なら……大丈夫なはず)
二又の杖を取り出したコオリは無詠唱で瞬く間に二つの氷弾を作り上げ、狙いを定めた。複数の氷弾を同時に操作するのはかなりの集中力を必要とするが、連日の訓練でコオリの魔力操作の技術は磨き抜かれていた。
今回の訓練はいつもと違って複数の的を同時に攻撃し、的に当てる事ができればコオリは複数の敵を狙い撃つことができるはずだった。
(それぞれの人形の位置を捉えて……撃つ!!)
二つの人形の位置を把握した上でコオリは杖を突き出し、その動作に反応て氷弾が同時に発射された。それぞれの氷弾はコオリが狙いを定めた木造人形に目掛けて突っ込み、片方は頭部、もう片方は胸元に氷弾がめり込む。
「よし、成功!!」
「おおっ……流石はコオリ、略してさすコオリ」
「だからそれ何!?」
ミイナのよく分からないボケに戸惑いながらもコオリはそれぞれの人形に視線を向け、最初の一回で氷弾を当てる事に嬉しく思う。だが、ここでコオリはある事に気付いた。
(あれ?いつもよりも氷弾がめり込んでいない?もしかして当てる事に集中しすぎて肝心の威力が落ちてたのか……?
二つの的に氷弾を当てる事には成功したが、木製の人形程度を貫けないようでは威力に難がある。せめて全ての人形を貫通させるほどの威力でなければ魔物との戦闘では扱えず、もう少しだけ訓練を続ける事にした。
(今度は他の箇所を狙ってみようかな)
もう一度魔法を作り出そうとコオリは杖を構え、今度は頭よりも頑丈な胴体の部分を狙い撃とうとした時、不意に屋上の扉が開いた。
「……何だ、お前等?何をしている?」
「え?あの……」
「……そっちこそ誰?」
屋上に上がってきたのは上級生の男子生徒であり、彼は屋上に辿り着いて早々にコオリとミイナに気付くと驚いた表情を浮かべる。その一方でコオリは男子生徒の顔に見覚えがあり、学園に入ったばかり頃にコオリが上級生の授業を覗いた時に見かけた男子生徒だった。
男子生徒の名前はコオリの記憶が正しければ「バルト」という名前で、彼は同級生からも一目置かれている存在だった。彼は風属性の魔法の使い手で中級魔法を習得しており、三年生の中でも一、二を争う魔術師だと噂されている。
「お前等……一年と二年か?なんでここにいる。もうとっくに下校の時間だろうが」
「えっと、僕達は……」
「私達はここで待っているように言われた」
コオリが説明する前にミイナが理由を伝えると、バルトは二人の言葉に疑問を抱く。本来であれば下級生は学校の裏庭にある訓練場しか使用を許可されていないが、教師の許可があれば他の訓練場も使用する事が許されている。
教師であるバルルから許可を貰った上でコオリとミイナは屋上で訓練を行っていたが、今回の場合は急に現れたバルトの方がここにいる事がおかしかった。下校時間を迎えているのにバルトが屋上に訪れている事もおかしく、仮に自主訓練を行うとしても屋上の訓練場は許可がなければ立ち入りは許可されていない。
「……まあいい、お前等はとっとと帰れ。ここは俺が今から使う」
「え、でも……」
「私達はここに待っているように言われた。それにここを使う許可は……」
「うるせえ!!いいからさっさと出ていけ!!」
「そんな横暴な!?」
バルトはコオリとミイナの話を碌に聞かずに屋上から退去させようとするが、この時に彼はコオリに視線を向けてある事に気が付く。コオリの胸元に取り付けられた「月の徽章」を見た途端、バルトは信じられない表情を浮かべた。
「お前、その徽章は……!?」
「えっ……ど、どうかしました」
「……まさか、そういう事か。お前が一年の癖に学園長から月の徽章を渡されたガキか!!」
「うわっ!?」
「コオリ!?」
月の徽章を身に着けたコオリを見てバルトは興奮した様子で彼の元に駆けつけ、力ずくで胸倉を掴む。その行為にコオリは驚き、ミイナはそれを見て彼を止めようとした。
「なんでお前みたいなガキに学園長は月の徽章をやった!!言え、どんな手を使った!?」
「うぐぅっ……!?」
「止めて、コオリが苦しがってる!!」
「うるさい、退け!!」
「あうっ!?」
「ミ、ミイナ!?」
止めようとしてきたミイナに対してバルトは彼女を突き飛ばし、それを見たコオリはバルトに胸倉を掴まれながらも怒りを覚え、無理やりに引き剥がす。
「このっ……離せ!!」
「うおっ!?このガキ……調子に乗りやがって!!」
自分の腕を振り払ったコオリに対してバルトは怒りを抱き、彼が杖を持っているのを見てバルトも杖を取り出す。お互いに杖を構え合う形となり、それを見たミイナも魔法腕輪を取り出す。
(この人、いったい何なんだ!?)
いきなり自分の胸倉を掴み、更にはミイナを突き飛ばしたバルトに対してコオリは怒りを抱く。その一方でバルトの方はコオリが胸に付けている「月の徽章」を見て悔しそうな表情を浮かべ、自分が身に着けている「星の徽章」を見て歯を食いしばる。
魔法学園では高い評価を残した生徒には星の徽章が与えられ、この徽章は学年の進級に関わる重要な代物である。生徒は年内に自分の学年と同じ数の星の徽章を得る事ができなければ昇給できず、徽章を獲得できなかった生徒は進級する事もできない(但し、一年生の場合のみ進級の試験を受けられる)。
既にバルトは上の学年に進級するために必要な星の徽章を取り揃えており、まだ次の学年に昇給するまで10か月ほどの猶予があるにも関わらずに彼は星の徽章を三つも揃えていた。だが、彼にとっては星の徽章よりも価値のある月の徽章を身に着けたコオリに嫉妬心を抱く。
「お前の噂は耳にしているぞ……一年生の癖に二人目の月の徽章の持ち主だってな!!」
「え、二人目……?」
「惚けやがって!!」
自分の他に一年生の中にもう一人の月の徽章の持ち主がいると初めて知ったコオリは驚いたが、興奮した様子のバルトは自分が取り付けている星の徽章を掴み取り、床に叩き付けた。
「こんなもん、いるかよ!!」
「な、何をしてるんですか!?」
「うるせえっ!!こんな物をいくら集めても意味ねえんだよ!!俺が欲しいのは……!!」
バルトは星の徽章を捨てるとコオリが身に着けている月の徽章を睨みつけ、その様子を察したコオリは彼が求めているのは星の徽章などではなく、自分の持つ月の徽章である事を察する。
月の徽章は学園長が認めた生徒にしか授けられず、この月の徽章を持つ生徒は星の徽章がなくとも進級が許可される。それどころか他の生徒が禁止されている教室や訓練場の立ち入りなども許可され、現在はコオリ達が使用している空き教室も月の徽章を持つ生徒が居るという事で特別に使用が許可されているに等しい。
自分の実力に絶対の自信を持つバルトは自分こそが月の徽章を持つに相応しい生徒だと常日頃から思っていた。それにも関わらずに彼は自分よりも年下でしかも一年生のコオリが月の徽章を持っている事に激しく嫉妬し、彼は杖を構えるとコオリに宣言した。
「決闘だ!!俺はお前に決闘を申し込む!!」
「えっ!?」
「決闘……!?」
唐突なバルトの宣言にコオリは驚きを隠せず、話を聞いていたミイナも驚いた表情を浮かべる。一方で興奮が収まらぬバルトはコオリに杖を突きつけ、自分の決闘を受けるかどうかを問い質す。
「どうした!!お前が本当に月の徽章を与えられる程の魔術師なら一般生徒の俺なんかよりも優れているという事だろう!?そんな俺と決闘するのが怖いのか!?」
「お、落ち着いて下さい!!急に決闘だなんて……」
「うるせえ!!ガキだろうと容赦はしねえぞ!!」
コオリの返事を待たずにバルトは杖を上空に掲げると、その構えを見たコオリは信じられない表情を浮かべる。バルトが使おうとしている魔法は中級魔法の「スライサー」と呼ばれる魔法で間違いなく、風属性の魔力を渦巻状に構成して相手に放つ攻撃魔法で間違いなかった。
バルトが使用する「スライサー」の威力は木造人形を木っ端みじんに吹き飛ばす程の破壊力を誇る。そんな魔法をまともに受ければ人間の肉体は無事では済まず、咄嗟に彼はバルトを止めるために魔法の準備を行う。
「止めてください!!本当に撃ちますよ!?」
「うおおおっ!!」
「待って!!」
暴走したバルトを止めるためにコオリとミイナがそれぞれ動こうとした瞬間、屋上の扉が開け開かれて何者かが飛び出す。その人物はバルトの背後に迫ると、彼の腕を掴んで強制的に魔法の発動を中止させた。
「いい加減にしなさい、バルト!!」
「ぐあっ!?」
「えっ!?」
「……誰?」
バルトを後ろから抑えつけたのは彼の同級生である「リンダ」であり、コオリを魔法学園に招いた女子生徒だった。彼女は怒った様子でバルトの腕を掴んで後ろから抑えつけ、無理やりに彼から杖を奪い取る。
リンダに取り押さえられたバルトは床に押し付けられ、彼は悔し気な表情を浮かべるがリンダの方が力が上なのか抵抗できずに抑えつけられる。その様子を見てコオリとミイナは安堵するが、そんな二人にもリンダは鋭い目つきを向けた。
「貴方達も杖と腕輪を外しなさい!!」
「は、はい!!」
「にゃうっ……」
彼女の言葉に慌ててコオリとミイナは杖と腕輪をしまうと、それを確認したリンダはバルトを手放す。バルトは急に現れたリンダに対して不機嫌そうな表情を浮かべるが、彼の杖はリンダに取り上げられて抵抗はできない。
33
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説
ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!
カタナヅキ
ファンタジー
ステータ画面は防御魔法?あらゆる攻撃を画面で防ぐ異色の魔術師の物語!!
祖父の遺言で魔女が暮らす森に訪れた少年「ナオ」は一冊の魔導書を渡される。その魔導書はかつて異界から訪れたという人間が書き記した代物であり、ナオは魔導書を読み解くと視界に「ステータス画面」なる物が現れた。だが、何故か画面に表示されている文字は無茶苦茶な羅列で解読ができず、折角覚えた魔法なのに使い道に悩んだナオはある方法を思いつく。
「よし、とりあえず叩いてみよう!!」
ステータス画面を掴んでナオは悪党や魔物を相手に叩き付け、時には攻撃を防ぐ防具として利用する。世界でただ一人の「ステータス画面」の誤った使い方で彼は成り上がる。
※ステータスウィンドウで殴る、防ぐ、空を飛ぶ異色のファンタジー!!
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる