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王都での日常
第49話 空中浮揚
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――休日にコオリはミイナと共に城下町に出向く。二人の目的は賞金首を見つけ出し、隠れ家を突き止めて警備兵に報告して賞金首を捕まえさせ、報酬金を受け取る算段だった。この時に注意するのがあくまでも賞金首を捕まえさせるのは兵士の仕事であり、コオリとミイナは極力戦闘を避ける方針だtった。
実力に自信がある人間ならば直接に賞金首の犯罪者を捕まえて兵士に引き渡すだろうが、今回は金貨十枚という高額の賞金首が相手なのでまともに戦うのは危険過ぎた。
ミイナも共に行動するとはいえ、相手がどれほどの実力を持つのか分からない以上は不用意に仕掛けるのは無謀過ぎた。その事を踏まえてコオリはあくまでも賞金首を見つけても捕まえる役目は兵士に任せる事に決めた。
「ミイナ、本当にこんな場所から下の人達が見えるの?」
「大丈夫、はっきりと見える」
コオリはミイナに連れられて大きめの建物の屋上に移動し、そこからミイナは地上を見下ろす。獣人族である彼女は視力も人間よりも優れており、街道を歩く人々の顔を確認して賞金首らしき人物を探す。
「どう?怪しい人はいた?」
「……ここだと人通りが少ない。もっと人がいるところに移動した方が良い」
「となると……大通りの方かな」
ミイナの発言を聞いてコオリは頷き、もっと人気の多い場所に向かう事にした。この時にコオリは二つの杖を取り出して昨日から散々練習をしてきた魔法を発動させる。
「よしっ……移動しよう」
「……本当に大丈夫?私についてこれるの?」
「まあ、見ててよ」
二つの杖からコオリは「凹」の形をした氷塊を合計で四つ作り出し、二つの氷塊を結合させる事で「回」の形にした氷塊を二つ生み出す。この中心の穴の部分に手を突っ込み、さらに杖を両手で握りしめる事で「懸垂」の如く空を浮かぶ。
傍目から見てもとても格好良いとは言えない姿だが、この方法ならばコオリは氷塊を浮かばせる事で両手が引っ張られる形で空を飛ぶ事ができる。移動速度は早くはないが、それでも屋根の上を移動するだけならできる。
「よし、これで俺も後を追えるよ」
「……ちょっとダサい。でも、少し可愛い」
「そ、そう?」
空中に浮かぶコオリの姿を見てミイナは面白そうな表情を浮かべ、彼女は先に他の建物の屋根に飛び込み、その後を追ってコオリも空に浮かぶ。
(下を見るな……大丈夫、あんなに練習したんだ)
自分自身を鼓舞してコオリは覚悟を決めると、できる限り下は見ないように気をつけながら氷塊を利用して移動を行う。地上を歩くのとほぼ同じ速度で氷塊が動き出し、先にミイナが飛び移った建物の屋根に着地すると安堵する。。
「おかえり」
「た、ただいま……はあっ、はあっ」
「……大丈夫?」
先に屋根に移動していたミイナが心配そうに声をかけると、コオリは額の汗を拭いながら氷塊から降りて屋根の上に降り立つ。無事に移動できた事にコオリは安堵するが、ミイナは少し言いにくそうな表情を浮かべる。
「次はあっちの方に行きたいから私は行くけど……付いてこれる?」
「……だ、大丈夫だよ。コツは掴んだから」
ミイナは遥か前方に存在する大きな建物を指差すと、その距離を見てコオリは冷や汗を流しながらも頷く。向かい側の建物へ移動するだけでコオリはかなり精神力を削られてしまったが、それでも頑張ってミイナに続いて別の建物への移動を行う――
――捜索を開始してから一時間後、コオリとミイナは人通りの多い建物の屋根の上に身を伏せて地上の様子を伺う。この時点でコオリは疲れ切った表情を浮かべて屋根の上に寝そべり、ミイナの方は猫が日向ぼっこするかのように眠たそうに眼をこすりながらも地上の様子を伺う。
「はあっ、はあっ……」
「やっぱり無理しない方がいい。心配してくれるのは嬉しいけど、やっぱり私だけで大丈夫だから」
「へ、平気だよ。大分慣れてきたから……」
心配そうに語り掛けるミイナにコオリは強がりのような台詞を告げるが、実際の所は本当にここまでの移動でコオリは氷塊を乗りこなすコツを掴みかけてきた気がする。落ちれば即死を免れない高度での移動は精神力を削られたが、逆に何度も乗り越えてきた事で自信が持てるようになった。
何度も空を飛んで移動してきた事でコオリは地上への落下の恐怖が薄まり、少しずつではあるが氷塊の移動速度も増してきた。今ならば小走り程度の速度で移動できるようになり、ミイナの後を追いかけられる。
「それよりも怪しい人は居た?」
「まだ……そろそろ人酔いしそう」
「ちょ、ミイナの方こそ無理しない方が……」
ずっと地上の人間の顔を確認していたミイナは体調を崩し始め、流石に休憩を挟むべきかとコオリは提案しようとしたが、不意に彼女は何かに気付いたように声を上げる。
「見つけた……」
「えっ!?」
「しっ、静かにして……」
ミイナは地上の様子を確認しながらコオリの口元を抑え、彼女の行動にコオリは戸惑いながらも地上を見下ろす。地上には大勢の人間が行きかい、その中に怪しそうな人物は見当たらないが、ミイナは目つきを鋭くさせてある人物を指差す。
「あそこにいる男……カツラを被ってるけど、間違いない。手配書に描かれている男とそっくり」
「あそこ?」
手配書に記されていた似顔絵はコオリも覚えており、彼女の指差す方向を見つめるとそこには長髪に帽子を被った男性の姿があった。手配書に描かれている男性は短髪でしかも角が生えている。一方でミイナの見つけた男性は長髪で帽子を被っているせいで顔が良く見えない。しかし、ミイナの視力はしっかりと男性の顔を捉えていた。
髪の毛の長さと帽子のせいで顔が良く見えないため、コオリが見た限りでは手配書に描かれている人物と同一人物なのかは分からない。しかし、ミイナは自信をもって自分が見つけた男性が賞金首だと確信する。
「あの男、間違いなくこの手配書に描かれている男」
「ほ、本当に?」
「……コオリは私の事を信じられない?」
ミイナはコオリに振り返って彼の瞳を真っ直ぐに見つめると、そんな彼女に対してコオリは馬鹿な事を聞いてしまったと思い、素直に謝罪する。
「信じるよ」
「そう」
コオリの返事を聞いてミイナはすぐに顔を反らすが、彼女の尻尾と猫耳は嬉しいのかぴくぴくと震え、こんな状況だというのにコオリは少しほっこりとしてしまう。
二人は地上を歩く賞金首らしき男性の様子を伺い、その人物が裏路地に入るのを確認すると、二人は後を追う事にした。ミイナは屋根の上を移動し、一方でコオリは彼女に続いて氷塊に乗り込んで後を追いかける。
「……どんどん人気のない所に移動してる。もしかしたら隠れ家があるのかもしれない」
「隠れ家か……本当にあるのかな?」
「指名手配されている犯罪者なら宿屋に泊まる事はできない。なら、何処かで身を隠せる場所があるはず……多分」
「な、なるほど」
裏路地を移動する男性の様子を伺い、まだ気づかれていないのか特に男性は怪しい動きは取らない。コオリとミイナは屋根の上を移動しながら観察を行うが、不意にコオリは嫌な予感を抱く。
(何だ、この感覚……あの時と同じだ)
コオリは深淵の森にてリオンと共に魔物から逃げ回っていた時の事を思い出し、まるで自分が魔物が巣食う森の中に迷い込んだ時のような感覚を味わう。その感覚は常に誰かが自分を監視しているように感じられ、とても落ち着かない。
(誰かに見られている?でも、こんな場所でいったい誰が……まさか!?)
危機感を抱いたコオリは地上を歩いている賞金首から目を反らし、慌てた様子で周囲を見渡す。すると、いつの間にか自分達以外に屋根の上に立つ人影を発見し、遅れてミイナも異変に気付いたのかコオリに声をかける。
「逃げて!!」
「くっ!?」
ミイナの言葉を聞いてコオリは咄嗟に杖を構えると、二人が立っている建物の屋根に目掛けて複数人の獣人族の男達が飛び込んできた。
「ひひひっ!!」
「気付いても遅いんだよ!!」
「へへへっ……もう逃げられないぞ」
「くっ!?」
「……油断してた」
コオリ達を取り囲んだ男達は獣人族であり、全員が犬型の獣人族だった。恐らくは二人が追いかけていた賞金首の仲間だと思われ、その手には短剣と縄が握りしめられていた。
唐突に現れた獣人達はコオリ達を逃がさないように取り囲み、数は5人存在した。ミイナはコオリを庇うように前に立つが、コオリも緊張しながらも二つの杖を握りしめて彼女と背中を合わせる。
「ち、近づくな!!これ以上に近付けば容赦しませんよ!!」
「コオリ……こういうとこはもっとドスのきいた声を出した方がいい」
「え?えっと……近付くと痛い目に遭わせるどす!!」
「……違う、そうじゃない」
「な、何だこいつら……」
「ふざけたガキ共だな……だが、どっちも上玉だ。こいつは高く売れそうだぜ」
盗賊達はコオリとミイナの顔立ちを確認し、子供の割には二人とも綺麗に整った顔立ちをしていた。盗賊達はどうやら二人を捕まえて売り飛ばすつもりらしく、縄を取り出して二人に近付こうとしてきた。
「さあ、大人しくしろ。暴れると痛い目に遭うぜ?」
「こ、この杖が見えないんですか!?」
「杖?こいつ、魔術師か?」
「まさか魔法学園の生徒か!?それなら増々高く売れそうだぜ!!」
「……下衆」
コオリが杖を構えて脅しつけても盗賊達は取り乱さず、逆に二人が魔法学園の生徒だと知って笑い声を上げる。魔法を扱える子供は普通の子供よりも何倍も高く買い取られるため、盗賊達は二人を捕まえようと不用意に近づく。
実力に自信がある人間ならば直接に賞金首の犯罪者を捕まえて兵士に引き渡すだろうが、今回は金貨十枚という高額の賞金首が相手なのでまともに戦うのは危険過ぎた。
ミイナも共に行動するとはいえ、相手がどれほどの実力を持つのか分からない以上は不用意に仕掛けるのは無謀過ぎた。その事を踏まえてコオリはあくまでも賞金首を見つけても捕まえる役目は兵士に任せる事に決めた。
「ミイナ、本当にこんな場所から下の人達が見えるの?」
「大丈夫、はっきりと見える」
コオリはミイナに連れられて大きめの建物の屋上に移動し、そこからミイナは地上を見下ろす。獣人族である彼女は視力も人間よりも優れており、街道を歩く人々の顔を確認して賞金首らしき人物を探す。
「どう?怪しい人はいた?」
「……ここだと人通りが少ない。もっと人がいるところに移動した方が良い」
「となると……大通りの方かな」
ミイナの発言を聞いてコオリは頷き、もっと人気の多い場所に向かう事にした。この時にコオリは二つの杖を取り出して昨日から散々練習をしてきた魔法を発動させる。
「よしっ……移動しよう」
「……本当に大丈夫?私についてこれるの?」
「まあ、見ててよ」
二つの杖からコオリは「凹」の形をした氷塊を合計で四つ作り出し、二つの氷塊を結合させる事で「回」の形にした氷塊を二つ生み出す。この中心の穴の部分に手を突っ込み、さらに杖を両手で握りしめる事で「懸垂」の如く空を浮かぶ。
傍目から見てもとても格好良いとは言えない姿だが、この方法ならばコオリは氷塊を浮かばせる事で両手が引っ張られる形で空を飛ぶ事ができる。移動速度は早くはないが、それでも屋根の上を移動するだけならできる。
「よし、これで俺も後を追えるよ」
「……ちょっとダサい。でも、少し可愛い」
「そ、そう?」
空中に浮かぶコオリの姿を見てミイナは面白そうな表情を浮かべ、彼女は先に他の建物の屋根に飛び込み、その後を追ってコオリも空に浮かぶ。
(下を見るな……大丈夫、あんなに練習したんだ)
自分自身を鼓舞してコオリは覚悟を決めると、できる限り下は見ないように気をつけながら氷塊を利用して移動を行う。地上を歩くのとほぼ同じ速度で氷塊が動き出し、先にミイナが飛び移った建物の屋根に着地すると安堵する。。
「おかえり」
「た、ただいま……はあっ、はあっ」
「……大丈夫?」
先に屋根に移動していたミイナが心配そうに声をかけると、コオリは額の汗を拭いながら氷塊から降りて屋根の上に降り立つ。無事に移動できた事にコオリは安堵するが、ミイナは少し言いにくそうな表情を浮かべる。
「次はあっちの方に行きたいから私は行くけど……付いてこれる?」
「……だ、大丈夫だよ。コツは掴んだから」
ミイナは遥か前方に存在する大きな建物を指差すと、その距離を見てコオリは冷や汗を流しながらも頷く。向かい側の建物へ移動するだけでコオリはかなり精神力を削られてしまったが、それでも頑張ってミイナに続いて別の建物への移動を行う――
――捜索を開始してから一時間後、コオリとミイナは人通りの多い建物の屋根の上に身を伏せて地上の様子を伺う。この時点でコオリは疲れ切った表情を浮かべて屋根の上に寝そべり、ミイナの方は猫が日向ぼっこするかのように眠たそうに眼をこすりながらも地上の様子を伺う。
「はあっ、はあっ……」
「やっぱり無理しない方がいい。心配してくれるのは嬉しいけど、やっぱり私だけで大丈夫だから」
「へ、平気だよ。大分慣れてきたから……」
心配そうに語り掛けるミイナにコオリは強がりのような台詞を告げるが、実際の所は本当にここまでの移動でコオリは氷塊を乗りこなすコツを掴みかけてきた気がする。落ちれば即死を免れない高度での移動は精神力を削られたが、逆に何度も乗り越えてきた事で自信が持てるようになった。
何度も空を飛んで移動してきた事でコオリは地上への落下の恐怖が薄まり、少しずつではあるが氷塊の移動速度も増してきた。今ならば小走り程度の速度で移動できるようになり、ミイナの後を追いかけられる。
「それよりも怪しい人は居た?」
「まだ……そろそろ人酔いしそう」
「ちょ、ミイナの方こそ無理しない方が……」
ずっと地上の人間の顔を確認していたミイナは体調を崩し始め、流石に休憩を挟むべきかとコオリは提案しようとしたが、不意に彼女は何かに気付いたように声を上げる。
「見つけた……」
「えっ!?」
「しっ、静かにして……」
ミイナは地上の様子を確認しながらコオリの口元を抑え、彼女の行動にコオリは戸惑いながらも地上を見下ろす。地上には大勢の人間が行きかい、その中に怪しそうな人物は見当たらないが、ミイナは目つきを鋭くさせてある人物を指差す。
「あそこにいる男……カツラを被ってるけど、間違いない。手配書に描かれている男とそっくり」
「あそこ?」
手配書に記されていた似顔絵はコオリも覚えており、彼女の指差す方向を見つめるとそこには長髪に帽子を被った男性の姿があった。手配書に描かれている男性は短髪でしかも角が生えている。一方でミイナの見つけた男性は長髪で帽子を被っているせいで顔が良く見えない。しかし、ミイナの視力はしっかりと男性の顔を捉えていた。
髪の毛の長さと帽子のせいで顔が良く見えないため、コオリが見た限りでは手配書に描かれている人物と同一人物なのかは分からない。しかし、ミイナは自信をもって自分が見つけた男性が賞金首だと確信する。
「あの男、間違いなくこの手配書に描かれている男」
「ほ、本当に?」
「……コオリは私の事を信じられない?」
ミイナはコオリに振り返って彼の瞳を真っ直ぐに見つめると、そんな彼女に対してコオリは馬鹿な事を聞いてしまったと思い、素直に謝罪する。
「信じるよ」
「そう」
コオリの返事を聞いてミイナはすぐに顔を反らすが、彼女の尻尾と猫耳は嬉しいのかぴくぴくと震え、こんな状況だというのにコオリは少しほっこりとしてしまう。
二人は地上を歩く賞金首らしき男性の様子を伺い、その人物が裏路地に入るのを確認すると、二人は後を追う事にした。ミイナは屋根の上を移動し、一方でコオリは彼女に続いて氷塊に乗り込んで後を追いかける。
「……どんどん人気のない所に移動してる。もしかしたら隠れ家があるのかもしれない」
「隠れ家か……本当にあるのかな?」
「指名手配されている犯罪者なら宿屋に泊まる事はできない。なら、何処かで身を隠せる場所があるはず……多分」
「な、なるほど」
裏路地を移動する男性の様子を伺い、まだ気づかれていないのか特に男性は怪しい動きは取らない。コオリとミイナは屋根の上を移動しながら観察を行うが、不意にコオリは嫌な予感を抱く。
(何だ、この感覚……あの時と同じだ)
コオリは深淵の森にてリオンと共に魔物から逃げ回っていた時の事を思い出し、まるで自分が魔物が巣食う森の中に迷い込んだ時のような感覚を味わう。その感覚は常に誰かが自分を監視しているように感じられ、とても落ち着かない。
(誰かに見られている?でも、こんな場所でいったい誰が……まさか!?)
危機感を抱いたコオリは地上を歩いている賞金首から目を反らし、慌てた様子で周囲を見渡す。すると、いつの間にか自分達以外に屋根の上に立つ人影を発見し、遅れてミイナも異変に気付いたのかコオリに声をかける。
「逃げて!!」
「くっ!?」
ミイナの言葉を聞いてコオリは咄嗟に杖を構えると、二人が立っている建物の屋根に目掛けて複数人の獣人族の男達が飛び込んできた。
「ひひひっ!!」
「気付いても遅いんだよ!!」
「へへへっ……もう逃げられないぞ」
「くっ!?」
「……油断してた」
コオリ達を取り囲んだ男達は獣人族であり、全員が犬型の獣人族だった。恐らくは二人が追いかけていた賞金首の仲間だと思われ、その手には短剣と縄が握りしめられていた。
唐突に現れた獣人達はコオリ達を逃がさないように取り囲み、数は5人存在した。ミイナはコオリを庇うように前に立つが、コオリも緊張しながらも二つの杖を握りしめて彼女と背中を合わせる。
「ち、近づくな!!これ以上に近付けば容赦しませんよ!!」
「コオリ……こういうとこはもっとドスのきいた声を出した方がいい」
「え?えっと……近付くと痛い目に遭わせるどす!!」
「……違う、そうじゃない」
「な、何だこいつら……」
「ふざけたガキ共だな……だが、どっちも上玉だ。こいつは高く売れそうだぜ」
盗賊達はコオリとミイナの顔立ちを確認し、子供の割には二人とも綺麗に整った顔立ちをしていた。盗賊達はどうやら二人を捕まえて売り飛ばすつもりらしく、縄を取り出して二人に近付こうとしてきた。
「さあ、大人しくしろ。暴れると痛い目に遭うぜ?」
「こ、この杖が見えないんですか!?」
「杖?こいつ、魔術師か?」
「まさか魔法学園の生徒か!?それなら増々高く売れそうだぜ!!」
「……下衆」
コオリが杖を構えて脅しつけても盗賊達は取り乱さず、逆に二人が魔法学園の生徒だと知って笑い声を上げる。魔法を扱える子供は普通の子供よりも何倍も高く買い取られるため、盗賊達は二人を捕まえようと不用意に近づく。
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