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王都での日常
第25話 魔力操作の訓練
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コオリは何度か吸魔石に触れて調べてみたが、バルルのように常に触った状態で水晶玉を無色にする事ができなかった。
「くっ……また失敗か」
指先で軽く触れただけでも吸魔石は反応してしまい、コオリの魔力を吸い上げて青色に染まる。彼が手を離すとすぐに元の状態へ戻るが、何度も魔力を吸い上げられたせいでコオリは頭痛に苛まれる。
魔力を失いすぎると頭痛に襲われ、更に魔力を失うと意識を保つ事もできず、そこからさらに魔力を消耗すれば死んでしまう危険性もあった。魔力を回復させるには身体を休ませる必要があり、頭痛に襲われた時はコオリは休憩を挟んで魔力を回復するのを待つ。
(流石にきつくなってきたな……けど、だんだんと分かってきた気がする)
幾度も吸魔石に触れた事でコオリは今回の授業の本質を理解し、既に彼はバルルが吸魔石に触れた状態にも関わらずに吸魔石が変色しなかった理由を悟った。
(バルルさんは吸魔石に触れた状態で、吸収されそうになった魔力を体内に留めていたんだ)
バルルが吸魔石を触れた時に赤色に変色したのは彼女の魔力を吸い上げたからである。しかし、その後にバルルが触れた状態でも吸魔石の色が元に戻った理由、それは彼女が吸い込まれる魔力を体内に留め、吸収を拒んだからに過ぎない。
今回の授業の本質は自分の魔力を操作するための訓練であり、魔力を吸収する吸魔石から自分の魔力を奪われないように留める事ができれば、コオリは魔力を操作する術を身に着けられるはずだった。
(ちょっとずつだけど感覚が掴めてきたような気がする……もう一度やろう!!)
何度も諦めずにコオリは吸魔石に触れ、奪われそうになる自分の魔力をどうにか留めようとした。最初の内は苦労したが、何度も繰り返す事に少しずつ感覚を掴めてきた。
既に授業が開始されてから何時間も経過しており、いつの間にか時刻は夕方を迎えようとしていた。それでもコオリは昼食も夕食も抜きで訓練を続けた。
(あと少し、あと少しでできそうな気がする……!!)
最初の内は吸魔石に触れ続けるのも辛かったが、何度も繰り返す内にコオリは吸魔石に触れられる時間が伸びていく。これはコオリが吸収される魔力を少しずつではあるが奪われないように抵抗できるようになったからであり、朝の時は一瞬触れただけでも気分は悪くなったが、夕方を迎える頃にはコオリは吸魔石に十秒以上も触れ続けられるようになった。
「ううっ……はあっ!?」
しかし、吸魔石に触れられる時間は長引く事はできたが、どうしてもバルルのように完全に魔力を吸収するのを防ぐ事はできなかった。途中で途中で何度か挟む事で訓練を続けてきたコオリだったが、遂には限界が訪れてしまう。
(さ、流石にもう無理だ……身体が動かない)
結局はコオリは魔力を殆ど使い切ってしまい、教室の床に倒れ込む。この時にコオリは意識が薄れ始め、このままでは気絶してしまうと思われた時、教室の扉が開いてバルルが中に入ってきた。
「おっ……丁度良かったね、どうやら随分頑張ったようだね」
「はあっ、はあっ……バルル、さん?」
「ほら、起きな。良い物を持って来たよ」
バルルが戻ってきた事に気付いたコオリは起き上がろうとすると、彼女はコオリの身体を抱き上げて椅子に座らせる。そして彼の机の上に青色の液体が入った瓶を置く。
「こ、これは……?」
「いいから飲んでみな、楽になれるよ」
「は、はい……」
意識が朦朧としているコオリは疑いもせずに瓶を手にすると、蓋を開いて口の中に流し込む。コオリは飲み物か何かかと思っていたが、口の中に入った途端に違和感を覚える。
(な、何だこれ……ぬるっとしてる?)
液体というよりはゼリー状のような感触が口の中に広がり、どうにかコオリは瓶の中身を飲み込むと、急に薄れかけていた意識がはっきりして身体が楽になった。
「あ、あれ!?」
「どうだい?凄い効き目だろう、この魔力回復薬《マナポーション》は」
「魔力《マナ》、回復薬《ポーション》?」
「その様子だと飲んだのは初めて見たいだね」
バルルが持って来た青色の液体の瓶は「魔力回復薬」と呼ばれる薬らしく、彼女は詳しい説明を行う。魔力回復薬とは文字通りに魔力の回復を促す薬であり、この薬を飲むと魔力を回復させる肉体の機能が一時的に強化され、短時間で魔力が回復する。
魔力回復薬は魔術師の間でも人気が高い代物だが、作り出すためには特殊な素材を用意しなければならず、調合する手順も複雑のため薬学に精通した人間でければ作り出す事はできない。そのために価値も高く、高値で取引されている。
「そいつは学園長に頼んで給料の前払いをして買ってきた奴さ。お陰で今月の給料はすっからかんだよ」
「えっ!?そんな大切な物をなんで……」
「まあ、別にいいさ。あたしが教師になったのは金もうけが目的じゃないからね……といっても、何本も魔力回復薬を飲まれると困るからね。あたしが破産しないように頑張って魔力操作の技術を身に着けるんだよ」
「魔力操作……」
「あんたも気づいているんだろう?今回の授業は自分の魔力を操作するために必要な事なのさ」
コオリの予想通りにバルルが課した授業は自分の魔力を完璧に操作するために必要な技術だと告げた。
「あんたがセマカの授業で見せた下級呪文は見事だったよ。だけどね、杖先に魔光が灯るようじゃまだまだだね」
「魔光?」
バルルの言葉にコオリは自分が下級魔法を扱う際、杖の先端が青色の光を灯すを思い出す。バルルによると魔光が出るようでは完璧に魔力操作の技術を身に着けたとはいえない。
「魔光は魔法に変換できなかった魔力の事さ。分かりやすく言えばあんたが氷《アイス》を生み出す時、気づかないうちに氷を作り出す際中も魔力を余計に放出しちまってるんだよ」
「そ、そうだったんですか?」
「一流の魔術師なら魔光なんて一切出さずに魔法を作り出せる。よく見てな、あたしの魔法を」
コオリの前でバルルは小杖を取り出すと、彼女は意識を集中させるように目を閉じる。そして次に目を開くと彼女は呪文を唱えた。
「ファイア!!」
「うわっ!?」
小杖から炎の塊が出現すると、教室中に伝わる程の熱気を放つ。昨日にコオリが見た同学園の生徒の中には彼女と同じ魔法を使った生徒もいたが、バルルの作り出した炎は子供達の比ではない程の大きさと熱を誇る。
前にもはコオリはバルルが魔法を発動させたのを見た事あるが、以前の時はコオリと同じように彼女の杖は光り輝いていた。だが、今回は全く光らせずに魔法を発現させるどころか前回よりも大きな炎を生み出していた。
「どうだい?あたしの魔法?」
「す、凄いです!!でも、前の時はもっと小さかったのに……」
「あの時はあたしも久しぶりに杖で魔法を使ったから気が抜けててね。だけど、あの時に使った魔法と今のあたしが使っている魔法は同じ物だよ」
「えっ!?でも、前の時と全然違うじゃないですか!!」
コオリの記憶では前に魔法を見せて貰った時はバルルの作り出した炎は今現在の作り出した炎の半分にも満たない。しかし、バルルによれば前の時も今も同じ魔法を使っているらしく、どうして前回と今回では魔法の効果に大きな差があるのかを説明した。
「前の時はあたしの杖から魔光が出ていただろう?だからあの時の魔法は未完成だったんだよ」
「未完成……」
「ほら、あんたも魔法を使ってみな。今日はずっとこいつで練習をしてたんだろう?」
「え、でも……」
「いいからやってみな」
バルルの言葉にコオリは戸惑いながらも小杖を構え、先ほどの薬のお陰で魔力は十分に回復していた。そして彼は緊張した様子で杖を構えると、いつも通りに魔法を発動させようとした。
「アイス……わっ!?」
「へえっ、もう成果が出ているじゃないかい」
いつもならば魔法を唱えた時に杖の先端が青く光り輝き、氷弾が生み出されるはずだった。しかし、今回はいつもよりも一回りほど大きい氷の欠片が出現した。
コオリは杖先に出現した氷の塊を見て驚き、今までは数センチほどの大きさの氷の欠片しか生み出せなかった。しかし、今日一日の訓練を通してコオリの「魔力操作」の技術が磨かれたのか、杖先には倍近くの大きさの氷の塊を作り出す事に成功した。
「ど、どうして?いつも通りに魔法を発動させただけなのに……」
「今日の訓練であんたは吸魔石から魔力を吸い取られないように頑張っていたんだろう?それはつまり、吸い込まれる自分の魔力を留めようとした……つまりは自分の魔力を操作して抵抗したという事さ」
約半日もコオリは吸魔石を利用した訓練を続けた結果、彼は自分の魔力を操作する感覚を掴みかけ、その成果が魔法の効果に繋がっていた。昨日までのコオリは魔法を発動する時は無駄に魔力を消耗していたが、今日の訓練で魔力の消費量が改善されてしかも前よりも大きな氷を作り出す事に成功した。
(……たった半日で大した成長ぶりだね。やっぱり先生の言っていた通り、こいつはもしかしたら……いや、決めつけるのは早計だね。まずは完璧に魔力操作の技術を身に付けさせてからだ)
コオリは半日の間に魔力操作の技術が磨かれたのは事実だが、完璧に魔光を生み出さずに魔法を発動できるようになったわけではなく、杖の先端からは僅かに光が放たれていた。バルルはそれを見て当面の目標は魔光を生み出さずに魔法を発動するように促す。
「まだ杖が光っているようだと駄目だね。明日からも吸魔石を使った訓練を続けな、慣れていけば魔光を生み出させるはずだよ」
「は、はい!!分かりました!!」
「おっ、急に元気が出てきたね。そうだ、その吸魔石はあんたに貸してやるよ。暇がある時はそれで練習しておきな。但し、あんまり練習しすぎてまたぶっ倒れないように気を付けな」
バルルは机の上の吸魔石を指差し、コオリに持って帰って学生寮でも練習するように促す。この吸魔石は恐らくは学校の備品と思われるが勝手に持ち歩いていいのかと思いながらも、魔法の練習が何時でもできるならばとコオリは有難く借りる事にした。
吸魔石は直に触れなければ魔力は吸収される事はなく、布で包んでおけば持ち運びもできる。今日の授業はこれまでにしてバルルはコオリを学生寮に帰らせようとした。
「今日はここまでだね。といっても明日からも吸魔石の訓練を一人で続けるんだよ。あたしはもう一人の奴を探しに行くからしばらくは来れないからね」
「えっ!?明日も?それに探しに行くって……」
コオリは明日からも一人で訓練を続ける事を伝えられて戸惑い、しかもバルルはコオリと共に授業を受けるはずの生徒をまだ見つけていない事が発覚する。
「くっ……また失敗か」
指先で軽く触れただけでも吸魔石は反応してしまい、コオリの魔力を吸い上げて青色に染まる。彼が手を離すとすぐに元の状態へ戻るが、何度も魔力を吸い上げられたせいでコオリは頭痛に苛まれる。
魔力を失いすぎると頭痛に襲われ、更に魔力を失うと意識を保つ事もできず、そこからさらに魔力を消耗すれば死んでしまう危険性もあった。魔力を回復させるには身体を休ませる必要があり、頭痛に襲われた時はコオリは休憩を挟んで魔力を回復するのを待つ。
(流石にきつくなってきたな……けど、だんだんと分かってきた気がする)
幾度も吸魔石に触れた事でコオリは今回の授業の本質を理解し、既に彼はバルルが吸魔石に触れた状態にも関わらずに吸魔石が変色しなかった理由を悟った。
(バルルさんは吸魔石に触れた状態で、吸収されそうになった魔力を体内に留めていたんだ)
バルルが吸魔石を触れた時に赤色に変色したのは彼女の魔力を吸い上げたからである。しかし、その後にバルルが触れた状態でも吸魔石の色が元に戻った理由、それは彼女が吸い込まれる魔力を体内に留め、吸収を拒んだからに過ぎない。
今回の授業の本質は自分の魔力を操作するための訓練であり、魔力を吸収する吸魔石から自分の魔力を奪われないように留める事ができれば、コオリは魔力を操作する術を身に着けられるはずだった。
(ちょっとずつだけど感覚が掴めてきたような気がする……もう一度やろう!!)
何度も諦めずにコオリは吸魔石に触れ、奪われそうになる自分の魔力をどうにか留めようとした。最初の内は苦労したが、何度も繰り返す事に少しずつ感覚を掴めてきた。
既に授業が開始されてから何時間も経過しており、いつの間にか時刻は夕方を迎えようとしていた。それでもコオリは昼食も夕食も抜きで訓練を続けた。
(あと少し、あと少しでできそうな気がする……!!)
最初の内は吸魔石に触れ続けるのも辛かったが、何度も繰り返す内にコオリは吸魔石に触れられる時間が伸びていく。これはコオリが吸収される魔力を少しずつではあるが奪われないように抵抗できるようになったからであり、朝の時は一瞬触れただけでも気分は悪くなったが、夕方を迎える頃にはコオリは吸魔石に十秒以上も触れ続けられるようになった。
「ううっ……はあっ!?」
しかし、吸魔石に触れられる時間は長引く事はできたが、どうしてもバルルのように完全に魔力を吸収するのを防ぐ事はできなかった。途中で途中で何度か挟む事で訓練を続けてきたコオリだったが、遂には限界が訪れてしまう。
(さ、流石にもう無理だ……身体が動かない)
結局はコオリは魔力を殆ど使い切ってしまい、教室の床に倒れ込む。この時にコオリは意識が薄れ始め、このままでは気絶してしまうと思われた時、教室の扉が開いてバルルが中に入ってきた。
「おっ……丁度良かったね、どうやら随分頑張ったようだね」
「はあっ、はあっ……バルル、さん?」
「ほら、起きな。良い物を持って来たよ」
バルルが戻ってきた事に気付いたコオリは起き上がろうとすると、彼女はコオリの身体を抱き上げて椅子に座らせる。そして彼の机の上に青色の液体が入った瓶を置く。
「こ、これは……?」
「いいから飲んでみな、楽になれるよ」
「は、はい……」
意識が朦朧としているコオリは疑いもせずに瓶を手にすると、蓋を開いて口の中に流し込む。コオリは飲み物か何かかと思っていたが、口の中に入った途端に違和感を覚える。
(な、何だこれ……ぬるっとしてる?)
液体というよりはゼリー状のような感触が口の中に広がり、どうにかコオリは瓶の中身を飲み込むと、急に薄れかけていた意識がはっきりして身体が楽になった。
「あ、あれ!?」
「どうだい?凄い効き目だろう、この魔力回復薬《マナポーション》は」
「魔力《マナ》、回復薬《ポーション》?」
「その様子だと飲んだのは初めて見たいだね」
バルルが持って来た青色の液体の瓶は「魔力回復薬」と呼ばれる薬らしく、彼女は詳しい説明を行う。魔力回復薬とは文字通りに魔力の回復を促す薬であり、この薬を飲むと魔力を回復させる肉体の機能が一時的に強化され、短時間で魔力が回復する。
魔力回復薬は魔術師の間でも人気が高い代物だが、作り出すためには特殊な素材を用意しなければならず、調合する手順も複雑のため薬学に精通した人間でければ作り出す事はできない。そのために価値も高く、高値で取引されている。
「そいつは学園長に頼んで給料の前払いをして買ってきた奴さ。お陰で今月の給料はすっからかんだよ」
「えっ!?そんな大切な物をなんで……」
「まあ、別にいいさ。あたしが教師になったのは金もうけが目的じゃないからね……といっても、何本も魔力回復薬を飲まれると困るからね。あたしが破産しないように頑張って魔力操作の技術を身に着けるんだよ」
「魔力操作……」
「あんたも気づいているんだろう?今回の授業は自分の魔力を操作するために必要な事なのさ」
コオリの予想通りにバルルが課した授業は自分の魔力を完璧に操作するために必要な技術だと告げた。
「あんたがセマカの授業で見せた下級呪文は見事だったよ。だけどね、杖先に魔光が灯るようじゃまだまだだね」
「魔光?」
バルルの言葉にコオリは自分が下級魔法を扱う際、杖の先端が青色の光を灯すを思い出す。バルルによると魔光が出るようでは完璧に魔力操作の技術を身に着けたとはいえない。
「魔光は魔法に変換できなかった魔力の事さ。分かりやすく言えばあんたが氷《アイス》を生み出す時、気づかないうちに氷を作り出す際中も魔力を余計に放出しちまってるんだよ」
「そ、そうだったんですか?」
「一流の魔術師なら魔光なんて一切出さずに魔法を作り出せる。よく見てな、あたしの魔法を」
コオリの前でバルルは小杖を取り出すと、彼女は意識を集中させるように目を閉じる。そして次に目を開くと彼女は呪文を唱えた。
「ファイア!!」
「うわっ!?」
小杖から炎の塊が出現すると、教室中に伝わる程の熱気を放つ。昨日にコオリが見た同学園の生徒の中には彼女と同じ魔法を使った生徒もいたが、バルルの作り出した炎は子供達の比ではない程の大きさと熱を誇る。
前にもはコオリはバルルが魔法を発動させたのを見た事あるが、以前の時はコオリと同じように彼女の杖は光り輝いていた。だが、今回は全く光らせずに魔法を発現させるどころか前回よりも大きな炎を生み出していた。
「どうだい?あたしの魔法?」
「す、凄いです!!でも、前の時はもっと小さかったのに……」
「あの時はあたしも久しぶりに杖で魔法を使ったから気が抜けててね。だけど、あの時に使った魔法と今のあたしが使っている魔法は同じ物だよ」
「えっ!?でも、前の時と全然違うじゃないですか!!」
コオリの記憶では前に魔法を見せて貰った時はバルルの作り出した炎は今現在の作り出した炎の半分にも満たない。しかし、バルルによれば前の時も今も同じ魔法を使っているらしく、どうして前回と今回では魔法の効果に大きな差があるのかを説明した。
「前の時はあたしの杖から魔光が出ていただろう?だからあの時の魔法は未完成だったんだよ」
「未完成……」
「ほら、あんたも魔法を使ってみな。今日はずっとこいつで練習をしてたんだろう?」
「え、でも……」
「いいからやってみな」
バルルの言葉にコオリは戸惑いながらも小杖を構え、先ほどの薬のお陰で魔力は十分に回復していた。そして彼は緊張した様子で杖を構えると、いつも通りに魔法を発動させようとした。
「アイス……わっ!?」
「へえっ、もう成果が出ているじゃないかい」
いつもならば魔法を唱えた時に杖の先端が青く光り輝き、氷弾が生み出されるはずだった。しかし、今回はいつもよりも一回りほど大きい氷の欠片が出現した。
コオリは杖先に出現した氷の塊を見て驚き、今までは数センチほどの大きさの氷の欠片しか生み出せなかった。しかし、今日一日の訓練を通してコオリの「魔力操作」の技術が磨かれたのか、杖先には倍近くの大きさの氷の塊を作り出す事に成功した。
「ど、どうして?いつも通りに魔法を発動させただけなのに……」
「今日の訓練であんたは吸魔石から魔力を吸い取られないように頑張っていたんだろう?それはつまり、吸い込まれる自分の魔力を留めようとした……つまりは自分の魔力を操作して抵抗したという事さ」
約半日もコオリは吸魔石を利用した訓練を続けた結果、彼は自分の魔力を操作する感覚を掴みかけ、その成果が魔法の効果に繋がっていた。昨日までのコオリは魔法を発動する時は無駄に魔力を消耗していたが、今日の訓練で魔力の消費量が改善されてしかも前よりも大きな氷を作り出す事に成功した。
(……たった半日で大した成長ぶりだね。やっぱり先生の言っていた通り、こいつはもしかしたら……いや、決めつけるのは早計だね。まずは完璧に魔力操作の技術を身に付けさせてからだ)
コオリは半日の間に魔力操作の技術が磨かれたのは事実だが、完璧に魔光を生み出さずに魔法を発動できるようになったわけではなく、杖の先端からは僅かに光が放たれていた。バルルはそれを見て当面の目標は魔光を生み出さずに魔法を発動するように促す。
「まだ杖が光っているようだと駄目だね。明日からも吸魔石を使った訓練を続けな、慣れていけば魔光を生み出させるはずだよ」
「は、はい!!分かりました!!」
「おっ、急に元気が出てきたね。そうだ、その吸魔石はあんたに貸してやるよ。暇がある時はそれで練習しておきな。但し、あんまり練習しすぎてまたぶっ倒れないように気を付けな」
バルルは机の上の吸魔石を指差し、コオリに持って帰って学生寮でも練習するように促す。この吸魔石は恐らくは学校の備品と思われるが勝手に持ち歩いていいのかと思いながらも、魔法の練習が何時でもできるならばとコオリは有難く借りる事にした。
吸魔石は直に触れなければ魔力は吸収される事はなく、布で包んでおけば持ち運びもできる。今日の授業はこれまでにしてバルルはコオリを学生寮に帰らせようとした。
「今日はここまでだね。といっても明日からも吸魔石の訓練を一人で続けるんだよ。あたしはもう一人の奴を探しに行くからしばらくは来れないからね」
「えっ!?明日も?それに探しに行くって……」
コオリは明日からも一人で訓練を続ける事を伝えられて戸惑い、しかもバルルはコオリと共に授業を受けるはずの生徒をまだ見つけていない事が発覚する。
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