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王都での日常
第20話 魔法の披露
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「……魔法を見せる前に入学手続きを済ませたらどうだい?あんたはこの魔法学園に入るために来たんだろう?」
「そ、そうですね」
「大丈夫よ、手続きはもう済ませてあるわ」
「「「え?」」」
あっさりとマリアはコオリの入学手続きを終えた事を伝え、彼女は羊皮紙を取り出す。その羊皮紙にはコオリが学園に入学する事を許可する内容が記され、後はコオリが署名するだけで彼は魔法学園の生徒として認められる。
「この羊皮紙に署名すれば貴方はうちの学園の生徒として認められるわ」
「そうなんですか!?」
「但し、私も学園長として入学する生徒がどれだけの魔法を扱えるのか把握する必要があるわ。だから魔法を先に見せて貰えるかしら?」
「で、ですよね……」
マリアは意地としてコオリが魔法を扱う姿を見なければ認めないらしく、彼女はコオリがにっこりと笑みを浮かべる。コオリは冷や汗が止まらず、このままでは本当に魔法を見せなければならない。
助けを求めるようにコオリはバルルに視線を向けるが、流石の彼女も困った風に顔を反らす。コオリはもう魔法を見せるしかない事を悟り、緊張しながらも杖を握りしめる。
(魔力が少ないから入学は認められないなんてないよな……)
学園長は凶悪犯二名を撃退したというコオリの魔法に興味があるようだが、実際の所はコオリの魔法はお世辞にも凄いとは言えない。むしろ普通の魔術師よりもかなり劣るだろう。
(……でも、学校に通うならいつかは人前で魔法を見せる時が来るんだ。なら、やるしかない!!)
魔法学園に通う以上は必ず魔法を見せる機会が訪れるため、覚悟を決めたコオリは魔法を発動させた。
「アイス!!」
「こ、これは……」
「……氷の魔法を使えるのね」
気合を込めてコオリは魔法を唱えると杖の先端から青色の光が迸り、氷弾を生成した。それを見たリンダは驚き、一方でマリアはコオリが「氷」の魔法が扱える事を確かめて頷く。
人間の中で氷の魔法を扱える者は滅多におらず、魔法学園に通う生徒の中でも氷を扱える人間はいない。そういう意味ではコオリは珍しい属性の使い手だが、肝心の魔力量が少なすぎて小さな氷の欠片しか作り出せない。
「話には聞いていたけど本当に氷の魔法を扱えるのね」
「何だい、知ってたのかい……それで魔法を見せたんだから入学を認めるのかい?」
「いいえ、まだ色々と話を聞きたいことがあるわ」
コオリの魔法を何故かマリアは事前に把握しており、続けてマリアはコオリがどのような方法で凶悪犯を倒したのかを詳しく尋ねる。
「貴方はこの氷の魔法で通り魔を倒したそうね?その時の状況を詳しく教えてもらえるかしら?」
「えっと……」
「難しく考えなくていいわ。通り魔に襲われた時に自分が何をしたのかを教えてくれるだけでいいわ」
「は、はい……分かりました」
言われた通りにコオリは通り魔に襲われた時の詳細を話し、自分が魔法を利用してどのように戦ったのかを話す――
――コオリから事件の詳細を聞き終えると、マリアは神妙な表情を浮かべる。話を同じく聞いていたリンダは半信半疑な様子であり、バルルの方は面白そうな表情を浮かべていた。
「なるほどね、氷の欠片をそんな風に扱ったのかい。面白い戦い方をするね」
「ど、どうも?」
「ですが、少し信じがたい話ですね……」
「…………」
魔力量が少ないコオリは自分なりの方法で下級魔法の「アイス」を利用し、上手く通り魔を捕まえた事を話す。その話を聞かされたマリアは考え込み、やがて彼女は何か思いついたのかコオリに告げた。
「貴方の魔法の使い方に興味が出てきたわ。悪いのだけど、実際に見せてくれるかしら?」
「見せる?」
「ええ、といってもここでやるのもなんだから……訓練場を使いましょうか」
「訓練場?」
「この魔法学園では魔法の練習をするための訓練場が複数あります」
訓練場という言葉にコオリは不思議に思うと、リンダが代わりに説明してくれた。学園内には魔法の練習を行うための特別な訓練場がいくつか存在し、その内の一つにマリアはコオリ達を連れて案内する。
校舎を移動する際にコオリは授業を受けている生徒達の姿を確認する。途中で通りかかった教室では生徒達が席に座っている姿を見て少しだけコオリは覗く。
「このように王国軍は獣人国軍を誘導し、事前に配置していた部隊と合流して敵を一網打尽に……」
話を聞く限りではどうやら魔法の授業というよりも歴史の勉強をしているらしく、それを見てコオリは魔法学園で押しているのは魔法の技術だけではない事をバルルから教わった事を思い出す。
(本当に魔法には関係ない事も教えてるんだ……勉強に付いていけるかな)
コオリは他の生徒よりも大分遅れて魔法学園に入学する事になり、今から勉強して他の生徒に追いつけるのか不安はあった。しかし、今は入学する事だけに専念し、入学した後の事を考えるよりも目先の目標に集中する事にした。
授業している教室を横切ってコオリ達は校舎の外に出ると、校舎の裏側に移動する。そこには訓練場が存在し、丁度他の生徒が魔法の練習を行っていた。
「では、訓練を始める!!しっかりと狙うんだぞ!!」
「ファイア!!」
「ウィンド!!」
「アクア!!」
コオリよりも同い年ぐらいの生徒達が教師の指示通りに小杖を構え、離れた場所に置かれている木造製の人形に目掛けて魔法を放つ。人形の大きさは成人男性ほどはあり、鋼鉄製の鉄棒に括り付けた状態で立ち尽くしていた。
訓練を受けているのはコオリと同世代と思われる生徒達であり、彼等はリオンも所持していた小杖を利用して「下級魔法」を繰り出す。コオリと同じように氷《アイス》を扱う魔法使いはおらず、その代わりに火、風、水の属性の下級魔法を繰り出す。
「どうやら授業中だったようね。しばらく待ちましょうか」
マリアは生徒達から離れた場所で様子を伺い、この時にコオリはリオン以外の子供が魔法を扱う場面を始めて見た。コオリと同学年と思われる子供達が木造製の人形に向けて魔法を発動させ、次々と炎や水や風の塊を放つ。
(す、凄い……けど、全然当たってない?)
誰もがコオリの扱う「アイス」よりも凄い威力の下級魔法を放つが、狙いは全く安定せず、的から大きく外れてしまう。中には木造人形まで届かずに魔法が消えてしまう子も存在し、それを見た教師が呆れた様子で叱りつける。
「どうした!!全然当たってないじゃないか!!」
「う、ううっ……」
「くそっ、当たれ!!」
「このっ!!このっ!!」
子供達は必死に小杖を振って魔法を当てようとするが、全く当たる様子はない。コオリはその様子を見て驚き、どうして彼等が的に当てられないのかと戸惑う。
(これぐらいの距離でも当たらないなんて……)
十数メートルほど離れた的に魔法を当てる事ができない子供達を見てコオリは不思議に思い、自分ならばこの距離でも確実に的を当てられる自信がコオリにはあった。しかし、他の生徒達は結局は的に当てる事ができずに訓練は終了してしまう。
生徒達は魔法を連発して魔力を消耗したせいか顔色が悪く、酷く疲れた様子だった。そんな子供達を見て教師の男性はため息を吐き出し、彼等を説教する。
「全く、今まで何を練習してきた!?これだけいるのにまともに的に当てる奴もいないのか!?」
「くっ……」
「う、うるさい!!僕を誰だと思ってるんだ!?男爵家の……」
「それがどうした!!この学園にいる間は身分など関係ない!!」
「あいてっ!?」
生徒の中には貴族も混じっていたらしく、偉そうに指導を行う教師に反発する者もいたが、教師は気にせずにその生徒の頭を小突く。その様子を見ていたマリアは教師に話しかける事にした。
「相変わらずね、セマカ先生」
「あっ……こ、これは学園長!!何時からここに!?」
「ついさっきよ」
「が、学園長だ!?」
「皆、頭を下げろ!!」
「おはようございます!!」
マリアが現れた途端にセマカと呼ばれた男性教師は慌てふためき、他の子供達は慌てて頭を下げる。その様子を見てマリアが生徒にも尊敬されている事をコオリは知り、その一方でマカセと他の生徒もコオリの存在に気付く。
「マリア先生、その子は?」
「今日から入学予定のコオリ君よ。入学手続きが済み次第、貴方のクラスに任せる事になると思うわ」
「なるほど……私の名前はセマカだ。この学園の一年生の教師を務めている」
「は、初めまして……コオリと言います」
セマカと呼ばれた男性教師はコオリに自己紹介を行うと、コオリは頭を下げて挨拶を行う。その一方でバルルはセマカの顔を見て眉をしかめ、何かを思い出したように大声を上げる
「そ、そうですね」
「大丈夫よ、手続きはもう済ませてあるわ」
「「「え?」」」
あっさりとマリアはコオリの入学手続きを終えた事を伝え、彼女は羊皮紙を取り出す。その羊皮紙にはコオリが学園に入学する事を許可する内容が記され、後はコオリが署名するだけで彼は魔法学園の生徒として認められる。
「この羊皮紙に署名すれば貴方はうちの学園の生徒として認められるわ」
「そうなんですか!?」
「但し、私も学園長として入学する生徒がどれだけの魔法を扱えるのか把握する必要があるわ。だから魔法を先に見せて貰えるかしら?」
「で、ですよね……」
マリアは意地としてコオリが魔法を扱う姿を見なければ認めないらしく、彼女はコオリがにっこりと笑みを浮かべる。コオリは冷や汗が止まらず、このままでは本当に魔法を見せなければならない。
助けを求めるようにコオリはバルルに視線を向けるが、流石の彼女も困った風に顔を反らす。コオリはもう魔法を見せるしかない事を悟り、緊張しながらも杖を握りしめる。
(魔力が少ないから入学は認められないなんてないよな……)
学園長は凶悪犯二名を撃退したというコオリの魔法に興味があるようだが、実際の所はコオリの魔法はお世辞にも凄いとは言えない。むしろ普通の魔術師よりもかなり劣るだろう。
(……でも、学校に通うならいつかは人前で魔法を見せる時が来るんだ。なら、やるしかない!!)
魔法学園に通う以上は必ず魔法を見せる機会が訪れるため、覚悟を決めたコオリは魔法を発動させた。
「アイス!!」
「こ、これは……」
「……氷の魔法を使えるのね」
気合を込めてコオリは魔法を唱えると杖の先端から青色の光が迸り、氷弾を生成した。それを見たリンダは驚き、一方でマリアはコオリが「氷」の魔法が扱える事を確かめて頷く。
人間の中で氷の魔法を扱える者は滅多におらず、魔法学園に通う生徒の中でも氷を扱える人間はいない。そういう意味ではコオリは珍しい属性の使い手だが、肝心の魔力量が少なすぎて小さな氷の欠片しか作り出せない。
「話には聞いていたけど本当に氷の魔法を扱えるのね」
「何だい、知ってたのかい……それで魔法を見せたんだから入学を認めるのかい?」
「いいえ、まだ色々と話を聞きたいことがあるわ」
コオリの魔法を何故かマリアは事前に把握しており、続けてマリアはコオリがどのような方法で凶悪犯を倒したのかを詳しく尋ねる。
「貴方はこの氷の魔法で通り魔を倒したそうね?その時の状況を詳しく教えてもらえるかしら?」
「えっと……」
「難しく考えなくていいわ。通り魔に襲われた時に自分が何をしたのかを教えてくれるだけでいいわ」
「は、はい……分かりました」
言われた通りにコオリは通り魔に襲われた時の詳細を話し、自分が魔法を利用してどのように戦ったのかを話す――
――コオリから事件の詳細を聞き終えると、マリアは神妙な表情を浮かべる。話を同じく聞いていたリンダは半信半疑な様子であり、バルルの方は面白そうな表情を浮かべていた。
「なるほどね、氷の欠片をそんな風に扱ったのかい。面白い戦い方をするね」
「ど、どうも?」
「ですが、少し信じがたい話ですね……」
「…………」
魔力量が少ないコオリは自分なりの方法で下級魔法の「アイス」を利用し、上手く通り魔を捕まえた事を話す。その話を聞かされたマリアは考え込み、やがて彼女は何か思いついたのかコオリに告げた。
「貴方の魔法の使い方に興味が出てきたわ。悪いのだけど、実際に見せてくれるかしら?」
「見せる?」
「ええ、といってもここでやるのもなんだから……訓練場を使いましょうか」
「訓練場?」
「この魔法学園では魔法の練習をするための訓練場が複数あります」
訓練場という言葉にコオリは不思議に思うと、リンダが代わりに説明してくれた。学園内には魔法の練習を行うための特別な訓練場がいくつか存在し、その内の一つにマリアはコオリ達を連れて案内する。
校舎を移動する際にコオリは授業を受けている生徒達の姿を確認する。途中で通りかかった教室では生徒達が席に座っている姿を見て少しだけコオリは覗く。
「このように王国軍は獣人国軍を誘導し、事前に配置していた部隊と合流して敵を一網打尽に……」
話を聞く限りではどうやら魔法の授業というよりも歴史の勉強をしているらしく、それを見てコオリは魔法学園で押しているのは魔法の技術だけではない事をバルルから教わった事を思い出す。
(本当に魔法には関係ない事も教えてるんだ……勉強に付いていけるかな)
コオリは他の生徒よりも大分遅れて魔法学園に入学する事になり、今から勉強して他の生徒に追いつけるのか不安はあった。しかし、今は入学する事だけに専念し、入学した後の事を考えるよりも目先の目標に集中する事にした。
授業している教室を横切ってコオリ達は校舎の外に出ると、校舎の裏側に移動する。そこには訓練場が存在し、丁度他の生徒が魔法の練習を行っていた。
「では、訓練を始める!!しっかりと狙うんだぞ!!」
「ファイア!!」
「ウィンド!!」
「アクア!!」
コオリよりも同い年ぐらいの生徒達が教師の指示通りに小杖を構え、離れた場所に置かれている木造製の人形に目掛けて魔法を放つ。人形の大きさは成人男性ほどはあり、鋼鉄製の鉄棒に括り付けた状態で立ち尽くしていた。
訓練を受けているのはコオリと同世代と思われる生徒達であり、彼等はリオンも所持していた小杖を利用して「下級魔法」を繰り出す。コオリと同じように氷《アイス》を扱う魔法使いはおらず、その代わりに火、風、水の属性の下級魔法を繰り出す。
「どうやら授業中だったようね。しばらく待ちましょうか」
マリアは生徒達から離れた場所で様子を伺い、この時にコオリはリオン以外の子供が魔法を扱う場面を始めて見た。コオリと同学年と思われる子供達が木造製の人形に向けて魔法を発動させ、次々と炎や水や風の塊を放つ。
(す、凄い……けど、全然当たってない?)
誰もがコオリの扱う「アイス」よりも凄い威力の下級魔法を放つが、狙いは全く安定せず、的から大きく外れてしまう。中には木造人形まで届かずに魔法が消えてしまう子も存在し、それを見た教師が呆れた様子で叱りつける。
「どうした!!全然当たってないじゃないか!!」
「う、ううっ……」
「くそっ、当たれ!!」
「このっ!!このっ!!」
子供達は必死に小杖を振って魔法を当てようとするが、全く当たる様子はない。コオリはその様子を見て驚き、どうして彼等が的に当てられないのかと戸惑う。
(これぐらいの距離でも当たらないなんて……)
十数メートルほど離れた的に魔法を当てる事ができない子供達を見てコオリは不思議に思い、自分ならばこの距離でも確実に的を当てられる自信がコオリにはあった。しかし、他の生徒達は結局は的に当てる事ができずに訓練は終了してしまう。
生徒達は魔法を連発して魔力を消耗したせいか顔色が悪く、酷く疲れた様子だった。そんな子供達を見て教師の男性はため息を吐き出し、彼等を説教する。
「全く、今まで何を練習してきた!?これだけいるのにまともに的に当てる奴もいないのか!?」
「くっ……」
「う、うるさい!!僕を誰だと思ってるんだ!?男爵家の……」
「それがどうした!!この学園にいる間は身分など関係ない!!」
「あいてっ!?」
生徒の中には貴族も混じっていたらしく、偉そうに指導を行う教師に反発する者もいたが、教師は気にせずにその生徒の頭を小突く。その様子を見ていたマリアは教師に話しかける事にした。
「相変わらずね、セマカ先生」
「あっ……こ、これは学園長!!何時からここに!?」
「ついさっきよ」
「が、学園長だ!?」
「皆、頭を下げろ!!」
「おはようございます!!」
マリアが現れた途端にセマカと呼ばれた男性教師は慌てふためき、他の子供達は慌てて頭を下げる。その様子を見てマリアが生徒にも尊敬されている事をコオリは知り、その一方でマカセと他の生徒もコオリの存在に気付く。
「マリア先生、その子は?」
「今日から入学予定のコオリ君よ。入学手続きが済み次第、貴方のクラスに任せる事になると思うわ」
「なるほど……私の名前はセマカだ。この学園の一年生の教師を務めている」
「は、初めまして……コオリと言います」
セマカと呼ばれた男性教師はコオリに自己紹介を行うと、コオリは頭を下げて挨拶を行う。その一方でバルルはセマカの顔を見て眉をしかめ、何かを思い出したように大声を上げる
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