氷弾の魔術師

カタナヅキ

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王都での日常

第19話 学園長との対談

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「あの……どうしてバルルさんもここに来たんですか?」
「なんだい、あたしが一緒だと迷惑なのかい?」
「いや、そういう意味じゃなくて……」
「冗談だよ、実はここの学園長とは昔から顔見知りでね。ちょいと会いに来ただけさ」
「そうなのですか?」


バルルは従業員に宿を任せて何故かコオリ達と共に魔法学園に赴き、自分が通っていた頃と比べて殆ど変わっていない景色に懐かしく思う。


「ここは相変わらずだね……何も変わっていない、懐かしく思うよ」
「へえっ……」
「まあ、あたしは碌な思い出がなかったけどね。さあ、とっとと行くよ」
「ええっ!?」


感慨深そうな表情を浮かべていた割にはバルルはあっさりと気分を切り替え、学園長が待つ校舎へと向かう。途中でコオリは学園の生徒と何人かすれ違い、生徒達は物珍しそうにコオリ達を見つめる。


「何だあれ?誰だ?」
「あれって三年のリンダさんだろ?」
「あっちの男の子は見た事ないな……新しく入る生徒か?」


生徒達はリンダの事を知っているため、彼女が連れてきたコオリとバルルを見て不思議に思う。コオリはともかく、バルルはどうみても魔法学園の関係者には見えないので疑問を抱く。


「あっちのおばさんは母親か?」
「誰がおばさんだい!!ぶっ殺すぞガキ共!!」
「「「ひいいっ!?」」」
「ちょっ、駄目ですって!!」
「お、落ち着いて下さい!!生徒に手を出さないで!!」


バルルは自分をおばさん扱いしてきた生徒を殴りつけようとしたが、慌ててコオリとリンダが止める。生徒達はバルルの気迫に散り散りになって逃げだしてしまい、それを見たバルルは鼻を鳴らす――





――何とかバルルを宥めた後、コオリ達は学園長室までリンダに案内してもらい、彼女は扉の前に立つとノックを行おうとした。しかし、それを無視してバルルが勝手に扉を開く。


「邪魔するよ!!あんたの所の生徒はどういう教育をしてんだい!!」
「ちょっ!?」
「勝手に入るなんて失礼ですよ!?」


文句を口にしながらバルルは部屋の中の相手の了承も待たずに入り込むと、慌ててコオリとリンダも続く。この時にコオリは部屋に入った途端、驚愕の表情を浮かべた。

部屋の中は美術品が並べられており、壁際には多数の絵が並べられ、高価そうな壺の置物が置かれていた。一番目を引いたのは部屋の奥に飾られた人物画であり、リンダよりも年上で美しいエルフの女性の絵が描かれていた。


(この絵の人が学園長なのかな……?)


コオリは絵の女性を見て魔法学園の学園長が描かれているのかと思ったが、その肝心の学園長の姿が部屋の中に見当たらない。最初はコオリも留守かと思ったが、他の二人の様子がおかしい事に気付く。


「あれ、誰もいない……留守ですかね?」
「……いや」
「学園長はここにいます」
「えっ?」


バルルは目つきを鋭くさせ、リンダは目を閉じた状態で立ち尽くす。そんな二人の反応にコオリは不思議に思って周囲を注意深く見渡すと、ある場所に違和感を抱く。


(あれ?何だろう……あそこだけ変な感じがする)


部屋の風景の一部分が妙に歪んでいる箇所があり、疑問を抱いたコオリは注意深く歪みを観察すると、唐突に部屋の中に強風が発生する。


「うわっ!?」
「くぅっ!?」
「……学園長、御戯れはそこまでにしておいてください」


コオリが視界に捉えた空間の歪みから風が発生し、先ほどまでは存在しなかったはずの女性が唐突に現れる。その女性は部屋の奥に飾られている人物画と瓜二つの容姿をしており、リンダの言葉からコオリは女性の正体が学園長だと知った。

どうやらマリアは最初から部屋の中で姿を消して隠れていたらしく、彼女がどんな魔法を使ったのコオリには見当もつかなかった。しかし、バルルとリンダは部屋の中に入った時から既にマリアの存在を勘付いていたらしく、バルルは腕を組んでマリアと向き合う。


「相変わらず派手好きだね、
「久しぶりね。貴女とこうして顔を合わせるのは何年ぶりかしら?」
「え?え?」


バルルがマリアの事を先生と呼んだことにコオリは戸惑い、その様子を見てマリアは彼が例の噂の少年だと気付いて改めて自己紹介を行う。


「私とした事が自己紹介がまだだったわね。私の名前はマリア・フォン、この学園の学園長を務めているわ」
「は、初めまして……コオリと申します」
「先生が学園長か……世も末だね」
「相変わらず生意気な子ね……学生時代の貴方の黒歴史を暴露してもいいのよ」
「や、止めとくれよ……」


優し気な笑顔を浮かべながらマリアはコオリと握手を行い、コオリはリンダ以上の美人な女性に頬を赤く染める。ここまでの美人は生まれて初めて見たかもしれず、手汗をかいていないかと緊張してしまう。

マリアはバルルと昔から知り合いらしく、二人の口ぶりからマリアが学園長を務める前、まだ教員時代の頃にバルルは学園に通っていたらしい。二人とも久しぶりに顔を合わせたらしく、マリアはバルルにも握手を求める。


「本当に久しぶりね……立派になったわね、色々と」
「どういう意味だい……たくっ」


バルルは差しだされた手を軽く叩いて払いのけ、そんな彼女の態度にリンダは眉をしかめるが、当のマリアは気にした様子はない。

マリアとバルルのやり取りを見てコオリは二人がただの教師と生徒の関係には思えず、思っていたよりも仲が良さそうな事に気付く。その一方でマリアの方は改めてコオリに振り返り、彼の頭に手を伸ばす。


「貴方の噂は聞いたわ。たった一人で通り魔と誘拐犯を倒したそうね」
「あ、はい……」
「そんな貴方がどんな魔法を使うのか気になるわ。早速だけど、ここで見せてくれないかしら?」
「えっ!?」


思いもよらぬマリアの言葉にコオリは目を見開き、他の者もコオリの魔法が気になるのか彼に視線を向ける。マリアは興味津々な様子で見つめてくるが、本人は冷や汗を流しながら視線を逸らす。


(い、いきなり魔法を見せろだなんて……どうしよう)


自分の魔法を見てマリアがどのような感想を抱くのか分からず、マオは魔法を躊躇ってしまう。そんな彼を見てバルルは助け舟を出してやった。
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