氷弾の魔術師

カタナヅキ

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王都での日常

第17話 魔力を増やす方法

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「あの……もしかしてバルルさんは魔術師なんですか?」
「あん?何でそう思うんだい?言っておくけど魔石の知識なんて魔道具を扱う奴なら誰でも知ってる事だよ」
「でも、魔術師の杖を普通の持てるのは魔術師だけでしょ?」
「……なるほど、言われてみればそうだね」


コオリの指摘にバルルは自分が持っている杖を見て納得し、一般人が魔術師の杖を直接触れる事はできない。彼女が杖を持てるという事は魔術師である証だった。


「あたしも昔は魔導士を志して魔法学園に通っていた時期もあったよ。けど、色々とあって退学しちまったけどね」
「ええっ!?」


バルルが魔法学園にも通っていた元魔術師である事を知ってコオリは驚き、今から十数年前に学園を退学していた事を語る。


「両親がいないあたしは魔法学園以外に帰る場所もなかったから、自分一人の力で生きていくしかなかったんだよ。だからあたしは冒険者になった」
「冒険者?それって絵本とかによく出る……あの冒険者ですか?」
「そうさ、魔物専門の退治屋みたいなもんさ」



――この世界における冒険者とは魔物の退治を専門としており、基本的には魔物関連の仕事を請け負う「何でも屋」だった。魔物の討伐や生態系の調査、他にも傭兵のように商人や貴族の護衛の仕事も行う。

冒険者は実力社会であるために生半可な力しか持たない人間は生きていけず、それ相応の実力を伴っていなければ冒険者は務まらない。しかも魔物を相手にする仕事となると危険度も大きく、その反面に危険度に見合う高額な報酬も手に入る。


「魔法学園を退学した後、あたしは冒険者になって他の奴と組んで暮らしていたのさ。5年ぐらい冒険者活動をやっていたかね……けど、ある時に取り返しのつかない失敗をして辞めちまった」
「取り返しのつかない失敗……?」
「ある魔物の討伐に失敗したのさ。そいつのせいであたし以外の仲間は全滅、生き残ったあたしも碌に戦える身体じゃなくなった……」


バルルはため息を吐きながら彼女は右足のズボンを捲ると、コオリはここで彼女の右足が「義足」だと初めて気付く。バルルは魔物との戦闘で仲間を失い、更には右足も失ってしまった事で冒険者稼業を辞めるしかなかった。


「亡くなった旦那がこの宿屋の前の主人でね。今はあたしが宿屋を継いだから魔術師を引退したんだよ」
「そうだったんですか……」
「けど、久しぶりに杖を握ると魔術師の血が騒ぐね」


話の途中でバルルはコオリから杖を受け取り、彼女は意識を集中させるように目を閉じる。そして杖を構えると先端か赤色の光が放たれ、炎の塊が空中に誕生する。それを見たコオリは驚き、彼女はで魔法を発動させた。


「どうだい?これであたしが魔術師だと信じてくれたかい?」
「す、凄い……」
「まあ、現役を引退してもこの程度の魔法なら詠唱無しでも扱えるさ。ちなみにこいつは下級魔法の「ファイア」だよ」
「下級魔法?」
「何だいあんた、本当に何も知らないんだね……下級魔法というのは名前の通りに魔術師が一番最初に習う魔法さ。国によっては基礎魔法とか初級魔法とも呼ばれているね」


魔法にも様々な種類が存在し、下級魔法は最も習得難易度が低く、魔術師ならば最初に教わる魔法でもある。そしてコオリが扱う「アイス」も下級魔法の一種らしく、森の中でリオンがコオリに教えた魔法の呪文も全て下級魔法だと発覚する。

下級魔法は魔術師ならば誰もが扱える魔法であるため、習得難易度は最も低い。ちなみにリオンがオークを倒した時に使用した「スラッシュ」は風属性の中級魔法で下級魔法よりも上位の魔法だと判明した。


「あたしが無詠唱で扱えるのはこのファイアと、中級魔法のフレイムランスかね」
「フレイムランス?」
「名前の通りに槍の形をした炎を生み出せるのさ。オーク程度ならこの魔法一発で丸焼きに出来るよ」
「へ、へえっ……」


バルルの言葉を聞いてコオリは素直に羨ましく思い、自分は中級魔法を扱えるのか不安を抱く。リオンによればコオリは魔力量が並の魔術師よりも下回るらしく、魔力消費の大きい魔法は扱えないと聞かされていた。

今の所はコオリは下級魔法だけは扱えるが、段階が上がる事に魔力の消費が大きくなるらしく、コオリの魔力量では上級魔法は扱えない可能性が高い。


(バルルさんが作った炎……俺の下級魔法だと一瞬で溶かされそうだな)


コオリは自分の下級魔法で造り出す「氷弾」とバルルが生み出した炎の塊に視線を向け、同じ下級魔法でも使用者の魔力量によって差が明確に現れる。コオリはせいぜい数センチほどの大きさの氷塊しか生み出せず、一方でバルルは本気を出せば数十センチの火球を作り上げる事ができるという。


(やっぱり魔力量が少ないのは魔術師にとっての欠陥になるのか……いや、弱気になるな!!諦めてたまるか!!)


落ち込みそうになったコオリは自分自身を叱咤し、この際に元魔術師であるバルルに色々と聞いておく事にした。彼女も魔術師だったのならばもしかしたら良い助言が聞けるかもしれず、コオリは率直に尋ねた。


「あのっ!!聞きたいことがあるんですけど!!」
「な、何だい!?急に大声を上げて……」
「あ、すいません……でも、どうしても聞きたいことがあるんです」


コオリは真剣な表情を浮かべると、バルルは彼の気迫に戸惑う。本当ならば他の客も起きてくるのでそろそろ仕事に取りかからなければならないのだが、コオリの真剣な顔を見て仕方なく彼の話を聞く事にした。


「魔力量が少ない事は魔術師にとって弱点になるんですか?」
「当然だね」
「即答!?じゃ、じゃあ……魔力量を増やす方法は本当にないんですか?」


リオンからは魔力を増やす方法はないと断言されたが、やはり納得がいかずにコオリは駄目元でバルルに尋ねてみると、彼女は腕を組んで難しい表情を浮かべる。


「あんたにとっては残念だろうけど、魔力を増やす修行法はなんてもんはないんだよ」
「そ、そんな……」
「けど、なら知っているよ」
「えっ!?」


バルルは魔法を増やす方法は知らないが、彼女が魔法学園に在学中に魔力の消費を抑える術を学んだ事を明かす。


「あたしが通っていた時の魔法学園は「限られた魔力量で有効的な魔法を使う」という理論を徹底的に生徒に叩き込んでいたね。授業では主に余分な魔力消費を抑えて魔法を発動させる術しか教えていなかったね」
「余分な魔力消費を抑える?」
「要するに自分の魔力を完全に操作《コントロール》するのさ。特に初めて魔法を覚えた奴等は無意識に無駄に魔力を消費している事が多いからね」


バルルによれば彼女が通っていた時代の魔法学園は魔力を完璧に使いこなすための授業が行われていたらしく、余分な魔力の消費を抑えれば魔法が使える回数も増えて性能も格段に上昇するはずだった。。
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