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王都での日常
第16話 魔石の重要性
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――通り魔事件の翌朝、コオリは宿屋の裏庭にて魔法の練習を行う。結局は昨日も兵士の事情聴取を受けたせいで魔法学園で入学手続きはできず、またもや高い宿代を支払って泊まる羽目になった。
(今日こそ手続きを済ませないとな……でも、学校が開くまで時間があるみたいだし、ちょっと練習しておくか)
意識を集中させたコオリは杖を握りしめ、リオンには無理だと言われた「無詠唱魔法」を実行しようとした。
(アイス!!)
心の中でコオリは魔法の詠唱を行うと、杖の先端がわずかに光り輝く。しかし、すぐに光は消えてしまい、それを見てコオリはため息を吐き出す。
「ああっ……また駄目だったか」
「あんた、こんな所で何してるんだい?」
「うわっ!?オ、オーガ!?」
「誰がオーガだい!!ぶっ殺されたいのかい!?」
急に背後から声を掛けられたコオリは驚いて振り返ると、そこには宿屋の主人であるバルルが立っていた。魔法を発動させる事に集中しし過ぎてコオリは彼女の接近に気付かなかったらしい。
勝手に宿の裏庭で魔法の練習を行っている事にバルルの気分を害してしまったかとコオリは心配するが、彼女はのコオリ持っている杖を見て面白そうに呟く。
「そういえばあんたは魔術師だったね。ここで魔法の練習をしていたわけかい?」
「え?あ、はい……だ、駄目でしたか?」
「他の客に迷惑をかけてないなら怒りはしないよ。それよりもその杖を見せてくれるかい?」
「あ、はい……」
バルルに言われてコオリは杖を差し出したが、よくよく考えれば普通の人間が杖に触れると魔力を奪われて大変な事になる。しかし、バルルは杖に触れても平気などころかじっくりと眺めた。
「こいつはまた随分と古い杖だね。今時にこんな杖を使う魔術師なんて年老いた魔術師ぐらいだよ」
「えっ……そうなんですか?」
「こいつは一世代前の魔術師が扱う杖だよ。必要以上に魔力を吸い上げるし、それに魔石も付いてないじゃないか。こんな物でよく魔法を使っていたね」
「魔石?」
「あんた、まさか魔術師の癖に魔石を知らないのかい!?」
「はあっ……す、すいません」
コオリは魔石という単語に疑問を抱き、そんな彼を見てバルルは呆気に取られた。コオリは彼女の口ぶりから魔石が付いていない杖を使うのは普通ではない事を知る。
(そういえばリオンの持っていた小杖は緑色の水晶玉みたいなのが付いていたけど……まさか、あれが魔石なのかな?)
リオンが所持していた小杖には緑色の小さな水晶玉が取り付けられていた事をコオリは思い出し、魔石の事が気になったコオリはバルルに魔石の事を尋ねる。
「魔石というのはどういう物なんですか?」
「本当に何も知らなかったのかい?はあっ……魔石というのは簡単に言えば魔法の力を高める特殊な鉱石だよ。魔法の性能を強化したり、自分が消耗する魔力を代わりに補う事もできる。だから魔術師は魔法を使う時は杖に魔石を取りつけるのが当たり前なのさ」
「えっ……でも、魔石がなくても魔法は使えますよね?」
「そりゃ使えるさ。だけどね、魔法ってのは身体の負担が大きいんだ。だから魔石を利用して身体の負担を軽減させる。場合によっては自分の魔力だけじゃ発動できない魔法だって魔石の力を借りれば発動する事もできる場合もある」
魔石の存在を改めて知ったコオリは驚き、そんな便利な物があるのならばもっと早く知っていればと思った。話を聞く限りでは魔力量が少ないコオリにとっては正に打って付けの道具だった。
「その魔石は何処で手に入るんですか!?」
「別にそこらの店でも売ってるよ。但し、魔術師が扱う魔石となるとかなり高めに販売されているけどね」
「えっ……」
バルルによれば魔石といっても様々な種類があるらしく、特に魔術師が扱う魔石の類は高価で取引されている事を説明する。
「魔石といっても色々な種類があるんだよ。魔石の作り方は特殊な鉱石を加工しないといけない。この加工法はドワーフの鍛冶師にしかできないほどに難しいらしいからね、だから魔石を取り扱っているのは大抵はドワーフの奴等さ」
「へえ……ちなみに魔術師以外の人が魔石を使う事とかあるんですか?」
「そりゃあるさ。例えばうちの宿では料理をするとき、火属性の魔石をよく利用するね。普通の人間は魔石の魔力を引きだす事はできないけど、魔道具と呼ばれる特別な道具を使えば一般人でも魔石の力を引きだす事ができるわけさ」
魔石は魔術師だけが扱う代物ではなく、一般人でも特別な道具を使用すれば魔石を扱える事をバルルは説明する。実際に彼女はコオリを厨房に連れて行き、自分が扱っている「魔道具」を見せてくれた。
宿屋で料理をするときは火を扱う際にバルルは火属性の魔石を利用して火力を高めるらしく、厨房の焜炉には魔石を取りつける窪みが存在した。この窪みには赤色に光り輝くひし形の水晶が嵌め込まれており、この水晶が火属性の魔石だと説明する。
「料理をするときに火を使う場合、こうやって火属性の魔石を回すと……ほら、火が点いただろう?」
「あ、本当だ……」
「さらに火力を調整したいときはこうやって魔石を回せば火を強くしたり、弱くしたりできる。王都では料理をするときはこの焜炉型の魔道具を利用しているのさ」
「初めて知りました……」
コオリが暮らしていた街では火を灯す時は自力で灯すしかなく、火属性の魔石を利用して火を灯す魔道具など存在しない。しかし、王都では一般家庭でも火を灯す魔道具を常備しているらしく、改めて自分の村と王都の暮らしの差に驚く。
厨房から出たコオリは改めてバルルから魔石や魔道具に関して色々と教えてもらう。魔道具は多種多様存在し、先ほどの厨房で見せてくれた焜炉型の魔道具以外にも魔石から水を作り出す魔道具や、防犯対策として利用される魔道具もある事を知る。
「あたしの店ではさっき見せた火を生み出す魔道具と、水を生み出す魔道具があるね。この二つの魔道具のお陰で色々と助かってるよ」
「水を生み出す魔道具?そんなのまであるんですか?」
「ああ、吸水石と呼ばれる水属性の魔石を利用してるのさ。名前の通りに水を吸い上げる事ができる魔石なんだけど、こんなに小さいのに吸い込める水の量は凄いもんだよ」
バルルは「吸水石」と呼ばれる魔石を取り出し、外見は先ほどコオリが厨房で見せて貰った火属性の魔石と同じく「ひし形」だった。どうやら一般人が扱える魔石はひし形に統一されているらしく、その反面に魔術師が扱う魔石は「丸形」らしい。
吸水石はコオリの掌でも収まる程の小さな魔石だが、この魔石は見かけによらず大量の水分を吸収できるらしく、しかも吸い込んだ分の水量に関係なく重さは全く変わらない。バルルによれば指先で摘まめるほどの大きさの吸水石でも大浴場の風呂を満たせる程の量の水を吸い込めるらしい。但し、吸水石が取り込んだ水分を再び取り出すには専用の魔道具が必要だと教わる。
「魔石は何処で手に入るんですか?」
「大抵の魔石は鉱山で取れるね。但し、火属性の魔石とかは火山地帯で採取できるよ。王都で利用されている火属性の魔石の殆どは王都の北に存在するグマグ火山と呼ばれる火山から採取されているらしいよ」
「グマグ火山……」
「ちなみに水属性の魔石の場合は湖の底や海底から採取できるらしいね。流石に人間だと採取するのは難しい場所だから、人魚族の力を借りて採取しているよ。風属性の魔石は標高が高い鉱山で発掘されるらしいね。ちなみに地属性の魔石は地中深くに埋まっているよ」
「それなら雷属性の魔石は?」
「雷属性の魔石は……滅多に手に入らないね。そもそも使い手が少ないし、この王都でも取り扱っている店はないはずだよ」
魔石が採取できる場所は環境に応じて異なるらしく、熱帯地方だと火属性の魔石が採れやすいなど特徴がある。そして聖属性の魔石の採取方法に関してだけはバルルも知らないという。
「聖属性の魔石は教会が管理しているね。あいつらがどうやって聖属性の魔石を採取しているのかは誰も知らない」
「闇属性の魔石は?」
「夜の間に鉱山で発掘できるらしいよ。日中は採れないけど、夜を迎えると何故か闇属性の魔石の鉱石が発掘されるらしい。まあ、実際にあたしも噂で聞いた程度なんだけどね」
「そうなんですか……オーガさん、色々と教えてくれてありがとうございます」
「誰がオーガだい!?あたしはバルルだよ!!」
「あいてっ!?」
バルルに頭を小突かれながらもコオリは魔石の知識を深め、その一方でどうして彼女がこんなにも詳しいのか気になった。
(今日こそ手続きを済ませないとな……でも、学校が開くまで時間があるみたいだし、ちょっと練習しておくか)
意識を集中させたコオリは杖を握りしめ、リオンには無理だと言われた「無詠唱魔法」を実行しようとした。
(アイス!!)
心の中でコオリは魔法の詠唱を行うと、杖の先端がわずかに光り輝く。しかし、すぐに光は消えてしまい、それを見てコオリはため息を吐き出す。
「ああっ……また駄目だったか」
「あんた、こんな所で何してるんだい?」
「うわっ!?オ、オーガ!?」
「誰がオーガだい!!ぶっ殺されたいのかい!?」
急に背後から声を掛けられたコオリは驚いて振り返ると、そこには宿屋の主人であるバルルが立っていた。魔法を発動させる事に集中しし過ぎてコオリは彼女の接近に気付かなかったらしい。
勝手に宿の裏庭で魔法の練習を行っている事にバルルの気分を害してしまったかとコオリは心配するが、彼女はのコオリ持っている杖を見て面白そうに呟く。
「そういえばあんたは魔術師だったね。ここで魔法の練習をしていたわけかい?」
「え?あ、はい……だ、駄目でしたか?」
「他の客に迷惑をかけてないなら怒りはしないよ。それよりもその杖を見せてくれるかい?」
「あ、はい……」
バルルに言われてコオリは杖を差し出したが、よくよく考えれば普通の人間が杖に触れると魔力を奪われて大変な事になる。しかし、バルルは杖に触れても平気などころかじっくりと眺めた。
「こいつはまた随分と古い杖だね。今時にこんな杖を使う魔術師なんて年老いた魔術師ぐらいだよ」
「えっ……そうなんですか?」
「こいつは一世代前の魔術師が扱う杖だよ。必要以上に魔力を吸い上げるし、それに魔石も付いてないじゃないか。こんな物でよく魔法を使っていたね」
「魔石?」
「あんた、まさか魔術師の癖に魔石を知らないのかい!?」
「はあっ……す、すいません」
コオリは魔石という単語に疑問を抱き、そんな彼を見てバルルは呆気に取られた。コオリは彼女の口ぶりから魔石が付いていない杖を使うのは普通ではない事を知る。
(そういえばリオンの持っていた小杖は緑色の水晶玉みたいなのが付いていたけど……まさか、あれが魔石なのかな?)
リオンが所持していた小杖には緑色の小さな水晶玉が取り付けられていた事をコオリは思い出し、魔石の事が気になったコオリはバルルに魔石の事を尋ねる。
「魔石というのはどういう物なんですか?」
「本当に何も知らなかったのかい?はあっ……魔石というのは簡単に言えば魔法の力を高める特殊な鉱石だよ。魔法の性能を強化したり、自分が消耗する魔力を代わりに補う事もできる。だから魔術師は魔法を使う時は杖に魔石を取りつけるのが当たり前なのさ」
「えっ……でも、魔石がなくても魔法は使えますよね?」
「そりゃ使えるさ。だけどね、魔法ってのは身体の負担が大きいんだ。だから魔石を利用して身体の負担を軽減させる。場合によっては自分の魔力だけじゃ発動できない魔法だって魔石の力を借りれば発動する事もできる場合もある」
魔石の存在を改めて知ったコオリは驚き、そんな便利な物があるのならばもっと早く知っていればと思った。話を聞く限りでは魔力量が少ないコオリにとっては正に打って付けの道具だった。
「その魔石は何処で手に入るんですか!?」
「別にそこらの店でも売ってるよ。但し、魔術師が扱う魔石となるとかなり高めに販売されているけどね」
「えっ……」
バルルによれば魔石といっても様々な種類があるらしく、特に魔術師が扱う魔石の類は高価で取引されている事を説明する。
「魔石といっても色々な種類があるんだよ。魔石の作り方は特殊な鉱石を加工しないといけない。この加工法はドワーフの鍛冶師にしかできないほどに難しいらしいからね、だから魔石を取り扱っているのは大抵はドワーフの奴等さ」
「へえ……ちなみに魔術師以外の人が魔石を使う事とかあるんですか?」
「そりゃあるさ。例えばうちの宿では料理をするとき、火属性の魔石をよく利用するね。普通の人間は魔石の魔力を引きだす事はできないけど、魔道具と呼ばれる特別な道具を使えば一般人でも魔石の力を引きだす事ができるわけさ」
魔石は魔術師だけが扱う代物ではなく、一般人でも特別な道具を使用すれば魔石を扱える事をバルルは説明する。実際に彼女はコオリを厨房に連れて行き、自分が扱っている「魔道具」を見せてくれた。
宿屋で料理をするときは火を扱う際にバルルは火属性の魔石を利用して火力を高めるらしく、厨房の焜炉には魔石を取りつける窪みが存在した。この窪みには赤色に光り輝くひし形の水晶が嵌め込まれており、この水晶が火属性の魔石だと説明する。
「料理をするときに火を使う場合、こうやって火属性の魔石を回すと……ほら、火が点いただろう?」
「あ、本当だ……」
「さらに火力を調整したいときはこうやって魔石を回せば火を強くしたり、弱くしたりできる。王都では料理をするときはこの焜炉型の魔道具を利用しているのさ」
「初めて知りました……」
コオリが暮らしていた街では火を灯す時は自力で灯すしかなく、火属性の魔石を利用して火を灯す魔道具など存在しない。しかし、王都では一般家庭でも火を灯す魔道具を常備しているらしく、改めて自分の村と王都の暮らしの差に驚く。
厨房から出たコオリは改めてバルルから魔石や魔道具に関して色々と教えてもらう。魔道具は多種多様存在し、先ほどの厨房で見せてくれた焜炉型の魔道具以外にも魔石から水を作り出す魔道具や、防犯対策として利用される魔道具もある事を知る。
「あたしの店ではさっき見せた火を生み出す魔道具と、水を生み出す魔道具があるね。この二つの魔道具のお陰で色々と助かってるよ」
「水を生み出す魔道具?そんなのまであるんですか?」
「ああ、吸水石と呼ばれる水属性の魔石を利用してるのさ。名前の通りに水を吸い上げる事ができる魔石なんだけど、こんなに小さいのに吸い込める水の量は凄いもんだよ」
バルルは「吸水石」と呼ばれる魔石を取り出し、外見は先ほどコオリが厨房で見せて貰った火属性の魔石と同じく「ひし形」だった。どうやら一般人が扱える魔石はひし形に統一されているらしく、その反面に魔術師が扱う魔石は「丸形」らしい。
吸水石はコオリの掌でも収まる程の小さな魔石だが、この魔石は見かけによらず大量の水分を吸収できるらしく、しかも吸い込んだ分の水量に関係なく重さは全く変わらない。バルルによれば指先で摘まめるほどの大きさの吸水石でも大浴場の風呂を満たせる程の量の水を吸い込めるらしい。但し、吸水石が取り込んだ水分を再び取り出すには専用の魔道具が必要だと教わる。
「魔石は何処で手に入るんですか?」
「大抵の魔石は鉱山で取れるね。但し、火属性の魔石とかは火山地帯で採取できるよ。王都で利用されている火属性の魔石の殆どは王都の北に存在するグマグ火山と呼ばれる火山から採取されているらしいよ」
「グマグ火山……」
「ちなみに水属性の魔石の場合は湖の底や海底から採取できるらしいね。流石に人間だと採取するのは難しい場所だから、人魚族の力を借りて採取しているよ。風属性の魔石は標高が高い鉱山で発掘されるらしいね。ちなみに地属性の魔石は地中深くに埋まっているよ」
「それなら雷属性の魔石は?」
「雷属性の魔石は……滅多に手に入らないね。そもそも使い手が少ないし、この王都でも取り扱っている店はないはずだよ」
魔石が採取できる場所は環境に応じて異なるらしく、熱帯地方だと火属性の魔石が採れやすいなど特徴がある。そして聖属性の魔石の採取方法に関してだけはバルルも知らないという。
「聖属性の魔石は教会が管理しているね。あいつらがどうやって聖属性の魔石を採取しているのかは誰も知らない」
「闇属性の魔石は?」
「夜の間に鉱山で発掘できるらしいよ。日中は採れないけど、夜を迎えると何故か闇属性の魔石の鉱石が発掘されるらしい。まあ、実際にあたしも噂で聞いた程度なんだけどね」
「そうなんですか……オーガさん、色々と教えてくれてありがとうございます」
「誰がオーガだい!?あたしはバルルだよ!!」
「あいてっ!?」
バルルに頭を小突かれながらもコオリは魔石の知識を深め、その一方でどうして彼女がこんなにも詳しいのか気になった。
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